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「端島が歩んできた歴史は、“未来の記憶”」日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』端島監修・黒沢永紀氏が端島と東京を重ねる理由

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2024-11-24 07:00

TBS日曜劇場枠で放送が始まった『海に眠るダイヤモンド』。神木隆之介を主演に据え、1950年代の端島(長崎県)と現代の東京を結ぶストーリーが描かれる。


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本作の端島監修を務めるのは、これまでも端島に関する多くの書籍や映像作品を発表し、端島の伝道師として活動している黒沢永紀氏。幼少から貝塚や廃墟を探索していたというが、実は黒沢氏自身は東京都生まれ。そんな彼は何がきっかけで端島の伝道師となったのだろうか。ここでは黒沢氏のエピソードとともに、人々を惹きつける端島の魅力に注目してみよう。


「この島は一体何なんだ…!」黒沢氏が端島に惹かれたきっかけ

黒沢氏が初めて端島を訪れたのは2002年。「僕は1974年の端島炭鉱閉山のニュースも新聞で読んだ世代。子どもの頃からの端島の存在を知っていたので、期待に胸を膨らませて端島を訪れたら、瓦礫だらけなうえに、残された家財が塩漬けになってカビ臭かったのが印象的でした。正直こんなところ二度と来ないだろうなって(笑)」と、最初の印象を明かす。


その後、映像作品で端島が取り上げられたことがなかったことを知り、自ら制作に挑戦することに。そこで改めて端島のことを調べ始めたのが、伝道師になる第一歩だったという。


制作にあたって端島に関する資料を探し始めた黒沢氏。しかし、どこを探してもなかなか参考になるものが見つからない。最終的には国会図書館にまで足を運んでやっと見つかったのは、端島を所有していた企業の社史、端島の隣にある高島の炭鉱史、そして端島の建築物を調査した本の3つのみ。鉄筋コンクリート造高層住宅、海底水道、屋上庭園、ドルフィン桟橋など、数々の“日本初”が生まれた場所なのに…「この島は一体何なんだ…!」と、謎に包まれた島の存在に心を惹かれたのだという。


さらに黒沢氏は「前例のないところから独自のやり方で数々の無理難題を乗り越え、生き残るために戦ってきた人々の力こそが端島の一番のロマンです」と、自らの調査を振り返った。


ついにフィクションとして映像化された端島「これが観たかった」

これまでルポやドキュメンタリー作品、さらには公式HPやイベントなど、さまざまな媒体を通して端島の魅力を伝えてきた黒沢氏。あらゆるメディアを経験したうえで、より多くの人へ端島の魅力を伝えるために近年考えていたのが、まさにフィクション作品制作への挑戦だった。「これまで誰もやっていなかったから僕がやろうと思って。でも、僕にはフィクション制作の経験がなかったので、試しにプロットを書いてみたまでで終わっていました。ちょうどその頃に本作のお話をいただき、僕としてもモチーフにするだけではなく端島としてしっかり描かれるドラマが観たかったので、ぜひ協力させて欲しいとお返事しました」と、作品への思いを吐露。


しかし、当初はここまで深く緻密に描かれるとは思っていなかったという。「脚本の野木(亜紀子)さんも取材を重ねるうちに、端島の歴史の奥深さや当時の人々の様子に魅力を感じて、より厚く描きたいと思われたのかもしれませんね」と、黒沢氏自身が端島の魅力を発見したときの思いと重ねた。


端島の運命と同じことが東京にも起こりうる?

取材中「端島が歩んできた歴史は、“未来の記憶”ではないかとよく思います」とふと口にした黒沢氏。これからの日本が体験するかもしれない未来を端島はすでに経験したのだという。


端島には都市機能が凝縮されており何でも揃っているが、島に水源や牧場、畑、田んぼがあるわけではなく、インフラや食料は島外のリソース頼り。そんな外部供給ありきの生活は、東京、ひいては大都市の構造に近いといえる。「水道やガス、そして電気などすべてのライフラインが外部供給。これらがストップしたら、まったく生活ができなくなります。そういう意味では、約100年前に同じことを未来都市として経験していたのが端島なんです」。


端島炭鉱は資源が枯渇して閉山したわけではない。安全かつ利潤を生み出す採炭ができなくなっただけなのだ。「まだまだ採掘できる石炭はありましたが、当時の技術開発状況や費用対効果など、さまざまな要因が重なり閉山が決まりました。悪く言えば、見捨てられたのかもしれません。でも、東京だって価値がなくなったら見捨てられて、都市機能が別のところへ移る可能性があります。人間ならそういう発想もしかねないでしょう。だからこそ、現代に生きる私たちが端島から学ぶことはたくさんあるんです」と、黒沢氏は端島と東京を重ね合わせる。


端島炭鉱はダイナミックな産業革命の時代を牽引してきたが、島民は日々懸命に生活していただけで、こうした未来につながるとは思ってもいなかっただろう。でも彼らが過ごした日々や思いは、さまざまなかたちで着実に今に繋がっている。「コントラストの強い近代化の光と影を色濃く反映する端島を通して、今の時代がどうやってできあがったのかを知るきっかけになれば」と黒沢氏は伝道師活動への思いを明かし、力強くこう続ける。


「どれだけ素敵なドラマでも、いつの間にかタイトルを忘れてしまっていることってありますよね。でも本作はその一線を越えて、皆さんの記憶に一生残るような作品になるのではないか。そうなってくれたらうれしいなと思っています」。


不思議な魅力が詰まった端島は今日も多くの人々を魅了している。その理由は、おそらく今でもそこにしかと眠る当時の人々の営みや切なくも温かい思い出にある。そんな端島の人々の激動の人生は、劇中の現代に生きるホスト・玲央だけではなく、視聴者の人生をも変えるきっかけになるかもしれない。


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