
今週、「核のごみ」の最終処分地に、本州では初めて、茨城県の常陸大宮市が急浮上しました。“調査”を受け入れれば、最大20億円の交付金を受け取れますが、選択に揺れる候補地を取材しました。
【写真を見る】「文献調査」で最大20億円の交付金も…“核のごみ”最終処分地に急浮上で揺れる町【報道特集】
「こんな暴挙は初めて」“核のごみ”最終処分地に急浮上で揺れる町
茨城県北西部に位置する常陸大宮市。今週、この穏やかな山あいの町に衝撃が走った。
「最終処分場は受け入れられない。こんな暴挙は初めてでした」
常陸大宮市が高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分地として急浮上したのだ。
9月4日、急遽、国は非公開で市議に対する説明を行った。
常陸大宮市議会 秋山信夫 議長
「議員もなかなか理解ができないと。最終処分場がどうとか固形燃料――1000年も何年ももつのだとか、まとまった意見がでなかったんですよ」
降って湧いたかのように見える「核のごみ問題」、市民からは。
常陸大宮市民
「とにかくびっくりしてます。まさかここで。子孫に影響がなければいいんですがね」
常陸大宮市民
「とんでもないことを。お金の問題じゃないし、財政が苦しいからそういうのに飛びつくっていうこと自体が、とんでもない話ですよ」
調査受け入れのメリットは「お金の問題」
政府が動きを見せたのは、8月31日だ。
赤沢亮正 経産大臣
「本日、茨城県常陸大宮市に文献調査の実施に関する申し入れを行わせていただきました」
「核のごみ」とは、原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物のことで、放射能レベルの高い廃液を溶かしたガラスと混ぜ合わせ、容器の中で固められている。
放射線量が十分に下がるまで10万年もの年月が必要なため、処分施設を建設し、地下300メートルより深い場所に閉じ込める必要がある。
今回、政府は常陸大宮市に対し、最終処分地を決定するまでに3段階ある選定プロセスのうち、第1段階にあたる「文献調査」を申し入れた。
火山や活断層などの記録をもとに、安全性などに問題がないか調査するもので、応じると最大20億円が交付される。
常陸大宮市を候補地とした根拠のひとつとなるのは、「科学的特性マップ」。活断層の有無などをもとに、最終処分地の適性を示した地図だ。
常陸大宮市は市内全域が、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」に分類されている。特に南東部は「輸送面でも好ましい」とされている。
調査受け入れのメリットを聞かれた鈴木定幸市長は。
常陸大宮市 鈴木定幸 市長
「ちょっとドライな表現になってしまいますけれども、お金の問題なのかなという感じはしますね」
交付金が市の財政に必要だと訴えた。
常陸大宮市 鈴木定幸 市長
「市民のみなさま方から、『このままでは常陸大宮市は50年後はなくなってしまうんじゃないか』と。急激な人口減少、あるいは地域経済の疲弊、そんなことを考慮いたしますと、やはり、国策に貢献する意義というものは少なからずあるんだろうと、私は考えております」
常陸大宮市で取材を進めると、今回の一件について「準備は以前から進んでいた」という証言を聞くことができた。
文献調査“準備は以前から” 最大20億円の交付金ヘの期待
人口約3万5000人の常陸大宮市は、市の6割を山林が占める。高齢化率は41%。典型的な過疎の町だ。
この町で半世紀にわたり、自動車や蛍光灯などの部品工場を営んできた田沢佳治さん。
かつては40人以上の従業員が働いていたが、徐々に事業を縮小し、今は3人となった。20年続けた塗装のラインも9月で出荷を終える。自分の代で工場をたたむという。
田沢製作所 田沢佳治 社長
「9月で終了。これが最終出荷品。ピークを過ぎてからは、従業員の募集を一切行わなくて。跡継ぎがいなければね」
――働いている方がかなり高齢
「78歳だな」
過疎が進む地域の将来を思えば、文献調査の受け入れには賛成だと話す。
田沢製作所 田沢佳治 社長
「20~30年後にはほとんど消滅して、この地区の人もほとんど居なくなると私は考えている。文献調査の申し込みをすれば、20億円のお金が国の方から入るってことになれば、ある程度、過疎地域の運用資金とか、メリットはあると思う」
今回の文献調査の申し入れ。急に決まったように見えるが、市長と40年近く付き合いがあるという堀江親一さんは、準備はずっと以前から始まっていたと明かす。
鈴木市長の知人 堀江親一さん
「月に1回は(市長と)飲み会。2人でってわけじゃないけど、2~3人で飲み会をやってます」
――この話も聞いていた?
「半年前に聞いております。常陸大宮は、産業もない所だから、経済的なことが少ないから、それをなんとかしようと、それで県と国の方に働きかけをしているんだと」
大きな産業のない街をどう残していくのか。堀江さんが例として挙げるのが、日本の原子力発電の先駆けとして知られる、同じ県内の東海村だ。
東海村は1966年、原発の営業運転を開始。関連企業が集まり人口が増え、現在も3万7000人台を推移。減少が止まらない常陸大宮市との差は明らかだ。
鈴木市長の知人 堀江親一さん
「東海村は非常に人口が増えている。村であってもやっていけるだけのね。みんなそれだけ喜んで、そこに住む人が多いんですよね」
文献調査によって得られる交付金を活用すれば、持続可能なまちづくりができると期待を寄せている。
鈴木市長の知人 堀江親一さん
「例えば、常陸大宮に来て子育てすれば、子育て費用は全部無料とか。そういう事で人を集める可能性はある」
原発の町で文献調査…住民は「実感がわかない」
文献調査は、これまでに国内4つの自治体で実施。常陸大宮市で実現すれば、本州で初めてとなる。
今まさに文献調査が行われているのが、佐賀県玄海町だ。人口約4500人、調査を行う自治体で唯一、原発が立地している。
財政に余裕はあったが2024年、地元の団体が文献調査の受け入れを求め、当時の町長が手を上げた。
玄海町 脇山伸太郎 町長(当時・2024年5月)
「(玄海町の受け入れが)最終処分事業への関心が高まるのにつながり、国民的議論を喚起する一石となればとの思い」
町民の八島一郎さん。当初は戸惑いもあったというが、原発で働いていたこともあり、最終処分場の必要性を感じているという。
八島一郎さん
「もう文献調査は始まっている。賛成とか反対とかいう話じゃない。文献調査の報告書がいつ出るのか、どういう内容になるのかというところ」
そもそも玄海町は地下に鉱物資源があり、ほぼ全域が“好ましくない地域”とされている。
だが、最終処分事業を担うNUMO(原子力発電環境整備機構)は、「鉱物が存在しないエリアが確認できる可能性はある」としている。
町民の疑問を解消するために設けられたのが「対話を行う場」だ。八島さんはこの実行委員会の委員長を務めている。
これまでに6回開催し、のべ120人ほどが参加したが、町民の関心は薄れていると話す。
八島一郎さん
「文献調査をやったから、そこへ作るというわけでも全然ない。(文献調査のあと)概要調査、精密調査、20年かかるって言うんですよね。だから、なんか現実的じゃない」
「概要調査」に進んだ場合、地質調査などでさらに4年。その先の「精密調査」には14年程度かかるとされている。
町の人たちは。
玄海町民
「実感わかない。生きている間に実現するとかしないとかっていう感じ。今から色々決まっても」
玄海町民
「『原発があるからしょうがないんじゃないか』みたいな人も多分いる。反対の人もいるけど、若い人はそんなに関心ないんじゃないか」
文献調査を受け入れた前町長を7月の選挙でやぶり、就任した日高大助町長。交付金20億円は、防災センターの新設にあてる計画だ。
玄海町 日高大助 町長
「原子力災害が起きたときは、放射性物質が入ってこないような形で考えて建てていこうかなと」
一方で、20億円の交付金については複雑な思いものぞかせる。
玄海町 日高大助 町長
「文献調査を受け入れるだけで20億円っていうのは、ちょっと大きくないかという話も(国の議論で)あったみたいで、“お金を出すから受けてくれないか”みたいなところは、ちょっとどうなのかなと」
概要調査に進めば、さらに最大70億円の交付金が支給される。進む考えはあるのか聞くと…
玄海町 日高大助 町長
「文献調査の報告書が、まだ上がってきていないので、今の段階で概要調査に進むかどうかはちょっと判断できない」
――20億円もらってるから断りづらいとかは
玄海町 日高大助 町長
「いや、それはない。(地元の)意見を尊重しなければならないとなっている。断りづらいとかそういうのは考えたことない」
「カネ目的じゃない」文献調査の先頭切った町
人口2400人あまりの北海道寿都町。風が強い町として知られ、風力発電機が立ち並ぶ。かつてはニシン漁で栄えた。
2020年に全国で初めて文献調査を受け入れた自治体でもある。片岡春雄町長は当時をこう振り返る。
寿都町 片岡春雄 町長
「6年前に一石を投じましょうということで、うちの町も騒ぎになりましたけどもね。カネ目的だカネ目的だって報道されましたけど、カネ目的じゃないんですよ」
寿都町は交付金20億円の一部を周辺自治体に配分しようとしたが、核のごみ受け入れに反対する3つの町と村が受け取りを拒否。岩内町だけが1億5000万円を受け取った。岩内町は、オートキャンプ場の改修などに活用している。
寿都町 片岡春雄 町長
「近所、隣もいらないっていうから。だからうちは18億5000万円を町の基金に積んで、その中から使える範囲の中で使わせてもらった」
――寿都町とすると、この20億円というのはありがたいお金ではあったと?
寿都町 片岡春雄 町長
「ありがたいですよ、ないよりは」
寿都町は交付金を、公園の整備や看護師用の住宅、保育園の人件費などに充てていて、2027年度には使い切る見込みだという。
しかし、交付金などをめぐっては、心無いバッシングが相次いだ。
「目先の金に目がくらんだ町長」調査受け入れでバッシングも
北海道寿都町で生まれ育った西村なぎささん。写真スタジオを営む傍ら、町の魅力をSNSで発信している。
寿都町は6年前、核のごみ最終処分地の文献調査に手を挙げた。西村さんはその際のSNS上の心無い投稿を今も残している。
SNSに書き込まれた投稿
「北海道の迷惑寿都。目先の金に目がくらんだ町長」
「寿都の牡蛎とか大好きだったけど絶対食わないわーマジ最悪」
西村なぎささん
「自分の町が1日にしてこんな風な言われ方をしちゃうんだなって」
西村さんは、町の雰囲気の変化を感じたという。
西村なぎささん
「賛否のあるものだから『話さないのが一番』みたいな。『この人どっちなんだろう』と考えることはあるけど、でもそれを口に出すことはない。分断してるように見えないようにしてるというか、本当に仲の良い町だった、町民同士が。だからそれを保ちたいとみんな思っていると思う」
ほかの町民にも話を聞こうとしたが、今後の暮らしへの影響などを心配し、みな口が重い。70代の町民は、複雑な心境を明かした。
70代町民
「(文献調査の話を)最初に聞いた時は『なんでこんなの持ってくるのか』と、正直ムカッときた。でも泊原発が身近にあるから、やっぱり核のごみについて考えなきゃいけないのかなって。賛成じゃないけど、ちょっと宙ぶらりんの部分がある」
文献調査はすでに終了し、片岡町長は住民投票を経て次の概要調査に進みたいとしている。それには知事の同意が必要だが、北海道の鈴木知事は反対の立場を示しているため、現在は停滞している。
寿都町 片岡春雄 町長
「この問題は国民と政府が進めていかないと、時間がかかるので。そのスタートラインに早く立たなかったら、まずいのでは。国の方から働きかけなかったらまずい。私がこの6年経験した中で思うこと。官僚を責めてるんじゃないんですよ。自民党政権の政治が決めた話でしょ、原発って。だから私は前面に出るのは官僚じゃなくて、政治家だと思う」
状況は待ったなし “核のごみ”処分地候補拡大へ
AIの普及などで電力需要が拡大。2025年2月、政府は原発政策について「依存度低減」を捨て、「最大限活用」へと転換した。
さらに2026年7月には、最終処分場の建設に向け「国の責任で地域に申し入れを行っていく」方針を打ち出している。
高市総理(2026年7月31日)
「最終処分につきましても、基本方針を改定し、調査を受け入れていただく自治体の負担軽減を進める」
最終処分が必要な“核のごみ”はすでに約2500本ある。原発への依存が高まる中、状況はいよいよ待ったなしだ。原子力政策に詳しい東京電機大学の寿楽浩太教授は…。
東京電機大学 寿楽浩太 教授
「高レベルの廃棄物、“核のごみ”は、これまでの原発利用ですでに相当量が生み出されている。処分をしっかり進めるという問題自体は変わらない」
政府は5か所から10か所程度の候補地を選定し、最終的に1か所に絞り込む方針だ。
常陸大宮市と同様に、科学的特性マップで「好ましい」とされるグリーンのエリアは、実に日本列島の6割以上が該当している。
東京電機大学 寿楽浩太 教授
「自分の地域や近所の場所に、政府から申し入れがあるかもしれない。政府は、調査を受け入れてもらえるなら、調査と並行して、話し合いを進めてもらう姿勢を強めていくのではないか」
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