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高中正義「生きててよかった」 50年越しに世界で夢叶う【インタビュー】

エンタメ
2026-06-02 11:05
高中正義「生きててよかった」 50年越しに世界で夢叶う【インタビュー】
高中正義 Photo:Nikki Phillips
 1970年代から日本のフュージョンシーンを牽引してきたギタリスト・高中正義。近年は“シティポップ再評価”の流れとともに海外での人気が急上昇し、昨年には中国・上海公演、そして40年ぶりのアメリカ公演として、ロサンゼルスの名門ウィルターン・シアターで2Days公演を開催。同公演はソールドアウトとなり、現地の若いファンが熱狂する光景が大きな話題となった。さらに今年はワールドツアーも開催。今年73歳となり、50年以上にわたり独自のサウンドを鳴らし続けてきた高中に、世界的な再評価への率直な思い、海外ライブで感じた熱狂、長年ともに歩むバンドメンバーとの関係、そして50周年ツアーへの思いを聞いた。

【写真】海外でも大人気!高中正義のトレードマーク“サーフボードギター”

■ソールドアウト連発の海外公演 “パンツ”も飛ぶ熱狂ぶり

――改めて、いま海外でも大きな人気を集めている状況を、どのように受け止めていますか?

これ、ドッキリなのかなって(笑)。世界中でドッキリをやってるのかなっていう感じなんです。うれしいんですけど、信じられないうれしさっていうかね。50年前の23歳のときに『SEYCHELLES』というアルバムを出して、「僕はこれを世界で発売したいんだ」と当時のレコード会社の社長に言って。それで外国人の関係者に僕のレコードを聴かせたら、「これを世界で出すには音がちょっと弱い」って言われたんです。その頃の僕は、強い音が嫌いだったんですよ。心地よい音楽、きれいな音が好きだった。でも50年経って、イギリス、アメリカ、オーストラリアに行って、20代の若者が来てくれて、チケットは全部ソールドアウト。海外公演のMCでも「50年経って、僕の夢は叶えられた」みたいなことを言ったんですけどね。生きててよかったと思います。

――最初に「これは本当にすごいことになっている」と実感した瞬間は?

スタッフから3年ぐらい前に「Spotifyで海外の人がたくさん聴いてますよ」って教えてくれたときです。僕はSpotifyさえ知らなかったんですけど(笑)。それで昨年、上海で初めてライブをやったんです。「渚・モデラート」のイントロで、若い人たちが「ギャー!」って大きな声を出して。あ、これ知ってるんだって。みんなインターネットを通じて知ってるんだなって驚いて。その次のロサンゼルス公演も2日間ソールドアウトになって、20代のファンがすごく騒いで、喜んでくれた。日本のお客さんは50代、60代の方が多いので、やっぱり体力も違うし、国民性も違う。日本人は謙虚におとなしく聴いてくれる。それはそれでいいんです。大人ですから。逆にアメリカ人、うるさいなと思うときもあるし(笑)。

――今年4月のロサンゼルス公演の模様は6月7日にWOWOWでも放送・配信されますが、海外と日本では、お客さんの楽しみ方もかなり異なりそうですね。

全然違いますね。海外ではお客さんがクラウドサーフィンするんですよ。持ち上がった人は「うわー!」って喜んでいて、最後に警備員に捕まるのかと思ったら、警備員が安全に下ろしてるんです。ちゃんと水も置いてあって、至れり尽くせりの楽しみ方なんだなって。ステージの写真や動画も、外国では撮っていいけど、日本だけダメ。みんなインターネットで流しているんだから、どれだけ日本で禁止しても手遅れなんじゃないかなとも思いますけどね。

――海外ライブで、お客さんのリアクションとして印象に残っていることはありますか?

一番は、パンツが飛んできたことですね(笑)。男性物だと思うんですけど、演奏中に見つけて「あれ、パンツだよな」と思って。何回見てもパンツだよなって。嫌だから、つまんで客席に投げ返しました(笑)。

――どんなパンツだったんですか(笑)?

赤が中心の格子柄でしたね。

■あのときに売れちゃってたら今はもうポシャってたかも

――デビュー当時に「世界には弱い」と言われた音楽が、いま世界中の人に届いていることについて、ご自身ではどのように感じていますか?

当時も自分で考えて、「これはいい音で、いい音楽だ」と思っていたんです。キャッチーさやアレンジもいろいろ考えてた。20代のときに考えて作った音楽が、50年経って世界で売れているというのは、とてもうれしいことです。あのときに売れちゃってたら、今はもうポシャってたかもしれない。当時も5000枚ぐらい売れたんだから、5000枚売れれば大したもん。それぐらいがいいんですよね。一度に売れると税金も高いし、それで終わりになっちゃうから。

――海外での盛り上がりを経て、日本での公演に変化は感じますか?

海外でのライブの映像を見て、日本のお客さんが勉強して、ちょっと真似しているような感じはありますね。騒いでくれるのはうれしいんですけど、背伸びする必要はないと思うんです。20代に勝とうと思うのは体力的に無理もあるし(笑)。それぞれ自分の好きにすればいいと思います。でも、海外のファンの騒ぎを見ると「ああ、すごいな」と思うのはしょうがないし、真似したくなるのもしょうがないとは思います。

――バンドメンバーのみなさんとは、長い付き合いの方も多いですよね。

パーカッションの斉藤ノヴは、もう20代の頃から一緒にやっています。人間的にも、お酒を飲むにも、とてもいい感じで、何十年もやっている一生の友達ですね。岡沢(章/ベース)さんも、僕が20歳の頃から知っていて、ドラムの宮崎(まさひろ/ドラム)も、『虹伝説』の前ぐらいからだから、1980年のちょっと前ぐらいからずっと一緒にやってます。

――ライブ後にみなさんで飲んだりも?

僕と斉藤ノヴの世代は、すっごい飲む世代なんですよ(笑)。酒量は減りましたけどね。二日酔いに気をつけながらツアーをまわってる感じです。

――昔からの仲間と70歳を超えてから海外で演奏して、打ち上げをしてるって最高ですね。

昔みたいには飲まないですけどね(笑)。

■SNSで若手ミュージシャンから刺激を受ける日々

――SpotifyやSNSなど、ネットから音楽が広がっていく可能性については、改めてどう感じていますか?

便利ですよね。海外でやるときも、Spotifyでどのアルバムが人気なのか、1stアルバムが人気だとか、4枚目の『BRASILIAN SKIES』が今一番人気だとか、そういうのを聞いて、セットリストにも反映させています。昔の感覚だとずるいやり方みたいな感じもあります。でも、確かなデータ、証拠があるんだから、間違いは少ない。素晴らしい世界だなと思います。

――高中さんご自身が、ネットで音楽や動画を見ることもありますか?

アプリで世界中のインターネットラジオを聴き始めて、もう10年ぐらいになります。最近は遅ればせながらインスタグラムを始めたら、すごく面白くて。難しいギターを教える人もいるし、きれいな海だけ、きれいな花だけ、料理だけというのもあって、ずっと見ている。あまりテレビを見なくなっちゃいましたね。韓国の美少女が、すごいギターを弾くんですよ。僕は敵わないです(笑)。それを優しくゆっくり教えてくれる動画もあって、練習しようかなとも思うんですけど、始めたら何日あっても時間が足りないですよね。

――サーフボードギターについても伺いたいです。実際、弾きやすさや音はどんな感じなんですか?

もとは僕のヤマハのSGなんです。好きなヤマハSGのネックとピックアップなんだけど、まわりに余計なボードがついてるから、7キロもある。2曲くらい…10分以内だったら使えますけど、2時間は無理ですね。日本だと、ライブ前に機材の写真を撮りに来るような、ギター好きっぽい人も多いんですよ。海外にはそういう人はあまりいないんですけど、あのギターが登場すると盛り上がりますね。

■50周年もいつものルーティーンで

――体力作りやコンディション面で気をつけていることはありますか?

40歳になったときに太り始めて、スポーツクラブに入りました。それを今も続けています。走りはせずに歩くぐらいで。あとは腹筋、ストレッチ、ダンベル。今住んでいるところはジムがあるので、そこで運動しています。基本はゆるい運動なんです。きついと長続きしないですからね。

――50周年のツアーもありますが、どんなツアーになりそうですか?

いつも楽しく、いい音で、ということですね。僕は毎回ライブを録音して、移動中にそれをヘッドホンで聴くんです。それが一つの楽しみなんですよ。「ここを間違えたから練習しよう」「この音色はよくないから変えよう」とか。そうやって研究して練習して。それを何十年もずっとやっていて、今回もそれを続ける。50周年だから変わったことをするというわけではなくて、いつもそうです。いい音を出したい。

――また素晴らしいライブになりそうですね。

たまにつまらないギャグみたいなことも考えますけどね(笑)。ステージを移動するところにワウペダルをつけたら、移動しながらワウを踏めるとか、くだらないことをね。2時間ライブをやって、1時間50分は真面目に演奏するんだから、10分ぐらいそういうギャグがあってもいいかなと思うんですけどね。

【プロフィール】
サディスティック・ミカ・バンドへの参加やサディスティックスでの活動を経て、1976年にソロギタリストとしてデビュー。日本のフュージョンブームを牽引し数多くの名曲・名盤を発表してきた。また、国内では井上陽水、松任谷由実、矢沢永吉、海外ではリー・リトナー、サンタナ、シーラEなどの大物ミュージシャンとも共演している。ソロ活動は、キティレコード、東芝EMIを経て、2000年に自社レーベル『Lagoon Records』を設立。今年3月から4月にかけてロンドン、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、シドニーなど8都市を巡るワールドツアーを敢行。9月より、ソロデビュー50周年を記念した全19公演の国内ツアーを開催予定。

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