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相次ぐサプライズ人事 次期トランプ政権の狙いは…【Bizスクエア】

総合
2024-11-20 06:00

次々と発表される次期トランプ政権の主要閣僚人事。その驚きの顔ぶれから新政権の狙いが見えてきた。


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政権移行へ… トランプ氏始動 トリプルレッドで市場反応

バイデン大統領:
前大統領であり、次期大統領のドナルド。おめでとう。


トランプ次期大統領:
政治は厳しい世界で、たいていは素敵ではないが、今日は素敵な世界だ。これ以上ないほどの円滑な政権移行になることを、ジョーにとても感謝している。


ホワイトハウスによると、11月13日、バイデン氏とトランプ氏2人の会談は2時間近く行われ、バイデン大統領はウクライナ支援の継続の重要性を強く訴えた。同じ日、大統領職と上下両院の多数派を制する共和党の「トリプルレッド」が確実になったとアメリカの複数のメディアが伝えた。


これにより、トランプ氏の政策が進めやすくなることから、インフレ懸念が高まり、長期金利が上昇。11月15日の円相場は一時1ドル156円台後半まで円安が進み、約4か月ぶりの水準となった。


相次ぐサプライズ人事 トランプ氏が目指す政権

一方、2025年1月の新政権発足に向け、着々と進む閣僚人事には、常識を覆すサプライズが起きている。


アメリカ軍を統括する国防総省トップ国防長官のポストにトランプ氏が指名したのは、ピート・ヘグセス氏。ヘグセス氏は、トランプ政権寄りの報道を続けてきたテレビ局「FOXニュース」で番組の司会を務める人物。


元朝日新聞編集委員で、アメリカ共和党・トランプ政権に詳しい峯村健司氏は、国防長官へのヘグセス氏の起用について…


キャノングローバル戦略研究所 峯村健司主任研究員:
トランプ政権の人事を見たときに、国防長官人事というのはかなり不安要素になってくる。国防長官は本来ならば実務を積んでいて、知識もあってという人がやるべき。トランプ氏の安全保障政策の一番のコアなものは何かというと戦争を起こさない。戦争やめるというところ。終わらせることが実は国防長官の一つの仕事となってくると、軍の経験、例えば何か安全保障の知識というよりは、自分の言うことを聞いてしっかり戦争を収める人間だった。


過去に陸軍兵士としての軍歴はあるものの、政府で要職を務めた経験がないヘグセス氏の起用に疑問の声も上がっている。


自らをタリフマン=関税男と称しているトランプ氏。雇用を奪う安い輸入品をアメリカから締め出すために公約の目玉に据えているのが、最大60%の中国への関税。これを実現するため、外交トップの国務長官に指名したのが中国に対する強硬派で知られるマルコ・ルビオ上院議員。


マルコ・ルビオ上院議員:
中国は、現時点では世界的な影響力においてアメリカ最大の敵国であることに、ほとんどの人が同意するだろう。


キャノングローバル戦略研究所 峯村健司主任研究員:
(ルビオ氏は)一言で言うと「筋金入りの対中強硬派」と言っていい。2018年ぐらいに言われた言葉で鮮烈に痛烈に覚えているが、これはもう「文明の衝突」なんだという言い方をする。つまりもう政治体制だけではなくて、イデオロギーもそうであるし、もっと言うと人種。中国も非白人の相容れない「不倶戴天の敵」であるという意味を感じる。


中国政府はルビオ氏を入国禁止にしている。対中強硬派のルビオ氏は、香港の民主化運動の支援や新疆ウイグル自治区での強制労働の排除などを目的とする法案を提案している。


キャノングローバル戦略研究所 峯村健司主任研究員:
(入国禁止の)制裁対象ということを知っていても、ファイティングポーズを示すのは一つの意味。入国禁止になっているということは、ルビオ氏がどこかで米中の外交会談をやるのかと。第三国で会うのか、という話も出てくるし、制裁対象の人が中国の外務大臣と会っていいのかと。これも二重三重の問題があるという意味で、非常に中国にすると頭が痛い。


次期トランプ政権 人事から透ける思惑

――トランプ次期政権の閣僚人事が次々と発表されているが、今回は前回と違って動きが早い。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
相当準備をしてたようです。


――前回は遅れに遅れて、もめた人事もあった。今回、注目の人を挙げてみる。国務長官については対中強硬派のルビオ氏だったが、名前の知らない人が次から次へと出てきた。国防長官は、ヘグセス氏。いきなりテレビ司会者が就いても大丈夫なのか。ほかにも、司法長官には保守強硬派のマット・ゲーツ氏、国家情報長官には元民主党下院議員のトゥルシ・ギャバード氏…みんな「いわくつきの人」だ。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
実はこの顔ぶれ。ルビオ氏以外の3人は「唖然とする三羽烏」といわれている。特に司法長官のマット・ゲーツ氏は、性的人身売買や薬物使用など犯罪の嫌疑でやられている話。(司法省の捜査の対象になり)司法省に自分が恨みを持っているところに入り込んでそこを大改革するように見える。

それから、国防長官のヘグセス氏もそうだし、国家情報長官もそうだが、この3つ(司法・国防・国家情報)というのは、軍と司法と情報と、ものすごい権力装置。この3つの権力装置に組織への「憎しみ」を持っているような人材を配置していて報復しかねない。


――トランプ氏にしてみれば、前回政権時あるいは、その後の刑事訴追などあり、言うことを聞かなかった組織に対する復讐、報復、あるいはその組織そのものを解体するという敵意を感じる人事。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
そういう意味では自分の意のままで忠誠を誓う人たち、いわば自分のクローンのような人間を配置して、そこにメスを入れるということ。(だから「お友達人事」などという)そんな生やさしい問題ではない。

ただしこれから先、閣僚なので上院の承認が要る。そうすると司法長官のゲーツ氏はもう通らない、承認されないだろうという声になっていて、そういうことを織り込み済みで名前を言っているという説まで出てきている。


――次は、経済閣僚を見てみると、まず独立候補として立候補してたケネディ・ジュニア氏がワクチン反対派で厚生長官になったというのも驚きだが、イーロン・マスク氏が、政府効率化省責任者、日本で言えば行革委員会の委員長みたいなものになる。マスク氏を使って、いろんな役所に手を突っ込んでいこうという表れか。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
Twitter社を買収して、もう大ナタを振るったが、同じようにやられるのではないかという話ともう一つ言われてるのは、マスク氏の事業「スペースX」にしろ、通信の「スターリンク」や脳にデバイスを埋め込むような事業「ニューラリンク」など、いろんなところが全部、役所の行政機関から叩かれたり、規定を受けたりしているという背景を持っている。ただし直接的にそういうところに手をつけると、これは利益相反になる。

予算人員を減らしていく独立行政委員会に大ナタを振るうということも十分あり得るなど、いろんなこと言われている。もう一つ懸念されているのは、中国のビジネスに相当入っていて、対中強硬だけで来た時に、どう声を上げるかということもある。


――通商代表はまだ決まっていないが、元通商代表のロバート・ライトハイザー氏が戻ってくるかもしれない。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
日本にとっては聞きたくない名前かもしれない。打診はされたが、(本人は同じ役職には不満があり)同じ役職かホワイトハウスの中に新設の通称ポストを設けて、メンツを立てて処遇するという話など飛び交っている。いずれにしても、通商分野では出てきて取り仕切ることは多分多間違いないだろうと言われている。


次期トランプ政権 焦点の高関税は?

――関税政策だが、トランプ氏は、対中製品には60%。日本を含む他の国からの輸入品には10~20%かけますと言っているが、本当に日本からの自動車などに20%の関税をかけるのか。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
「脅し」として言うだろう。対中国の60%と、他の国への10から20%は意味合いが違う。税率の高低の違いだけではなく、中国の場合は「戦略的デカップリング」という言葉があるぐらい分断をして、これからも辞さないという構えだ。


――中国経済をアメリカ経済、さらに世界経済からも切り離す。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
はい。だから中国製品・安いものが入ってこないようにすると同時に、国内で製造業を起こしていく、復活していく、このために(必ず、ほぼ全部)やるという世界。それに対して、日本・同盟国も含めて脅しで、これから先、他のものを取るための「交渉の武器」として使う。自動車だけでなくそれ以外の、他の物を取るためにやるから、交渉の道具として使うという意味でやる。全てを20%にするわけではない。


――前トランプ政権の時に日本は「日米貿易協定」の交渉で大変苦い思いをしている。アメリカがTPPから脱退して、「農産物の引き下げなど恩恵がないので、アメリカにもそれをよこせ」ということだった。その時「25%の関税を自動車にかける」と脅してきたので、日本は結局譲歩した。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
自分の方から勝手に脱退しておいて、TPPの日米の関税引き下げは両者で、パッケージで、ギブアンドテイクで合意する。だから日本の農産物とアメリカの自動車関税5%がセットで合意していた。TPPから脱退すると、日本の農産物、オーストラリアや競争相手はどんどん日本に安い市場価格で入っているのに、アメリカは昔のままだと(自分たちから勝手に脱退したのに怒って)それをちゃんとよこせと言ってきた。

本当はTPPと同じようにギブアンドテイクで、アメリカの自動車関税とセットでないと駄目なのに、自分たちがもらうところだけ貰って、やらなければいけない自動車関税という支払代償は一切手をつけずというのが、日米貿易協定の決着だ。


――日本からすると、一番嫌なのは最大の輸出品目である自動車に関税をかけられることだ。今回も追加関税という時に、アメリカは「脅しの材料」「武器」としてそんなことを言う。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
「自動車関税25%の制裁」という日本が一番「ギャッ」と言いそうなところにかけてきた。欲しいのは、「農産物の関税」だった。今回も違うもので、どういう交渉をしてくるか。


――今回、アメリカが欲しいものは、何か。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
何かわからない。わからないから日本から「こういうことをやれる」ということを先に出していくことも大事だ。


実は日本は「対米投資」世界1位! これからどう対応すべき?

――例えば、日米のバランス。貿易を見ると、アメリカに対して、日本は9兆円ぐらいの貿易黒字を持っている。アメリカから見れば赤字で「けしからん」という話だ。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
だからそこに手をつけようとすると「農産物や防衛の装備品、もっと買えます」といってこの赤字を減らしていくといくのは、もちろんある。もう一つ見なければいけないのは、日本からアメリカへの「投資」。

対米投資残高を見ると、日本は世界第1位の対米投資国で投資をしているということは、向こうに工場を作り、雇用を生んで貢献をしている。実は安倍元総理もトランプ氏にそれを最初にアピールした。貿易だけ見ているのではなくて「投資を見てくれ」と。これが今日どうなっているかというと、安倍元総理が言った時よりも投資が1.5倍に増えている。だから「これだけの貢献をしている」ことを言うとともに、既にやっていることだけではなく、これから先も「実は日本企業はアメリカでこんな投資ができる。あれも投資できる」と、「投資」を戦略的なカードに使っていく。これは交渉の上でものすごく大事だと思う。


――中国に60%の関税をかけるという話だが、中国経済は苦しい時だから、かなり効いてくるのではないか。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
効いてくると思う。8年前に比べて何が違うかというと、まさに中国経済が相当いま、デフレ経済でダメージ受けているというこの時にかけられると、相当深刻な状態になると思う。


――中国企業にダメージがあるだけではなく、アジアや日本の企業は部品や素材、製造機械などを中国に輸出していて、それが中国の対米輸出に繋がっている。対米輸出が中国から止まれば、日本から中国へ出ていくものも細り、サプライチェーンの組み替えをしなければいけなくなる。


明星大学経営学部教授 細川昌彦氏:
日本企業が一番悩ましいところだと思う。ただ中国から対米輸出の部分はそうだが、他方で中国の内需。それから中国から、東南アジアや南米、ヨーロッパへの輸出は依然としてあるから、全くの中国から撤退ということにはならないと思う。だからそこの仕分けをどうしていくかというのが、これから大きなテーマになる。


次期トランプ政権の産業政策 バイデン氏の施策から大転換

関税の問題で、もう一つ注目するのはメキシコの存在。トランプ前大統領はメキシコ国境を越えて輸入される全ての自動車に100%の関税をかけるとしている。現在メキシコには287社の日系の自動車関連企業があり、日本メーカーの車、およそ74万台がアメリカへ輸出されている。


――元々、NAFTA(北米自由貿易協定)があるので、メキシコからは無税でアメリカに輸出できるから、日系メーカーはメキシコに工場を作って、たくさんアメリカに輸出している。中国からの迂回輸出を回避するために「メキシコ国境を越えて輸出される全ての自動車に100%の関税をかける」と言っていて、戦々恐々だ。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
単に、中国からの安いものが来ないようにというだけではなく、「迂回輸出でアメリカに入っている」というのは大問題になっている。これは何らかの対策をやると思う。ただし、「100%関税」に関しては、額面通り受け取る必要はないと思う。

というのも、選挙戦でのレトリックで、実際上やられる政策とは一緒ではないということだ。だから選挙戦では激しいことを言う。何らかはやるが「100%関税」という収まりにはならないと思う。今後メキシコとどう交渉していくかだが、アメリカとメキシコとカナダという北米でのUSMCA(NAFTAの再交渉に伴いアメリカ、メキシコ、カナダの3か国で合意した新協定)という協定を結んでいる。その協定の中のルールを変えていき、北米での部品の調達比率を高めていくというルールを変えていくなどの交渉はあると思う。


――日系メーカーは現地での部品調達率を上げるなどを迫られてくる可能性があるのか。


明星大学経営学部教授 細川昌彦 氏:
サプライチェーンの見直しは、避けて通れないと思う。


(BS-TBS『Bizスクエア』 11月16日放送より)


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