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イチローが神宮大会Vの九州国際大付でファウルの極意伝授 ドラフト候補・牟禮翔には自身のバット差し出し「折れてもいい、使ってみて」

スポーツ
2025-11-25 17:00

今年、日本人として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチローさん(52、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が24、25日の2日間、九州国際大付属高校(九州国際大付、福岡)の指導に訪れた。8、9日の中越高校(新潟)に続き今年2校目で、通算12校目の訪問。神宮大会を制した“日本一”のチームで、自身の打撃の極意を語った。


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「日本一のチーム、俺いらないでしょ」

九州国際大付は夏の甲子園に10度、センバツは3度出場の強豪校。今年の夏は、福岡県大会の決勝で西日本短大付属に敗れ甲子園出場はならなかったが、新チームとなった秋の大会では4年ぶりに九州王者に。19日に行われた神宮大会では初優勝を飾った。


神宮大会優勝から5日、現在最も勢いのあるチームにイチローさんが指導に訪れた。緊張の面持ちで待つ球児たちと対面したイチローさんの第一声は祝福の言葉だった。


イチロー:皆さん初めましてイチローです。まずは秋の福岡県大会、九州大会優勝、つまり甲子園確定、さらには神宮大会優勝、おめでとうございます。つまり日本一強いってことでしょ。現段階で日本一のチーム、俺いらないでしょ(笑)…そこは首を横に振っておいてください(笑)縦はないけど、横に欲しいね(笑)


そして、12校目の訪問先に決めた理由を次のように語った。


イチロー:1、2年生からの手紙をいただきました。日々、甲子園を目指して頑張っていると。もちろん九国のみんな、レベルが高いだろうし。そもそもね、僕がいなくたって今こうなってるわけで、果たして訪ねていいものか迷ったし、僕のスタンスは今までとちょっと違って、この状態のチームと接するの、初めてです。僕が勉強しに来たというスタンスです。日本一のチーム、秋の日本一のチーム、高校生たちがどんなレベルなのか、知りたいなってすごく思って。僕の動きを直接見て学びたいと、そういう声がたくさんありました。


異例!イチローからの謝罪「すごく自分に残念な気持ち」

しかし今回、球児指導12回目にしてイチローさんに初めてのアクシデントが・・・。


イチロー:僕のミスというか、謝らなきゃいけないことがあります。みんなレベルが高いんで、僕も準備しておかないとみんなについていけないと思って。3日前の練習でアップ中、結構強度の強いランニングなんだけど。ランニングのメニューの際に太ももの肉離れをしてしまって。なので今、走ることはできない。実際にみんなに見せることはできないので、すごく自分に残念な気持ちになっています。だからできる範囲でやります。今日と明日、僕自身ができないことが、もどかしい時間になると思うんだけれども。


「目標を『プロ』はダメだよ。プロに入ることは前提」

軽くボールを投げると「なんとかなりそうだな」と球児たちとの練習に参加。イチローのキャッチボールの相手は、高校通算24本の牟禮翔選手(むれ しょう、2年)だ。


イチロー:やっぱりいい体してるね。そりゃそうだな。今すぐにでもプロに行けるらしいね。


牟禮選手:本当ですか?


イチロー:だから、目標を「プロ」とかはダメだよ。このレベルは、プロに入ることを前提にして、高校時代を過ごさないと。全然、ゴールじゃないから。


ドラフト注目の選手に早くも“イチ流”の考えを伝えた。


イチロー:これくらいの距離(30m)はここ(胸の位置)で安定して投げたいよね。体の使い方を工夫して。


牟禮からシュート回転した送球が来ると・・・。


イチロー:これはダメよ。それは自分で何となくわかる?こっち(右)とこっち(左)の違いは。それは感じてて。上下でブレるのはいいけど、こっち(左右)にブレたくない。これは(上下)は全然かまわない。


キャッチボールが終わると・・・。


イチロー:肩強そうだね。やっぱり気になるのはこっち(シュート回転する)軌道ね。外野の送球はそれだけで違うので。このレベルだったら塁間、30mくらいの距離は必ずここ(胸)、もしくはこっち(左、捕球者の右胸)。今の精度だとまだまだ。(肩が)強いのはわかる。


イチロー:(他の選手に向かって)今みたいな感じ?牟禮選手はキャッチボールでちょっとブレる?


選手たち:はい。


イチロー:そうね。それは必ず体の動きに理由がある。「こうなったときはこういう軌道」っていうのが分かれば修正できる。分からないと何となくやっているだけだから、いい時があったり悪い時があったり(する)。それではね、やっぱりレベルが上がると使えないから。能力が高いのは良くわかる。どうだった僕のは?


牟禮:伸びがエグいです。


イチロー:落ちてこない感触があるかな?そこそこ(力を)入れているけどそう見えない。「肩甲骨が動く」がポイントだね。あれが7割くらいずっとできる能力が欲しいね。


牟禮:はい!


イチロー:全然、全力じゃなくていいよ。普段も7割くらいで(送球が)スーッと行く、それができる能力はあると思うので、それを目指そうか。


牟禮:ありがとうございます。  


 「なんでこれができているんだろう?」

外野の守備練習の指導で伝えたのは、“止まって判断すること”の大切さ。


イチロー:一旦、止まるということをやってみる。止まって(打球)判断するとどれくらい判断が正確になって、早くなるのか、簡単になるのかっていうのを覚えてほしい。ノックでも(止まる)体勢を作ってから判断して、それでやってみようか。感触を得てみて。


ノックが始まると選手たちから視線を外さずに動きをチェックしたイチローさん。


イチロー:止まることを意識して、動かない、動かない。止まって、そのまま。意外と難しいでしょ、勝手に動いちゃうでしょ、体がね。


選手たち:判断が先ですか?


イチロー:そうよ、リアクションが先じゃないからね。判断してから動く、とにかく判断が大事なの。割とリアクションが優先だという流れが、そうなっちゃうと動くことが最初ってなっちゃうんで。まずは判断、そこから一気に落下地点に。そういうイメージで。


ここでイチローさんは、選手たちのある点に気が付いた。


イチロー:捕球の形がみんないいね。なんでこれができているんだろう?みんな、捕球の形がすごくいいんだけど、これさ、九国にあるの?外野手の教えみたいな。


選手たち:何もないです。


イチロー:それぞれ意識していなくて今の形になっているの?そうですか、それは大変失礼しました(笑)これはなかなかできなくて、捕球の仕方。みんな打球に対して、こうやって(半身で)入っていくじゃない。上手くない人って、正面で取る人が多いんだけど、みんなこの形(半身)になっているのって自然にやっているの?何にも意識してない?


選手たち:してないです。


イチロー:マジか。そのままの形でお願いします(笑)なんにも言うことないね。これは子どもたちどころかプロの選手もなかなかできなくて。みんな(正面で)こうやって捕って、簡単なフライも平面になって動けない。みんな打球が動いても対応できる形になっていて、いいね。そうしている理由は自分の中にある?


選手たち:次の動作にすぐに入れる。後ろに打球が伸びた時に対応できる。


イチロー:そうそう、その通り。風とか、打球が動くことがあるのでそれはもう大正解。今のまま続けてください。僕が簡単なフライもこう(半身)捕るのはそういう理由。


イチロー感嘆「いやー凄い打球打つね」

イチローさんのフリーバッティングが始まると、部員たちがゲージに集まった。3スイング目、完璧に捉えた当たりに球児たちからは「おおー」と、どよめきが起こった。肉離れをおしてフルスイングするイチローさんに、自然と拍手が沸き起こった。


イチロー:拍手はいらないから。みんなの方が上手いでしょ。


イチローさんと入れ替わり打席に立ったのは、牟禮選手。その打撃を見てイチローさんは「マジか!」を連発、使っているバットにも注目した。


イチロー:それは竹?


牟禮:竹のバットです。


イチロー:竹であの打球打つんだもんな(笑)僕もちょっと打ちたくなっちゃった。いやー凄い打球打つね。


自身のバットを差し出し「折れてもいい、使ってみて」

もう一度バッティングゲージに入ったイチローさんは、打ち終わると牟禮選手に声をかけた。


イチロー:しなりを使って打つ人がいないからこの素材を勧めることがないんだけど、(自分のバントを見せて)これアッシュ、アッシュは打ったことある?


牟禮:わからないです。


イチロー:これ(しなり)が出るのよ(笑)このフィーリングが、乗っかっている感じが。この感触、プロに行ったときにどっちが合うのか知っておいた方がいいから、牟禮くんの感じだったらアッシュ凄くいいと思う。乗る感じが。


イチローさんは打撃を終えると、牟禮選手に自身のバットを差し出した。


イチロー:これ使ってみて、これアッシュだから。


牟禮:折れてもいいですか?


イチロー:折れてもいい、全然大丈夫、使ってみて。


イチローさんのバットを借りて、打撃練習を行った牟禮選手。1スイング目でしっかりとボールを捉えたが、3スイング目で・・・。


牟禮:あっ、やばい。


イチロー:ハッハッハッ、折れた。折れてない?


牟禮:いや、折れました。


イチロー:折れた、OK、大丈夫、大丈夫。


牟禮:すみません。


イチロー:そういうこともありますから(笑)大丈夫です。


その後はバットを折ることなく打撃練習が無事に終了した。


イチロー:どう?感触?違いはわかる?


牟禮:感触というか、芯に当たった時なんですけど、なんていうんですかね、ポーンと。


イチロー:張り付く感じ?


牟禮:そうです。そうです。


イチロー:あるでしょう。その感じが好きな人はこっち(アッシュ)の方がいい。


「ストライクゾーンには苦手という感触はない」

牟禮:イチローさんの嫌いなコースってどこですか?


イチロー:ストライクゾーンにはないです。


牟禮:おーーー。


イチロー:ボールになるギリギリのところ、それでいうと距離がとれないインサイドの高いとこに速いのが来たら難しいな。それでも捉えに行かないので、ファウルで逃げる。それがあれば怖くないっていうスタンスでいるので、それを図っているんだよね。(相手投手の)真っすぐは、僕が変化球を待ってもファウルに出来るかどうか。「捉えられるかどうか」じゃなくて、それ(ファウルに出来るか)が凄い基準になる。そういう意味で言えば、追い込まれてからのここ(内角高め)は難しい。距離がとれないからね。ストライクゾーンをある程度カバーしないと、僕はヒットの人なので。ホームランバッターは狭めないと難しいじゃん。あっちもこっちも対応は出来ないので、そこは明らかに違うよね、僕のタイプとホームランの人と。ストライクゾーンには苦手という感触はない。


牟禮:変化球だったら自分はスライダー、逃げていくスライダーが苦手で、それをどうすればいいのか…。


イチロー:それを待った時に、どう?


牟禮:待った時にはファウルになったり(バットが)下から行ってファーストフライ、セカンドフライになったり。


イチロー:待っている時にどうなるのか、待ってない時にどうなるのかの違いが自分の中で明確にあるといいよね。どうしてもスライダーがベストピッチで、決め球のピッチャーで、必ずそれが来ることがわかってるならそれを待ちたい。それを待って、真っすぐに対応したい。捉えなくていいから、ファウルでいいから。そっちの方がいいと思う。今の話のイメージでいうと真っすぐを待っていると外でやられてしまう、確実に。だったらそれ(決め球のスライダー)を待って捉える練習、それを捉えだしたら待たなくても体がそれを表現するようになっていくと思う。


牟禮:ファウルでもいいからという感じですか?


イチロー:もちろん、もちろん。どうやってファウルにするかっていうのはあるんだけど、ファウル全然OK。それをしてたらだんだん合ってくるから、何(どんな球種が)来ても大丈夫な状態になると思う。ファウルを打てない人はそれがないもん。きっちり見逃す人は合っていくプロセスがないから打てるところ打てば行くし、そうじゃなければ見逃して終わり、それは僕はバッティングとは言えないと思うね。


牟禮:ミスショットを減らすためにはどうすればいいですか?


イチロー:ミスショットはします(笑)それがバッターですから。ミスショットしないためにこれをやっておけばいいっていうものは難しいよね。それは感覚的な問題だから。ミスショットが多いということは、それだけ自分の方が有利に進んでいるというか、その対決はね。やられた回数が少なければ全然大丈夫。


恒例となったイチローさんの柵越えで終了したフリー打撃。「(バッティングは)あくまでも形を大事に。(スローイングも)疲れてくると、どうしても腕を使うようになる。ゆっくりでもいいから、いい形で(スローイングしてください)。きょうはここまでになります。きょうのことを帰って一旦整理して、明日またやりましょう」と締めた。


1日目の指導を終えたイチローさんは「それは勝つよね。レベルが高い。少なくともこの秋の段階、この時期のチームとしては驚きましたね」と、チームのレベルの高さを賞賛。さらにこの日、再三に渡って絶賛した牟禮選手については「まさしく原石の状態なんですね。磨きが全くかかってないのに、今のこういう状態。伸びるところしかないじゃないすか。ダメになるところが何もない」と話した。「いや、楽しかった。こういう高揚感は久しぶりだもんね」と笑顔を見せた。


◆イチローさんの高校野球指導
今年で6年目を迎えるこの取り組みは2020年の智弁和歌山から始まり、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳(千葉)、高松商(香川)、22年に新宿(東京)、富士(静岡)、23年の旭川東(北海道)、宮古(沖縄)、24年の大冠(大阪)、岐阜(岐阜)、今年は中越(新潟)と九州国際大付属(福岡)で通算12校。


◆九州国際大付
夏の甲子園に10度出場、最高は2015年のベスト8。準々決勝で清宮幸太郎(現日本ハム)擁する早稲田実業に敗れた。センバツは3度出場。2011年にはのちにDeNAに入団する高城俊人を擁し決勝まで進んだが、東海大相模に敗れた。今年の夏は決勝まで進んだが西日本短大付属に敗れ、甲子園出場はならず。新チームで臨んだ秋の大会で4年ぶりに九州王者となり、先日19日に行われた神宮大会で初優勝を飾った。プロ出身の楠城祐介氏が監督を務める。


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