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混戦の男子100mで10秒00!東京世界陸上の代表有力候補に躍り出た守祐陽の武器は「ピッチを最後まで維持できること」

スポーツ
2025-08-06 12:12

陸上競技の富士北麓ワールドトライアルが8月3日、富士北麓公園富士山の銘水スタジアムで行われた。男子100m予選で守祐陽(21、大東大4年)が10秒00(追い風1.3m)の日本歴代5位タイ、学生歴代2位をマーク(決勝は棄権)。東京2025世界陸上参加標準記録に到達した。守は現時点では、日本選手権優勝者で標準記録を破った桐生祥秀(29、日本生命)に次いで、代表争いで2番目の位置となった。守のこれまでの自己記録は10秒13。昨年の織田記念と関東インカレに優勝し、今年5月には追い風参考記録ながら9秒97(追い風3.9m)をマークした。注目される存在ではあったが、代表争いで優位に立つことは予想されていなかった。ニューフェイスの強さはどこにあるのだろうか。


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フィニッシュ前の勝負に強さ

終盤の強さが守の特徴だ。学生の大会では前半や中盤からリードできるが、昨年の織田記念は4人が0.03秒差内の混戦を、フィニッシュ前で抜け出した。今大会予選3組でも樋口陸人(25、スズキ)に先行されていたが、後半で一気に逆転した。レース後の取材で走りの特徴を質問されると、「ピッチを最後まで維持できることです」と守は即答した。


守はピッチ型のスプリンターで、最大ピッチは秒間5歩を超える。ストライド型の選手は秒間4.3〜4.5歩だ。フィニッシュ直前には最大ピッチから0.2〜0.4歩減少し、それを補おうとストライドが伸びるのが普通である。客観的に見ても緩慢な動きになり、ストライドが大きくなってもスピードは落ちる。


守も多少の減速はするが、他の選手の減速より小さいため前述のような強さを発揮する。大東大の佐藤真太郎短距離監督は「こんなことがあるのか、というくらいに(正確に計測したデータで)全然落ちていなかったレースもありました」と明かした。富士北麓ワールドトライアルのデータは不詳だが、最後まで秒間5歩以上を維持していた可能性がある。守はスプリンターの常識を覆す走りで、終盤の強さを発揮している。


ひざが曲がった状態でキックする走り

もうひとつの特徴として、後方脚のヒザを伸ばさずに地面をキックしていることがある。100m選手の大半がヒザを伸ばし切っていないが、守はヒザの角度が他の選手より小さい段階でキックしている。その方がキック脚が後方に残らず、素速く前に引き出すことができるからだ。横から撮影した動画で他の選手と比べれば、明確に違いがわかる。その動きをしっかり行うために「ヒザの力を抜く」(守)ことを意識しているという。


佐藤監督は「ヒザの力を抜くことで股関節主導の動きになり、地面からの反発をもらいやすい」と説明する。「ヒザが少し曲がった状態を感覚として維持することで、力に頼らない重心移動がしやすくなります」


7月上旬の日本選手権では、「準決勝ではヒザの力が抜けて、良い動きができ(3組)1位通過ができました」と守。「しかしまだ完全に、その動きが身に付いていません。決勝は接戦になって力が入り7位でした」


記録を狙い過ぎて力んでも同じように失敗してしまうが、富士北麓では「ひざのたわみが上手くハマって、脚を前に返していくイメージ」で走ることができた。


佐藤監督は守のことを「ヒザ関節のコントロールが絶妙」だと評価している。そのコントロールが富士北麓のように良い形でできれば、10秒00前後の記録を再現できるようになる。


同学年に栁田、井上ら強力メンバー

守の同学年には栁田大輝(22、東洋大4年)や井上直紀(21、早大4年)がいる。「強力な同期ばかりで、インカレで切磋琢磨してきたことがよかったと思います。変に意識はしませんが、同期に負けたくない気持ちはあります」


栁田は23年のブダペスト世界陸上100mで準決勝まで進んだ選手で、今年のアジア選手権は2連勝した。ゴールデングランプリでも2連勝するなど、強力学年の中でも一歩リードしている。大きなストライドが特徴だが、序盤から中盤でリードを奪う前半型で、守とは対照的なタイプである。


井上は全日本中学選手権の優勝者で、今年の織田記念に優勝した。5月の世界リレー選手権では日本の4走として快走している。ストライド型だが終盤で伸びてくるところは守と同じである。


最初に標準記録に到達したのが守になったが、同学年3人の対決は、今後の日本短距離界を盛り上げそうだ。


先輩選手と後輩選手からも刺激を得ている。同じ富士北麓ワールドトライアルの1つ前の組で、桐生が9秒99(追い風1.5m)で走った。「会場に記録が出る雰囲気がありました。自分も集中すれば記録が出る」。桐生とは日本選手権の準決勝を一緒に走り、0.01秒先着していた。


また高校生の清水空跳(16、星稜高2年)が、7月後半のインターハイで10秒00(追い風1.7m)を出したレースは、「ライブ配信で見ていました。負けていられない。自分もどこかで出してやろう」と気合いが入った。


桐生は10年以上もこの種目を牽引してきた選手だが、日本の男子100mに新たな力が台頭していることの象徴が、今回の守の10秒00だったのかもしれない。


男子100m代表は今後、どんなプロセスで決まるのか

男子100mは7月の日本選手権で代表内定者が現れなかった。標準記録を破っていたサニブラウン・アブデル・ハキーム(26、東レ)が、ケガの影響で予選敗退したからだ。Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では、標準記録突破者が世界陸上出場資格を得ているためリストの上位を占める。日本人で2番目に位置していたのが、世界ランキングで大量ポイントを獲得していた栁田だが、予選失格(フライング)で姿を消した。


日本選手権で内定者が出なかったため、日本選手権入賞者が標準記録を破った場合が、選考基準の最上位となった。複数選手がそれに該当した場合は、日本選手権の上位選手から代表になる。つまり日本選手権優勝者の桐生は、富士北麓での標準記録突破で代表入りが確定したが、守は日本選手権7位なので確定していない。高校生の清水が標準記録に到達したが、日本選手権では準決勝止まりで入賞できなかった。


日本選手権2位の大上直起(25、青森県庁)、3位の関口裕太(20、早大3年)、4位の井上、5位同着の多田修平(29、住友電工)と小池祐貴(30、住友電工)が標準記録を破れば、代表選考において守よりも優先される。


今後標準記録を突破する選手が現れなければ、守と標準記録を破っているサニブラウンが代表入りする。清水と栁田だけでなく、その他の選手にも、サニブラウンが昨年出した9秒96を上回れば、代表入りするチャンスは残されている。


守は前述のように、現時点では代表争いの2番目に位置している。「世界陸上は夢でした。世界の舞台で走れるのなら、1本でも多く走りたいです。残り1か月、しっかり準備します」


100mで代表入りすれば、4×100mリレーメンバーとしてもエントリーされる。100m終盤の強さがある守は、次の走者へのバトンパスに速いスピードで駆け込んでいくことができる。メダルを狙う4×100mリレーでも戦力になる選手だろう。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


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