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「自分も生きてていい」と実感 絵本の読み聞かせによる自殺防止の「命の授業」が子どもに届けるメッセージ

国内
2026-09-15 15:11

毎年9月10日から16日は国が定める「自殺予防週間」です。この1週間、各地で悩み相談や自殺を防ぐための啓発活動が行われています。小中高生の自殺者は2025年に538人と過去最多となっています。8月後半から増加し、特に夏休み明けの9月1日に多くなる傾向があり、月別では直近の2024年と2025年はいずれも9月が最多となっています。


【写真で見る】吉澤誠さん(左)と、夢ら丘実果さん(右)


子どもへの自殺予防教育に絵本の読み聞かせ

そんな中、画家で絵本作家の夢ら丘実果(むらおか・みか)さんによる、絵本の読み聞かせを通じた自殺防止や心の健康のための「命の授業」が9月1日に東京・中野区の中野第一小学校で行われました。


『カーくんと森のなかまたち』は、子どもたちの「うつ」や自殺予防を目的とした絵本で、夢ら丘さんが絵を、同じく絵本作家で児童教育評論家の吉澤誠さんが文を担当しています。


この日は、6年生4クラス120人ほどの児童が体育館に集まり、夢ら丘さんが『カーくんと森のなかまたち』を朗読しました。


物語の主人公はホシガラスのカーくん。ホシガラスはカラスの仲間で体に白い斑点があります。カーくんは「自分は色鮮やかではないし、鳴き声も美しくない」と劣等感を持って生きる自信をなくしていましたが、仲間の鳥たちに励まされて、自分も必要とされているんだと気付くストーリーです。


夢ら丘さんは、この読み聞かせを通じて「悩んだら誰かに相談すること」、「悩んでいる人がいたら声をかけてあげること」が必要だとして、「人は支えあって助け合って生きている」「ひとりひとりの命はかけがえのない尊いものだ」と訴え、児童は真剣に聞き入っていました。


その後、児童はそれぞれの教室で感想を発表し、活発に意見を交換し合いました。6年生の子どもたちの感想です。


●友達が何か悩んでいたり、授業中あんまり喋ってなかったり、そういう子に「大丈夫?」って声をかけたりしていきたいなと思いました。


●人は1人では生きていけないし、だからこそ1人1人が助け合って支え合わないと生きていけないんだなと思いました。何気ない一言や行動が自分にとっても相手にとっても大きな力になるとお話を聞いていて思いました。


●命は1人1人にある大切なものだということを改めて感じました。それと、どんなことがあっても生きると思う気持ちそのものが大切なものだと思いました。


●僕は今までに3回くらい自分の存在価値を失ってるんですよ。今日の授業を受けて、その時のことを客観視できたから、ちょっとは心の整理がついたかなと思いました。


夢ら丘さんは「今日の話を聞いて、自分も生きてていいんだとか価値があるんだという感想が出てくると、授業ができてよかったなと思います。1回の授業でそれだけの心の変化を生み出したということなので、本当に心を込めて届けることで、きっと響いているものがあるのかな」と話します。


また、この学校では去年も4年生の児童に命の授業を行っていて、今年は2回目の授業となりました。中野第一小学校の三宅慶進校長はこう話します。


去年の授業を聞いて、これから中学・高校に向けて育っていく多感な子供たちにとって、メッセージ性が強いなと感じたので、今回は6年生への授業をお願いしました。やっぱり不登校傾向の子は複数いますので、そういった意味では今日子どもたちも「自分が主体的に動くんだ」とか「困ったら声を上げるんだ」という感想を言ってくれたので、これから一層、不登校であったりいじめであったり、そういった困った時に声が上げられるような環境作りを、一歩先に進められたのかなと思っています。(三宅校長)


「命の授業」の20年

夢ら丘さんの「命の授業」は2007年に始まり、今年で20年目となりました。授業は全国各地で行われ、回数は1300回を超えたということです。この20年の授業の変化を聞きました。


1度目の読み聞かせをした時は、そこまで問題が深刻だと正直思っていなくて、3年生の感想で「死にたかった」という言葉が出たのでびっくりしたんです。その後、どの学校でやってもそういった深刻な悩みを吐露する感想が出てきたので、これは本当に大変な社会問題なんだなというのを実感しました。


授業後の感想に、「本当に死にたかったんだけど、今日のお話を聞いて、死ぬのをやめました」「生きていきたいって思った」と書いてくれた子が何人もいました。それを読んで、この活動は何としても続けなければならないと強く感じ、真剣に取り組むようになりました。


始めた頃は本当に読み聞かせとその説明という形で話も短かったんですが、求められるものも多くて、いじめが解決できるような話をしてほしいとか、不登校に対応する話をしてほしいとか、様々な要望があって、それを取り入れて私の経験やお医者さんに聞いたストレス対処法とか、認知変容といって物事の考え方を変えるのにはどうしたらいいかなんていう専門的な話もするようになってきて、すごく喜んでいただいてる学校も多くなってきました。(夢ら丘さん)


最近では、インターネットの仮想空間「メタバース」での授業もされたそうです。子どもたちがアバターに扮して集まり、匿名で顔も出ない、学校では言えないことも言えるということで、今まで学校での命の授業に参加できなかった不登校の子どもたちも来てくれたということでした。


それでも自殺者は減らず

子どもの自殺を減らすために夢ら丘さんが続けてきた「命の授業」ですが、思いとは裏腹に小中高生の自殺者は逆に増えてしまいました。この20年で少子化によって子どもの数は2割減っているのに自殺者はほぼ2倍となっています。夢ら丘さんに思いを伺いました。


学校の校長先生方からは、「いじめがなくなりました」「不登校ゼロを実現できました」「先生方が、子ども達の心の健康を守るために率先して行動してくれるようになりました」といったご報告をいただくことも多く、子ども達や学校に生まれた変化を知るたびに、大きなやりがいを感じています。


一方で、こういった子どもの悲劇が増え続けてしまったので、20年やってれば自殺が減っていくということを希望として続けてきたんですけど、どんどん増えていますので。私どもだけでは到底できない課題なので、やっぱりできるだけ多くの学校で心の健康のための教育を実施していただきたいです。


あとは子どもが学んでも大人がどうしたら救ってあげられるのかがわからない、対処方法を知らないだけで辛い思いをしている大人も多いと感じます。そういった方々にもこの授業を一緒に受けていただいて、傾聴の方法はじめ、子どもたちの心に寄り添うために必要な様々なことを学んでいただけたら嬉しいなと思います。(夢ら丘さん)


悩みがある人は相談窓口へ

悩みがある人は、ひとりで抱え込まず誰かに相談することが大切です。電話やSNSなどで相談ができる窓口があります。「まもろうよ こころ」で検索すると、厚生労働省がまとめたさまざまな相談先につながります。


最近はChatGPTなどのAIを相手に相談する人も増えていますが、夢ら丘さんは「AIも完ぺきではない。ある意味解決につながることもあるとは思うけれどもそれを信じすぎてしまって間違った方向に行ってしまうこともある」といいます。


「親や先生、人に相談しづらいということがあるようで、そういう時は AIは助けになるとは思うんですが、できればより知識のある専門の人が対応してくれる相談窓口があるので、そこで相談したほうが良い状況に向かうと思う」と話していました。


こども政策担当大臣からのメッセージ

この日、黄川田仁志こども政策担当大臣が児童にメッセージを送りました。一部を紹介します。


本日、道徳の授業として、「命」をテーマとした読み聞かせの取組が行われると知りまして、国の大切な宝物である皆さんへメッセージをお送りします。


皆さんの中には、夏休みが終わり、「何となくゆううつ」、「何となくしんどい」、「何もしたくない」、と感じている方もいるかもしれません。どんな気持ちもあなたの大切な気持ちです。でも、そのような気持ちと一人で向き合うことは、とてもつらいことだと思います。


悩みや不安を言葉にしたり、誰かに話したりすることで、気持ちが楽になることもあります。また、もし、皆さんのまわりでいつもと様子が違うと感じるお友達がいたら、声をかけてあげて、信頼できる大人に伝えてみてください。その一歩が、悩んでいるお友達にとっては、大きな支えとなります。


私は、皆さんがつらい気持ちを一人で背負わなくてもいい環境を作っていきたいと思っています。悩みを抱えている方々が必要な時に相談できるよう、「一人で抱え込まずに、誰かに相談していい」ということを多くのこどもたちに伝えたいです。


(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)


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