国内
2026-09-17 08:10
近年、コンビニは「近くにあるからなんとなく寄って“ついで買い”」をする場所から、「限定の商品を買うために、わざわざ足を運ぶ“目的買い”」をする場所へと姿を変えようとしている。その裏には、独自商品の開発に力を注いできた各社の努力があるが、一方で、物価高騰のあおりを受け、集客に苦戦を強いられているのも事実。そんな中、今年3~5月の第1四半期において、大手コンビニの中で唯一となる「客数増(前年比101.2%)」を達成したのがローソンだ。
【写真】ローソン、AI発案の新商品とは…?
■「お得」だけじゃない、好調を支える「非食品群」
長引く物価高や、小型スーパー・ドラッグストア・ネット通販など他業態との競争激化により、集客に苦戦しているコンビニ大手。業界トップのセブン‐イレブンも2026年3~5月の客数が前年同期比0.9%減、競合のファミリーマートも2.1%減と、客数は減少傾向にある。そうしたなか、ローソンは客数が前年同期比1.2%増。チェーン全店売上高、営業収益、事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のすべてで、第1四半期として過去最高を更新した。また、全店平均日販は第1四半期実績として6年連続で過去最高となる59万4,000円を記録し、ファミリーマートを上回った。
なぜ今、ローソンは顧客の支持を広げているのか。
3~5月期は、おにぎりを2個買うとドリンクがもらえる『ハピとく祭』や、自社アプリを活用した割引キャンペーンなど、節約志向にマッチした施策が客足の伸長に大きく寄与したという。
同時に、注力してきた日用品や玩具などの「非食品群」も好調だ。お得企画も非食品の強化も他社が横並びで取り組むなか、ローソンは両施策をしっかりと成果へ繋げている。
その一例が、マンダムと共同開発したボディシート『GATSBY(ギャツビー)アイスボディペーパー フィグの香り』だ。昨年発売したところ、甘すぎず爽やかなフィグ(いちじく)の香りが「香水いらずのいい香り」とSNSや口コミで話題になった。これを受け、今年は同じ香りを踏襲したクールタイプのスプレーとボディミストも発売し、商品ラインアップを拡充。関連商品も堅調な売れ行きを見せている。
さらに、アウトドアブランドのコールマンと共同開発した『コールマン 晴雨兼用・自動開閉折りたたみ傘』も、3~5月期の非食品カテゴリーを大きく牽引した。近年増えている「日傘男子」などの需要を捉え、4~5月の段階で約13万本を販売。本格的なシーズンを迎えた6月以降も売り上げを伸ばし、累計販売数は20万本規模に達している。
ローソン商品本部 生活・日用品部の大橋妙子さんは、「お客様がワクワクするような商品を揃え、食べ物だけでなく日用品のお買い物の場としてローソンを選んでいただけるよう考えてきた」と話す。
■「推し活」でローソンへ グループの総合力が生む集客力
日用品のヒットにとどまらず、トレーディングカードやエンタメくじといったエンタメ系商品も、「特定の商品を買うために目的地としてローソンを目指す」という独自の来店動機を作り出している。
いずれも他のコンビニやドラッグストアでも取り扱われているが、ローソンの場合、国内最大級のチケット総合サイト「ローソンチケット」や、CD・DVD・グッズなどを扱う「HMV&BOOKS」、「ローソン・ユナイテッドシネマ」など、グループ内にエンタメ関連の事業を持つ。これらを横断して、ローソンでチケットを購入してライブに行き、HMVでCDを買い、ローソンで関連商品やくじを楽しむといった「推し活」の流れをつくれることが特徴だ。
エンタメ事業部の小野栞さんは、「商品開発においては、例えば、アニメ映画の公開情報をいち早くキャッチアップして交渉を進めるなど、お客様の需要にしっかりと応えられるよう取り組んでいます。また、昨年の弊社50周年には『LAWSON 50th Anniversary presents Special LIVE』を開催し、初音ミク、GLAY、櫻坂46/日向坂46など、人気アーティストやキャラクターによるスペシャルな公演を実施しました」と話す。
人気アーティストとの企画を支えている背景には、エンタメ分野で築いてきた幅広いネットワークの存在がある。小野さんは「グループ全体としてエンタメにおいていろいろな事務所やアーティスト、アニメの制作会社、VTuber、YouTuber等と接点があるからこそ実現できることが多い」と説明する。
■ファミマに続きセブンもオリジナルアパレルを展開、ローソンは?
エンタメ分野で独自の強みを発揮するローソンだが、業界全体に目を向けると、いま各社は「コンビニウェア(アパレル)」市場を新たな集客の主戦場と位置づけ、激しい火花を散らしている。
いまやコンビニで服を買うことは、急な出張や雨など、必要に迫られたときの選択肢にとどまらない。デザインやカラーを気に入って、普段使いのファッションとして購入する人も増え、「服を買うためにコンビニへ行く」という新たな需要も生まれている。
現在のブームは、2021年にファミリーマートが発売した『ラインソックス』から始まった。青と緑のファミマカラーを採用したデザインが話題となり、その後、Tシャツ、ショートパンツ、スウェット、ボタンダウンシャツ、ジャケットなどへとラインアップを拡大。今年7月からはセブン-イレブンもオリジナルアパレルの展開を本格化させた。
各社が独自のアパレルを打ち出すなか、ローソンは無印良品を展開する良品計画との協業を軸とした展開に注力している。
■「近くで買える無印良品」から一歩先へ ローソン独自の商品戦略
ローソンが無印良品の商品を取り扱い始めたのは2020年。2022年5月から本格的に導入を進め、食品や化粧水、文房具など無印良品の定番アイテムの販売を開始した。その後、ソックスや、ブルーを基調にしたストライプのローソンカラー商品など、共同でオリジナル商品も開発してきた。
その勢いをさらに持続・加速させる一手として、今年6月に共同開発商品『無印良品 綿天竺編み クルーネック半袖Tシャツ』(全4種・各4サイズ)を新たに投入。同時に衣料品売り場の棚を1本から2本に拡張し、取り扱いアイテムも46から79へと増やして夏の需要を的確に捉えた。売場拡大後、無印良品の衣料品の売上高は約4割(前年同期比)、他の商品を含めた衣料品全体では約3割伸長(前年同期比)した。
自社ブランドではなく、なぜ無印良品との協業を選ぶのか。
担当の大橋さんは、「食品だけでなく、日用品でもローソンがあったらいいよねと思ってもらうため、信頼あるブランドとの協業は大きな強みになった」と話す。
今後の展望ついては「近くのローソンでいつでもお気に入りの無印良品が買えることに加え、ローソンでしか買えない商品の展開もテーマ。無印良品の商品でどのようにコンビニアパレルの良さを出していくか考えている」という。
さらに大橋さんは、今後のローソンの役割についてこう続ける。
「今年、災害情報の受発信や水・食料の供給、通信・電力の確保等を備えた『災害支援ローソン』の1号店を千葉県富津市にオープンさせました。今後、とくに地方ではコンビニが地域のライフラインとして重要な存在になっていく。食品はもちろん、日用品全般においてもローソンがあれば安心できるというお店になれれば」
「欲しいものがあるから行く」だけではなく、「そこにあると安心できる」。コンビニが提供する価値は、商品そのものから、地域の暮らしを支える存在へと広がろうとしている。
(取材・文/河上いつ子)
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■「お得」だけじゃない、好調を支える「非食品群」
長引く物価高や、小型スーパー・ドラッグストア・ネット通販など他業態との競争激化により、集客に苦戦しているコンビニ大手。業界トップのセブン‐イレブンも2026年3~5月の客数が前年同期比0.9%減、競合のファミリーマートも2.1%減と、客数は減少傾向にある。そうしたなか、ローソンは客数が前年同期比1.2%増。チェーン全店売上高、営業収益、事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のすべてで、第1四半期として過去最高を更新した。また、全店平均日販は第1四半期実績として6年連続で過去最高となる59万4,000円を記録し、ファミリーマートを上回った。
なぜ今、ローソンは顧客の支持を広げているのか。
3~5月期は、おにぎりを2個買うとドリンクがもらえる『ハピとく祭』や、自社アプリを活用した割引キャンペーンなど、節約志向にマッチした施策が客足の伸長に大きく寄与したという。
同時に、注力してきた日用品や玩具などの「非食品群」も好調だ。お得企画も非食品の強化も他社が横並びで取り組むなか、ローソンは両施策をしっかりと成果へ繋げている。
その一例が、マンダムと共同開発したボディシート『GATSBY(ギャツビー)アイスボディペーパー フィグの香り』だ。昨年発売したところ、甘すぎず爽やかなフィグ(いちじく)の香りが「香水いらずのいい香り」とSNSや口コミで話題になった。これを受け、今年は同じ香りを踏襲したクールタイプのスプレーとボディミストも発売し、商品ラインアップを拡充。関連商品も堅調な売れ行きを見せている。
さらに、アウトドアブランドのコールマンと共同開発した『コールマン 晴雨兼用・自動開閉折りたたみ傘』も、3~5月期の非食品カテゴリーを大きく牽引した。近年増えている「日傘男子」などの需要を捉え、4~5月の段階で約13万本を販売。本格的なシーズンを迎えた6月以降も売り上げを伸ばし、累計販売数は20万本規模に達している。
ローソン商品本部 生活・日用品部の大橋妙子さんは、「お客様がワクワクするような商品を揃え、食べ物だけでなく日用品のお買い物の場としてローソンを選んでいただけるよう考えてきた」と話す。
■「推し活」でローソンへ グループの総合力が生む集客力
日用品のヒットにとどまらず、トレーディングカードやエンタメくじといったエンタメ系商品も、「特定の商品を買うために目的地としてローソンを目指す」という独自の来店動機を作り出している。
いずれも他のコンビニやドラッグストアでも取り扱われているが、ローソンの場合、国内最大級のチケット総合サイト「ローソンチケット」や、CD・DVD・グッズなどを扱う「HMV&BOOKS」、「ローソン・ユナイテッドシネマ」など、グループ内にエンタメ関連の事業を持つ。これらを横断して、ローソンでチケットを購入してライブに行き、HMVでCDを買い、ローソンで関連商品やくじを楽しむといった「推し活」の流れをつくれることが特徴だ。
エンタメ事業部の小野栞さんは、「商品開発においては、例えば、アニメ映画の公開情報をいち早くキャッチアップして交渉を進めるなど、お客様の需要にしっかりと応えられるよう取り組んでいます。また、昨年の弊社50周年には『LAWSON 50th Anniversary presents Special LIVE』を開催し、初音ミク、GLAY、櫻坂46/日向坂46など、人気アーティストやキャラクターによるスペシャルな公演を実施しました」と話す。
人気アーティストとの企画を支えている背景には、エンタメ分野で築いてきた幅広いネットワークの存在がある。小野さんは「グループ全体としてエンタメにおいていろいろな事務所やアーティスト、アニメの制作会社、VTuber、YouTuber等と接点があるからこそ実現できることが多い」と説明する。
■ファミマに続きセブンもオリジナルアパレルを展開、ローソンは?
エンタメ分野で独自の強みを発揮するローソンだが、業界全体に目を向けると、いま各社は「コンビニウェア(アパレル)」市場を新たな集客の主戦場と位置づけ、激しい火花を散らしている。
いまやコンビニで服を買うことは、急な出張や雨など、必要に迫られたときの選択肢にとどまらない。デザインやカラーを気に入って、普段使いのファッションとして購入する人も増え、「服を買うためにコンビニへ行く」という新たな需要も生まれている。
現在のブームは、2021年にファミリーマートが発売した『ラインソックス』から始まった。青と緑のファミマカラーを採用したデザインが話題となり、その後、Tシャツ、ショートパンツ、スウェット、ボタンダウンシャツ、ジャケットなどへとラインアップを拡大。今年7月からはセブン-イレブンもオリジナルアパレルの展開を本格化させた。
各社が独自のアパレルを打ち出すなか、ローソンは無印良品を展開する良品計画との協業を軸とした展開に注力している。
■「近くで買える無印良品」から一歩先へ ローソン独自の商品戦略
ローソンが無印良品の商品を取り扱い始めたのは2020年。2022年5月から本格的に導入を進め、食品や化粧水、文房具など無印良品の定番アイテムの販売を開始した。その後、ソックスや、ブルーを基調にしたストライプのローソンカラー商品など、共同でオリジナル商品も開発してきた。
その勢いをさらに持続・加速させる一手として、今年6月に共同開発商品『無印良品 綿天竺編み クルーネック半袖Tシャツ』(全4種・各4サイズ)を新たに投入。同時に衣料品売り場の棚を1本から2本に拡張し、取り扱いアイテムも46から79へと増やして夏の需要を的確に捉えた。売場拡大後、無印良品の衣料品の売上高は約4割(前年同期比)、他の商品を含めた衣料品全体では約3割伸長(前年同期比)した。
自社ブランドではなく、なぜ無印良品との協業を選ぶのか。
担当の大橋さんは、「食品だけでなく、日用品でもローソンがあったらいいよねと思ってもらうため、信頼あるブランドとの協業は大きな強みになった」と話す。
今後の展望ついては「近くのローソンでいつでもお気に入りの無印良品が買えることに加え、ローソンでしか買えない商品の展開もテーマ。無印良品の商品でどのようにコンビニアパレルの良さを出していくか考えている」という。
さらに大橋さんは、今後のローソンの役割についてこう続ける。
「今年、災害情報の受発信や水・食料の供給、通信・電力の確保等を備えた『災害支援ローソン』の1号店を千葉県富津市にオープンさせました。今後、とくに地方ではコンビニが地域のライフラインとして重要な存在になっていく。食品はもちろん、日用品全般においてもローソンがあれば安心できるというお店になれれば」
「欲しいものがあるから行く」だけではなく、「そこにあると安心できる」。コンビニが提供する価値は、商品そのものから、地域の暮らしを支える存在へと広がろうとしている。
(取材・文/河上いつ子)
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