日本も交渉中の“トランプ関税”で大きな動きです。アメリカと中国は、お互い100%を超える関税をかけていましたが、12日、双方が115%を引き下げることで合意しました。
【写真でみる】米中貿易戦争“休戦”へ… 日本の“秘策”とは?
「中国にとっても良いことだ」トランプ氏が会見
日本時間12日午後11時頃、ホワイトハウスに姿を見せたトランプ大統領。
トランプ大統領
「この合意で一番良かった点は、中国市場を開いたことだ。中国はアメリカ企業が市場に入ることを認めた。中国にとっても良いことだ」
アメリカと中国、互いに一向に引く気配がなかった貿易戦争。
トランプ大統領(4月9日)
「報復するなら倍返しだ。中国にしてやったみたいにな」
中国外務省 林剣報道官(4月10日)
「時代に逆行するアメリカの暴挙は民意を得ず、最後は失敗に終わるだろう」
相互関税の応酬が激化すると、市民生活に影響も…
記者
「ニューヨークのアップルストアに次々とお客さんが入っていきます」
アップルストアを訪れた客(4月10日)
「値上がりする前に、新しい機種に替えようと思って来ました」
米・中関税「115%引き下げ」対中関税は30%に
双方がどこまで歩み寄れるかが焦点だった貿易戦争。
10日、スイス・ジュネーブで初めての直接協議が行われました。
そして日本時間の夕方、共同声明を発表。
アメリカが中国に対して145%、中国もアメリカに125%の関税を課す中、双方は、115%引き下げることで合意しました。
アメリカ ベッセント財務長官
「私たちは90日間の一時停止で合意した。関税を115%引き下げる」
共同声明によると、アメリカは4月2日、中国に課した34%のうち「上乗せ分」の24%を90日停止。中国側の報復措置を受けてさらに上積みした関税も取りやめるということです。
これによりアメリカが中国からの輸入品にかける追加関税は、これまでの145%から30%へと下がります。
一方、中国はアメリカからの輸入品に対して課している125%の報復関税について、4月4日に課した34%のうち24%を90日間停止し、91%は廃止、残りの10%は維持するということです。
これで100%を超える貿易戦争は、双方の譲歩で、ひとまず緩和された形となりました。
ベッセント財務長官
「よりバランスの取れた貿易を目指し、双方がその実現に向けて取り組む姿勢を示しています。中国がより多くのアメリカ製品に門戸を開くよう望んでいる」
中国国内の受け止めは…
市民
「良かったです。 中国の商品をまた世界に輸出できますね」
「アメリカにも中国にも、そして世界にもメリットがあることです」
米中合意 双方なぜ大幅譲歩?
小川彩佳キャスター:
アメリカのトランプ大統領は12日の会見で、「今週末に中国の習近平国家主席と話すことになるだろう」と話しました。
アメリカと中国との間で急展開となった、トランプ関税交渉ですが、日本の交渉にどのような影響が出てくるのでしょうか。
米中交渉の急展開な合意の背景、そして日米交渉にどう決着をつけるのか、その日本の“秘策”にアメリカが関心を寄せていることについて伺っていきたいと思います。
まず、米中交渉の急展開について、なぜ両者はこぶしを振り下ろしたのでしょうか。
藤森祥平キャスター:
アメリカ側と中国側のそれぞれの背景を分析しました。
アメリカ側として、ワシントン支局長の樫元照幸支局長は、「商品が棚に並ばなくなる。物の製造が止まるという懸念が現実味を帯びてきたことに対する警戒感があったのではないか」といいます。
また中国側として、北京支局長の立山芽衣子さんは、「困った米国が折れたかたちになった。中国としてもメンツを保てる上に、中国が有利な形での決着になった」と分析しています。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
これまでのトランプ関税の影響は、株が下がったり、長期金利が上がったりといった金融市場関係に出ていました。しかし最近になり、実体経済の方に影響が出てきました。
ロサンゼルスの港に中国の貨物船が入らなくなったり、アップル製品やテスラ車が入って来なくなり、実体経済が立ち行かなくなってきた。これはトランプ大統領にとってはかなりの誤算でした。そこでここは一度妥協に動こうという判断が働いたのだと思います。
藤森キャスター:
実害を感じたということですね。こうして双方が関税を115%引き下げるというかたちで、アメリカは145%から30%に、中国は125%から10%へと変わりました。
“日本車を逆輸入”にアメリカが関心
そして、日本にはどのような影響が出てくるのか、日米交渉はどのような決着をつけるのでしょうか。
ポイントの一つである、自動車関税について見ていきます。
現在、アメリカに輸入される自動車に関しては、一律25%の追加関税が課せられています。
8日、初の合意になったアメリカとイギリスの関税交渉では、「イギリスで生産された自動車については、年間で10万台までは関税を10%に引き下げる」ということになりました。
日本もどこまで関税を引き下げることができるのでしょうか。およそ日本は137万台をアメリカに輸出しています。
星浩さん:
イギリスの実際の自動車の輸出は、実は10万台に達していません。そのため、全てが10%の追加関税で輸出することができます。しかし、日本の約137万台の全てを10%に引き下げることは、さすがにトランプ大統領は認めないでしょう。
特に、自動車生産をおこなっているミシガン州などをはじめとするラストベルトは、トランプ大統領の支持の地盤となってるところなので、そう簡単には認められないと思います。
そこで日本政府が考え出した秘策があります。
「トヨタ」や「ホンダ」といった日本メーカーは、アメリカ国内で多くの自動車を生産しています。生産しているのは、左ハンドルの自動車ですが、一部で右ハンドルの車を生産し、それを日本に逆輸入するという案が浮上しています。
この案に、アメリカ側も非常に関心を持っています。
アメリカで生産している自動車になるので、貿易統計上は、アメリカの貿易赤字が減ることになります。その場合、トランプ大統領が問題視しているアメリカの赤字が減ります。
これにはアメリカ側も関心を持っていますが、最終的にトランプ大統領がこの程度の話で納得するのかどうか、微妙なところだと思います。
藤森キャスター:
日本にとってマイナスにはならないのでしょうか。
星浩さん:
日本にとっては、逆輸入を行うことを条件にして、関税を10%に引き下げてもらうことができればよいのですが、石破総理は、「10%も駄目だ、0%にして欲しい」と言っています。なかなかそこまでは難しいと思います。参議院選挙の前までに10%で合意することは、日本において自動車産業は非常に影響が大きいので、実際には難しいでしょう。
藤森キャスター:
日米双方が満足できる結果は簡単には得られないということですね。
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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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