国内
2025-12-08 09:10
キユーピーが2026年8月をもって育児食の生産を終了することは大きな話題となった。販売数量の低迷と、原材料費やエネルギー費等のコスト管理が困難となり、撤退を余儀なくされた。同様に、22年にベビーフード商品の終売を経験し、今年新商品を発売して市場に再参入した森永乳業は、終売当時の状況を「こだわりの“国産原料”を続けられなくなり、苦渋の判断があった」と振り返る。近年、出生率は低下しているが、“高品質なものを食べさせたい”生活者の需要は高まりを見せている。共働きやワンオペ育児が当たり前になった今、“手間をかけずに安心できる食”のあり方とは? 同社の担当者に、育児食にまつわる価値観の変化を聞いた。
【写真】スプーンに切れよくおさまる粘度「森永 はじめてのベビーフード」の中身
■「頼っていた味がなくなってしまう」終売が発表されSNSにあふれた悲しみの声
2022年、森永乳業はレトルトパウチのベビーフード終売を発表した。その理由は、国産原料の“安定調達”の困難。天候不順や収穫制限が続き、品質維持が不可能となったことが背景にある。他社が海外原料を使う中、同社は「国産であること」が特徴だったため、海外原料にして続ける選択はせず、製造終了へと踏み切った。
「国産原材料の調達がままならない状況にあり、残念ながら終売という形をとるしかないと発表いたしました。当時会社には『頼っていた味がなくなってしまう』と、商品を惜しむ声が多数届いたと聞いています」(森永乳業株式会社・大熊慶さん、以下同)
直近でも、キユーピーのベビーフード生産終了、GUのベビー服撤退のニュースがあり、乳幼児にとってのサービスが終了していくことに憂いを感じている人も多いだろう。
「ベンチャー企業などによる新しい商品・サービスも増えており明るいニュースもありますが、大手企業のサービス終了のお知らせについては、SNSで悲しみの声があふれる様子を目にします。
特に食においては、近年夏場の天候不順が続いています。それに伴い野菜の生育状況の悪化、供給量の制限など、外部要因に左右されてしまう。終売当時の販売状況からすると、出生率が低くなっていることは原因ではなく、共働き世帯が増えているからこそベビーフードの市場が伸びていった時期でした」
■開発期間は”5年”、ベビーフード開発のセンシティブさ「安心して食べさせられるものでなければ」
同社が2015年に発売した『やさいジュレ』シリーズは、大人が飲むゼリー飲料のような特徴的な形をしている。口栓(キャップ)がついて保存できる形状に新規性があり、これまでビンやレトルトしかなかったベビーフードを一歩前進させた商品でもある。同社内では「この技術と文化を途絶えさせたくない」悔しさがあったという。
「当社では創業初期から『育児用ミルク』の製造を続けています。すべての赤ちゃんの健やかな成長をはぐくむことは、当社がずっと大切にしてきた根幹の部分でもあったんです。だからこそ、ベビーフード事業をなくすという選択肢は絶対に取りたくありませんでした。そのため既存商品が終売するとともに、水面下では今の育児ニーズに合う新商品の開発を続けていました」
新商品開発を続けてきた同社は、約5年の開発期間を経て、新商品「森永 はじめてのベビーフード」と「森永 オーガニックのベビーフード」で、今年3月に再参入を果たした。この“5年”という開発期間の長さが、ベビーフード開発のセンシティブさを物語っている。
「例えば、賞味期限を15ヵ月に設定するためには、品質の経年劣化がないかを試験するために、2年ほど置いて変化を確かめなければなりません。そのようなこともあり、コンセプト作りから開発、完成に至るまでに5年を費やしました。『やさいジュレ』は1歳からを対象としていますが、新商品は5ヵ月から食べられる離乳食です。離乳初期の、ミルク以外のものを初めて口するお子さまが喫食されるものですので、スプーンに切れよく収まる粘度を調整、赤ちゃんが実際に食べたときの表情を観察し、きちんと飲み込めているのかといったところまで検証しています」
新商品は、利便性と安全性を両立するため、原料の選定や製造工程にもこだわり、砂糖や塩では味を調えず、野菜汁と果汁のみで味を設計している。
「世に出すまでに安全性や品質を検証し担保する。これはすべての商品に対して平等に行っていることです。ただし、ベビーフードは赤ちゃんがミルク以外に初めて口にするもの”であるため、保護者の方は非常にセンシティブに選定されているということを、強く意識しています。忙しい日々のなかで、安心して食べさせられるものでなければないと考えています」
■パウチ型のオーガニックスムージーが需要増「“時短”と“信頼感”の両方が求められる時代に」
SNSを見ていると「育児の「安全・安心」について非常にセンシティブに捉えている方が多いように感じます」と大熊さん。
「安全・安心に対するこだわりは今も昔も変わらない価値観ではありますが、育児に関する情報が昔よりも多く飛び交うようになったため、品質に対する慎重さ・敏感さは高まっているように感じます。例えば、妊娠中に食べないほうが良い食べ物について、現在妊娠中の方々からは『細心の注意を払っている』という話をよく聞きますが、私の母は『そんなことは気にしたことがない』と話していました。その一方で、現実的には男女ともに育児も仕事も忙しい日々を送る”共働き世帯”が増え、“時短”と“信頼感”の両方が求められる時代になっています」
今後ベビーフードに求められる役割について、同社は「無理をせずに安心できる選択肢を残していくことが重要」という。
「赤ちゃんに食べさせるものには細心の注意を払いたいという価値観があるとともに、今後は『手間をかけずに、良い品質のもの食べさせられるか』ということがより重要になると考えています。実際に海外ではパウチ型の育児食が一般化しており、輸入販売されたオーガニックのスムージーが今、国内でも人気を集め、規模が拡大しています。食育として素材そのものの味や食感を体験できる面や、利便性の高さが評価されているポイントになっていると考えます」
赤ちゃんから高齢者までを支える「生涯食育企業」としての役割から、「ベビーフード事業で培った商品開発の知見をあらゆる世代につなげていきたい」と今後の展望を語る。
「少子化が進んでいるため、子ども向け商品の市場は厳しいと捉えられがちではあります。一方、弊社としては、育児用ミルクやベビーフードの事業こそ、総合乳業メーカーとしての役割・使命だと考えており、安定的に・持続的に商品提供ができる体制を整えてまいります。口栓パウチ型の商品というと、既存の1歳から食べられる『やさいジュレ』の認知度が高いので、0歳から食べられるベビーフードがあると知ってもらえるように、これから頑張らなければいけない部分だと思っています。口栓パウチ型のベビーフードが離乳食としてとても便利だと知っていただくことで、より多くの方の助けになれると考えています」
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■「頼っていた味がなくなってしまう」終売が発表されSNSにあふれた悲しみの声
2022年、森永乳業はレトルトパウチのベビーフード終売を発表した。その理由は、国産原料の“安定調達”の困難。天候不順や収穫制限が続き、品質維持が不可能となったことが背景にある。他社が海外原料を使う中、同社は「国産であること」が特徴だったため、海外原料にして続ける選択はせず、製造終了へと踏み切った。
「国産原材料の調達がままならない状況にあり、残念ながら終売という形をとるしかないと発表いたしました。当時会社には『頼っていた味がなくなってしまう』と、商品を惜しむ声が多数届いたと聞いています」(森永乳業株式会社・大熊慶さん、以下同)
直近でも、キユーピーのベビーフード生産終了、GUのベビー服撤退のニュースがあり、乳幼児にとってのサービスが終了していくことに憂いを感じている人も多いだろう。
「ベンチャー企業などによる新しい商品・サービスも増えており明るいニュースもありますが、大手企業のサービス終了のお知らせについては、SNSで悲しみの声があふれる様子を目にします。
特に食においては、近年夏場の天候不順が続いています。それに伴い野菜の生育状況の悪化、供給量の制限など、外部要因に左右されてしまう。終売当時の販売状況からすると、出生率が低くなっていることは原因ではなく、共働き世帯が増えているからこそベビーフードの市場が伸びていった時期でした」
■開発期間は”5年”、ベビーフード開発のセンシティブさ「安心して食べさせられるものでなければ」
同社が2015年に発売した『やさいジュレ』シリーズは、大人が飲むゼリー飲料のような特徴的な形をしている。口栓(キャップ)がついて保存できる形状に新規性があり、これまでビンやレトルトしかなかったベビーフードを一歩前進させた商品でもある。同社内では「この技術と文化を途絶えさせたくない」悔しさがあったという。
「当社では創業初期から『育児用ミルク』の製造を続けています。すべての赤ちゃんの健やかな成長をはぐくむことは、当社がずっと大切にしてきた根幹の部分でもあったんです。だからこそ、ベビーフード事業をなくすという選択肢は絶対に取りたくありませんでした。そのため既存商品が終売するとともに、水面下では今の育児ニーズに合う新商品の開発を続けていました」
新商品開発を続けてきた同社は、約5年の開発期間を経て、新商品「森永 はじめてのベビーフード」と「森永 オーガニックのベビーフード」で、今年3月に再参入を果たした。この“5年”という開発期間の長さが、ベビーフード開発のセンシティブさを物語っている。
「例えば、賞味期限を15ヵ月に設定するためには、品質の経年劣化がないかを試験するために、2年ほど置いて変化を確かめなければなりません。そのようなこともあり、コンセプト作りから開発、完成に至るまでに5年を費やしました。『やさいジュレ』は1歳からを対象としていますが、新商品は5ヵ月から食べられる離乳食です。離乳初期の、ミルク以外のものを初めて口するお子さまが喫食されるものですので、スプーンに切れよく収まる粘度を調整、赤ちゃんが実際に食べたときの表情を観察し、きちんと飲み込めているのかといったところまで検証しています」
新商品は、利便性と安全性を両立するため、原料の選定や製造工程にもこだわり、砂糖や塩では味を調えず、野菜汁と果汁のみで味を設計している。
「世に出すまでに安全性や品質を検証し担保する。これはすべての商品に対して平等に行っていることです。ただし、ベビーフードは赤ちゃんがミルク以外に初めて口にするもの”であるため、保護者の方は非常にセンシティブに選定されているということを、強く意識しています。忙しい日々のなかで、安心して食べさせられるものでなければないと考えています」
■パウチ型のオーガニックスムージーが需要増「“時短”と“信頼感”の両方が求められる時代に」
SNSを見ていると「育児の「安全・安心」について非常にセンシティブに捉えている方が多いように感じます」と大熊さん。
「安全・安心に対するこだわりは今も昔も変わらない価値観ではありますが、育児に関する情報が昔よりも多く飛び交うようになったため、品質に対する慎重さ・敏感さは高まっているように感じます。例えば、妊娠中に食べないほうが良い食べ物について、現在妊娠中の方々からは『細心の注意を払っている』という話をよく聞きますが、私の母は『そんなことは気にしたことがない』と話していました。その一方で、現実的には男女ともに育児も仕事も忙しい日々を送る”共働き世帯”が増え、“時短”と“信頼感”の両方が求められる時代になっています」
今後ベビーフードに求められる役割について、同社は「無理をせずに安心できる選択肢を残していくことが重要」という。
「赤ちゃんに食べさせるものには細心の注意を払いたいという価値観があるとともに、今後は『手間をかけずに、良い品質のもの食べさせられるか』ということがより重要になると考えています。実際に海外ではパウチ型の育児食が一般化しており、輸入販売されたオーガニックのスムージーが今、国内でも人気を集め、規模が拡大しています。食育として素材そのものの味や食感を体験できる面や、利便性の高さが評価されているポイントになっていると考えます」
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