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日産の名車「ダットサン」を学生らが7年かけ修復 日本の自動車産業を見直す「新たな気づき」も

総合
2024-11-28 18:02

日産のルーツとなったブランド「ダットサン」。


【画像】修復が終わり、キャンパス内を走るダットサン17型ロードスター


100年以上の歴史のなかで「サニー」「ブルーバード」「フェアレディ」などの人気モデルを生み出し、世界で愛されるブランドとなりました。


2022年に「ダットサン」の名称での生産が終了した今でも、根強い人気を誇っています。


そんな中、「卒業研究」として87年前に製造されたダットサンのレストア(修復)を手がけてきた大学があります。


学生たちがリレーをつないで、7年越しでレストアに成功。


サビだらけだった車がエンジン音を響かせ、走り出すまでになりました。


7年間、学生たちを見守ってきた教員と、大学に亡き夫の愛車を寄贈した女性に話を聞きました。


「エンジンがかかった瞬間、鳥肌が……」

ダットサンのレストアを手がけてきたのは、関東学院大学理工学部で自動車を研究する学生たち。


先進機械コースの武田克彦准教授が指導する4年生が毎年、卒業研究として、寄贈された1937年製造の「ダットサン17型ロードスター」のレストア(修理)を行ってきました。


関東学院大学理工学部 武田克彦 准教授:
「次はここをもっと直してくれとか調べてくれとか、バトンタッチしながら継続してやってきました。7年ちょっとですね」


きっかけは、車雑誌「SUPER カーグラフィック」の元編集長・伊藤和彦さんです。


当時、伊藤さんが大学で非常勤講師として勤務していた縁で、「実際の車を通して学ぶ機会を与えたい」と、伊藤さんを介して古いダットサンを譲ってもらえることになりました。


しかし、届いたダットサン17型ロードスターの状態はよいものではありませんでした。


サビもひどく、シリンダーのふたを開けるのも大変な作業だったそう。


毎年、4年生が、少しずつ修復し、研究論文を書いて、続きは後輩に託すという形でバトンを繋ぎ、ついに、今年完了しました。


レストアが完了し、エンジンがかかった瞬間のことを、武田准教授に聞きました。

関東学院大学理工学部 武田克彦 准教授:
「実験室から、クランキングという、エンジンを動かすためのセルモーターを電動工具で無理やり回す、キュンキュンキュンという音が響いて聞こえてきてたんですけども。


長い時間ずっと回していたのですが、なんの予告もなく急にバッと火が入りまして、ガラガラガラとエンジンがかかった音が聞こえてきました。長く眠ってたエンジンが、『目覚めた!』っていう瞬間に、本当に鳥肌が立ちました」


修復が完了したダットサンはオープンキャンパスでも一般公開されました。


「本当に動くの?」と興味津々の車好きの方がとても多かったそうです。


復活したダットサンがキャンパス内を走行する映像も公開されています。


亡き夫の愛車を寄贈「主人もきっと喜んでる」

もともとこの車は、横浜市在住の田中紀久子さんの夫が所有していたものでした。


夫はクラシックカーのコレクターで、ダットサンを4台所有していましたが、夫が亡くなった後、田中さんは「どうしたものか」と困っていたそうです。


田中さんにお話をうかがいました。

ダットサン17型ロードスターを譲った田中紀久子さん:
「興味のある人だけには宝だけど、大きくて誰も乗らなくて、汚れてて場所を取るという、私のような者には何にもならないものでしたからね。


粗大ごみの日に、(別のごみを回収してもらおうとしていたのに)ダットサンを見て『これはレッカー車がないと捨てられないですよ、業者に頼んでください』って言われたことがあるくらい、もうボロくてサビだらけ。だから、寄贈することになったときには、『ああよかった』と思っていました」


レストアが完了した夫の愛車を見たときのことを、「感動した」と田中さんは振り返ります。


ダットサン17型ロードスターを譲った田中紀久子さん:
「出来上がったら、あんなにきれいになって。本当にあれはね、マイフェアレディですよ。あんな貴婦人に生まれ変わったんですからね」


「若い学生たちの経験や勉強の役に立つという新しい人生を、ダットサンに渡せたことがすごくうれしい」と語る田中さん。


生まれ変わったダットサンの写真を、夫の位牌の近くに飾っています。「主人もきっと喜んでいるわ」と、愛車の新しい門出に晴れやかな様子でした。


修復の過程で判明した「新たな気づき」

関東学院大学でのレストアの過程からは、日本の自動車産業を見直す「新たな気づき」も生まれました。


武田准教授によると、もともとダットサン17型ロードスターなどはイギリスの名車「オースチン7」を模倣したものではないか、といわれてきました。


しかし、武田准教授は「見比べて、明らかに違うというところを発見した」と語ります。


エンジンの燃費が悪く、出力も出ないといわれていたオースチン7とは異なる設計によって、より燃費の良いエンジンになっていたといいます。

関東学院大学理工学部 武田克彦 准教授:
「オリジナルな思想を持った設計がなされている、というところを、私たちは明らかにできたんじゃないかな、という風にも思います。今の日本の自動車の低燃費を追求する設計の、その第一歩になっている車なのではないでしょうか」


また、ダットサンの修復は、日本のものづくりのこれからを担う若い世代にとって、非常に大きな成果があった、と武田准教授は言います。


関東学院大学理工学部 武田克彦 准教授:
「本学の卒業生も、自動車メーカーや部品メーカーなどに就職する人が多いので、『当時、日本の技術は欧米を真似したもの』だといわれてきたことを否定できたというところも、私たちのプライドにもなりました。


何よりもダットサンを通して、『やっぱり車好きだな、楽しいな』っていう風に思ってくれた卒業生たちが、これから先も、趣のある自動車を作ってくれる、そういうエンジニアになってくれるんじゃないかなと、期待したいと思います」


87年前のエンジニアたちの思想、独自の工夫や設計技術の刺激を、直接受けた次の世代のエンジニアたちが、また日本に名車を生んでくれるのを楽しみにしたいですね!


(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)


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