エンタメ
2025-12-17 11:00
放送100年、昭和100年という大きな節目の今年、「つなぐ、つながる、大みそか。」をテーマに掲げた『第76回NHK紅白歌合戦』。ラッパーのちゃんみなやグローバルグループの&TEAMなど10組の初出場歌手に加え、堺正章と氷川きよしの2組が『放送100年紅白特別企画』に出場するなど、話題満載の同番組について、テーマに込めた思いや意気込みを、11月上旬、今年初めて制作統括を務める篠原伸介氏に聞いた。
【特集】『第76回NHK紅白歌合戦』出場者一覧&会見フォトギャラリー
■みんながつながれる番組を作りたい
『第76回NHK紅白歌合戦』の制作統括を務める篠原伸介氏は、1997年にNHKへ入局。地方勤務を経て2001年に東京勤務となってからは、『ふたりのビッグショー』をはじめ、『歌謡コンサート』『うたコン』『SONGS』など音楽番組一筋でキャリアを積んできた。途中、バラエティなど他ジャンルに異動することが多いNHKにおいて珍しいケースなのだという。
紅白においても、東京赴任以降、制作に携わってきたが、放送100年という大きな節目に制作統括という重大な任務を与えられたことについては、「不安の方が正直大きい」と苦笑いする。
「僕は『うたコン』のチーフ・プロデューサーとして毎週“ミニ紅白”みたいなイメージで番組を作ってきたのですが、本家の紅白はやはり特別です。歴代の制作統括を見ても、先輩後輩関係なく、僕が尊敬する制作者が務めてきたポジションですので、当初はそんな重責が自分に務まるのだろうかという不安のほうが正直大きかったし、今もその不安と戦っている状態です。ただラジオが日本で産声をあげてから放送100年となる今年の紅白を担当させていただくということをいい意味でプレッシャーにしていければと思います。今はテレビやラジオ、スマホなどいろいろな視聴スタイルがありますが、みんながつながれる番組が作れたらとやりがいも感じています」
その思いから付けられたテーマが「つなぐ、つながる、大みそか。」だった。
「総合演出のディレクターとも話す中で、やはり“つなぐ”という言葉は、今年のひとつのキーワードになると思いました。何をつなぐのかということについては、あえて書いていないのですが “つなぐ”には音楽、時代、世代、場所などなどいろいろな意味を含んでいます。今は“分断”という言葉で語られる事象も多いですが、いろいろな立場、時代を乗り越えて、みんなが紅白という場でつながりあえる、そんな番組にしたいと思っています」
放送100年というと、これまでを振り返る要素が想像される。それも“つなぐ”要素のひとつだ。
「放送100年にあやかって、今年『うたコン』では“プレイバック紅白”というコーナーを設け、ある年の紅白にタイムスリップして、懐かしい映像や初出場歌手の映像を放送したのですが、多くの視聴者の方からご好評をいただきまして、改めて紅白というコンテンツの強さを感じました。また今年は戦後80年でもあります。紅白がスタートして今年で76年。こうして回を重ねてこられたのも、やはり平和があってこそです。そんな当たり前だけれども尊いことを次の時代につないでいけたらと考えています」
今回は、NHK ONEが10月からスタートして最初の紅白歌合戦。
「今年は新たにインターネットサービスの『NHK ONE』が始まったこともありますし、やはり未来志向でありたいと思います。次の100年も紅白歌合戦が、みなさんに愛していただけるような時代であってほしいという願いも込めて、今年の紅白を制作しています。
■紅白が持つ“祝祭感”と元気のエールを届けたい
今年司会を担うのは、2013年に初司会を務めて以来4回目となる綾瀬はるかと、3年連続となる有吉弘行、初司会の今田美桜、鈴木奈穂子アナウンサーの4人。篠原氏はこんな期待を寄せる。
「綾瀬さんは大河ドラマ『八重の桜』に出演された2013年に初めて司会を務め、NHKの東日本大震災復興支援ソングの『花は咲く』を歌ってくださいました。その後も紅白で何度かお世話になりましたが、いつも一緒にいる人たちを笑顔にしてくれる太陽のような方だと思っていました。今年は大河ドラマ『べらぼう』の語りをはじめ、土曜ドラマ『ひとりでしにたい』でもご活躍されて、NHKでもご縁があったこともあり是非にとお願いしました。とかく時間に追われがちな紅白の中で、綾瀬さんならではの感性と言葉でみんなを和ませ、安らげる雰囲気を醸しだしてくださることを期待しています」
有吉は公式サイトで「3回目の司会ということで、これまでよりは緊張しないでできると思うので、楽しみたいと思います」とコメントを発表しているが、篠原氏もまた、そこに期待していると微笑む。
「テレビで有吉さんが楽しんでいる姿を見ていると、見ているこちら側も楽しくなりますよね。ですので、有吉さんが面白がってくれるような内容や雰囲気を作っていけたらと思っています。同じ広島出身という共通項もある綾瀬さんとともに司会をすることで有吉さんがリラックス出来る空間を作れたらいいなと思います」
そしてもう一人の司会が、今年、連続テレビ小説『あんぱん』での好演も記憶に新しい今田美桜だ。
「僕も“『あんぱん』ロス”になった一人ですが、今年、本当にご活躍の目覚ましかった俳優さんですよね。実は夏の音楽特番『MUSIC GIFT』の際にもNHKホールにお越しいただきました。その時、とっても立ち姿が素敵でNHKホールがお似合いだなと感じました。またお若いのですが、大変落ち着いていらっしゃって、頼もしさすら感じています」
出場歌手については、例年通り、「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」の3点をポイントに選考。なかでも「今年の音楽業界は新しい勢力が台頭してきたという印象がありましたので、そのパワーを反映させられればと思います。一方で、やっぱり紅白はこうでなくちゃね、これが紅白だよね、みたい部分も紅白の中にはあると思いますので、その点のバランスも取っていきたい」と語る。
最後に、初めて紅白の制作統括を担うことになった今、自分ならではの紅白の演出へのこだわりについて聞いてみると、「祝祭感ですね」とひと言。
「20代の頃から紅白に関わらせていただいていて、めくるめくスターが一堂に会し、歌を披露する紅白は、制作者としては大変な番組ではあるけれど、その大変さを忘れさせるぐらいの“祝祭感”があると毎回感じていました。紅白だけが持つ“気”とでもいうのでしょうか。いろいろあった1年だったけれど、『やっぱり来年も頑張ろう!』って思っていただける、そういう祝祭的で希望が感じられる紅白でありたいと思いますし、それをぜひ、視聴者の方にも受け止めていただきたいと思っています。あと、NHKホールでの生放送というのは独特の雰囲気があります。僕は『うたコン』で毎週火曜にNHKホールに通っていて、会場への思い入れはNHKの中でも人一倍強いと思っていますので、その魅力もたっぷり伝えられたらと思います。ご期待ください」
取材・文:河上いつ子
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■みんながつながれる番組を作りたい
『第76回NHK紅白歌合戦』の制作統括を務める篠原伸介氏は、1997年にNHKへ入局。地方勤務を経て2001年に東京勤務となってからは、『ふたりのビッグショー』をはじめ、『歌謡コンサート』『うたコン』『SONGS』など音楽番組一筋でキャリアを積んできた。途中、バラエティなど他ジャンルに異動することが多いNHKにおいて珍しいケースなのだという。
紅白においても、東京赴任以降、制作に携わってきたが、放送100年という大きな節目に制作統括という重大な任務を与えられたことについては、「不安の方が正直大きい」と苦笑いする。
「僕は『うたコン』のチーフ・プロデューサーとして毎週“ミニ紅白”みたいなイメージで番組を作ってきたのですが、本家の紅白はやはり特別です。歴代の制作統括を見ても、先輩後輩関係なく、僕が尊敬する制作者が務めてきたポジションですので、当初はそんな重責が自分に務まるのだろうかという不安のほうが正直大きかったし、今もその不安と戦っている状態です。ただラジオが日本で産声をあげてから放送100年となる今年の紅白を担当させていただくということをいい意味でプレッシャーにしていければと思います。今はテレビやラジオ、スマホなどいろいろな視聴スタイルがありますが、みんながつながれる番組が作れたらとやりがいも感じています」
その思いから付けられたテーマが「つなぐ、つながる、大みそか。」だった。
「総合演出のディレクターとも話す中で、やはり“つなぐ”という言葉は、今年のひとつのキーワードになると思いました。何をつなぐのかということについては、あえて書いていないのですが “つなぐ”には音楽、時代、世代、場所などなどいろいろな意味を含んでいます。今は“分断”という言葉で語られる事象も多いですが、いろいろな立場、時代を乗り越えて、みんなが紅白という場でつながりあえる、そんな番組にしたいと思っています」
放送100年というと、これまでを振り返る要素が想像される。それも“つなぐ”要素のひとつだ。
「放送100年にあやかって、今年『うたコン』では“プレイバック紅白”というコーナーを設け、ある年の紅白にタイムスリップして、懐かしい映像や初出場歌手の映像を放送したのですが、多くの視聴者の方からご好評をいただきまして、改めて紅白というコンテンツの強さを感じました。また今年は戦後80年でもあります。紅白がスタートして今年で76年。こうして回を重ねてこられたのも、やはり平和があってこそです。そんな当たり前だけれども尊いことを次の時代につないでいけたらと考えています」
今回は、NHK ONEが10月からスタートして最初の紅白歌合戦。
「今年は新たにインターネットサービスの『NHK ONE』が始まったこともありますし、やはり未来志向でありたいと思います。次の100年も紅白歌合戦が、みなさんに愛していただけるような時代であってほしいという願いも込めて、今年の紅白を制作しています。
■紅白が持つ“祝祭感”と元気のエールを届けたい
今年司会を担うのは、2013年に初司会を務めて以来4回目となる綾瀬はるかと、3年連続となる有吉弘行、初司会の今田美桜、鈴木奈穂子アナウンサーの4人。篠原氏はこんな期待を寄せる。
「綾瀬さんは大河ドラマ『八重の桜』に出演された2013年に初めて司会を務め、NHKの東日本大震災復興支援ソングの『花は咲く』を歌ってくださいました。その後も紅白で何度かお世話になりましたが、いつも一緒にいる人たちを笑顔にしてくれる太陽のような方だと思っていました。今年は大河ドラマ『べらぼう』の語りをはじめ、土曜ドラマ『ひとりでしにたい』でもご活躍されて、NHKでもご縁があったこともあり是非にとお願いしました。とかく時間に追われがちな紅白の中で、綾瀬さんならではの感性と言葉でみんなを和ませ、安らげる雰囲気を醸しだしてくださることを期待しています」
有吉は公式サイトで「3回目の司会ということで、これまでよりは緊張しないでできると思うので、楽しみたいと思います」とコメントを発表しているが、篠原氏もまた、そこに期待していると微笑む。
「テレビで有吉さんが楽しんでいる姿を見ていると、見ているこちら側も楽しくなりますよね。ですので、有吉さんが面白がってくれるような内容や雰囲気を作っていけたらと思っています。同じ広島出身という共通項もある綾瀬さんとともに司会をすることで有吉さんがリラックス出来る空間を作れたらいいなと思います」
そしてもう一人の司会が、今年、連続テレビ小説『あんぱん』での好演も記憶に新しい今田美桜だ。
「僕も“『あんぱん』ロス”になった一人ですが、今年、本当にご活躍の目覚ましかった俳優さんですよね。実は夏の音楽特番『MUSIC GIFT』の際にもNHKホールにお越しいただきました。その時、とっても立ち姿が素敵でNHKホールがお似合いだなと感じました。またお若いのですが、大変落ち着いていらっしゃって、頼もしさすら感じています」
出場歌手については、例年通り、「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」の3点をポイントに選考。なかでも「今年の音楽業界は新しい勢力が台頭してきたという印象がありましたので、そのパワーを反映させられればと思います。一方で、やっぱり紅白はこうでなくちゃね、これが紅白だよね、みたい部分も紅白の中にはあると思いますので、その点のバランスも取っていきたい」と語る。
最後に、初めて紅白の制作統括を担うことになった今、自分ならではの紅白の演出へのこだわりについて聞いてみると、「祝祭感ですね」とひと言。
「20代の頃から紅白に関わらせていただいていて、めくるめくスターが一堂に会し、歌を披露する紅白は、制作者としては大変な番組ではあるけれど、その大変さを忘れさせるぐらいの“祝祭感”があると毎回感じていました。紅白だけが持つ“気”とでもいうのでしょうか。いろいろあった1年だったけれど、『やっぱり来年も頑張ろう!』って思っていただける、そういう祝祭的で希望が感じられる紅白でありたいと思いますし、それをぜひ、視聴者の方にも受け止めていただきたいと思っています。あと、NHKホールでの生放送というのは独特の雰囲気があります。僕は『うたコン』で毎週火曜にNHKホールに通っていて、会場への思い入れはNHKの中でも人一倍強いと思っていますので、その魅力もたっぷり伝えられたらと思います。ご期待ください」
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