“石破おろし”が焦点となるなか開かれた自民党の会合。予定を大幅に超え、4時間にわたって行われました。会の終了後、石破総理は「果たすべき責任を果たしたい」と改めて続投の意思を示しました。どんなやり取りがあったのでしょうか。
石破総理 参院選大敗を陳謝 ”続投”には理解求める
緊迫した空気に包まれた自民党本部。
参院選の大敗を受けて開かれた両院議員懇談会。その冒頭で石破総理は、謝罪の言葉を口にしました。
石破総理
「先般の選挙、大変厳しい結果となりました。多くの同志の皆様方、議席を失うことになりました。深く心からお詫びを申し上げます」
党内で公然と強まる“退陣論”。石破総理は、アメリカとの関税交渉の合意に触れ、自らの続投への理解を求めました。
石破総理
「この(関税交渉)合意の着実な実行ということに、私どもとして全力を尽くし、万全を期したいと考えているところでございます。国家・国民に対して、決して政治空白を生むことがないように責任を果たしてまいりたい」
懇談会は、党に所属するすべての議員が出席できる形で実施。会場には、選挙で議席を失った議員の姿もありました。
「下野も選択肢」広まる退陣論の一方で“裏金問題にけじめ”の声も
参院選で落選した、佐藤正久前参議院議員。
参院選で落選 佐藤正久 前参院議員
「今、続投と言っても議員との信頼関係が保てない状況では改革は無理なので、現実を踏まえて、しかるべきタイミングで出来るだけ早期に辞めると言うべきだと思います」
懇談会に先立ち、党のトップが責任を取らないことに疑問を呈しました。
佐藤正久 前参院議員
「自民党の改革のためには、執行部の刷新が必要だと。しっかりけじめをつけて、新しい体制で改革に臨んでいただきたい。その過程で、必要があれば下野ということも選択肢に入れて、議論してもらいたい」
一方、23年ぶりに自民党に復党した、鈴木宗男氏。
鈴木宗男 参議院議員
「自民党の立て直し・再生には、裏金問題を引き起こした人たちの厳正な処分を行うことが、自民党の立ち直りの第一歩だと主張します」
退陣ではなく“裏金問題のけじめ”が必要だと強調。
鈴木宗男 参議院議員
「党全体の責任ですから、それを一人だけターゲットにして責任を取れというのは、私は短絡的だと。もっと冷静に落ち着いてやった方が良いと思います」
総理”退陣要求”も続投に意欲 懇談会”4時間超”の長丁場
当初は2時間程度の予定だった懇談会。しかし、予定を大幅に延長し、午後8時ごろまで続きました。
出席者によると、会場では退陣を求める声が相次いだといいます。
青山繁晴 参議院議員
「(懇談会の場で)38人の多数派の人が、総理の即時の辞任を求めたのは、民意に逆らってこのまま政権を継続されると、何のけじめもつけられない自由民主党にさらに陥ってしまうから」
――2時間の予定が4時間半になったときの雰囲気は?
青山繁晴 参議院議員
「悪くないですよ。明日の朝までやったっておかしくない。これに耐えられないような執行部や総理総裁では、そもそもつとまりませんから。これは当然のことだ」
鈴木貴子 衆議院議員
「組織の長として、総裁初め執行部の皆様方にはけじめをつけていただきたい」
西田昌司 参議院議員
「フルスペックの総裁選で党員投票をやっていくというのが、政策の変化のためには必要だ。自民党の総裁として、日本人の美学をしっかり見せていただきたい」
中曽根康隆 青年局長
「いつけじめをつけるか早く示していただきたい。けじめをつける時期を示していただければ、こういった進退の議論は意味がなくなるわけで、次の『党を改革していくか』という話に挙党体制で挑んでいける」
一方で、続投を支持する意見も。
船田元 衆議院議員
「私は続投を支持するという発言しました。自民党のこれまでのいくつかの負の遺産というのがあり、それにさいなまれながら、ここまで自民党しっかりともってきてくれた」
懇談会のなかで、森山幹事長は参院選を総括する報告書を8月中を目途にとりまとめる考えを示したうえで、自身の責任についても言及しました。
森山裕 幹事長
「報告書がまとまった段階において、幹事長としての自らの責任については明らかにしてまいりたいと思います」
懇談会を終えた28日夜、取材に応じた石破総理。
石破総理
「私心なく、いろんなご意見をいただいたということをよく踏まえて適切に判断をしてまいりたい」
――懇談会を経て続投の意思に変わりはない?
石破総理
「ございません。果たすべき責任を果たしていきたいということでございます」
「党再生の道筋をつくることができるのは石破総裁だけ」
上村彩子キャスター:
4時間半にも及んだ今回の懇談会ですが、「辞任するべき」という意見が多かったようですね。
佐藤正久 前参院議員:
圧倒的に多かったです。総理が続投宣言をした後、「続投を支持」と明確に言った議員は10人にも満たない。どちらかというと、鳥取県出身の人や石破総理の側近の方だけで、多くの方々は「党再生のためには、トップはけじめをつけるべきだ」という意見が大勢でした。
藤森祥平キャスター:
たまりにたまった不満のガスが噴き出た感じもしますが、佐藤さんはどのような発言をされましたか。
佐藤正久 前参院議員:
私は真剣に選挙をやった当事者として、選挙でどういう声をいただいたかという実感。そして、党再生に向けては「トップと議員との信頼関係がここまでこじれている以上は、けじめをつけて党再生の道筋をつくることができるのは石破総裁だけだ」と発言しました。こういう状況が長く続くっていうのは、決して自民党にとっても日本にとってもよくないと思います。
藤森祥平キャスター:
佐藤さんご自身は、石破総裁の元自民党幹事長代理という立場でしたが、それでも大敗の責任は石破総理ということなんですね。
佐藤正久 前参院議員:
自民党と候補者本人に一番責任があります。しかし、今までの選挙と比べこれだけ評判が悪い自民党に加え、総裁についての批判というのも少なからずあったと実感しています。
特に中盤から後半にかけては、石破さんに対する批判が自民党支持者、特に女性の中で増えてきた。石破総理の顔を見ると、テレビのチャンネルを変えるという女性が、途中から各所で増えてきた。そういった声も実際に聞いているので、党再生を考えたときに、問題の一つである総裁が長くいればいるほど、改革には繋がりませんし、支持も低くなるということから、党全体を考えてもトップの総裁は個人の責務を踏まえて決断してほしいと思います。
藤森祥平キャスター:
懇談会が終わり、石破総理は改めて続投表明しました。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
石破総理からすると、この懇談会で最初の関門は乗り越えたという意識でしょう。というのも、“石破おろし”は思ったほど盛り上がらなかったというのが現実です。その理由は2つあると思います。
一つは、メディア各社の世論調査によると「自民党敗北の原因は石破総理だけではなく、自民党全体」だと考える人が多かった。もう一つは、裏金に関与した議員も公然と石破批判をしていることに対し、しらけた部分が自民党内にも広がり“石破おろし”が一気呵成に盛り上がる状況ではなかったと思います。
藤森祥平キャスター:
どうも世論が「石破総理をやめさせるべきではない」という方向に行ってる可能性もありそうですが。
佐藤正久 前参院議員:
そこまではまだいってないと思います。しかし、「石破総理を辞めさせるべきではない」という人がどういった人なのかを調べないといけないと思います。
「石破を辞めさせるべきではない」と述べるデモの参加者の中にも、自民党支持者ではない方も相当いると思います。我々は、有権者とくに自民党支持者や党員に向き合う必要があるので、党員の意見というのを踏まえると、責任を取らずに前に進むというのは、かなり難しい状況だと思います。
星浩さん:
佐藤さんは自衛隊のご出身で、どちらかというと自民党のコア支持者だったと思いますが、そこが今回、参政党などに奪われた理由はどのように分析されてますか。
佐藤正久 前参院議員:
「自民党が保守ではなくなった」という思いが相当強かったと思います。今回は保守層が参政党に、若者層が国民民主に行ったという雰囲気があった。 特に保守層の中では「自民党政権はリベラルだ」と。“石破おろし”を駄目だと言ってる人たちも、どちらかというと自民党支持者ではないリベラル系の人が多い。
加えて、石破政権は中国に媚びており、日本人よりも外国に優しい政権というイメージを持ってる方が相当多かった。私に対しても、「自民党でなかったら佐藤さんを応援したけど、今回だけは自民党は駄目だ」という声も直接言われました。
党内で“石破おろし”の一方で…国民は今の政治に何を求めている?
上村彩子キャスター:
自民党内では“石破おろし”が続いていますが、街の人はどのように思っているんでしょうか?今の政治に何を求めているのか聞いてきました。
60代男性
「今回の選挙の一番の中心は、生活・経済状況だったと思うんですね。給料が上がるような手立てを、政策的に誘導してほしいと思いますね」
18歳女性
「ご飯とか『食』は誰に対しても必要なものなので、税金は下げてもいいのかなと思います」
70代男性
「国民民主党のように所得を上げる。参政党のように、外国人問題にある程度手をつけないと。このままではもう混乱するだけ、その意思表示があったので」
50代女性
「『石破さんの全責任だ』みたいな体制で、辞めさせる動きがみえていて。『そうではなくて、元々の問題じゃない?』みたいな」
上村彩子キャスター:
「“石破おろし”よりも、自分たちの生活をどうにかしてほしい」という声も聞かれました。
国民は裏金問題や旧統一教会のことも忘れていません。その上で、選挙の敗因の一つに、物価高対策などの政策面のこともあると思いますが、いかがでしょうか?
佐藤正久 前参院議員:
全くご指摘の通りで、今回は「自分の給料アップが物価高と比べると追いついていない」という不満が、相当程度あったというのは間違いない。その手段として、給付か減税か、あるいは社会保険料を下げるのか。この選択について、自民党が国民の感覚とずれていたというのが、敗因の一番大きな原因だと思います。
ただその上で、自民党のこれからのためにも党改革というのは絶対に必要だと思います。何かあったら守ってくれるだろうという信頼関係をもって、国民の代表として議員が総裁に従います。
今回の参院選では、自分で掲げた与党過半数という必達目標を達成できなかった。民主主義の根幹は選挙ですから、その選挙・民意によって「石破政権NO」といわれたにもかかわらず、そのトップである総裁が責任をとれないとなると、組織のガバナンスとしてもおかしいだろうと思います。
藤森祥平キャスター:
トップを変えたら本当に変わるんですか。
佐藤正久 前参院議員:
もう変えないと自民党に先はないと思います。
藤森祥平キャスター:
「どう変えるか」という議論がないままに言っているので、しっくりこず、有権者と大きなズレがあるのではないでしょうか。
佐藤正久 前参院議員:
総括というのがかなり大事で、今回「総括をして辞めます」と言えば、かなりみんなの方向性がグッと合うと思います。
自分の責任を取ると同時に、総括を合わせて行うべきですが、28日の石破総理の発言の中で、「どう総括するか」については何も言われなかった。なので皆さんから「今の総理の言葉だけでは選挙区に帰れない」という発言が出たというのが、特徴的だったと思います。
星浩さん:
両院議員総会の開催に向けて、協議は8月の上旬。遅くとも参議院の総括に合わせてその前後にはやる。それを受けて、森山幹事長が辞表を出しそうですが、それを石破さんが受け取るのか、慰留するのか。
それから自民党の人事、内閣改造、臨時国会と次々と山場がありますが、私は石破政権は長くても臨時国会までは持たないと思います。どこかで退陣をして、新しい体制を作らざるを得ないと思いますね。
藤森祥平キャスター
本当にトップが変わって自民党は生まれ変わることができるんですか。
佐藤正久 前参院議員:
やらないと自民党の明日はないですし、自民党がしっかりしなければ、日本の政治や外交にも大きな影響が出ますから、そこは党の責任としてやらざるを得ないと思います。
================
<プロフィール>
佐藤正久 前参議院議員
自民党幹事長代理
今回の参院選で落選
自衛隊出身 愛称は「ヒゲの隊長」
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年
福島県出身
・エアコン「1℃下げる」OR「風量を強にする」どっちが節電?「除湿」はいつ使う?賢いエアコンの使い方【ひるおび】
・スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
・「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】