アメリカのホワイトハウスで行われた、ウクライナ情勢をめぐる首脳会談には、ヨーロッパ各国の首脳らが急遽、参加しました。その狙いはどこにあったのでしょうか。
【画像を見る】なぜフィンランドが会談に参加?過去にロシアと…
“ボディガード”集結 トランプ氏とゴルフ仲間なフィンランド大統領の姿も
高柳光希キャスター:
現地時間8月18日、アメリカのホワイトハウスで行われた、トランプ大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領の首脳会談。
その後、急遽行われたのが、ヨーロッパの各国首脳らを集めた会談です。
EUのフォンデアライエン委員長、イギリスのスターマー首相、フィンランドのストゥブ大統領、フランスのマクロン大統領、イタリアのメローニ首相、ドイツのメルツ首相、NATOのルッテ事務総長が参加しました。
ヨーロッパのトップたちが集結した形になりましたが、この会談について、現地ではどのように報じられているのでしょうか。
JNNロンドン支局 城島未来 記者:
イギリスのガーディアン紙は、このメンバーについて、ゼレンスキー大統領のヨーロッパの“ボディガード”と報じています。
ヨーロッパの大国であるイギリスやフランス、ドイツなどの首脳が集う中で、気になるのが“なぜフィンランドが参加したのか”という点だと思います。
会談ではトランプ大統領がMCのようになり、冒頭に1人ずつ紹介し、そのときに首脳たちが一言ずつ挨拶をしました。
その際、フィンランドのストゥブ大統領も、「なぜフィンランドの大統領がここにいるのか。メディアは不思議に思うだろう」と、自ら話しました。
その理由について、ストゥブ大統領は、
▼フィンランドがロシアと、約1300㎞と長く国境を接していること
▼旧ソ連から侵攻を受けてきた歴史を説明した上で、「第二次世界大戦中の1944年には、領土の約10%を割譲する(ロイター通信より)」という解決策が見つかったこと
▼2025年にもロシアの侵略戦争を終わらせ、永続的な平和を得ることができると信じていると、独自の立場から意見を述べました。
またストゥブ大統領は、トランプ大統領と“ゴルフ仲間”としても知られていて、トランプ大統領と良好な関係を築いていることから、メンバー入りしたのではないかとも言われています。
井上貴博キャスター:
ヨーロッパ各国やウクライナとしては、トランプ大統領がロシア寄りになることは避けたいので、何とか手を携えていきたい。
現在、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の両方と話すことができる人はトランプ大統領しか見当たりませんから、突破口はトランプ大統領だという思いなのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
ヨーロッパは、今までソ連・ロシアに何度も侵略を受けてきたので、怖さはよく身に染みているのでしょう。
外交として、トランプ大統領のやり方にはらわたが煮えくり返るところはあっても、現実路線としては、ある意味、トランプ大統領を“使う”しかないというのが各国首脳の本音だと思います。
会談で、各国の首脳たちはトランプ大統領に感謝を伝えたということですが、トランプ大統領の使えるところは使っていこうということでしょう。
その点では、今回ヨーロッパが一致した行動を取れたということが、一つ大きな成果だと思います。
井上キャスター:
ある意味、強かですね。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
アメリカに対して含むところはあっても、アメリカは力を持っていますから、使えるところは使うという形ですね。
第二次世界大戦では、アメリカがノルマンディー上陸作戦をやったから、ヨーロッパが助かったという面もあります。各国、そこは身に染みているわけですね。
「ウクライナ侵攻は対岸の火事どころではない」欧州トップが集まった背景
高柳キャスター:
そもそも、なぜヨーロッパ諸国の首脳が集まったのでしょうか。
背景にあると考えられているのが、ヨーロッパ諸国が抱える2つの点です。
【ヨーロッパ諸国 なぜ出席?】
▼“あすは我が身”という脅威
▼トランプ大統領への不信感
ヨーロッパ諸国はウクライナ侵攻について、どのように捉えているのでしょうか。
JNNロンドン支局 城島記者:
“フィンランドがロシアと長い国境を接している”ことにも通じてきます。
【“あすは我が身”という脅威】
ただ単にウクライナを応援するだけではなく、ヨーロッパの首脳たちは“ウクライナの安全=ヨーロッパ全体の安全”に繋がっているという共通の認識があります。
陸続きのヨーロッパにとって、ロシアのウクライナ侵攻は対岸の火事どころではありません。あすは我が身という緊張感が非常にあります。
ロシアに地理的に近い国であればあるほど危機感があり、ロシアの侵攻を何としてもウクライナで食い止めたいという強い思いがあります。
【トランプ大統領への不信感】
また、トランプ大統領はプーチン大統領とのアラスカでの会談で、ウクライナの東部ドンバス地方を巡る領土割譲を含む、ロシア寄りの和平案に関心を示しました。
アラスカでの会談の結果を受けて、ヨーロッパ側は一層危機感を増して、団結してその動きをけん制しようという意図がありました。
安全保障の枠組みどうなる? イギリスがウクライナ支援に積極的なワケ
井上キャスター:
これからの安全保障の枠組みをどうするのかが最大のポイントだと思います。
枠組みはどういうものになるのか、イギリスではどのように報道されていますか。
JNNロンドン支局 城島記者:
イギリスやフランス主導のウクライナ支援に関する有志連合が、ウクライナの安全保障に向けて、停戦後に速やかに国境防衛のために部隊を派遣できるように準備を進めています。
そして、トランプ大統領が「アメリカがウクライナの安全保障に関与する」と明言したことが、今回の会談の成果であると非常に評価されていましたが、トランプ大統領は19日に「ウクライナの国境防衛のためにアメリカ軍を派遣することはない」という考えを示しました。
結局“どの程度の関与なのか”が不透明なため、安全の保障は、まだヨーロッパの肩に大きく乗っていることに変わりない状況です。
出水麻衣キャスター:
アメリカも関与すると言っておきながらスタンスが見えないという点、イギリスではどのように評価されているのでしょうか。
JNNロンドン支局 城島記者:
イギリスは、フィンランドと比べると(ロシアから)地理的にも遠く、国境を接しているわけではないため、脅威がすぐ隣にあるわけではありません。
ではなぜ、イギリスが積極的なウクライナ支援を続けているのかというと…
ヨーロッパの大国としての歴史や責任を担っている部分もありますが、実はイギリス国民の3分の2にあたる66%が、ウクライナのゼレンスキー大統領に好意的な意見を持っているというデータがあります。
また、イギリスとフランスが主導するウクライナ支援について話し合う有志連合の結成を発表した2025年3月には、スターマー首相の支持率が上昇しました。
もちろん、イギリス内にも一時は支援疲れがあり、イギリス国民の意見も一枚岩とは言えませんが、ウクライナを支援することが政権にとってもポジティブな材料となっている側面があります。
井上キャスター:
安全保障の枠組みは大変難しいものだと思います。ゼレンスキー大統領は10日ほどで文書を出せるのではないかと言っているようです。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
10日ほどで出るのは、おそらく“メモランダム”のような、「こういうことを話した」というものではないでしょうか。
安全保障については、おそらく平和維持部隊のようなものになると思いますので、これから大変な議論があるでしょう。
深く、具体化しすぎるとプーチン大統領が反対しますし、ふわっとしていると実行力がないということになりますので、この辺は非常に難しいと思います。
出水キャスター:
この間も停戦は求めていないわけですから、戦争しながら交渉を続けていくというのも心配なところですね。
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<プロフィール>
城島未来
JNNロンドン支局 特派員
欧州を中心にウクライナやアフリカを取材
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
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