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ケン・ローチ監督“最後の作品”『オールド・オーク』公開中 対立が顕在化する時代に「受け入れるか、敵意か」

エンタメ
2026-05-04 07:15
ケン・ローチ監督“最後の作品”『オールド・オーク』公開中 対立が顕在化する時代に「受け入れるか、敵意か」
映画『オールド・オーク』(公開中)
 都内のヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国で4月24日より公開中の映画『オールド・オーク』。イギリス北東部の寂れた町を舞台に、地元住民とシリア難民たちの関係を描いたヒューマンドラマで、「今だからこそ観るべき作品」「これは私たちの物語」といった共感の声が観客から寄せられている。

【動画】日本版予告編やケン・ローチ監督のインタビュー映像など

 本作の監督は、今年で90歳を迎えるイギリスの巨匠ケン・ローチ。1967年の『夜空に星のあるように』で長編監督デビューして以来、50年以上にわたり労働者階級の現実を描き続けてきた。自身が「最後の作品」と語る本作は、2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、大きな注目を集めた。

 舞台は、かつて炭鉱で栄えたイギリス北東部の町に残された最後のパブ「オールド・オーク」。人々が集い、安らぎを見出す場所だったはずのパブは、シリア難民の受け入れをきっかけに、対立と分断の象徴のような場所へと変わっていく。店主のTJ・バランタインは先行きに頭を抱える中、カメラを手にしたシリア人女性ヤラと出会い、やがて友情を育んでいくが、町には不安と不信が渦巻き続けていた。

 ローチ監督は本作のテーマについて、「戦争から逃れてあなたの国にやって来た人々を受け入れるのか、それとも敵意を持ったまま生きるのか」と語り、対立が顕在化する時代を生きるすべての人々に問いを投げかける。

 脚本は長年タッグを組んできたポール・ラヴァティ。物語のモデルとなった難民を多く抱える地域の住民は「押しつけられたと怒りを覚えたが、そうした中でも理解しようとする人々がいた」と本作が生まれた経緯を振り返る。

 ラヴァティは地域住民と難民たちの衝突について「双方のコミュニティを公平に描くのは難しい。脱工業化以降の住民たちと戦禍を逃れてきた人々を決して同一視はできない。シリアの人々の苦難は想像を絶するからだ」と複雑な背景に触れながらも、「とても繊細ではあるが、想像を超える作品になると感じた」と力強く語る。

■実際に地域で暮らす人々や難民たちも出演

 TJを演じるのは、これまでローチ作品に出演してきたデイヴ・ターナー。実際にパブ経営の経験も持つ彼について、監督は「役柄を真実のものとして生き抜いた。彼以外にTJは演じられない」と絶賛している。ヤラ役にはシリア出身の新星エブラ・マリを抜てき。プロデューサーのレベッカ・オブライエンも「彼女はまさに光だった」と高く評価する。

 町の住民やシリアからの難民役には、実際に地域で暮らす人々や難民が起用されている。ヤラを手助けしたTJに心を開いていく母ファティマを演じたアムナ・アル・アリは、2018年に家族と共にシリアからイギリスに渡ってきた難民の1人。難民に関する映画が制作中という話に興味を持ちつつも、当初は参加するかどうか迷いがあったそうだが、ローチ監督の人柄に触れ、出演を決意した。アムナは「難民がくぐり抜けてきた困難は誰にもわからない。難しくても受け入れることから支援が始まります。それが何よりも重要です」と呼びかける。

 ローチ監督は「人々と出会い、その経験を物語に取り入れられるのは光栄。誰もが語り尽くせない人生を持っている」と語る。また、「希望とは政治的なもの。何かを変えられると信じることだ」とも述べ、“希望を持つこと”の難しさと尊さを強調した。

 本作は『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年)、『家族を想うとき』(2019年)に続く“イギリス北東部3部作”の最終章。ローチ監督は「3部作を最初から構想していたわけではないが、それぞれの作品が次を生んだ」と語り、本作が自然な流れの中で生まれたことを明かしている。

 「人々は何に幸せを見いだし、どうつながることで友達となり、何が人々を結び付けるのか」。市井の人々に寄り添い続けてきた巨匠の集大成ともいえる本作は、その問いを静かに、しかし力強く突きつける。観る者の心に長く残る一本となりそうだ。

(C)Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2023


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