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「基地があるのが当たり前」防衛費増額に揺れる佐世保 拡大する水陸機動団と迫る有事リスクの最前線【報道特集】

国内
2026-09-12 06:30

日本の防衛力強化の波が全国に広がっています。防衛予算増額に期待する基地の街・長崎県佐世保市。ここに拠点を置く水陸機動団は拡大し続けています。南西諸島有事の最前線舞台にカメラが入りました。


【写真で見る】「基地があるのが当たり前」防衛費増額に揺れる佐世保 拡大する水陸機動団と迫る有事リスクの最前線


膨れあがる防衛費 防衛力強化で高まる佐世保への“期待”

長崎県佐世保市の水陸機動団の駐屯地では、水陸両用車が時速70キロで走っていた。占領された島に上陸する作戦の切り札だ。


海上に出る前に必ず行われるのが気密性の点検。重量24トン、鉄の塊が水に浮く。1台7億円の水陸両用車を58台保有している。


水陸団員は全員が戦車隊の出身だ。


操縦手
「訓練しているとはいえ、緊張度は高いですね」


――台湾有事については?
「台湾有事については、自分の立場ではお答えできません」


機動団を輸送する大型船が接岸できる埠頭の建設が、急ピッチで進んでいた。


高市総理(2025年10月)
「国家安全保障戦略に定める、対GDP比2%水準について、補正予算と合わせて今年度中に前倒しして措置を講じます」


防衛費を2年前倒し、GDP比2%へ引き上げた高市総理。さらに防衛省は、2027年度予算案の概算要求では過去最大となる9兆円を求めた。


防衛力整備計画に基づき、2023年度以降、防衛費は大幅に拡大し続けている。高市内閣が打ち出す防衛力強化と予算増額に佐世保の期待が高まる。


この街に拠点を置く“日本版海兵隊”に迫る。


「基地があるのが当たり前」“共生”する街・佐世保

長崎県佐世保市では、毎朝8時、街中にアメリカ国歌と君が代が響く。


そこへ日本海で弾道ミサイルの警戒にあたっていたイージス艦「こんごう」が現れる。


そして、周囲を威圧するようにそびえるのは、高さ約130メートルの巨大な3本の無線塔。真珠湾攻撃の極秘情報を発信したと言われる。


1889年、日本海軍が鎮守府を置いた小さな漁村は巨大な軍港に変容した。


佐世保市は戦前と戦後が混在する基地の街だ。基地との“共生”を掲げる佐世保市には、「基地政策局」が存在する。


佐世保市基地政策局 吉本泉 局次長
「共生の街ですね。常に基地と共に歩んできたので、基地があるのが当たり前」


基地政策局は、基地の経済波及効果を年間約1320億円と試算している。


佐世保市基地政策局 吉本泉 局次長
「人口を維持する為にも、経済的な部分が大きいと認識している。そこでの基地の必要性、何よりも国防の一翼を担う」


市役所には自衛隊員が頻繁に出入りする。雇用する退職自衛官はイージス艦の艦長を含め、30人にのぼる。


旧海軍の軍事施設は戦後アメリカ軍が接収し、現在も使用している。佐世保は在日アメリカ海軍の拠点でもあるのだ。


旧海軍が建設した赤崎貯油所の地下タンクには、約20万キロリットルの燃料が備蓄されている。大型タンカー1隻がそのまま埋まっている計算だ。


前畑弾薬庫の弾薬は総量4万6000トン、アジア太平洋地域では最大の規模だ。


イラン攻撃で中東に派遣されていた強襲揚陸艦トリポリも帰還してきた。地球規模で展開するアメリカ軍の“継戦能力”を支えている実態が浮かび上がる。


「基地の街で生きていくしか道はない」防衛費増額に期待

基地周辺には中小の防衛関連企業がひしめく。


従業員13人の「中島ノズル」は創業以来65年間、燃料の噴射機のメンテナンスを専門としている。


防衛予算増額については…


中島ノズル 中島顕 社長
「期待はしております。ロシアとウクライナの戦争から始まって、米軍の仕事が多くなっている」


――戦争が多くて佐世保の景気が良くなるというのは
「それはなんとも言えないですね」


サン電子工業は従業員16人。会議室には自衛隊やアメリカ海軍からの感謝状が並ぶ。艦船本体に加え、電気関係の修理は皿洗い機やトースターまですべて請け負っている。


サン電子工業 坂本信吾 社長
「きな臭いくらいがいいのかもしれない。(佐世保を)母港にしている船が4杯ぐらいいる。佐世保に帰ってきて、修理が出るんじゃないか。仕事に行ってる分、色々あちこち壊れてくるだろうから」


――政府が防衛予算を増やしている影響は
「まだないけど期待、良い傾向ではあるかなと思う」


坂本社長は米中の対立が景気を刺激してくれると話す。


サン電子工業 坂本信吾 社長
「習近平さんが頑張ってるから、トランプも頑張り、佐世保基地強化となる。習近平のペイはPAY(払う)じゃないかなって、冗談ですよ」


3200社が加盟する佐世保商工会議所。防衛予算の増額は大歓迎だ。


佐世保商工会議所 金子卓也 会頭
「国策の街としてある以上は、基地を受け入れる代わりに、基地があることで地元も栄えないと」


“基地がない佐世保”は、単なる最果ての街になってしまうと語る。


佐世保商工会議所 金子卓也 会頭
「国を守る拠点とする基地の街で、生きていくしか道はない」


「平和なときはパッとしない」“基地の街”ゆえの平和運動の難しさ

在日アメリカ海軍の司令部にたなびく国連旗。


1950年に勃発した朝鮮戦争は、3年後に休戦が成立した。アメリカを中心とした国連軍は、戦争が再開されればいつでも使える基地に佐世保を指定した。


国連旗は朝鮮戦争が未だ終結していない事を示しているのだ。


太平洋戦争後、佐世保を復興させたのは...


佐世保商工会議所50年史より
「佐世保に起死回生の時機が来た。それは予期しなかった方角から来た。“朝鮮動乱”がすなわちそれである」


岡本昭三さんは当時、アメリカ軍基地の従業員だった。


――朝鮮戦争の時、ドックにはアメリカの艦船は


元アメリカ軍基地従業員 岡本昭三さん
「朝鮮戦争の時はいっぱいでした。無理な残業でも手当が良かったからね」


佐世保商工会議所50年史より
「佐世保は将兵の私物、土産品などの購入地となり莫大な消費地と化した」


辻󠄀昌宏さんは好景気に沸く街の様子を鮮明に記憶している。


元佐世保商工会議所会頭 辻󠄀昌宏さん
「死ぬか生きるかの戦場から休暇で帰ってきたら、何か月分か貯まってる給料をバンバン使う。ドルが街中に溢れている」


多くのアメリカ兵の遺体が佐世保に運ばれてきた。


元佐世保商工会議所会頭 辻󠄀昌宏さん
「ゴムの袋に入れた遺体をものすごい数持ってきて、佐世保から本国(アメリカ)へ輸送してた。きな臭くなると街が忙しくなる。平和なときはパッとしない、(佐世保の)宿命」


経済面で基地に依存する佐世保だが、反戦運動の最前線になった時代もあった。


1968年ベトナム戦争のさなか、アメリカの原子力空母エンタープライズの入港阻止の大規模な反対運動が起きた。


しかし、国際情勢の変化と共に運動は下火になっていった。


佐世保地区労働組合会議 赤星秀典 議長
「基地があるということと共にリスクを背負っているんだということを分かってもらって、もう一度平和運動を盛り上げていきたいなと」


運動には、佐世保ならではの難しさを感じるという。


佐世保地区労働組合会議 赤星秀典 議長
「教え子の保護者の方に自衛隊の方もたくさんいらっしゃる。声を大にして反基地・反戦と言うのはなかなか難しい」


中国との緊張高まり…3000人規模に拡大した日本版海兵隊「水陸機動団」

佐世保が官民一体で経済効果を期待しているのが、水陸機動団の増強だ。小銃を携帯しての行進は商店街の要請で始まった。


「水陸機動団」の前身は西部方面普通科連隊だ。発足当初、若い隊員の教育的意味合いが強い部隊だった。


しかし、尖閣諸島(沖縄県)の領有権をめぐり中国との緊張が高まり、連隊は水陸機動団に改編され、3000人の大部隊に膨れあがった。


離島奪回作戦では、ホバリングするヘリから重装備の隊員が飛び込む。骨折を防ぐためにフィンは着水後、海中で装着する。訓練に臨むのは熟練した隊員達だ。


南西諸島周辺の緊張が加速し、部隊はさらに増員を迫られている。


駐屯地のプールでは、全国から集められた隊員の訓練が続いていた。戦力が分かるとの理由から、年齢構成は明らかにされていない。


銃を携帯して飛び込み上陸用のゴムボートを目指す。水を含んだ戦闘服はかなりの重さになる。体力を要する訓練に女性隊員の姿もあった。


さらに、最低1週間は生き延びるための道具が入った30キロを超える大型のリュックを持って飛び込む。水への恐怖心が起こり、入浴も出来なくなる隊員もいると言う。


有事の際は、最前線に投入される部隊だ。遺書を書いた隊員も少なくない。


宿舎隊員(2021年取材)
「家族に『さよなら』って言えない状況になるかもしれないので、書ける準備だけ残しておこうかなと」
「実家に書いて置いてはあります。親への感謝の気持ちだったり」


「水陸機動団」の活動地域は急速に拡大し、アメリカやフィリピンとの3国共同訓練(バリカタン)も行われるようになった。


水陸機動団 武者利勝 団長
「万が一、島しょに侵攻があった場合、上陸して、島を奪回・確保する訓練をやっている。あくまで我が国の領土を守ると」


しかし、“台湾有事”に触れる質問には極めて慎重だ。


水陸機動団 武者利勝 団長
「台湾有事だけではなく、幅広く、ニュースを見ている」


“イージス誘致撤回”に揺れた街 残された複雑な思い

基地を誘致して活性化を図ろうとする自治体は少なくない。


2017年、政府は北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するために、秋田市と山口県萩市に陸上配備型のイージス・アショアの導入を決定した。


2基で最低でも4000億円と言われ、安倍内閣の“爆買い”だと批判された。


萩市の建設予定地では、ボーリング調査も開始され着工寸前だった。しかし、迎撃ミサイルのブースター(推進装置)の落下地点を完全にコントロール出来ないことや、杜撰な現地調査が明らかになり政府は3年後、突如計画を撤回した。


地元の関係者に衝撃が走った。


本業は食堂経営の森田市議。議員になる前から誘致運動を強力に推進したひとりだ。


森田宗和 萩市議会議員
「消滅可能性都市ですから、萩市は。非常に厳しい。もし、イージス・アショアが今あったら、むつみ地区の人口、スーパーとか流通関係もできて、学校も子ども達も増えて良かった」


ハワイのアメリカ軍基地のイージス・アショアを視察した議員もいた。


美原喜大 萩市議会議員
「来てたら賑やかになっていたんかね。交付税は入るし、人口が増えればそれだけ交付税に跳ね返ってきますし」


建設が撤回された後にロシアがウクライナに侵攻した。そして2026年、アメリカのイラン攻撃が起きた。報復として、イランは周辺国のアメリカ軍基地を攻撃している。


長岡肇太郎  萩市議会議員
「軍事基地から攻めていくというニュースを見て、(イージス・アショアが)あって良かったのか、なくて良かったのか考えるところもある」


建設が始まれば、連日大型トラックが粉塵を上げて走ったに違いない幹線道路。この日も全く人が歩いていない。過疎は深刻だ。


今は何事も無かったかのように、元の静かな田園地帯の日常が戻っていた。


中国との熾烈な神経戦 加速を続ける米軍との一体化

7月6日、中国は原子力潜水艦から太平洋に向けて弾道ミサイルを発射。模擬弾頭とはいえ、射程は1万2000キロを超えアメリカ本土にも届く。


そしてこの3週間後、佐世保を母港とするイージス艦“ちょうかい”がアメリカで改修され、巡航ミサイル・トマホークの発射に初めて成功した。


齋藤聡 海上幕僚長
「米海軍の支援を得て、トマホークミサイルの実射試験を行い、トマホークを発射できることを確認しました」


射程は1600キロで、中国の沿岸部がすっぽりと入る。


“イージス”とは、ギリシャ神話に登場する“万能の盾”のこと。専守防衛に基づいて導入された“万能の盾”が、敵基地攻撃の主力となる“矛”(トマホーク)を搭載する。


日米の軍事力の一体化は加速し、中国との熾烈な神経戦は、際限の無い軍拡競争の様相を見せている。


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