きょう握手を交わしたのは自民党と国民民主党の幹部2人です。政策協議を始めることで合意しましたが、国民民主党が訴える「103万円の壁」の引き上げは実現するのでしょうか?
「高所得者優遇でバラマキ」か?どうなる「103万円の壁」
10月31日、国会内で自民党と国民民主党の両党の幹事長らが会談し、税制など政策の案件ごとに両党で協議していくことで合意しました。
自民党 森山裕 幹事長
「補正予算の関係もこれあり、来年度予算の問題も税制を含めて、協議をしていきましょうということで、合意ができました」
一方、国民民主党の玉木代表は自民党を牽制しました。
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「ご期待いただいた多くの有権者が手取りを増やしてほしいと。こういったことを出来るのであればご協力はしますけれど、できないのであればそれ相応の対応と」
その国民民主党が選挙で訴えてきたのが、年収「103万円の壁」の引き上げです。
所得税などがかかるこの壁を、「178万円」まで引き上げることでほとんどの人の手取りが増えることになります。
国民民主党が示した表を見ると、年収200万円の人は8万6000円の減税。一方、年収800万円の人は22万8000円の減税となり、年収が高い人ほど恩恵が大きくなっています。これに自民党の幹部は…
「高所得者優遇でバラマキだ」
約7兆6000億円の税収減も…「相当税収は増える」
また政府の試算では178万円まで引き上げた場合、約7兆6000億円税収が減るということですが…
国民民主党 玉木代表
「国の懐はそれだけ減るかもしれませんが、国民の懐はそれだけ増えるわけですから、当然消費も、また企業活動も活発になって、相当税収増えるんじゃないですかね」
一方、国民民主党は11月1日、立憲民主党と幹事長ら同士の会談をおこないますが、玉木代表は、原発政策など基本政策が一致することが協議を進める“条件”だと強調しました。
国民民主党 玉木 代表
「党首会談もいつでもやりますから。だからそういうことが、立憲民主党として受け入れられるのかどうか。とりあえず選挙区調整、基本政策は時間かかるから脇に置いて、とりあえず首班(総理)指名。こういうことを続けてきたから、今のような野党をまとめられない状況になってるわけですよ」
自公過半数割れで新局面 「少数与党」で政策実現どうなる?
小川彩佳キャスター:
ドイツに滞在中の東京大学准教授の斎藤幸平さんに加わっていただきますが、斎藤さんは今回の選挙の投票に行けなかったそうですが。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
こんな短い選挙期間で行けるわけがないし、憲法15条には参政権があるので、早くネット投票を実現してほしいと思いました。
ただ、結果を見ると今回は自民党が大きく議席を減らしたことで、今後の議会での議論など活発化していいのではないかと思いました。
何より、これまで与党が過半数を握っていた結果、夫婦別姓など動かなかったいろんな政策が、野党が結束することでいろいろ変えていけるという意味では、何か大きな変化が起きるかもしれないと期待しています。
藤森祥平キャスター:
「選択的夫婦別姓」は各党の公約など見ていくと、「推進」の立場にいる議席数は立憲民主党・公明党・共産党・国民民主党・社民党の計218議席。一方、「慎重」の立場の自民党・参政党・日本保守党の計197議席よりも多くなっていることがわかります。
「選択的夫婦別姓」についてポイントとなるのは、38議席持っている日本維新の会です。戸籍制度を維持して公的機関などでの旧姓使用に法的拘束力を持たせることを主張しています。日本維新の会がどちら側につくかで今後の動きが決まってきそうです。
さらに「政治とカネ」を巡り、企業・団体献金の禁止について自民党・公明党・国民民主党・日本保守党が「慎重」な立場を示しており、計246議席。「推進」の議席数は立憲民主党・日本維新の会・共産党・れいわ新選組・参政党・社民党の計207議席と「慎重」の立場の議席数が多くなっています。
数が最終的には影響するので、各政策ごとに、政権の枠組みによって変わってきます。
小川キャスター:
立場の違う政党が時間をかけ、それぞれの政策で合意をしていくことは、欧州では珍しいことではないそうですが。
斎藤幸平さん:
そうですが、ただ「ハング・パーラメント(宙づり議会)」といって、長期化すると良くないです。
なぜかというと、例えば、二大政党制でどちらも過半数が取れない場合、数合わせをするために、数%しか得票していない数議席の政党の意見が過剰に反映される結果になるかもしれない。
あるいは、その停滞状態に国民が不満を持つようになり、「これを仕切り直してしまえ」と右派ポピュリズムなどに皆が投票するようになり、過激化していく場合もあります。
あるいは、連立政権を何らかの形で組んだとしても、いま私が住んでいるドイツでは、緑の党が連立政権に入りました。元々は「脱原発」や「気候変動問題への取り組み」などを主張していましたが、連立政権に入った結果、妥協を重ねた現実路線のようになり、最終的には人気が落ちてしまう、などということが起きました。
これは国民民主党も「政権入りしない」と今は言ってますが、全体的に自民党の政策と似ている面もあるので、自民党の補完勢力みたいになってしまえば、独自の魅力を失い人気も落ちてしまう、ということで難しい舵取りが強いられます。
また、「103万円の壁」の引上げが若い人に人気だと言いますが、これはやはり高所得者優遇の面が強いですし、そもそも大学生がバイトをしなくてもいいように、学費無償化などを実現する道含めて議論してほしいですね。
『与野党の幹事長会談』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『与野党の幹事長会談』について「みんなの声」を募集しました。
Q.与野党の協議本格化へ あなたが求める法案は?
「『政治とカネ』に関する法案」…35.4%
「電気・ガス代の値下げなど支援策」…32.7%
「『年収103円の壁』引き上げなど」…17.4%
「選択的夫婦別姓に関する法案」…6.9%
「防災庁を創設する法案」…4.8%
「その他・わからない」…2.8%
※10月31日午後11時12分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは1日午前8時で終了しました
<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想 社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破
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