
東京商工リサーチの調査では、後継者不足で倒産した店や会社が2024年は462件と過去最多に。こうした現状を受け「思い出の味」を復活させる試みが広がっています。
【写真を見る】閉店した店の「思い出の味」が復活…各地で広がる新しい“継承のカタチ”【THE TIME,】
地元大学生が受け継いだ「先代の味」
千葉県・市川市にある中華料理店「萬来軒」。創業1957年の老舗ですが、2022年に店主の体調不良で閉店しました。
しかし、2月に行ってみると、店の目の前にある千葉商科大学の学生や地元客で大賑わい。どういうことかというと…
『千葉商科大学』商経学部3年 桑島歌菜さん:
「私たち大学生が、休業していたこの中華料理店を復活させて運営しています」
なんと、近所の大学生が店を引き継ぎ、2024年11月にリニューアルオープン。先代の料理を継承しながら運営を行っているのです。
店の引継ぎを決心したのは、商経学部4年の芹澤孟さん。
開業資金の300万円は、自身のバイト代と大学の関連企業から融資を受け確保。
メインの調理スタッフは、学食で働いていた人に声をかけるなどしてなんとか開業準備を整えたといいます。
ただ、困ったのが「味の引継ぎ」。
レシピは店主の頭の中にしかなく、看板メニューの「萬来軒唐揚げ」(600円)は、授業の合間を縫って自宅で約4か月間、試行錯誤したといいます。
そこまでして店を引き継いだワケは…
芹澤さん:
「地域に愛されている町中華がつぶれていると知って、後世に残していきたいと。味の最終チェックは以前の店主に試食して貰って、やっと先代の味を受け継ぐことができたのかなと」
地元大学生によって守られた思い出の味。
学生時代に通っていたという30代男性は10年ぶりに来店し、「うまい!相変わらず最高」と先代から受け継いだチャーハンを嬉しそうに味わっていました。
閉店した名店の「レシピのみ継承」
超厚切りのポークソテーは中がうっすらピンク色で肉汁じゅわ~。
サックサクのチキンカツには、玉ねぎやピーマンなどが入った特製トマトソースがたっぷり。
『烏森百薬』(東京・港区)で提供されているランチメニューはどれも“絶やしたくない思い出の味”です。
例えば、人気メニューの「ビーバー定食」(1000円)。
秘伝のソースを使った生姜焼きと、旨味の詰まったカニクリームコロッケがセットになった一皿ですが、これは2020年に閉店した東京・神田の人気洋食店『キッチンビーバー』の看板メニューです。
この食堂を運営しているのは、食を通した街づくりプロデュースなどを手掛ける会社。後継者不足などで閉店した店の「レシピだけを継承」して提供しているのです。
『株式会社ミナデイン』永井未来さん:
「二度と食べることが出来なくなってしまう店の味を復活させて残していく取り組みです。店ごと引き継ぐのはコストがかかる、地方だと誰がそこで店を運営するかというのも課題の1つで」
店舗を丸ごと引き継ぐのは設備の維持費や人件費などのコスト面からハードルが高いため、「レシピのみを引き継ぐ」方法を考えついたとのこと。得た収益の一部は、店主に還元される仕組みになっています。
レシピの提供は「運命的な出会い」
1960年創業の『キッチンビーバー』は、高木章さん・カヅ子さん夫妻が2人で切り盛りする人気の洋食店でした。
しかし、章さんが体調を崩し入院。カヅ子さんは1人で店に立ち続けたものの、自身も体を壊し、閉店を決めたのだといいます。
すると…
高木カヅ子さん(76):
「常連さんがカニクリームコロッケと生姜焼きがすごく気に入っている人で『これが無くなっちゃうの?』ってなって。そしたらその人と、『烏森百薬』の社長が知り合いで」
常連さんからの紹介で、「お店を買ってくれるのかと思ったらメニューだけだって!」と、最初は何だかよくわからなかったと笑うカヅ子さんですが、看板メニューの味を残せたことは嬉しいと話します。
カヅ子さん:
「同じ材料を使ってもできる人とできない人がいる。継承された味は100点!食べ物ってみんな思い入れがあるんですよ。運命的な出会いって感じがしましたよ」
誰にでもある「もう一度食べたい思い出の味」が、様々なカタチで受け継がれ始めています。
(THE TIME,2025年3月4日放送より)
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