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日本選手権4位の中島佑気ジョセフが世界陸上標準記録を突破できた理由は? メダルを目指す4×400mリレーにも弾み

スポーツ
2025-08-07 11:50

陸上競技の富士北麓ワールドトライアルが8月3日、富士北麓公園富士山の銘水スタジアムで行われた。男子400mは中島佑気ジョセフ(23、富士通)が44秒84の日本歴代3位で優勝。この種目では初の東京2025世界陸上参加標準記録(44秒85)突破者となった。中島は故障明けの日本選手権で4位と敗れたが、日本選手権1~3位全員が標準記録を破らない限り代表入りする。中島は23年のブダペスト世界陸上準決勝で、あと1人で決勝進出を逃したが、あと1人の差を埋める努力が実りつつある。


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44秒台にこだわらなかったことで44秒台を実現

桐生祥秀(29、日本生命)の8年ぶり9秒台と、学生の守祐陽(21、大東大4年)の10秒00。男子100mの快記録に続き、男子400mの中島の44秒84にも驚かされた。1か月前の日本選手権ではハムストリング(大腿部)肉離れの故障明けということもあり、45秒81の4位と振るわなかったのだ。1か月で1秒も縮められた理由は何だったのだろうか。


「故障明けで45秒81は悪くありませんでした。日本選手権後は(小さな)痛みがあっても練習は積めるようになって、スピード練習でレース感覚も戻して来られました。あとはケガをした原因の体のバランスの悪さを是正してきました」


標準記録を出さなければ代表に入れないが、タイムを出す意識が強すぎたことが走りに影響していた。


「44秒台にとらわれず、自分がやりたい動きに注力して走りました」


学生時代から中島を指導する東洋大・梶原道明監督が、補足説明をしてくれた。


「ハムを痛めた原因は殿部の筋肉が使えず、ハムに余分な負担をかけていたことでした。ミニハードルやスキップなどのドリル(動きを矯正するためのメニュー)も行って、殿部を使ってハムに負担をかけない、腰高の走りが安定してきました」


44秒台にとらわれた結果、「前半の200mを速く入らなければいけない、という固定概念も作ってしまいました」(中島)。リラックスした動きで速く走ることを意識してきたつもりが、「焦りや義務感から、前半を力んで走っていました」と中島は振り返る。


「今日の前半はスーッと乗って行く感覚で、脚が勝手に進みました。200m通過タイムもたぶん良かったと思います」


44秒77の日本記録を持つ佐藤拳太郎(30)や、44秒88の日本歴代4位を持つ佐藤風雅(29、ミズノ)は200mのスピードを高めることを、400mにつなげるスタンスで成長してきた。それに対し中島は400mトータルでタイムを上げるタイプだった。200mの自己記録も佐藤拳は20秒63(向かい風1.0m)、佐藤風は20秒67(追い風0.4m)なのに対し、中島は出場レース数が少ないとはいえ21秒31(追い風1.8m)である。


「僕はエンデュランス(持久)系。200mを無理に飛ばすのでなく、400mをまとめるペースで組み立てる意識に変えています」
中島が前自己記録の45秒04を出したのは、2年前のブダペスト世界陸上準決勝。そのレースの200m通過は21秒56だった。飛ばさない意識で走った富士北麓の200m通過が、実際何秒だったのか、早く知りたいところだ。


今後の400mと4×400mリレーの代表選考プロセスは?

冒頭でも触れたが、中島は標準記録を突破しても代表確定にはならない。
男子400mは日本選手権終了時に標準記録突破者がゼロで、世界陸上代表内定者が出なかった。日本選手権後は日本選手権入賞者で、標準記録を新たに突破した選手が代表に選考される。該当選手が複数出た場合は日本選手権の順位が優先される。3位以内の選手が標準記録を突破すれば代表が確定したが、中島は日本選手権で4位だった。


だが標準記録の44秒85は日本歴代4位に相当し、簡単に出せるタイムではない。中島の代表入りの可能性は高い。400m代表は自動的に4×400mリレーにもエントリーされる。メダルを目標とする4×400mリレーはどんなメンバーになるのだろうか。


がリレー候補競技者で日本選手権入賞者。リレー候補競技者基準記録は45秒29で中島、佐藤風、平川慧(19、東洋大2年)、今泉堅貴(23、内田洋行AC)の4人が突破しているが、佐藤風は日本選手権で1位入線したがレーン内側のラインを踏んで失格してしまった。平川は故障の影響もあって日本選手権で入賞できなかった。もしも中島が個人種目の代表入りができなくても、選考基準<2>で日本選手権優勝の今泉と中島は4×400mリレー代表入りする。


「風雅さんが世界ランキングで代表入りできる位置にいましたが、最低でも個人で2人は代表になるようでないと、4×400mリレーで決勝に行けません。4×400mリレーを引っ張る使命感もあって、日本のために北麓で標準記録を切ろうと思っていました」(中島)


4×400mリレーのは「選考競技会および参考競技会(400m/200m/4×400mリレー)の成績を総合的に勘案し、リレーの特性と戦略を考慮して選考する」となっている。佐藤風は間違いなくこの基準で選ばれるだろう。平川は故障からの回復を陸連がどう判断するか。その他では日本選手権2位の田邉奨(19、中大2年)と同3位の吉津拓歩(26、ミキハウス)、アジア選手権2位の佐藤拳らが候補だ。
 
佐藤拳は4×400mリレーでも日本のエースとして実績を残してきた。大学2年生の田邉は成長著しく、パリ五輪代表だった吉津には安定性が感じられる。平川が復調すれば400mで44秒台を出す可能性もある。


昨年のパリ五輪3走だった川端魁人(26、中京大クラブ)は、今季はアキレス腱痛の治療を優先し、200mには出場しているが400mは走っていない。また、200mの20秒38もリレー候補競技者基準記録で、2人が突破しているが4×100mリレーとの兼ね合いもあり、その2人が4×400mリレーを走る可能性はかなり低い。
現時点で代表入りする可能性が高いのは中島、今泉、佐藤風の3人で、ここに佐藤拳が復調して加わればメダルを狙う布陣になる。


悲願の世界大会決勝と4×400mリレーのメダル獲得へ

中島は22年のオレゴン世界陸上、23年のブダペスト世界陸上、そして昨年のパリ五輪と3年連続日本代表入りしてきた。オレゴンは4×400mリレー4走で4位に入賞し、ブダペストは400mで決勝進出にあと1人と迫り、パリ五輪は4×400mリレーでアジア新記録での6位入賞に貢献した。客観的には健闘してきたが、中島自身は悔しさが大きかった。


「オレゴンはメダルを逃しましたし、ブダペストは個人の決勝を逃しました。パリはケガもあって個人もリレーも良くありませんでした。自分のやりたいことと現実が合わず、もがいていた感じです。失敗のくびきから抜け出すことが、一番のモチベーションでした」


大腿のケガで順調とは言えなかったが、ケガをしたことで走りを見直すことができた。世界陸上までの間に日本記録(佐藤拳が23年のブダペスト世界陸上予選でマークした44秒77)更新を狙うプランもある。


「23年に45秒0台、45秒1台を(6レース)安定して走りましたが、殻を破れませんでした。(23~24年の冬期に)アメリカにも長期間行って大きく進化してやろうと思いましたが、昨年もケガをして23年を超えられませんでした。今年も世界陸上を頑張るぞ、というところでまたケガをしてしまった。今回やっと44秒台を出せた感じもありますが、自分としては記録がやっとポテンシャルに付いてきてくれたと思っています。世界陸上は個人(400m)の決勝進出と、4×400mリレーのメダル獲得が目標です。ここを出発点に、あと1か月半でしっかり準備していきます」


代表に入り始めて4年目、いよいよ中島が潜在能力を発揮する時が来た。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


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