
サッカーのワールドカップでも影響力を見せつけたトランプ大統領。その一方で、対照的な振る舞いで存在感が増しているのが、「民主社会主義」を掲げるニューヨーク市長です。アメリカで、なぜ今、社会主義なのでしょうか。
【写真で見る】トランプ氏の“目の敵”ニューヨーク市長が掲げる「民主社会主義」
トランプ大統領の“目の敵” NY市長は市民に「手の届く観戦」を打ち出す
世界中の注目を集めたFIFAワールドカップ決勝戦。
今大会は、初めてのハーフタイムショーや、CMを流せる飲水タイム導入などで、過去最高となる150億ドル(約2兆4000億円)の収入をFIFAにもたらします。「商業主義」との批判が高まりますが、トランプ大統領は...
トランプ大統領(19日)
「これまで開催された最も偉大なイベントの一つだった」
この試合を、会場で一般人と混じって観戦したのが、今年就任したニューヨークのゾーラン・マムダニ市長。トランプ大統領が目の敵にする人物です。
トランプ大統領(4日)
「この国に共産主義者は要らない」
名指しこそしないものの、市長選の最中から繰り返し「共産主義者」と呼び、批判しているのです。
今回のワールドカップでマムダニ市長は、トランプ大統領とは対照的に、市民に「手の届く観戦」を打ち出しました。市内には無料のパブリックビューイング会場を設置。また、価格が高騰したワールドカップのチケットを、市が1000枚入手し、わずか50ドル(約8000円)で抽選で配布したのです。
こうしたマムダニ市長が掲げているのが「民主社会主義」。強調するのが、市民の「生活保障」です。
ニューヨーク マムダニ 市長(4月)
「私たちは生活費を低くし、道路を舗装し、街路で雪をかき、労働者の生活に尊厳を取り戻す。あざ笑う人々に言いたい。あなたたちが使う道路も整備しよう」
マムダニ市長が掲げる「民主社会主義」とは?
選挙戦では、「高騰する家賃の凍結」「安価な市営スーパーの開設」「公営バス無料化」などを公約に掲げ、富裕層や巨大企業への課税でその財源にあてるとしました。
実現を危ぶむ声も聞かれる中、6月、市内100万戸を対象に2年間の家賃の値上げ凍結を決定。保育サービスの一部無償化も年内開始にめどが立ち、富裕層が所有する、投資目的の不動産などへの課税強化策も、州議会で採択されました。
ニューヨーク市の住民
「ニューヨークの人々は家賃を気にしています。マムダニ市長はそうした有権者のニーズに応えることができたのだと思います」
ニューヨーク市の住民
「マムダニ市長の当選以来、ニューヨークが進んでいる方向性が気に入っています。文化も多様性も確実に向上していると思います」
マムダニ市長が掲げる「民主社会主義」とは何か。専門家は...
立教大学文学部 加藤喜之 教授(アメリカ思想史)
「社会主義というと、一党独裁の中国やソビエト連邦みたいな形で、権威主義的な体制になりがちだが、そうではなくて、民主主義を守りながらも社会主義を推進していく、より平等に富を分配していく。
例えば北欧。税金が高いものの、社会的なサービスが充実している。日本も戦後の1955年以降の体制の中で社会保障を充実させていった経緯があるので、ある種そこにも通ずる部分がある」
10年前にも注目 トランプ大統領に流れた票が…
この「民主社会主義」が注目されたのは、今から10年前...
サンダース 上院議員(2016年3月)
「今我々に必要なのは政治革命だ」
2016年の大統領選で一躍脚光を浴びたのが、「民主社会主義」を掲げたサンダース上院議員。このときは、予備選でヒラリー・クリントン候補に敗北。失望した労働者の票が、「製造業を国内に取り戻す」と約束したトランプ氏に流れました。
それから10年、いま変化が訪れているのです。
マムダニ氏推薦の新人が“番狂わせ”…背景に「格差の拡大」
マムダニ市長が掲げる「民主社会主義」がいま、広がりを見せています。
連邦議会の党内予備選で、マムダニ氏が推薦する新人が、次々と現職を破る番狂わせが起きました。
ニューヨーク マムダニ市長
「この勝利は、ニューヨーク市民が新しい政治を渇望していることの表れです」
こうした結果を裏付けるかのように、7月2日にシンクタンクが発表した調査結果では、4割近く(37%)、特に若い世代(18~29歳)では半数以上(53%)が「社会主義に好意的」と回答しているのです。
「資本主義の総本山」であるアメリカで起きている変化。その背景にあるのが「格差の拡大」です。
トランプ大統領(6日)
「株式市場は史上最も好調だ」
いまトランプ政権で恩恵を受けているのは、大量の金融資産を持つ“富裕層”です。上位1%がアメリカの株式資産全体の半分を保有し、過去1年で30%という株価上昇の恩恵を受けています。
加藤教授は、富裕層がますます富む一方で、中間層や貧困層は長引くインフレに苦しむという「格差」の問題が、「左と右」の分断を超えて共有されつつある、といいます。
立教大学文学部 加藤喜之教授(アメリカ思想史)
「経済面では、民主党も共和党も近年まで非常に同じような立場を持っていて、そこから排除されてしまう労働者層というのが取り残されていた。
“勝者総取り”みたいな一部の人たちだけが富み続けるみたいなものから、社会という共同体の中で経済を回していくという方向にスイッチしていきたい。『なんとかしなければいけない』という人たちは、右にも左にもいるので」
これまでの政治がもたらした経済的な“ひずみ”によって、「民主社会主義」に向かう人々。この流れは、分断が深まるアメリカが変わるきっかけとなるのでしょうか。
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