エンタメ
2026-10-02 13:56
俳優の綾瀬はるかが主演する映画『ファーストボイス』が、きょう2日より公開された。あわせて、映画の着想元となった福岡セクシュアル・ハラスメント裁判で原告代理人を務めた元弁護士・辻本育子氏(※辻=一点しんにょう)、弁護士・原田直子氏と綾瀬による特別鼎談が公開された。
【動画】『ファーストボイス』公開直前映像
映画は、日本が好景気に沸いたバブル経済絶頂期の1989年に起こされた同裁判の実話に着想を得たフィクション。この裁判は、職場のセクシュアル・ハラスメントを社会問題として広く認識させる契機の一つとなった。綾瀬が演じる主人公の弁護士・朝日道子は、辻本氏と原田氏の姿を一人に集約し、綾瀬への当て書きで作られたキャラクターだ。
初対面となった鼎談では、辻本氏が「こんなに綺麗な方に演じていただいて少し違和感がありましたが、本当に素敵でうれしかったです」と笑顔を見せた。劇中のデスクに資料が積み上がっている様子や乱れた髪型については、原田氏が「あのあたりは私ですね」と、自身との共通点を挙げた。
綾瀬が、当時は子育てをしながら仕事に取り組んでいたことについて尋ねると、辻本氏は夕方の2時間だけ帰宅して料理をし、再び事務所に戻っていた日々を振り返った。「パワフルですね!」と驚く綾瀬に、原田氏は「でも、当時の働いている女性はみんなそうでした。私たちだけが特別じゃないなと思っていました」と応じた。
1980年代は、女性の就職差別や「結婚までの腰掛け」といった価値観が根強く残っていた時代。前例のない裁判に挑んだ背景には、辻本氏自身が経験した就職差別があった。
「私は兄が3人いて4番目の女の子なんですね。でも父母から一度も『女の子だから』と言われたことがなかった。だから当然、兄たちと同じように大学を卒業したら就職して働くと思ってたんですけれど、大学4年の時に就職が全然できなかったんです。そもそも募集がないんです。それで公務員試験を受けるしかなく、面接の時に『公務員は男女平等な職場だと思ってるかもしれないけれど、やっぱり女性はお手伝いですけれどいいですか?』と面接官が言うんですよね。その時に違和感を覚えて、ちゃんと働ける職業ということで弁護士になろうと思いました」
大学4年で進路を変え、司法試験の勉強を始めた辻本氏。性差別に関する事件をライフワークにしようと決意したが、弁護士になって約10年が経っても、そうした相談はなかなか寄せられなかった。「問題があっても来られないのは、どこに行ったらいいかわからないんじゃないか」と考え、原田氏と「女性協同法律事務所」を設立。女性が問題に直面した際に、相談先として思い浮かべられる場所を作った。
原田氏も、当時の辻本氏の言葉を紹介。「女性は能力があって成果を上げるけれど、その成果を自分のこととして主張しないで、上司や他の人たちが自分の成果として主張することに対して異議を述べない。そういう働き方こそ女性に求められているもので、性差別だ」と説明していたことを振り返った。
当時、多くの女性が理不尽を我慢していた状況について、辻本氏は「憲法上の権利侵害であれば、99人が我慢していても1人が『我慢できない』と言えば戦えるんです」と語った。
綾瀬は、裁判中の逆風やバッシングをどう乗り越えたのかも質問。辻本氏は、自分たちへの批判よりも、原告が傷つき、追い詰められてしまうことを懸念していたと明かした。
「私たちに対するバッシングというのはそんなに気にならないんです。一番大事なのは原告がそういったバッシングを受けて潰れてしまわないかということなので。それは予想もされたし実際あったわけですが、それに対応するということで、『応援団(支援する会)を作ってください』と最初に言ったんです。支援する会ができたので、原告を支えることについては支援する会にお願いしてしまったという反省もあるんですけれど……。わたし自身はそんなに心は折れなかった(笑)。支援する会には本当に感謝しかないです」
原田氏も「弁護士会の中でも『変わったやつがいる』みたいに見られていたので、あまりバッシングと感じはなかったんじゃないですかね」と当時を振り返った。
話題は、10月1日に改正法が施行された男女雇用機会均等法にも広がった。辻本氏は「要するに『機会を均等に与えましょう』であって、チャンスは与えるけれど、その結果が平等になるかどうかにまでは関与しません、という法律なんです」と指摘。昨年の統計でも女性の賃金は男性の4分の3にとどまるとし、「そういう格差が35年以上経っても残っているというのは、やっぱり『男女雇用機会均等法』の限界なんじゃないかと私は思う」と述べた。
さらに、ハラスメントが生まれる構造にも言及。辻本氏は「ハラスメントというのは要するに『力の乱用』なんです」と指摘し、原田氏も「相手が反撃できないと思うからやるんですよ、ハラスメントは」と、立場や力の差が背景にあると語った。
綾瀬から理不尽に直面している人へのメッセージを求められると、辻本氏は「本当に自分がやりがいを持って仕事をしたり生きようと思ったら、いろんな壁にぶつかる。理不尽な差別というものは本当にたくさんある。決して『自分が悪いんじゃないか』とか思わずに、あきらめずに抗ってほしい」と呼びかけた。
原田氏は「もっと『わがまま』になっていいんじゃないかなと。やりたくないことはしないとか、できないことはできないと言っていいと思うんです」と提案。家庭でも責任を分担し、自分のやりたいことを諦めない生き方を勧めると、綾瀬も「『自分がやらなきゃ』って思っちゃいますよね。メッセージありがとうございます!」とうなずいた。
鼎談の終盤では、仕事と私生活の切り替えについて、綾瀬が俳優としての一面を明かす場面も。「別の人を生きるというのは楽しいことでもあると思うんですけれど、エネルギー量をすごく使うので、くったりしちゃうことも多くて。なるべく集中する時以外はダラッとしています(笑)」と語ると、2人も「私達も事件が終わったらメモして忘れる。そうしないと持ちこたえられない」と応じ、仕事への向き合い方に共通点を見いだしていた。
鼎談を終えた綾瀬は、「おふたりと直接お話しさせていただけて本当に光栄でした。時代を切り開いてくださった強さと優しさは、現代を生きる私たちへの大きなエールだと感じました。作品の持つ意味を改めて実感できたので、たくさんの方に観ていただけるよう伝えていきたいです」と思いを語っていた。
【画像】この記事で紹介している『ファーストボイス 』メイキング写真
【動画】“弁護士芸人”こたけ正義感に素朴な疑問をぶつけるスペシャル鼎談
【動画】映画『ファーストボイス』ちゃんみなの主題歌入りスペシャルムービー
【動画】映画『ファーストボイス』特別映像
【画像】綾瀬はるか、末っ子を抱き、両手で子どもたちと手をつなぐ3児の母の顔も
【動画】『ファーストボイス』公開直前映像
映画は、日本が好景気に沸いたバブル経済絶頂期の1989年に起こされた同裁判の実話に着想を得たフィクション。この裁判は、職場のセクシュアル・ハラスメントを社会問題として広く認識させる契機の一つとなった。綾瀬が演じる主人公の弁護士・朝日道子は、辻本氏と原田氏の姿を一人に集約し、綾瀬への当て書きで作られたキャラクターだ。
初対面となった鼎談では、辻本氏が「こんなに綺麗な方に演じていただいて少し違和感がありましたが、本当に素敵でうれしかったです」と笑顔を見せた。劇中のデスクに資料が積み上がっている様子や乱れた髪型については、原田氏が「あのあたりは私ですね」と、自身との共通点を挙げた。
綾瀬が、当時は子育てをしながら仕事に取り組んでいたことについて尋ねると、辻本氏は夕方の2時間だけ帰宅して料理をし、再び事務所に戻っていた日々を振り返った。「パワフルですね!」と驚く綾瀬に、原田氏は「でも、当時の働いている女性はみんなそうでした。私たちだけが特別じゃないなと思っていました」と応じた。
1980年代は、女性の就職差別や「結婚までの腰掛け」といった価値観が根強く残っていた時代。前例のない裁判に挑んだ背景には、辻本氏自身が経験した就職差別があった。
「私は兄が3人いて4番目の女の子なんですね。でも父母から一度も『女の子だから』と言われたことがなかった。だから当然、兄たちと同じように大学を卒業したら就職して働くと思ってたんですけれど、大学4年の時に就職が全然できなかったんです。そもそも募集がないんです。それで公務員試験を受けるしかなく、面接の時に『公務員は男女平等な職場だと思ってるかもしれないけれど、やっぱり女性はお手伝いですけれどいいですか?』と面接官が言うんですよね。その時に違和感を覚えて、ちゃんと働ける職業ということで弁護士になろうと思いました」
大学4年で進路を変え、司法試験の勉強を始めた辻本氏。性差別に関する事件をライフワークにしようと決意したが、弁護士になって約10年が経っても、そうした相談はなかなか寄せられなかった。「問題があっても来られないのは、どこに行ったらいいかわからないんじゃないか」と考え、原田氏と「女性協同法律事務所」を設立。女性が問題に直面した際に、相談先として思い浮かべられる場所を作った。
原田氏も、当時の辻本氏の言葉を紹介。「女性は能力があって成果を上げるけれど、その成果を自分のこととして主張しないで、上司や他の人たちが自分の成果として主張することに対して異議を述べない。そういう働き方こそ女性に求められているもので、性差別だ」と説明していたことを振り返った。
当時、多くの女性が理不尽を我慢していた状況について、辻本氏は「憲法上の権利侵害であれば、99人が我慢していても1人が『我慢できない』と言えば戦えるんです」と語った。
綾瀬は、裁判中の逆風やバッシングをどう乗り越えたのかも質問。辻本氏は、自分たちへの批判よりも、原告が傷つき、追い詰められてしまうことを懸念していたと明かした。
「私たちに対するバッシングというのはそんなに気にならないんです。一番大事なのは原告がそういったバッシングを受けて潰れてしまわないかということなので。それは予想もされたし実際あったわけですが、それに対応するということで、『応援団(支援する会)を作ってください』と最初に言ったんです。支援する会ができたので、原告を支えることについては支援する会にお願いしてしまったという反省もあるんですけれど……。わたし自身はそんなに心は折れなかった(笑)。支援する会には本当に感謝しかないです」
原田氏も「弁護士会の中でも『変わったやつがいる』みたいに見られていたので、あまりバッシングと感じはなかったんじゃないですかね」と当時を振り返った。
話題は、10月1日に改正法が施行された男女雇用機会均等法にも広がった。辻本氏は「要するに『機会を均等に与えましょう』であって、チャンスは与えるけれど、その結果が平等になるかどうかにまでは関与しません、という法律なんです」と指摘。昨年の統計でも女性の賃金は男性の4分の3にとどまるとし、「そういう格差が35年以上経っても残っているというのは、やっぱり『男女雇用機会均等法』の限界なんじゃないかと私は思う」と述べた。
さらに、ハラスメントが生まれる構造にも言及。辻本氏は「ハラスメントというのは要するに『力の乱用』なんです」と指摘し、原田氏も「相手が反撃できないと思うからやるんですよ、ハラスメントは」と、立場や力の差が背景にあると語った。
綾瀬から理不尽に直面している人へのメッセージを求められると、辻本氏は「本当に自分がやりがいを持って仕事をしたり生きようと思ったら、いろんな壁にぶつかる。理不尽な差別というものは本当にたくさんある。決して『自分が悪いんじゃないか』とか思わずに、あきらめずに抗ってほしい」と呼びかけた。
原田氏は「もっと『わがまま』になっていいんじゃないかなと。やりたくないことはしないとか、できないことはできないと言っていいと思うんです」と提案。家庭でも責任を分担し、自分のやりたいことを諦めない生き方を勧めると、綾瀬も「『自分がやらなきゃ』って思っちゃいますよね。メッセージありがとうございます!」とうなずいた。
鼎談の終盤では、仕事と私生活の切り替えについて、綾瀬が俳優としての一面を明かす場面も。「別の人を生きるというのは楽しいことでもあると思うんですけれど、エネルギー量をすごく使うので、くったりしちゃうことも多くて。なるべく集中する時以外はダラッとしています(笑)」と語ると、2人も「私達も事件が終わったらメモして忘れる。そうしないと持ちこたえられない」と応じ、仕事への向き合い方に共通点を見いだしていた。
鼎談を終えた綾瀬は、「おふたりと直接お話しさせていただけて本当に光栄でした。時代を切り開いてくださった強さと優しさは、現代を生きる私たちへの大きなエールだと感じました。作品の持つ意味を改めて実感できたので、たくさんの方に観ていただけるよう伝えていきたいです」と思いを語っていた。
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