エンタメ
2026-08-19 18:00
アーティスト・あのが主人公の声を務める映画『しらぬひ』が8月21日に公開される。少年役に初挑戦となったが、予告公開後には「あのちゃんだと気づかなかった」と驚きの声が殺到。共演の花澤香菜も驚嘆するほどの“新境地”を見せている。「人間は多面性がある」と語り、マルチに活躍しながらも太い自分軸を貫くあのにとって、今作は「新たなターニングポイント」になったという。役作りやアフレコ秘話、表現への切実な渇望と独自の仕事論などを聞いた。(取材・文:遠藤政樹)
【写真】あのちゃん“七変化” うさぎ、お嬢様風、チャイナ服
『しらぬひ』は、『君の名は。』『すずめの戸締まり』を手がけたスタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」の最新作となる短篇アニメーション映画。1996年の夏の終わり。熊本の海辺の町で、酒に溺れた父と2人で暮らす10才の少年・湊の心のよりどころは、弁天島に現れる少女の神さま“べんちゃん”だ。しかし湊の一時保護が決まり、べんちゃんとの別れが迫る。湊は一つだけ願いをかなえてくれるという、海上の不思議な光「しらぬひ」に祈りを捧げるが、父への憎しみが募り、祈りは“呪い”へと変わっていく……。実写映画やアニメーション作品を自主制作してきた片野坂亮が監督を務めた。
■あのちゃん封印? 初の少年役で直面した声のグラデーション
出演が決まった時の心境について、「声の仕事の中でも少年役だったので、驚きと同時に『ついにそういうことを求めていただける時が来た』と思って、すごく光栄でした」と喜ぶ。
初の少年役に挑むにあたり、何種類かの声を準備してアフレコに臨んだあの。「自分の中でできそうなものを監督に聞いていただき、その中で年齢的にもベストだというのをすり合わせていきました」と振り返る。
声を作り上げていく過程では、「大人にならざるを得なかった少年というところで、10歳ながらキャピキャピしすぎていない声色と、べんちゃんといる時の湊は少し10歳に戻れているような子どもらしさ、そのグラデーションのつけた方が難しかった」と語る。
「少年からはブレずに声のトーンを柔らかくしたり明るくしたりする際、監督から『あのちゃんになっちゃっている』と言われることもあって。ちょっとでも明るくすると自分の声になってしまうのは難しかった」
そんな不安を吐露したあのだが、予告動画が公開されるやいなや「あのちゃんだとは気づかなかった!」という声が多数寄せられ、「そんな風に言われるとは思っていませんでした」と驚く。
「毎日声を聞いているファンの人や周りの知人からも、『あのちゃんだとは思わない』と言われました。ちゃんと湊になれていることでもあるのでうれしかったです」
声優の仕事はまだ2回目だというが、寄せられる称賛の声に「毎回ありがたい声をいただくので、向いているのかなって、ちょっとだけ思い始めました」と笑顔を見せる。
■三木眞一郎とのアフレコで魂が宿る 花澤香菜の言葉に自信
アフレコで苦労した点について、あのは「声色の使い分けと声を荒げるシーン難しかった」と挙げる。
「声をからしてもダメだし、ただギャンギャン騒いでいるだけでもダメ。感情を入れるところは叫びだけじゃなく、他もですけど声が少年なだけじゃダメで、しっかり湊の気持ち、魂が宿っているようにするのは工夫して、考えながらやりました」
大変だったと振り返った、父・マサルを演じた三木眞一郎とのアフレコは印象に残り、緊迫した空気のなかプロの熱量に感化され、自身の演技が引き出される感覚を味わったという。
「迫力のある声演技だったので、より気持ちも入りました。一緒にやれたことでできた芝居でもあったなって思います。ほどよい緊張感がある現場でした」
また、共演したべんちゃん役の花澤香菜からの、「いっぱい声優やられているんですか?」という予期せぬ言葉は、大きな自信を与えてくれたと喜ぶ。
「まだ2回目ですと言ったら驚いてくれて褒めてくれたので、すごく心強かったです」
■「正解がないからこそ不安」 意外な本音と揺るがない自分軸
連続ドラマ『悪の華』『わたしの相殺日記』に出演するなど、俳優としても活躍しているあの。俳優や声優としての高評価をどう感じているか質問すると、「褒められているのだろうなと思うのでうれしい」とにっこり。
評価への手応えについては、「結果的に(いいと)言っていただけているので、みんなの声が手応えにつながっているのかな。ただ毎回、不安になりながらやっています」と話し、不安になる理由を「正解がないから」と語る。
「正解がないので自分が納得していつも終わっていますが、それは自分の中の納得であり、自分の中の正解。世の中にどう伝わっていくか考えると不安な時もあります」
そんなあのだが、音楽、俳優、声優とボーダレスな活躍を見せているが、各活動に対してどのようなスタンスで臨んでいるのか。「軸は同じ」と前置きし、人間の多面性にも言及する。
「人間は一面じゃなくて多面性があるので、それによってサイコロのようにコロコロ転がっているみたいな感覚はありますけど、軸はずっと“僕”という自分です。けっこう太めな気がします(笑)」
■刺激を求め、臨機応変に挑むクリエイティブの流儀
意識せずとも自分自身という軸をぶらさず活動するあのだが、仕事に対する線引きに関しては「あります」と口にする。
「これは自分とは違うなとかはあります。でも一つの映像とか一つの作品にとって「これが必要」というのもわかります。そこは臨機応変にやれていけたら」
さまざまなタイプの人と仕事をするなか、アイデアの方向性が似た人と異なる人、どちらとより仕事をしてみたいかを聞くと、同じ方向性の人がやりやすいとしつつも、刺激を求めるクリエイティブな一面ものぞかせる。
「仕事をしやすいのは同じタイプの人。会話を重ねなくても感覚が合っているのはやりやすいだろうなって思う。そうじゃない人と関わることで生まれる新しいものもあるので、そういう人ともやってみたい」
異なる考えを持つ相手とのコラボを、あのは「例えば音楽だとアレンジャーの方がゴリゴリのラウド系だと、好きだけど手を出していなかった世界を広げてもらうなど刺激を受ける」と話し、「それは演技でもそうだと思いますが、何か刺激的なものがあると、例え口論があったとしても、乗り越えて作ってみたい興味あります」と語る。
■音楽への愛と本作で迎えた新たな転機
自身のキャリアにおける今作をあのは、「新たなターニングポイント」と位置付ける。
「会う人会う人に、『しらぬひ』すごい『声すごい』と、公開してないのにいろんな現場で言っていただけるので、大きな出来事。自分の中でまたより声で表現することも好きになったし、自分にとってはまた新たなターニングポイントになったかなって思いました」
すべての表現活動について、「全部全然違うけど表現としてはすごく似ているものでもある」といい、特に音楽に関しては「そんな得意じゃないんですけど(笑)」と謙遜しつつ、「好きです」と言い切る。
「どんな壁があろうと理不尽があろうと好きっていうものが上回っていくものは音楽かなって思います」
根っからの表現者であるあのの、「表現しないとなかなか夜を超えられないみたいになっちゃった時期があったので(音楽は)そばにいた感じがします」という言葉は、単なる仕事ではなく人生にとってかけがえのないものであることをうかがわせる。
最後に、本作の見どころを聞いた。
「シリアスな展開のなかでも、湊とべんちゃんのシーンは安全な安心な場所なので、そこでホッとしてくれるといいなって思っています」
●カメラマン: (c) Kazuko WAKAYAMA
●ヘアメイク:URI
●スタイリスト:神田百実
【場面写真】「破壊力やば」突然現れたロングヘアーのあの
【写真】かわいい!敬礼ポーズでほほえむあの
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【写真】あのちゃん“七変化” うさぎ、お嬢様風、チャイナ服
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■あのちゃん封印? 初の少年役で直面した声のグラデーション
出演が決まった時の心境について、「声の仕事の中でも少年役だったので、驚きと同時に『ついにそういうことを求めていただける時が来た』と思って、すごく光栄でした」と喜ぶ。
初の少年役に挑むにあたり、何種類かの声を準備してアフレコに臨んだあの。「自分の中でできそうなものを監督に聞いていただき、その中で年齢的にもベストだというのをすり合わせていきました」と振り返る。
声を作り上げていく過程では、「大人にならざるを得なかった少年というところで、10歳ながらキャピキャピしすぎていない声色と、べんちゃんといる時の湊は少し10歳に戻れているような子どもらしさ、そのグラデーションのつけた方が難しかった」と語る。
「少年からはブレずに声のトーンを柔らかくしたり明るくしたりする際、監督から『あのちゃんになっちゃっている』と言われることもあって。ちょっとでも明るくすると自分の声になってしまうのは難しかった」
そんな不安を吐露したあのだが、予告動画が公開されるやいなや「あのちゃんだとは気づかなかった!」という声が多数寄せられ、「そんな風に言われるとは思っていませんでした」と驚く。
「毎日声を聞いているファンの人や周りの知人からも、『あのちゃんだとは思わない』と言われました。ちゃんと湊になれていることでもあるのでうれしかったです」
声優の仕事はまだ2回目だというが、寄せられる称賛の声に「毎回ありがたい声をいただくので、向いているのかなって、ちょっとだけ思い始めました」と笑顔を見せる。
■三木眞一郎とのアフレコで魂が宿る 花澤香菜の言葉に自信
アフレコで苦労した点について、あのは「声色の使い分けと声を荒げるシーン難しかった」と挙げる。
「声をからしてもダメだし、ただギャンギャン騒いでいるだけでもダメ。感情を入れるところは叫びだけじゃなく、他もですけど声が少年なだけじゃダメで、しっかり湊の気持ち、魂が宿っているようにするのは工夫して、考えながらやりました」
大変だったと振り返った、父・マサルを演じた三木眞一郎とのアフレコは印象に残り、緊迫した空気のなかプロの熱量に感化され、自身の演技が引き出される感覚を味わったという。
「迫力のある声演技だったので、より気持ちも入りました。一緒にやれたことでできた芝居でもあったなって思います。ほどよい緊張感がある現場でした」
また、共演したべんちゃん役の花澤香菜からの、「いっぱい声優やられているんですか?」という予期せぬ言葉は、大きな自信を与えてくれたと喜ぶ。
「まだ2回目ですと言ったら驚いてくれて褒めてくれたので、すごく心強かったです」
■「正解がないからこそ不安」 意外な本音と揺るがない自分軸
連続ドラマ『悪の華』『わたしの相殺日記』に出演するなど、俳優としても活躍しているあの。俳優や声優としての高評価をどう感じているか質問すると、「褒められているのだろうなと思うのでうれしい」とにっこり。
評価への手応えについては、「結果的に(いいと)言っていただけているので、みんなの声が手応えにつながっているのかな。ただ毎回、不安になりながらやっています」と話し、不安になる理由を「正解がないから」と語る。
「正解がないので自分が納得していつも終わっていますが、それは自分の中の納得であり、自分の中の正解。世の中にどう伝わっていくか考えると不安な時もあります」
そんなあのだが、音楽、俳優、声優とボーダレスな活躍を見せているが、各活動に対してどのようなスタンスで臨んでいるのか。「軸は同じ」と前置きし、人間の多面性にも言及する。
「人間は一面じゃなくて多面性があるので、それによってサイコロのようにコロコロ転がっているみたいな感覚はありますけど、軸はずっと“僕”という自分です。けっこう太めな気がします(笑)」
■刺激を求め、臨機応変に挑むクリエイティブの流儀
意識せずとも自分自身という軸をぶらさず活動するあのだが、仕事に対する線引きに関しては「あります」と口にする。
「これは自分とは違うなとかはあります。でも一つの映像とか一つの作品にとって「これが必要」というのもわかります。そこは臨機応変にやれていけたら」
さまざまなタイプの人と仕事をするなか、アイデアの方向性が似た人と異なる人、どちらとより仕事をしてみたいかを聞くと、同じ方向性の人がやりやすいとしつつも、刺激を求めるクリエイティブな一面ものぞかせる。
「仕事をしやすいのは同じタイプの人。会話を重ねなくても感覚が合っているのはやりやすいだろうなって思う。そうじゃない人と関わることで生まれる新しいものもあるので、そういう人ともやってみたい」
異なる考えを持つ相手とのコラボを、あのは「例えば音楽だとアレンジャーの方がゴリゴリのラウド系だと、好きだけど手を出していなかった世界を広げてもらうなど刺激を受ける」と話し、「それは演技でもそうだと思いますが、何か刺激的なものがあると、例え口論があったとしても、乗り越えて作ってみたい興味あります」と語る。
■音楽への愛と本作で迎えた新たな転機
自身のキャリアにおける今作をあのは、「新たなターニングポイント」と位置付ける。
「会う人会う人に、『しらぬひ』すごい『声すごい』と、公開してないのにいろんな現場で言っていただけるので、大きな出来事。自分の中でまたより声で表現することも好きになったし、自分にとってはまた新たなターニングポイントになったかなって思いました」
すべての表現活動について、「全部全然違うけど表現としてはすごく似ているものでもある」といい、特に音楽に関しては「そんな得意じゃないんですけど(笑)」と謙遜しつつ、「好きです」と言い切る。
「どんな壁があろうと理不尽があろうと好きっていうものが上回っていくものは音楽かなって思います」
根っからの表現者であるあのの、「表現しないとなかなか夜を超えられないみたいになっちゃった時期があったので(音楽は)そばにいた感じがします」という言葉は、単なる仕事ではなく人生にとってかけがえのないものであることをうかがわせる。
最後に、本作の見どころを聞いた。
「シリアスな展開のなかでも、湊とべんちゃんのシーンは安全な安心な場所なので、そこでホッとしてくれるといいなって思っています」
●カメラマン: (c) Kazuko WAKAYAMA
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