
塗料などに使われるシンナー不足は解消されつつあるのか?現場を訪ねると、今なお「足りない」との声が相次ぐ。卸業者の中には、限られた入荷を小分けして販売する苦肉の策も。長期化しつつあるシンナー不足、アスファルトや接着剤など石油・ナフサ由来の建設資材の価格高騰は建設業界にも深刻な影響を与え始めている。中には「工事の作業を止めて待つしかない」という声も上がる。
【写真を見る】「工事の作業止めて待つしかない」長期化しつつあるシンナー不足と資材の価格高騰で建設業界に広がる深刻な影響【報道特集】
シンナー不足は解消されたのか…現場からは切実な声
中東情勢による影響が長期化しつつあるのがシンナーだ。
ナフサから作られるシンナーは、塗料として建設工事や、電化製品、自動車など幅広い分野で使われている。
報道特集は4月11日、塗装業者の切実な声を報じた。
塗装業 横山直樹さん
「(シンナーが)問屋でないと、建材屋行ってもないと。一日一日ゆとりがないんです。受けられないですよね仕事、物がないと」
放送の翌週(4月16日)、高市総理は…
高市総理(4月16日)
「シンナーにつきましては、赤沢大臣と金子大臣が目詰まり箇所を特定し、官民で原材料の供給情報を共有することで、シンナーメーカーからの出荷量が回復し解消に向かいつつあります」
シンナーの問題は解消に向かいつつあるのか。
1日、山形県の塗装現場を訪ねると…
片桐塗装店 片桐弘貴 専務
「今シンナーはだいぶ不足しております。行きわたってるとあるんですけれども、実際現場には届いてない部分もある」
塗装業を営む片桐弘貴さん。8人の職人を抱え工場から住宅まで、日々5か所ほどの現場を並行して請け負っている。
この日、片桐さんはシンナーの卸売会社を訪ねたが、入手できたのは、4リットルだけ。買おうとした量の4分の1だった。
片桐塗装店 片桐弘貴 専務
「現状足りてるようには思えないですね。各社在庫で何とかやりくりしてるという
状況が続いてる」
片桐さんにシンナーを販売した会社の倉庫を見せてもらうと…
スガタ商事 杉沼聖平 主任
「黄色のラインぐらいまでは在庫があるんです、本当は。今はこういうすっからかんの状態。塗装の今シーズンなので、それがこれしかないというのは、本当に異常事態」
スガタ商事は、東北地方の塗装業者など約600社を顧客に持つ。取引先に幅広く届けるため、今、通常16リットルのシンナーを4リットルに小分けして販売している。
シンナーの仕入れ先である塗料メーカーからは、価格改定や出荷停止の通知が相次いでいる。
塗料メーカーからの4月27日付の通知
「原材料メーカーから安定した調達自体が改善される見通しは立たず…」
「出荷調整について、延長せざるを得ない状況となりました」
スガタ商事 菅野清文 社長
「例えば100缶注文しても、5缶とか10缶だけですとか。9割ダウン。我々のそのコントロールできる幅を超えてますよね。具体的な打開策というのは今ない状態ですね、まだ。6月ぐらいまで今の状態が続くようであれば、会社の経営自体に影響を及ぼす会社も出てくると思います」
シンナーの原料となる「トルエン」「キシレン」 商社やメーカーは…?
シンナーの原料はナフサ由来の溶剤、トルエンやキシレンだ。
政府がシンナー不足の原因を目詰まりとしているのは、原料が前年並みに供給されているのを確認したからだという。
赤沢亮正 経済産業大臣
「石油化学企業においてシンナー原料となるトルエンやキシレン、国内向け供給は前年実績並みに継続されている。国が言うんだからちゃんと信じてくださいね」
経産省の統計によると、3月のトルエンとキシレンの生産量、出荷量は前の年の同じ月に比べ、1割〜2割減少していた。
不足分はどう補われたのか。
シンナーメーカーに聞くと…。
シンナーメーカーA社
「調達が厳しかったトルエンですが、最近は韓国からの輸入品が商社から入ってくるようになりました。政府は足りていると言いますが、実際は輸入品も含めて、企業努力でかき集めているという感じです。まわりの業者の状況をみても『目詰まり解消』にはクエスチョンマークが残ります」
シンナーメーカーB社
「経産省にどこの会社の何が入ってこないのかを伝えたら、原料が入ってくるようになりました。ただ、3月に3割~5割だった入荷量が6割くらいになっただけです」
メーカーに原料を販売する商社を取材すると、企業規模によって温度差もあった。
大手系列の化学品商社C社
「トルエンは普段余って輸出しているくらいですが、4月は急きょ韓国から輸入しました。4月はトルエンの出荷制限をかけていましたが、5月は通常の体制に戻れるのではないかとみています」
中堅の化学品商社D社
「国内での仕入れに関しては、まだまだ厳しい状況です。足りない分は海外からの調達で補填していて、自転車操業です。トルエン・キシレンは主に中国から輸入していますが、危険物のため、いくつもの書類や手続きが必要で、簡単ではありません」
経産省は引き続き、目詰まりの解消を目指すとしているが、物流に詳しい赤沢編集長は「簡単ではない」と指摘する。
LOGISTICS TODAY 赤澤裕介 編集長
「大手企業は、メーカーと直接契約を結んでいる。長期契約などを履行しなければいけないという発想になるので、そこには優先的に物が流れる。中小零細の建築塗装会社の立場に立てば、大手の塗料メーカーと直接契約できるようなルートを持ってない。政府が大手やメーカーに対して『目詰まり解消せよ』と、交通整理してくださいとやって、それが実現したとしても、末端の販売会社が大手メーカーから直接入れられるわけではない。そこの難しさは当然残る。事業継続が難しいというような業種・業態も出てきている」
シンナー不足をきっかけに、4月に行われた「緊急アンケート」。建設業界への影響の深刻さが浮き彫りになった。
建設業界「これから倒産リスク」 企業の経営努力で乗り切るのは「本当に厳しいと思う」
シンナーなどの供給不足や価格高騰が、深刻な影響を与えているのが建設業界だ。約2万社で構成される全国建設業協会。
建設資材の調達状況を把握するため、4月に「緊急アンケート」を実施した。(調査対象:計18社、回答数:計15社)
全国建設業協会 山崎篤男 専務理事
「ほぼ全ての品目で価格高騰が起きている。非常に危機感がある」
調査したのは71品目。
アスファルトや接着剤、塩ビ管など、石油やナフサを原料とする建設資材で幅広く影響が出ていることが明らかになった。
――シンナー(の価格)も相当上がっている?
全国建設業協会 山崎篤男 専務理事
「上がっている。(工事が)中断までいっているとは聞いていないが『もう作業を止めて待つしかない』ということはある。アスファルトの舗装業者がすごく多いので、舗装業者が非常に厳しいと思う」
協会では、緊急アンケートの結果をまとめ、4月末、金子国交大臣に要望書を提出。石油製品の安定供給や、公共工事での価格転嫁を認めてほしいと訴えた。
全国建設業協会 山崎篤男 専務理事
「小規模業者の倒産リスクがどんどん顕在化していくのではないか。経営への影響が一番深刻だと思っている」
――企業自らの経営努力で乗り切れるような現状か?
全国建設業協会 山崎篤男 専務理事
「厳しい、本当に厳しいと思う」
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