ウクライナ情勢をめぐりアメリカのアラスカで16日、米ロ首脳会談が行われます。トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領らも含めた2回目の会談につなげたい考えですが、進展は見られるのでしょうか?
侵攻後初の米ロ首脳会談…内外から関心集まる
高柳光希キャスター:
ロシアがウクライナに侵攻してから、8月で3年半となります。
侵攻後、初めてとなる米ロ首脳会談が、アメリカ・アラスカ州のエルメンドルフ・リチャードソン米軍基地で日本時間の16日早朝に行われます。
ロサンゼルス支局 小川健太 記者:
16日、米ロ首脳会談が行われる、米軍基地前に来ています。現在の時刻は午後11時半ですが、首脳会談が行われるということで、現地メディアや海外メディアが首脳会談に備えている状況です。
高柳キャスター:
なぜ首脳会談の会場にアラスカ州が選ばれたのでしょうか。
ロシア・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻による戦争犯罪の疑いで、ICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が出されているため、行ける場所が限られています。それに加え、アメリカはICCに加盟していません。
さらに地理的な要因も含まれており、ロシア・ウシャコフ大統領補佐官は「米ロは国境を接する隣国だ。代表団がベーリング海峡を越え、重要な首脳会談をアラスカで行うことは、理にかなっている」と発言しています。
米ロ首脳会談は、日本時間の16日午前4時半から行われます。まず、記者団の前でそれぞれの首脳が発言をした後、首脳に加え両国代表団(5人ずつ)が、ランチミーティングを行います。その後、共同で記者会見が行われるというスケジュールとなっています。
南波雅俊キャスター:
首脳会談が間近に迫る中で、アメリカの皆さんの受け止め方や温度感はどのように感じていますか?
小川記者:
アメリカ・アンカレジ市内を取材する中で、ウクライナの国旗を持った数百人単位の市民が集まっており、ウクライナに連帯を示すような行動が見られました。
今回の首脳会談は、ウクライナ・ゼレンスキー大統領が不在の中で行われる会談ということで、「会談の開催自体に意味があるのか」と違和感を持つ人や、ICC(国際刑事裁判所)の戦争犯罪の容疑者でもあるプーチン大統領がアラスカ州に訪れることを快く思っていない人など、市民は首脳会談に大きな関心を寄せています。
当初より発言がマイルドに…トランプ大統領の思惑は
高柳キャスター:
米ロ首脳会談の開催が発表されたのは、8月8日でした。
当初、トランプ大統領は「双方の利益になるように、領土の交換が行われるだろう」と発言し、ロシアとウクライナ間の領土の交換について言及していました。
しかし、8月13日には「今回の会談は、現在地を確認するようなものだ」と発言がマイルドになったような気もします。
小川記者:
今回の首脳会談が、和平交渉を巡る大きな進展が望めない中、首脳会談への批判をかわす狙いもあるとみています。
8日、首脳会談の開催が決定した際には、トランプ大統領は領土の交換について言及しましたが、当事者であるウクライナ抜きの議論に、ウクライナやヨーロッパが反発したのはもちろん、ロシア側もトランプ大統領が言う「領土交換」には納得できない姿勢を示しました。
このように依然として領土問題が平行線をたどる中、今回の首脳会談で停戦の道筋を見出すのは難しいとみられています。
こうした中で、トランプ政権は、会談の期待がされすぎないよう、少しずつ発言をトーンダウンし期待値を下げ、予防線を張っている形です。
一方、万が一領土問題に関する進展があれば、サプライズとして思いきりアピールできるため、どちらに転んでもいいような流れを作っているようにも感じられます。
「会談によってロシアの孤立は崩壊する」会談後ロシア包囲網はどうなる?
高柳キャスター:
米ロ首脳会談の後、今後はどうなっていくのでしょうか。
トランプ大統領は「もっと重要なのは2回目の会談だ。プーチン大統領とゼレンスキー大統領に加え、ヨーロッパの首脳も参加するかもしれない」と発言をしています。
そして、ロシア側に対しては厳しい発言が目立っています。8月13日には「ロシアが停戦に応じなければ、厳しい制裁措置に踏み切る」「会談が良いものになるか、悪いものになるかは、最初の数分でわかる。もし悪い会談になれば、短時間で終わるだろう」とも話しています。
今回の首脳会談における、プーチン大統領の狙いはどこにあるのでしょうか。
小川記者:
様々な見方がある中で、ニューヨーク・タイムズは「プーチン大統領がアメリカの大統領と会談するという事実そのものが、ロシアにとって外交的な大きな勝利だ」と伝えています。
ロシアに対して、これまで西側諸国が経済制裁などを通じ、ロシア包囲網を形成してきました。そうした中、米ロ首脳会談はとりわけ大きな意味を持っていて、ニューヨーク・タイムズは専門家の話として「会談によって、ロシアの孤立は崩壊する。会談結果がどうであれ、既に成功だ」と伝えています。
そして、この機を逃すまいとしてか、プーチン大統領もトランプ大統領による侵攻の仲介について、「誠実に努力を続けている」と賛辞を送っています。
今回の会談後、両首脳の共同会見が予定されています。その内容や次の会談への道筋はもちろんのこと、会見におけるプーチン大統領とトランプ大統領の距離の近さや空気感が、今後どのようにヨーロッパ諸国とアメリカの関係に影響するのか。この辺りにも注目していきたいなと感じています。
日比麻音子キャスター:
一言一言、慎重に注目されることになりそうですが、現地の警備体制などの現状は、どのようになっているのでしょうか。
小川記者:
現状、アンカレッジ市内を車で巡る中で、とりわけ大きな警備体制が敷かれているとは感じていません。というのも、首脳会談自体は米軍基地の中で行われる予定で、両国首脳はそれぞれ飛行機で基地内に入るため、市内がものものしい雰囲気ではないといえます。
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<プロフィール>
小川健太
米・ロサンゼルス支局記者
アナウンサーから転身
行政や事件取材を担当
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