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「演歌や歌謡曲も世界に出ていくチャンスが大いにある」一点ものの演出を模索するテレビ東京の音楽番組【インタビュー】

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2025-11-19 11:00
「演歌や歌謡曲も世界に出ていくチャンスが大いにある」一点ものの演出を模索するテレビ東京の音楽番組【インタビュー】
12月に1週間にわたって演歌と歌謡曲で綴る『BSテレ東 歌謡ナイト!』を放送(C)テレビ東京
 1968年にスタートし、今年で58回目を迎える『年忘れにっぽんの歌』や『日本作詩大賞』『徳光和夫の名曲にっぽん』といった演歌・歌謡曲に特化した長寿番組をはじめ、月曜深夜にレギュラー放送中の『プレミアMelodiX!』、毎年恒例の大型音楽特番『テレ東音楽祭』など、独自の視点と演出で多彩な歌番組を取り揃えているテレビ東京。音楽市場の変化をとらえ、テレビ東京ならではの番組作りで勝負すると話す担当者に、J-POPやK-POPが全盛の今、演歌・歌謡曲をメインにした番組作りへのこだわりや音楽番組への思いを聞いた。

【写真】12月を彩るテレ東の音楽特番キービジュアル

■“推し活“の波は演歌・歌謡界にも。若手歌手の活躍を受け、番組作りも変化

 「今、演歌・歌謡曲のジャンルには若い歌手の方たちが増え、皆さん本当に努力されていて、現場でご一緒するたびに力を上げ、勢いを増していることを実感しています」

 こう語るのは、テレビ東京制作局 クリエイティブ制作チームの大山比桃美氏。その熱狂の背景には若手歌手たちの目覚ましい活躍がある。「コンサートでは、下の年代のファンが確実に増えていて、非常に盛り上がりを感じている」ことから、演歌・歌謡曲の番組作りでは、若手歌手の起用や、若い世代の視聴者層を意識した演出をしているという。

 日本を代表する歌手が競演し、いまや大みそか恒例の音楽特番『年忘れにっぽんの歌』でも、昨年は真田ナオキ、辰巳ゆうと、新浜レオン、青山新、田中あいみの若手歌手5人が初出場。フレッシュな歌声で名曲のカバーを披露するなど、個性あふれるパフォーマンスを繰り広げた。

 さらに、今年初開催された国内最大規模の音楽賞である『MUSIC AWARDS JAPAN』が「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに掲げているが、今年の音楽市場の変化のひとつに「日本のエンタメを海外に向けて発信する」という動きが大きくなってきたことをあげるのは、チーフプロデューサーの星俊一氏。テレビ東京では近年、韓国で演歌・歌謡曲の“トロット”が大ブームとなっていることを受けて、韓国発大人気歌謡オーディション番組の日本版『ミスタートロットジャパン』を10月12日にテレビ東京で初放送。全世界から選ばれた男性ボーカリスト74人が1980年代~2000年代の日本の歌謡曲を課題曲に競い合ったが、「演歌や歌謡曲も世界に出ていくチャンスが大いにある時代」と星氏は今をとらえる。

 また、星氏は、近年の音楽市場の変化について、「新曲を聴くモチベーションが上がってきていると感じている」とも語る。

 「最近、特にJ-POPやK-POPでは新曲が聴きたいというムードを強く感じます。演歌・歌謡曲においても、過去のVTRなどで有名な曲を流せば視聴率が上がるという経験値はあまり効かなくなってきていると感じています」(星氏)

 その理由を星氏はこう分析する。

 「近年、タワーレコードが大幅な増益を達成したそうですが、推し活がブームとなり、推しのグッズを一つでも多くコレクションしたいという思いからCDを購入する人が増えているのと同じように、推しの新曲を1秒でも早く聴きたいという人が多いのだと思います。その流れを受けて、今はジャンルを問わず、新曲の力が上がってきていることを実感しています」(星氏)

■他局では見られない“一点もの”の演出を常に模索

 そのファン心理をいち早く取り込み、具現化したのが、『プレミアMelodiX!』(毎週月曜深夜)だ。11月3日より「誰もが知る名曲は、初めは誰も知らない新曲だった」をコンセプトに、“完全初公開の新曲”を届ける新企画をスタート。初回は、同番組に9年ぶりの出演となる結成13年目のsumikaがスタジオに招いたファンを前に新曲「Beatnik-Horse-」を初披露した。プロデューサーを務めた宇賀神敬行氏は、「新曲を心待ちにしていたファンとアーティストの両方に喜んでいただけるオンリーワンの企画ができた」と顔をほころばせる。

 「『プレミアMelodiX!』は深夜の番組なので、どちらかというとこれからの人をメインに、人柄や新曲に興味を持っていただけることを意識して番組を制作してきましたが、sumikaさんはテレビに出始めたころ、当番組にお世話になったからということで、快くこの企画への出演を受けてくださいました。テレビ初披露といっても、ミュージックビデオ(MV)が公開されていたり、すでに自身のラジオ番組で流されていたりと、実際は“初”ではないことも多いのですが、今回、sumikaさんの新曲はうちの番組が完全初公開の場となりました。アーティストさんがこの番組を恩義に思ってくれていたということを知ってうれしかったですし、いつもの番組制作では、ファンの方が喜んでいる姿を目の当たりにすることもほとんどないので、本当に新鮮な体験ができました」(宇賀神氏)

 『プレミアMelodiX!』は2001年にスタートした『MUSIX!』が前身。その後、月1回放送の『月刊MelodiX!』となり、現在の『プレミアMelodiX!』にリニューアルされて今年で12年。同番組でのアーティストとのつながりは2014年にスタートした『テレ東音楽祭』へのパイプ作りにもなっている。レギュラーの音楽番組を作り続ける重要性について宇賀神氏は強調する。

 「音楽番組は非常に特殊な分野で、カメラマン、ディレクターなどある程度、経験を積まないと担当することができません。その分野をテレ東内で伝承していくという意味合いも番組作りにおいてはとても大事にしています」(宇賀神氏)

 さらにそこに加わっているのが、テレ東らしさを生むバラエティーの視点だ。宇賀神氏は続ける。

 「純粋に歌だけをベストな状態で収録しようとする場合、カメラの台数、特殊な機材など、予算面でテレ東は他局に負けてしまいます。では、“自分たちの土俵ではないところ”で勝負できるようにするにはどうしたらよいのか。テレ東はひとりのディレクターが、たとえば音楽番組もバラエティーも兼務するなど、基本“二足の草鞋”なので、僕も『ピラメキーノ』を皮切りに、現在は『タクうま〜タクシー運転手さん一番うまい店連れてって〜』などのバラエティー番組にも携わっています。星も大山もそれは同じ。そこで培われたアイデアがテレ東ならではの特徴かもしれません。技術的に可能かどうか、演者さんが受け入れてくれるかどうか、といった問題が生じることもありますが、そのハードルを乗り越えて、他局では見られない一点もののベストな演出を常に模索しています」(宇賀神氏)

■年末には1週間にわたり演歌・歌謡曲で綴る特番を放送

 今年、新たなチャレンジとなるのが、58回目を迎える『年忘れにっぽんの歌』だ。1968年のスタートから生放送だった同番組が事前収録になって10年。社内に生放送を推す声もあがり、その上で今年は生放送と事前収録の組み合わせに取り組むという。

 「テレビを観ているその瞬間に、アーティストが自分に向かって歌ってくれるという意味では歌番組と生放送は非常に相性がよいと思います。ただ近年は、巧妙な演出で生放送に見えるような収録の仕組みも増えています。では、生放送で制作するという意味合いがきちんと伝わるような環境をどう用意するのか。たとえば大みそからしい人混みなど、外でのロケーションは歌手の方にとっては負担になりますが、一点ものの演出の実現には必要かもしれませんし、今、一生懸命考えているところです」(宇賀神氏)

 12月には、今年も1週間にわたり演歌と歌謡曲で綴る『BSテレ東 歌謡ナイト!2025』が放送される。特に今年はBSテレ東開局25周年を記念して、『池上彰×徳光和夫 ヒット曲が語る昭和100年史』を放送。さらに『日本歌手協会歌謡祭』『武田鉄矢の昭和は輝いていた 特別編 昭和歌謡100年~名曲を生んだ黄金タッグと宿命のライバル~』なども揃う。

 さらに12月6日放送の『第58回日本作詩大賞』では18作品がノミネートされ、放送時間を昨年より1時間延長。冒頭の大山氏の言葉どおり、若手の台頭がめざましく、大月みやこ、川中美幸、中村美律子、吉幾三といった大御所や、水森かおり、市川由紀乃、山内惠介、丘みどり、純烈、三山ひろしといった紅白出場を果たしている実力派中堅歌手に加え、真田ナオキ、辰巳ゆうと、二見颯一、新浜レオン、彩青、青山新、木村徹二、梅谷心愛らが名を連ねる。

 「昨年、田中あいみさんが大賞を受賞したことから、若手の人たちの間で『今年は自分が!』と士気が上がっているのを感じています。そのムードもお届けできたらと考えていますので、ぜひそういう目線でも番組を楽しんでいただけたらと思います」(大山氏)

 SNSやYouTube、サブスク配信などにより音楽との接し方が多様化するなか、音楽番組においても同局の企業ミッションである<「あたりまえ」に挑み、まだ見ぬ「おもしろい」を共に創る。>を旗頭に番組作りに注力するテレビ東京。近年はその独特の番組作りで、数々の名バラエティー番組を生み出してきたが、その感性がどう音楽番組に生かされるのか。特番が多数放送される年末が楽しみだ。

文:河上いつ子

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