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日曜劇場『GIFT』の“熱狂”試合シーンはこう作られた――VFXチーム「jitto」が語る、“気づかれないCG”への執念【ドラマTopics】

エンタメ
2026-06-06 09:00

物語も終盤に向かう中、TBS日曜劇場『GIFT』で注目を集めているのは、劇中で奮闘する車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」(以下、ブルズ)の迫力ある試合シーンだ。


【写真で見る】車いすラグビー選手を演じる山田裕貴さん、細田佳央太さんらの姿も・・・ドラマ『GIFT』場面写真


コートを駆け抜ける競技用車いす(通称:ラグ車)や、選手同士が激しくぶつかり合うスピード感、そして主人公・伍鉄文人(演・堤真一)の内面世界を映し出す幻想的な“宇宙表現”――。その映像を支えているのが、VFX(Visual Effects=視覚効果)スタジオ「jitto」だ。


MVや広告、アニメ、映画など多彩な映像作品でVFXを手がけてきた同スタジオが、本作で挑んだ新たな挑戦とは――。車いすラグビー日本代表が金メダルに沸いた熱狂の裏で始まっていた、約1年にわたる挑戦。そこには、徹底したリアリティーへのこだわりがあった(メイン画像=ドラマ『GIFT』第6話でVFXの宇宙空間を取り入れたシーン/「jitto」提供)。


“金メダル直後”に始動した、『GIFT』映像プロジェクト

本作の“舞台”となっている「車いすラグビー」は、日本代表が2024年パリパラリンピック™大会で悲願の金メダルを獲得したことも記憶に新しい。日本は現在、世界ランキング1位(2026年4月現在)の実力を誇り、今最も注目を集めるパラスポーツの一つだ。


同社・CGスーパーバイザーの尹(ユン)剛士さんによると、本作の撮影手法などを固めていくための会議は、ちょうどパリパラリンピックの熱狂が続いている頃に始まったと言う。


本作の企画・原案も手がける平野俊一監督が、「車いすラグビーの試合を“斬新”な手法で撮影したい」と、VFXの映像技術を取り入れることになった。


VFXは、CG合成や3Dスキャン、モーション制御カメラなどを駆使し、実写では撮れない映像や感情表現を可能にする技術だ。近年は映画やテレビドラマでも活用が進み、リアルとCGの境界を越える新たな映像体験も生み出す。


その効果を本作でも採用することになり、時はパリパラリンピック直後。尹さんは「日本代表が金メダルを取り、試合は僕も見ていたので、『どう撮っていけば迫力が出るか』といった監督のお話にも、『こういうことができたら面白いですよね』とスムーズに返せました」と明かす。


実際にラグ車(競技用の車いす)を使いながらの打ち合わせでは大規模な準備を要してしまうため、「アンリアル・エンジン」という3Dゲームエンジンも用いながら、打ち合わせを続けていった。


アンリアル・エンジンは、実写のような超高精細なグラフィックをリアルタイムで描画・編集できるゲーム制作ソフトで、映像制作など幅広い分野でも活用される。


「CG上で一度試合を再現するんです。再現したものの中にCG上のカメラを置いて、アングルを探ることもできるので、それらも用いて半年ほど、技術的なアドバイスもしたりしました」と、その活用方法を説明する。


そうして、“技術畑”のスタッフが全員集まり、「どのようなアプローチができるか」と監督も交えディスカッションを重ねていった。


“リアルすぎるCG”はどう生まれる?――VFXチームが挑むドラマ制作

「jitto」でCGスーパーバイザーを務める尹さんは、本作ではラグ車やボールなどをより“リアル”なCGで再現する役割を担う。「再現性を担保するためのリサーチ&デベロップメントを重ね、スタッフたちと一緒に作っていく。いわばCGのパートの総指揮官のようなイメージです」と話す。


本作のVFXチームではほかに、プロデューサーの塚本時彦さんが、監督やカメラマンなどからVFXの内容やコンセプトを聞き取り、主にスケジュールや予算を管理。VFXスーパーバイザーの橋本祥文さんは、演出上のイメージに基づいて、実写とCGを合成し最終的な品質管理を担っている。


同スタジオは、MVや広告制作のほか、アニメ「チェンソーマン」(2022年〜)や映画「秒速5センチメートル」(2025年)などのVFXも手がける。同局とは、グループキャラクター「ワクティ」のムービー制作でVFXを担当したことがあるが、「テレビドラマは今回が初めてです」と塚本さん。


「長期で取り組むコンテンツは若手の育成にも向いており、スタッフのモチベーションも上がります。CMやMV制作と違い、“物量”そのものが多く、そこでどれだけクオリティーの高いものを目指せるのか、というところも求められてきます」(塚本さん)と、同スタジオにとってのテレビドラマの位置づけを語る。


観客もラグ車もCGだった――あの試合シーンの舞台裏

本作でVFXを手がける中で特に印象に残っている試合シーンを尋ねると、3人は口をそろえて、第1話でのブルズと強豪「シャークヘッド」の両エース、宮下涼(演・山田裕貴)・谷口聡一(演・細田佳央太)の激闘シーンを挙げる。


「安全面やカメラワークの制限もある中で、激しくぶつかり合い攻防を繰り広げるシーンを再現するために、二人のシーンのラグ車はCGで再現しています」と尹さんは振り返る。撮影現場では、CGを合成するために「ロボットアーム」を多用したと言う。


ロボットアームは、高速移動出来るため、ハイスピードカメラを組み合わせることで被写体の激しい動きを至近距離で追いかけ、臨場感を演出するために使用されるもの。キャストの二人を実写で撮り、ラグ車をCGに載せ替えるという合成作業は、普段はあまりしないことで、僕たちにとっても挑戦でした」とも付け加える。


また、最先端の技術は、体育館の空間再現にも使われた。「ガウシアン・スプラッティング」という技術で、複数の写真や動画などのスキャンデータからリアルで高精細な3Dモデルを生成し、空間を再現するものだ。


尹さんは、「今回、その技術を持つ企業にご協力いただき、試合会場の体育館を再現していただきました」と説明。


「背景にはその再現していただいたデータを使い、人物はグリーンバックで撮り、ラグ車と競技用のラグビーボールはCGで作るという、合成VFXの中ではこれまであまりなかったような素材を組み合わせていきました」


そうした技術をいくつも重ねていくことで“実写に見える”ような映像を仕上げることは、「誰もしたことがなかったようなプロセスでもあり、チャレンジングだなと感じました」と、その挑戦の裏側にあった思いも吐露する。


「観客席はVFXで観客を増員させたので、放送時間は短いながら、かなり高い技術が詰まっているシーンです。とても良いカットになったので、あまり気付かれないとは思いますが、ぜひ見ていただきたいです」と言葉をつなげる。


「感情を動かすため」にVFXがある――人間ドラマを支えるリアリティー

「jitto」のようなVFXスタジオにとって、本作で言えば「試合をどう撮るか」「どのようにVFXを効果的に入れられるか」といった課題はつきものだが、取材中に3人が力を込めて語ったのは、それが「どう自然に見えるか」。


本作では、試合シーンのみならず、随所に登場する“宇宙表現”も、作品を彩っている。天才すぎるがゆえの厳しさで周囲を“闇落ち”させてきた宇宙物理学者・伍鉄の頭の中に広がる数式や宇宙――。その“宇宙”を再現した映像は、幻想的でもある。


対して、試合のシーンは、激闘シーンといえども“自然に見える”ことにこだわった。映像として単に派手に見せるのではなく、視聴者はCGを意識せずに、試合や選手たちの熱量に没入できる。そのリアリティーが、本作のVFXの特徴でもあるのだ。


尹さんは「『GIFT』は、選手やその周りの人々の思いや人間ドラマも映し出しているドラマだと思います。その中でどうしても普通の撮影では表現できない部分を、僕たちがお手伝いできていれば」と率直な思いも口にする。


「そこにVFXがあることで、より見ている方の心を動かすことができたら、一番のゴールかなと思います」とVFXの意義を語る。


普通の撮影だけではたどり着けない“感情”を、映像技術で補完する――。“CGだと気づかれないCG”を追求した先にあったのは、情緒ともつながっていく映像表現だった。本作の熱狂や人間ドラマは、そんなスタッフたちの執念によって生み出されている。


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