ワシントン条約の締約国会議で、ニホンウナギを含む全てのウナギの国際取引を規制するかどうかの採決が行われました。
【画像で見る】ウナギ密猟者がいないか…スペイン国家警察のパトロールに同行
規制を議論 世界中で親しまれる「ウナギ」
高柳光希キャスター:
「ワシントン条約」とは、絶滅の恐れがある野生生物(動物や植物)の輸出入に制限を設け、これらを守るための国際的なルールです(締結国は180あまり)。
日本時間27日に行われる採決で、対象となっているのは、ニホンウナギを含む全てのウナギで、国際取引を規制するか否かが議論されました。
ウナギは希少な存在ではありますが、実は世界中で生息をしています。
全世界に18種類(亜種含む)いて、そのうち食べられるのは4種類だと言われています。
例えば、日本では蒲焼として「うな重」「うな丼」が親しまれていますが、世界にはいろいろな食べ方があります。
スペインでは、シラスウナギとも呼ばれるウナギの稚魚の「アヒージョ」、イギリスでは「うなぎのゼリー寄せ」、オランダでは「うなぎの燻製」として親しまれています。
なぜEUは規制を提案?背景には「違法取引」も
高柳キャスター:
水産庁によると、世界最大の消費国と言われている日本の国内供給量は6万941トンだということです。
ただ、このうちの約7割にあたる4万4730トンが輸入に頼っている状況です。(2024年・水産庁によると)
生きたウナギ、ウナギの加工品ともに、ほとんどが中国から輸入をしているということです。
【ウナギの輸入元は…】※2023年・東京検閲によると
▼生きたウナギ
中国:89.4%
台湾:10.6%
▼ウナギ加工品
中国:99.6%
台湾:0.4%
今回ウナギの規制を提案したのは、EU=ヨーロッパ連合ですが、日本は強く反発をしています。
EUが求めているのは、どういうことなんでしょうか。
ロンドン支局長 岡村佐枝子:
EUが求めているワシントン条約での規制というのは、輸出を禁止するのではなく、輸出の許可が必要な許可制にするということです。
EUは現在、ヨーロッパウナギのEU域外への輸出を禁止しています。ヨーロッパウナギの取引規制が始まる前は、ヨーロッパウナギは中国で養殖され、日本にも蒲焼などとして非常に多く輸入されていました。
ただヨーロッパウナギの規制が始まると、今度は代わりにアメリカウナギが中国で養殖され、日本に輸入されています。
EUが主張しているのは、ニホンウナギもアメリカウナギも、資源量が著しく減少しているということ。そして、ヨーロッパウナギが他のウナギとして種を偽って取引が行われているので、どれかだけを規制しても意味がないと考えています。
そのため、類似種、似ている種類のウナギを全て規制しないと、違法取引はなくならないと主張しているわけです。
ウナギ規制「否決」 それでもEUの提案は続くか
高柳キャスター:
11月27日午後1時から行われていた締約国会議では、“否決”されたということですが、日本にとって嬉しい結果なのでしょうか。
ロンドン支局長 岡村佐枝子:
日本政府は各国に対して反対するよう強く求めて、ロビー活動のようなことをしていました。
当初は、ギリギリの攻防なのではないかと言われていましたが、結果的には否決という意見を出したところが非常に多かったということで、ほっと胸をなでおろしているところではないでしょうか。
井上貴博キャスター:
今回否決されましたが、EUの「規制をしよう」という流れは変わらないのでしょうか?
ロンドン支局長 岡村佐枝子:
今に始まったことではなく、EUは昔からこの提案を出し続けています。また、ずっと規制をしていても違法取引がなくならないという現状があります。
スペインの国家警察はDNA検査について、お金も時間もかかるため、税関などの現場でキットを持ち込んで検査することは難しいと話しています。
そのため、密輸取引の規制は続けていくし、全体的にやらなければいけないという主張は変えないと思います。
出水麻衣キャスター:
資源管理という意味でも、見直しても良いかもしれませんね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
全面的な規制については、ニホンウナギに限っては「それなりに大丈夫」という理屈もあり、日本政府のロビー活動も成功したようですね。
今回は委員会での否決で、12月上旬に行われる「全体会合」でもう一度採決する可能性もあり、日本政府関係者によると「あまり油断できない」ということです。
食文化×資源 向き合うべき課題
高柳キャスター:
今回は否決でしたが、また今後も同じような議論がされるのでしょうか。
ロンドン支局長 岡村佐枝子:
12月5日に全体会合があるのですが、今回の委員会の結論を不服とした場合には、動議を出して、再投票する可能性もあります。
過去には再投票によって結果が逆転したこともあるので、引き続き、ワシントン条約の締約国会議で話し合われることになります。
井上キャスター:
今回はウナギでしたが、ウナギに限ったことではなく、限られた資源を世界でどうシェアしていくのかというのは、どの種も同じように思います。
日本の食文化と経済、資源の保全を、どう大切にするかというのは永遠のテーマですね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
新たな科学的知見とどう組み合わせていくか、ということも必要だと思います。
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<プロフィール>
岡村佐枝子
JNNロンドン支局長
かつて社会部で環境省、経済部でスーパー・百貨店の取材を担当
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
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