エンタメ
2025-12-01 19:00
新たなドラマーとしてZAXを迎え、難波章浩、横山健、ZAXの3人でミニアルバム『Screaming Newborn Baby』を完成させたHi-STANDARD。盟友・恒岡章さんへの想いを込めたレクイエム、NOFXへのリスペクト、そして人々とのつながりを歌った「Our Song」まで、3人が“クリックなし”で臨んだ新作についてたっぷりと語ってくれた。(聞き手:矢島大地)
【写真】CDショップにゲリラ設置されたHi-STANDARD試聴コーナー
■今回は、僕にとっても新鮮なプレイができた手応えがあった(横山健)
――実際、『Screaming Newborn Baby』はものすごいスピードとパワーを感じる楽曲が多いんですが、ZAXさんの音楽的なキャラクターは、ソングライティングにどういう効果をもたらしましたか。
難波 やっぱりパンクロックの2ビートって、パワーが必要なんだよね。そういう意味で、ZAXは俺らより10歳若いということもあって、パワーもあるから。じゃあ速いのを思い切りやれるねっていうのがあったかな。「Song About Fat Mike」はまさにそういう曲だよね。めちゃくちゃ速い。
ZAX でも、ハイスタじゃないとこのプレイは出せなかったですね。そもそもこういう速いビートを叩いたことがなかったから。でも難波さんと健さんと一緒にやる中で、自分が知らなかった自分を引き出してもらった感覚があります。
――その「Song About Fat Mike」は、「Linoleum」を感じるリフと<Ah Ah>のコーラスにNOFXへのオマージュが込められていると思いました。ハイスタが世界に飛び出すキッカケになったFat Mikeへの惜別が、そのままHi-STANDARDのストーリーになっている歌も感動的です。この曲はどういうところから出てきたんでしょうか。
横山 スタジオで「NOFXに捧げる曲を作ろうよ」っていう話をしたところから出てきた曲だから、「Linoleum」のオマージュも<Ah Ah>のコーラスも、あからさまにやろうと思って。NOFXありきの曲だと思う。
難波 そのオマージュにともなって新しい感じが出てきたのも面白かった。2ビートでめっちゃ速いのに、Aメロは漂ってる感じになっていて。あれもMikeがたまにやることなんだよね。
――歌詞に関しては、<人生の時間は有限 形あるものは消える/悲しいけど本当><それでもまだ オレ達は追いかける/あんたの足跡を>(和訳)というラインが印象的で。難波さんが「Moon」で書いた<最高の“ジジイバンド”になってやる>というリリックと同義であり、これもまたハイスタの今の衝動を端的に表している歌だと思いました。
横山 NOFXを見つめることは、俺たちの20代から50代半ばになるまでの30年を見つめるのと同じことだから。そうやってこの30年を思い返したうえで、自分たちが置かれている今の状況――ここまで生きてしまったこと、50代半ばまで生きてきたことを握り締めてみたら、こういう歌になった。50代になって、いつか終わりが来るという事実も痛いほど理解したけど、そのうえで俺たちはまだ行くんだっていう気持ちが端的に入っている歌なんじゃないかな。
――次に「Stand By Me」についてうかがいます。これもツネさんに捧げられた温かいレクイエムであり、速いのに祝歌のようにも聴こえる雄大な1曲だと思いました。<Now look at all the cuts and scars I wear>からの4ラインは健さんが主旋を歌われていますが、この健さんの歌を聴いて、今作のギターが歌いまくっている理由、ギターの歌心が増している理由がわかった気がしたんです。健さんもとにかく歌いたかったんだなと。
難波 今回のギターはすごいよね。「Song About Fat Mike」で言っても、今までならバッキングで来たところを単音でドゥルル!って行ってるから。本当にギターが歌いまくってると思う。
横山 たしかに今回は、僕にとっても新鮮なプレイができた手応えがあって。自分がボーカルを担うバンドを長年やってきたことで、ナンちゃんの脇で弾くギターの意味がハッキリしてきたんだろうね。ギターを弾くことをエンジョイできたと言ったらいいかな。今までもギタリストとしてプレイすることの楽しさはあったし、人がどう思うか以前に自分が最高だと思えるギターを弾きたいとは思ってきたんだけれども、それがここまで明確に形になったことはなかったかもしれない。
――どうして形になったんだと思いますか。
横山 タイミングじゃないかな(笑)。楽曲ができていく中で歌いやすいコード進行を突然閃いたりとか、そういうのは運の要素も多分にあると思うんだけど。でも、クリックを聴かないレコーディング方法が歌うギターに繋がったところがあると思っていて。縦の点で聴こえるノイズがひとつなくなると、6本の弦の中で当てる場所が微妙に変わってくるものなんだよね。そういうことも全部関与して、ギターで歌うっていうことがクリアになったのかもしれない。
■「Our Song」はコード進行がきたときから絶対にいい曲になると思った(ZAX)
――そして最後に、「Our Song」について。これはときを経たハイスタが歌う、新しい「Dear My Friend」だと思いました。ハイスタの言う絆や仲間がどこにあるのかを歌い切っていると感じましたし、どんなに転んでも立ち上がる生き様のもとにユナイトするアティテュードの歌だと思いました。この曲はどういうところから生まれたのかを教えてもらえますか。
ZAX この曲はコード進行がきたときから絶対にいい曲になると思って。最初は8ビートで合わせていったんですけど、3人で練っていく中で今のリズムに固まりましたね。
難波 こういう頭打ちのリズムって、ハイスタの十八番なんだよね。それの一番すごいのを作ってみたい!っていうところから出てきた曲かな。
横山 「SUMMER OF LOVE」とか「NEW LIFE」もそうだよね。頭打ちのリズムが得意というか、好きというか。
――平メロが速くてもサビで頭打ちになる構成は、ハイスタの音楽的な独自性にけっこう寄与していますよね。
難波 あれは何なんだろうね?誰がやり始めたんだっけ。
横山 頭打ちになるとキックとスネアがひっくり返るから、ツネ的にはあんまりやりたくなかったみたいなんだけど。でも俺とナンちゃんが頭打ちのビートを求めたんだよ。
難波 ああ、その辺のことは覚えてる。『LAST OF SUNNY DAY』の頃は何も考えずに作ってたけど、『GROWING UP』をアメリカで制作してから日本でライブをやったら、こんなに短期間で人気出る?っていう状況になってて。その頃から「自分たちだけの歌じゃないんだな」っていう感覚が生まれて、みんなで歌いたいなっていう気持ちが曲に宿るようになっていったんだと思う。それで歌いやすさを意識するようになって、『GROWING UP』以降、サビで頭打ちになる感じが生まれていったのかもしれない。で、それが十八番になったんだろうね。
――貴重な話です、ありがとうございます。「Our Song」には<オレ達の名前は知ってるだろ/まだオレ達の時代は終わっちゃいない>(和訳)というラインがあって。翻すと、Hi-STANDARDを愛してHi-STANDARDの音楽を聴いているヤツがいる間は俺たちは死なないんだというふうにも聴こえてくるんですよね。聴く人がいる間は音楽が死ぬことはないという根源的な意味合いと、まだまだ走っていくハイスタの生き様と。その全部が詰まったすごい歌詞だと思います。
難波 その意味については…もう、ハイスタの本を書いてくれ!(笑)
横山 (笑)。この歌詞はナンちゃんが書いたんだけど、今でもHi-STANDARDがアイデンティティになっている人がたくさんいて、そういう連中を絶対に置いていかないぞっていう姿勢がナンちゃんにはあるんだよね。その気持ちを持って人前に立つことで、ハイスタを好きな人に「YES」と思わせてあげたいっていう。
難波 俺は、いつでも繋がっている感覚があるんだよ。今会えてなくても、遠く離れていても、繋がっている。「Our Song」は、そうやって繋がってる人たちに向けて歌った曲なのよ。今もどこかに、メッセージを待ってるヤツがいる。そこに向けて歌いたかった。
横山 だから、「Our」っていうのは俺たち3人のことだけじゃないよね。あいつらのために出ていってやりたいんだとか、あいつらに着火したんだとか、ナンちゃんからはそういう気持ちを常々感じるんだよね。で、それがナンちゃんの存在理由でもあると思うのよ。みんなの気持ちに応えたいと思い続けるナンちゃんは、すごく優しい人だなって思う。
■こんな俺でも成立しているのは、想いを形にしてくれる健くんがいるから(難波章浩)
――「Our Song」の<オレは転んでは泣いたけど/いつでも立ち上がる>(和訳)というラインを聴いて、改めてHi-STANDARDは「なかなか勝てねえな」「なかなか届かねえな」と思っている人に着火してくれるバンドだと思ったんです。たとえば「Dear My Friend」には<now you have your freedom>という言葉がありますが、恒久的な自由という概念があるかどうかじゃなく、どんなに苦しいときでも自分だけの自由が絶対にあるんだということを歌い続けているから、届くかわからないものだとしても手を伸ばし続けたいと思わせてくれる。そのうえで今作は、3人の人生を自分で転がし続けるんだという原点たるエモーションが叩き込まれている曲が多いから、それが人を鼓舞する衝動になっていくと思うんですよ。
横山 それを聞いて思ったけど…今言ってくれたことは、そのままナンちゃんの人間像に当てはまるんだよね。失礼だけど、勝てないヤツに火を点けられるのは、ナンちゃん自身が勝てないヤツだからだと思うのよ。
難波 俺も思うよ。ハイスタはこんなに有名なのに、俺は全然褒められないから(笑)。あと何だっけ、「浮かばれない」とか言われることもあるもんね。これは何なんだろうなって思うんだけど。
横山 SNSやってるからじゃない?
難波 そうかも!(笑)
横山 ははははははは。でも、今の話を聞いてまたハッとした。改めて、ナンちゃんの精神性が前に出ているのがハイスタなんだよ。とにかくピュアでしつこいバンド。でね、つくづく思うけど、ナンちゃんがハイスタのガソリンなんだよね。要は、天然の資源。対して僕とかは、ちょっとシステム化されたエンジンとしてここにいて。片っぽだけじゃ動けないけど、でもやっぱりピュアなガソリンがあるからハイスタは進んでこられたんだと思う。ピュアであるがゆえに傷ついたり転んだりするんだけど、そのピュアな力って並じゃないんだよ。
難波 ピュア過ぎるヤツは大抵浮かばれないもんね。ということは、俺は浮かばれてるほうなのよ。傷つきやすいから本当は世にも出られない人間のはずだし、そもそも俺はベーシストとしてバンドを始めてるから、脇役でいたかったはずなの。そんな俺でも成立しているのは、想いを形にしてくれる健くんがいるからなんだよね。だからやっぱり、健くんがいないと俺は成り立たないんだよ。
横山 それで言うとZAXは…車体かもね。俺らを形作ってくれているボディそのものが、ZAXなのかもしれない。
難波 あるいはディーゼルエンジンかな?
横山 いや、エンジンは俺でしょ?え、軽油!?
ZAX はははははは!
難波 何が何だかわからなくなったけど(笑)、でもこういうバランスで成立してるのがハイスタなんだと思う、本当に。
――今作には、今ゲラゲラ笑っていた3人の姿がそのまま映った「A Ha Ha」みたいな曲もありますよね。ここからは笑って行くんだという衝動を感じることにも、ワクワクしています。
難波 ありがとう。最強の爺ちゃんバンドを目指して、まだまだ行くよ!
(聞き手:矢島大地)
【プロフィール】
1991年から活動を開始。『LAST OF SUNNY DAY』(94年)、『GROWING UP』(95年)、『ANGRY FIST』(97年)といったミニ/フルアルバムをリリースし、97年には主催フェス『AIR JAM』をスタート。99年に自主レーベル『PIZZA OF DEATH RECORDS』を設立してアルバム『MAKING THE ROAD』をリリースし、インディーズとしては異例のミリオンヒットを達成した。2000年の『AIR JAM 2000』を最後に活動休止し、11年に東日本大震災の復興支援を目的とした『AIR JAM 2011』を開催して復活。16年に16年半ぶりの新作『ANOTHER STARTING LINE』をリリースし、その後も『AIR JAM 2016』『AIR JAM 2018』の開催や、18年ぶりとなるアルバム『THE GIFT』をリリースした。23年2月にドラマーの恒岡章さんが死去。4月に恒岡さんの遺作となる「I'M A RAT」を配信リリースし、6月にサポートドラマーを迎えて『SATANIC CARNIVAL 2023』に出演した。今年9月にThe BONEZ/Pay money To my Painのドラマー・ZAXが正式加入することが発表され、11月26日にアルバム作品としては8年ぶりとなるミニアルバム『Screaming Newborn Baby』をリリース。12月よりツアー『Screaming Newborn Baby Tour』を開催する。
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――実際、『Screaming Newborn Baby』はものすごいスピードとパワーを感じる楽曲が多いんですが、ZAXさんの音楽的なキャラクターは、ソングライティングにどういう効果をもたらしましたか。
難波 やっぱりパンクロックの2ビートって、パワーが必要なんだよね。そういう意味で、ZAXは俺らより10歳若いということもあって、パワーもあるから。じゃあ速いのを思い切りやれるねっていうのがあったかな。「Song About Fat Mike」はまさにそういう曲だよね。めちゃくちゃ速い。
ZAX でも、ハイスタじゃないとこのプレイは出せなかったですね。そもそもこういう速いビートを叩いたことがなかったから。でも難波さんと健さんと一緒にやる中で、自分が知らなかった自分を引き出してもらった感覚があります。
――その「Song About Fat Mike」は、「Linoleum」を感じるリフと<Ah Ah>のコーラスにNOFXへのオマージュが込められていると思いました。ハイスタが世界に飛び出すキッカケになったFat Mikeへの惜別が、そのままHi-STANDARDのストーリーになっている歌も感動的です。この曲はどういうところから出てきたんでしょうか。
横山 スタジオで「NOFXに捧げる曲を作ろうよ」っていう話をしたところから出てきた曲だから、「Linoleum」のオマージュも<Ah Ah>のコーラスも、あからさまにやろうと思って。NOFXありきの曲だと思う。
難波 そのオマージュにともなって新しい感じが出てきたのも面白かった。2ビートでめっちゃ速いのに、Aメロは漂ってる感じになっていて。あれもMikeがたまにやることなんだよね。
――歌詞に関しては、<人生の時間は有限 形あるものは消える/悲しいけど本当><それでもまだ オレ達は追いかける/あんたの足跡を>(和訳)というラインが印象的で。難波さんが「Moon」で書いた<最高の“ジジイバンド”になってやる>というリリックと同義であり、これもまたハイスタの今の衝動を端的に表している歌だと思いました。
横山 NOFXを見つめることは、俺たちの20代から50代半ばになるまでの30年を見つめるのと同じことだから。そうやってこの30年を思い返したうえで、自分たちが置かれている今の状況――ここまで生きてしまったこと、50代半ばまで生きてきたことを握り締めてみたら、こういう歌になった。50代になって、いつか終わりが来るという事実も痛いほど理解したけど、そのうえで俺たちはまだ行くんだっていう気持ちが端的に入っている歌なんじゃないかな。
――次に「Stand By Me」についてうかがいます。これもツネさんに捧げられた温かいレクイエムであり、速いのに祝歌のようにも聴こえる雄大な1曲だと思いました。<Now look at all the cuts and scars I wear>からの4ラインは健さんが主旋を歌われていますが、この健さんの歌を聴いて、今作のギターが歌いまくっている理由、ギターの歌心が増している理由がわかった気がしたんです。健さんもとにかく歌いたかったんだなと。
難波 今回のギターはすごいよね。「Song About Fat Mike」で言っても、今までならバッキングで来たところを単音でドゥルル!って行ってるから。本当にギターが歌いまくってると思う。
横山 たしかに今回は、僕にとっても新鮮なプレイができた手応えがあって。自分がボーカルを担うバンドを長年やってきたことで、ナンちゃんの脇で弾くギターの意味がハッキリしてきたんだろうね。ギターを弾くことをエンジョイできたと言ったらいいかな。今までもギタリストとしてプレイすることの楽しさはあったし、人がどう思うか以前に自分が最高だと思えるギターを弾きたいとは思ってきたんだけれども、それがここまで明確に形になったことはなかったかもしれない。
――どうして形になったんだと思いますか。
横山 タイミングじゃないかな(笑)。楽曲ができていく中で歌いやすいコード進行を突然閃いたりとか、そういうのは運の要素も多分にあると思うんだけど。でも、クリックを聴かないレコーディング方法が歌うギターに繋がったところがあると思っていて。縦の点で聴こえるノイズがひとつなくなると、6本の弦の中で当てる場所が微妙に変わってくるものなんだよね。そういうことも全部関与して、ギターで歌うっていうことがクリアになったのかもしれない。
■「Our Song」はコード進行がきたときから絶対にいい曲になると思った(ZAX)
――そして最後に、「Our Song」について。これはときを経たハイスタが歌う、新しい「Dear My Friend」だと思いました。ハイスタの言う絆や仲間がどこにあるのかを歌い切っていると感じましたし、どんなに転んでも立ち上がる生き様のもとにユナイトするアティテュードの歌だと思いました。この曲はどういうところから生まれたのかを教えてもらえますか。
ZAX この曲はコード進行がきたときから絶対にいい曲になると思って。最初は8ビートで合わせていったんですけど、3人で練っていく中で今のリズムに固まりましたね。
難波 こういう頭打ちのリズムって、ハイスタの十八番なんだよね。それの一番すごいのを作ってみたい!っていうところから出てきた曲かな。
横山 「SUMMER OF LOVE」とか「NEW LIFE」もそうだよね。頭打ちのリズムが得意というか、好きというか。
――平メロが速くてもサビで頭打ちになる構成は、ハイスタの音楽的な独自性にけっこう寄与していますよね。
難波 あれは何なんだろうね?誰がやり始めたんだっけ。
横山 頭打ちになるとキックとスネアがひっくり返るから、ツネ的にはあんまりやりたくなかったみたいなんだけど。でも俺とナンちゃんが頭打ちのビートを求めたんだよ。
難波 ああ、その辺のことは覚えてる。『LAST OF SUNNY DAY』の頃は何も考えずに作ってたけど、『GROWING UP』をアメリカで制作してから日本でライブをやったら、こんなに短期間で人気出る?っていう状況になってて。その頃から「自分たちだけの歌じゃないんだな」っていう感覚が生まれて、みんなで歌いたいなっていう気持ちが曲に宿るようになっていったんだと思う。それで歌いやすさを意識するようになって、『GROWING UP』以降、サビで頭打ちになる感じが生まれていったのかもしれない。で、それが十八番になったんだろうね。
――貴重な話です、ありがとうございます。「Our Song」には<オレ達の名前は知ってるだろ/まだオレ達の時代は終わっちゃいない>(和訳)というラインがあって。翻すと、Hi-STANDARDを愛してHi-STANDARDの音楽を聴いているヤツがいる間は俺たちは死なないんだというふうにも聴こえてくるんですよね。聴く人がいる間は音楽が死ぬことはないという根源的な意味合いと、まだまだ走っていくハイスタの生き様と。その全部が詰まったすごい歌詞だと思います。
難波 その意味については…もう、ハイスタの本を書いてくれ!(笑)
横山 (笑)。この歌詞はナンちゃんが書いたんだけど、今でもHi-STANDARDがアイデンティティになっている人がたくさんいて、そういう連中を絶対に置いていかないぞっていう姿勢がナンちゃんにはあるんだよね。その気持ちを持って人前に立つことで、ハイスタを好きな人に「YES」と思わせてあげたいっていう。
難波 俺は、いつでも繋がっている感覚があるんだよ。今会えてなくても、遠く離れていても、繋がっている。「Our Song」は、そうやって繋がってる人たちに向けて歌った曲なのよ。今もどこかに、メッセージを待ってるヤツがいる。そこに向けて歌いたかった。
横山 だから、「Our」っていうのは俺たち3人のことだけじゃないよね。あいつらのために出ていってやりたいんだとか、あいつらに着火したんだとか、ナンちゃんからはそういう気持ちを常々感じるんだよね。で、それがナンちゃんの存在理由でもあると思うのよ。みんなの気持ちに応えたいと思い続けるナンちゃんは、すごく優しい人だなって思う。
■こんな俺でも成立しているのは、想いを形にしてくれる健くんがいるから(難波章浩)
――「Our Song」の<オレは転んでは泣いたけど/いつでも立ち上がる>(和訳)というラインを聴いて、改めてHi-STANDARDは「なかなか勝てねえな」「なかなか届かねえな」と思っている人に着火してくれるバンドだと思ったんです。たとえば「Dear My Friend」には<now you have your freedom>という言葉がありますが、恒久的な自由という概念があるかどうかじゃなく、どんなに苦しいときでも自分だけの自由が絶対にあるんだということを歌い続けているから、届くかわからないものだとしても手を伸ばし続けたいと思わせてくれる。そのうえで今作は、3人の人生を自分で転がし続けるんだという原点たるエモーションが叩き込まれている曲が多いから、それが人を鼓舞する衝動になっていくと思うんですよ。
横山 それを聞いて思ったけど…今言ってくれたことは、そのままナンちゃんの人間像に当てはまるんだよね。失礼だけど、勝てないヤツに火を点けられるのは、ナンちゃん自身が勝てないヤツだからだと思うのよ。
難波 俺も思うよ。ハイスタはこんなに有名なのに、俺は全然褒められないから(笑)。あと何だっけ、「浮かばれない」とか言われることもあるもんね。これは何なんだろうなって思うんだけど。
横山 SNSやってるからじゃない?
難波 そうかも!(笑)
横山 ははははははは。でも、今の話を聞いてまたハッとした。改めて、ナンちゃんの精神性が前に出ているのがハイスタなんだよ。とにかくピュアでしつこいバンド。でね、つくづく思うけど、ナンちゃんがハイスタのガソリンなんだよね。要は、天然の資源。対して僕とかは、ちょっとシステム化されたエンジンとしてここにいて。片っぽだけじゃ動けないけど、でもやっぱりピュアなガソリンがあるからハイスタは進んでこられたんだと思う。ピュアであるがゆえに傷ついたり転んだりするんだけど、そのピュアな力って並じゃないんだよ。
難波 ピュア過ぎるヤツは大抵浮かばれないもんね。ということは、俺は浮かばれてるほうなのよ。傷つきやすいから本当は世にも出られない人間のはずだし、そもそも俺はベーシストとしてバンドを始めてるから、脇役でいたかったはずなの。そんな俺でも成立しているのは、想いを形にしてくれる健くんがいるからなんだよね。だからやっぱり、健くんがいないと俺は成り立たないんだよ。
横山 それで言うとZAXは…車体かもね。俺らを形作ってくれているボディそのものが、ZAXなのかもしれない。
難波 あるいはディーゼルエンジンかな?
横山 いや、エンジンは俺でしょ?え、軽油!?
ZAX はははははは!
難波 何が何だかわからなくなったけど(笑)、でもこういうバランスで成立してるのがハイスタなんだと思う、本当に。
――今作には、今ゲラゲラ笑っていた3人の姿がそのまま映った「A Ha Ha」みたいな曲もありますよね。ここからは笑って行くんだという衝動を感じることにも、ワクワクしています。
難波 ありがとう。最強の爺ちゃんバンドを目指して、まだまだ行くよ!
(聞き手:矢島大地)
【プロフィール】
1991年から活動を開始。『LAST OF SUNNY DAY』(94年)、『GROWING UP』(95年)、『ANGRY FIST』(97年)といったミニ/フルアルバムをリリースし、97年には主催フェス『AIR JAM』をスタート。99年に自主レーベル『PIZZA OF DEATH RECORDS』を設立してアルバム『MAKING THE ROAD』をリリースし、インディーズとしては異例のミリオンヒットを達成した。2000年の『AIR JAM 2000』を最後に活動休止し、11年に東日本大震災の復興支援を目的とした『AIR JAM 2011』を開催して復活。16年に16年半ぶりの新作『ANOTHER STARTING LINE』をリリースし、その後も『AIR JAM 2016』『AIR JAM 2018』の開催や、18年ぶりとなるアルバム『THE GIFT』をリリースした。23年2月にドラマーの恒岡章さんが死去。4月に恒岡さんの遺作となる「I'M A RAT」を配信リリースし、6月にサポートドラマーを迎えて『SATANIC CARNIVAL 2023』に出演した。今年9月にThe BONEZ/Pay money To my Painのドラマー・ZAXが正式加入することが発表され、11月26日にアルバム作品としては8年ぶりとなるミニアルバム『Screaming Newborn Baby』をリリース。12月よりツアー『Screaming Newborn Baby Tour』を開催する。
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