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「就任1年」トランプ2.0 WATCHING~行く先の見えない“トランプ革命”の「行動原理」~【調査情報デジタル】

海外
2026-01-17 10:45

間もなく就任1年を迎えるアメリカのトランプ大統領。新年早々、ベネズエラ攻撃や数多くの国際機関からの脱退など、驚かされるニュースが今もって絶えない。トランプ第二次政権の定点観測4回目をお届けする。執筆はTBSテレビ記者でJNNワシントン支局の涌井文晶支局長。


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ホワイトハウスの公式サイトに「民主党非難」のページ

2026年、ホワイトハウスでの仕事始めからは2日目となった1月6日の朝。トランプ大統領は「ケネディセンター」から「トランプ・ケネディセンター」に改称を決めたばかりの首都ワシントンの文化施設で共和党下院議員との会合に臨んでいた。
1月6日という日付は、アメリカでは大きな意味を持つ。


2021年1月6日、トランプ氏の支持者らがバイデン氏の大統領への選出手続きを阻止しようとして、暴徒化して議会に乱入。民主主義を揺るがす事件として、世界に衝撃を与えた。2023年にはトランプ氏が事件につながる扇動をしたとして起訴された。


事件では警察官1人を含む5人が死亡。140人以上の警察官が暴行を受けた。だが、この日、現職のアメリカ大統領から死者への追悼、あるいは暴力を戒める言葉は聞かれなかった。


「『平和的かつ愛国的に議事堂へ歩いたり行進しよう』という私の言葉を、ニュースは一切報じなかった」
「ナンシー・ペロシ下院議長は州兵の派遣を申し出られたのに、応じなかった」


トランプ氏は自らの責任を改めて否定したうえで、メディアの報道に強い不満を表明。当時の民主党・ペロシ下院議長のせいで警備が失敗したと、言葉を重ねた。


同日、ホワイトハウスの公式ウェブサイトには新たなページが開設された。


2021年1月6日の日付と共に、ペロシ氏や、事件を調査した下院の特別委員会の元委員らの写真を大きく掲載。議会乱入事件をめぐり、「民主党が無実のトランプ氏を陥れた」と主張した。


「民主党は武装反乱や政府転覆の意図を示す証拠が一切ないにもかかわらず、トランプ氏が仕組んだ暴力的なクーデター未遂事件として描いた。真実を言えば、不正まみれの選挙を認定した民主党こそが、真の反乱を仕掛けた張本人である」


アメリカ国民の税金で運営されているホワイトハウスのウェブサイトが、根拠を伴わないトランプ氏の主張を掲載し、歴史の修正を図る。1年前には考えられなかった事態だが、これが現在のアメリカの現実だ。


議会乱入事件から5年、そしてトランプ氏の大統領就任からまもなく1年。トランプ氏はこれまでのアメリカの姿を否定し続け、“革命”とも評される形でその姿を変え続けている。


ベネズエラ攻撃に見る外交の「行動原理」

本稿の趣旨は第二次トランプ政権の1年間を振り返ることだが、起きたできごとを振り返るとあっという間に紙幅が尽きてしまう。そこで、今回はこの1年間で見えてきた、政権の外交と内政、それぞれの「行動原理」を考えてみたい。


外交については、「行動原理」を端的に表す出来事が2026年冒頭から起こった。ベネズエラへの軍事攻撃、そしてマドゥロ大統領の拘束だ。


トランプ政権の対外関与の判断の軸にあるのはシンプルに「アメリカファースト」。アメリカ(あるいはトランプ氏本人)の利益に関わることには積極的、時に攻撃的な一方、それ以外のことへの関与は縮小する、という姿勢だ。ベネズエラへの軍事介入はそうしたトランプ政権の「外交」の典型と言える。


ベネズエラはトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」がある南部フロリダ州から海を隔てて2000キロあまり。フロリダから見た場合、3500キロあまり離れたカリフォルニアの方が圧倒的に遠い。アメリカで中米諸国が「裏庭」に例えられるゆえんだ。


その「裏庭」にありながらベネズエラは反米左派が長年にわたって政権を握り、アメリカと敵対する中国やロシアとの関係を深めてきた。


かつてアメリカが投資して築き上げた石油インフラも反米政権が接収。圧政から逃れた人々がアメリカに移民として流入する事態も起きている。トランプ政権から見れば、「アメリカの利益を損なう」存在だ。


だとすれば、アメリカの強大な「力」により、状況を変えてしまえばいい――。トランプ政権の考え方は、このように極めてシンプルなものだ。


今回、ベネズエラへの介入を通じてトランプ政権が狙った成果は、以下の2点に集約される。


(1)反米政権の転覆
マドゥロ氏の拘束後、「国をアメリカが運営する」として、前副大統領が率いる暫定政権に強い2度目の攻撃もちらつかせて、服従を迫る。中国・ロシアとの経済関係も断絶させる。


(2)石油利権の掌握
世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラの石油インフラの立て直しを米企業主導で実施。石油の販売はアメリカが管理する形にするとして、中国から石油利権を奪い返す。収益もアメリカに還流するシステムを構築。


他方、これまでアメリカが他国に介入する際に建前であっても掲げてきた「民主化」といった目標は、今回、まったく前面に出てきていない。トランプ政権はマドゥロ体制の温存を容認し、マドゥロ政権の副大統領で、石油相を兼務していた大統領代行のロドリゲス氏を通じてベネズエラを「運営」しようとしている。


一方、ノーベル平和賞を受賞した反体制派の指導者・マチャド氏について、トランプ氏は「人気がない」などと述べ、連携に後ろ向きだ。反体制派にはベネズエラの石油産業や治安機関をグリップする力がなく、連携に「実利」が見出しづらいことが大きな理由とみられている。


改めて、「アメリカファーストの外交」を身も蓋もない表現で言えば、「世界最大の軍事力と経済力を背景に、2国間の関係の中で他国を屈服させて、自国の利益にする」ということだ。「小国であろうと、主権国家は大国と対等に扱う」というような発想はそこには存在しない。


今回の介入については「国際法違反だ」との批判が各国から上がっているが、トランプ氏の最側近の1人、スティーブン・ミラー次席補佐官はCNNテレビの出演でこう言い切った。


「国際法は“礼儀”だ。リアルな世界では力・武力・権力によって支配されている。これが世界の鉄則だ」


今のトランプ政権に、第二次大戦後、法の支配や民主主義の価値観を広めてきたアメリカの姿を見るべきではないことは、この発言だけでも明らかだろう。


トランプ外交の新キーワードは「ドンロー主義」

「力」を信奉するトランプ政権の「外交」をめぐり、にわかに人口に膾炙したキーワードが「ドンロー主義」だ。


「ドンロー主義」は、1823年、当時のモンロー大統領がアメリカとヨーロッパの相互不干渉を訴えた「モンロー主義」にトランプ氏のファーストネーム、ドナルドを合わせた言葉で、「トランプ版モンロー主義」という趣旨だ。


ただ、より直接的な参照点になっているのは、20世紀初頭のセオドア・ルーズベルト大統領の外交政策だ。


ルーズベルト氏はモンロー主義に「中南米へのヨーロッパの介入を防ぐためなら、アメリカが先に介入して秩序を保つ権利があるのだ」との新たな解釈を付与。武力を背景にした「こん棒外交」を展開してパナマ運河などの中南米利権を拡大した。


トランプ氏も同様に、南北アメリカ大陸を中心とした「西半球」について、自らの「勢力圏だ」と主張。「敵対的な外国の侵入は認めない」などとして、権益確保に強い意思を表明した。


こうした考え方は、去年12月に政権が公表した戦略文書、「国家安全保障戦略」に記述されている。


また、「西半球」という概念には南北アメリカ大陸のみならず、大部分が北極圏に位置するグリーンランドや南極大陸の一部が含まれている。トランプ氏はデンマーク自治領のグリーンランド領有に強い意欲を示しているが、彼の目から見ればそれは自らの縄張り、「西半球」での権益確保の一環なのだ。


一方、「西半球」以外の問題に対しては、孤立主義的なスタンスを示すのも、ドンロー主義の特徴だ。


象徴的なのがウクライナでの戦闘に対するトランプ政権の態度で、「戦闘を早く終結させてアメリカの関与を減らしたい」「NATOがもっと防衛費を負担すべきだ」といった姿勢を一貫して示している。


「国家安全保障戦略」の中ではギリシャ神話の天空を支える巨人、「アトラス」の名前を出して、「アメリカがアトラスのように世界の秩序を支える時代は終わった」とも表明している。


アメリカの持つリソースは限られているのだ、という認識のもと、「西半球覇権」確立のため行動する。2026年、そうした「ドンロー主義」はさらに前面に押し出されることになりそうだ。


国内政治での行動原理は「既存秩序の解体」 

ここまで、トランプ政権が第二次大戦後にアメリカが築き上げてきた国際秩序を解体するかたちで外交を展開していることを概観してきたが、国内政治でも、「既存秩序の解体」が基本的な行動原理となっている。


「MAGA=アメリカを再び偉大に」という言葉に込められた意味合いを、改めて確認してみたい。


目標:
中西部の白人を中心とした「忘れられたアメリカ人」が再び「強いアメリカ」「豊かなアメリカ」を実感できるようになる。そのために「アメリカを食い物にしてきた」リベラルなエリート、非白人の移民、外国を脅威とみなし、その脅威を取り除く。


手段:
対リベラルエリート→選挙で選ばれていないワシントンの連邦政府の職員の解雇を進める。さらに、司法省・FBIといった捜査機関や、中央銀行にあたるFRBなど、政府から業務上の独立性が重視されてきた組織の独立性を破壊する。メディア・大学・法律事務所に訴訟や調査を通じて服従を迫る。


非白人の移民→強硬な取り締まり・強制送還を実施。取り締まりに対する反対運動には州兵などを動員して弾圧。


外国→関税を課し、アメリカ市場での自由な展開を阻害。同盟国であっても対象外にしない。


上記の「手段」に記したものがアメリカ国内での「既存秩序の解体」に当たるものだ。そして、こうした「手段」は例外なく、「大統領権限を逸脱している」などとして訴訟の対象になっていて、地裁や高裁のレベルではトランプ政権は何度も敗訴している。


ただ、まだ多くの訴訟について、最高裁の判断が示されていない。最高裁の多数を保守派が占める中、トランプ政権の行動に対する「歯止め役」の役割は限定的なものになるのではないかとみられている。


「どこへ向かっているのか誰にも分からない」

アメリカの著名政治学者イアン・ブレマー氏が率いるユーラシア・グループはトランプ氏が進める国内秩序の解体を「米国の政治革命」と評し、1月5日に発表した「2026年の世界10大リスク」の中で最も大きなものとして挙げた。「アメリカは暴走しているが、どこに向かっているかは誰にも分からない」とも指摘している。


筆者もこのところ、「どこに向かっているかは誰にも分からない」というのがトランプ政権の特質だとますます強く考えるようになっている。


トランプ政権は国内外を問わず既存の秩序を否定し、破壊しているが、「その先」の秩序が具体的にどのようなものになるのか、提示できていない。


不法移民を徹底的に排斥したら、誰がゴミの収集やホテルの清掃、飲食店のウェイターといった仕事を行うのか。製造業は「海外ではなく、アメリカで作る」というが、iPhoneをアメリカ国内生産にしたら、1台いったいいくらになるのか。


ベネズエラでは、マドゥロ政権の高官を重用している。旧体制の温存に加担しているのに、なぜ「将来的には民主的な政権移行」ができると考えるのか。


国際問題からアメリカ人の日常生活に至るまで、先行きの展望に乏しい課題は枚挙にいとまがない。


ただ、ユーラシア・グループは、少なくともアメリカの過半数の有権者はこうした状況を以前より「マシ」だと考えていると喝破する。


「有権者の過半数にとって、不確実な革命のリスクの方が、自分たちのために機能していなかったシステムの下での確実な衰退継続よりましなのである」


さらに、「トランプが政権に戻る前から、米国の政治システムは構造的な機能不全に陥っていた。彼はその機能不全の症状・受益者・加速装置だが、原因ではない。そして、彼がそれを修復することもない。トランプの革命が成功しようが失敗しようが、米国が以前の状態に戻ることはない」と指摘する。


アメリカ、そして世界の新たな均衡点はどこにあるのか。トランプ政権はその答えを持たないまま、2026年も「革命」を続けていく。


〈執筆者略歴〉
涌井 文晶(わくい・ふみあき) JNNワシントン支局長
2004年TBS入社。政治部と経済部で総理官邸・経済産業省・日本銀行などを担当したほか、「NEWS23」の制作を担当。経済部デスクを経て、2023年4月からワシントン特派員。2025年7月から支局長を務める。


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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