
テレビ局には番組を観た視聴者から様々な声が寄せられる。TBSテレビの「視聴者センター」(カスタマーサクセス室所属)は、こうした声を集約し番組制作の現場にフィードバックさせるのが仕事だ。担当者が寄せられた“声”の一端を紹介する。
ようやく過ごしやすい日が続くようになり、秋の訪れを感じる毎日となりました。今回は、10月に入って寄せられたご意見について取り上げたいと思います。
日本人選手が多数活躍していて注目の高いMLB。試合結果は日本でも関心が高いものです。ある日のニュース番組の中で、アメリカン・リーグ地区シリーズの結果を伝える項目がありました。その際、「ホワイトソックス対ガーディアンズ」の勝敗を★(星)の数で表すテロップが出ていましたが、この★の色について「見づらい」という指摘をいただきました。
「MLBのア・リーグ地区シリーズの勝敗を星で表していますが、『黄色い星』と『白い星』になっています。これは高齢者にはとても見分けにくい組み合わせの色なんです。ある程度の年齢を超えた高齢者は『白内障気味』なので、配慮して見やすい色にしてください」(男性60代)
報道・情報番組を中心に「ユニバーサルデザイン」を取り入れることを推奨している私たちにとって、このご指摘はとても気になりました。
画面を確認すると…白い背景に、黄色い星と白い星が並んでいます。50代の私も、一瞬ではどの星が黄色なのか、どちらが多く勝っているのか、わかりにくく感じました。
担当部署に伝えたところ、「確かにわかりにくいので、直します」と、変更を快諾。早速、「勝ち星」の黄色をより濃い色に、「負け星」を白からグレーに変更し、サイズも調整。実際の放送でも確認しましたが、格段に見やすいテロップとなりました。
このコラムでもたびたびお伝えしたことがありますが、放送の「ユニバーサルデザイン」は、色覚特性を持つ方や、加齢などによって文字が読みにくくなったり、聞き取りづらくなったりした方にも、安心して番組を見ていただけるよう配慮するものです。
TBSテレビでは、報道・情報番組を中心に積極的にユニバーサルデザインを取り入れてきましたが、こうした『みんなにやさしい番組制作プロジェクト』がこのほど、グッドデザイン賞を受賞しました。
評価していただいたのは、テロップ、音響、配色などのデザインにおいて、科学的アプローチを導入し、多様な視聴環境に対応する制作ワークフローを定着させている点です。
見えづらい、聞こえづらい、というのは、個人の感覚によってばらつきがでてしまいます。私たちはこれをデータ化できないか、検討してきました。そして、慶應義塾大学との共同研究による脳波測定を用いた実験で、「視聴ストレスの可視化」を通じて、情報のインプットにかかる負荷を客観的に検証しました。
結果を受けて、読みやすいと感じるテロップの文字数や文字の形状、音響面ではBGM音量とアナウンサーの声のより聞き取りやすい最適なバランスなどを導き出し、放送に活用しています。
この取り組みのはじめの一歩は、視聴者からの要望でした。「野球のスコアの配色が見えにくい」という、色覚障がいのある方からの声で、私たちは“色覚の多様性”という意識を持つことができました。
また、聞こえづらい、という指摘も多数いただくことから、音についての実証実験も取り入れることになりました。
視聴者の皆様からの声は、大きな気づきと改善の貴重なきっかけとなります。私たちはこれからも、こうした声をしっかり現場に届けていきたいと思います。
〈執筆者略歴〉
浜崎 由佳(はまざき・ゆか)
1995年TBS入社。
ラジオ局、報道局、事業局などを経て、編成考査局。現在カスタマーサクセス室長。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。
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