26日午後、国会では高市総理が就任してから初めての党首討論が行われました。物価高対策をはじめとした、政府の経済対策などについて、論戦が交わされました。
日中関係悪化 高市総理の発言波紋
井上貴博キャスター:
高市総理の初の党首討論では、いくつか議題がありましたが、注目されたのは「日中関係」と「経済対策」です。
11月7日の国会の答弁で、高市総理が台湾有事をめぐり、戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば「存立危機事態になりうる」と発言したことが発端となっています。
18日には、日本と中国の局長級協議が行われましたが、沈静化の見通しは立たず、その後22日、23日にはG20が行われましたが、日中会談は実現しませんでした。
さらに、24日には米中電話会談が行われ、中国の習近平国家主席は台湾問題に介入しないよう、アメリカのトランプ大統領を“けん制”したということです。
関係悪化を懸念か…あえて“踏み込まない”野田代表
井上貴博キャスター:
こうした日中関係をめぐり、26日の党首討論でもやり取りがありました。
立憲民主党・野田佳彦代表は、日中関係が悪化していることについて「明らかに総理の独断であの言動が出てきた。発言の真意と政府公式見解を改めて伺いたい」と質しました。
高市総理は「これまでの答弁を繰り返すと、場合によっては予算委員会を止められてしまう可能性もあるということで…」と発言。つまり、歴代政権では曖昧な答弁を繰り返してきていて、それを高市総理がやってしまうと予算委員会が止まるおそれがあったということです。
それに対し、立憲民主党の野田代表は、「一線を越えることのないように、繰り返し繰り返し、説明をしていただきたい」としています。
こうしたやり取りをどう見ていますか。
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
なぜ(台湾有事をめぐる)あの発言をしたのかという質問に対して、高市総理は「予算委員会を止められてしまう可能性がある」としています。
確かに、予算委員会というのは、野党側の質問に対して、総理がはぐらかす・真正面から答えない、あるいは同じ答弁を何度も繰り返すなどすると、「それでは納得いかない」ということで審議が止まることはあります。
しかし、それだけを理由にあれだけの発言をしたのかということで、議場では野党側から「え~!」という大きな声があがりました。
そうした高市総理の発言に対して、野田代表は「そんな理由で重大発言をしたのか」と、さらに追及することもできるのに、野田さんはそうせず、「一線を超えることがないよう、政府の統一見解をこれからも繰り返し説明していただきたい」と、おさめたわけです。こうした点も気になっています。
野党の受け止めの現れ?「統一見解、繰り返し説明を」
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
党首討論終了後、野田代表は記者の取材に対して、「(高市総理が)統一見解を繰り返したので、ある意味、事実上の撤回をしたと受け止めさせていただきました」と答えました。
つまり、この問題について野党がさらに追及して、中国との関係がさらにこじれる材料に繋がるのは国益にとってプラスにならないというのが、野田代表、立憲側の考えなのだと思います。
そのため、あえて更に聞くことをせず、「統一見解を繰り返し説明してください」として、話題が変わっていったのでしょう。野党側も、中国との関係はものすごく深刻だと受け止めていることの表れだと思います。
出水麻衣キャスター:
この手の質問を繰り返して、高市総理が何か踏み込んだ発言をすることを恐れたということでしょうか。
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
とにかく大事なのは、統一見解を繰り返して伝えることであり、この件に関しては、それ以上は言わない方がいいというのが、野党側として考えていることだと思います。
それくらいこの問題はセンシティブで、さらに何か大きな問題に繋がっていくことはプラスにならないということで、それ以上は追求しないという状況です。
21兆円を超える規模の経済対策
井上貴博キャスター:
21兆3000億円程度の規模となる高市総理の経済対策についてです。
【財政支出】
▼電気・ガス代 支援
▼子育て応援手当
▼重点支援地方交付金
【減税】
▼ガソリン暫定税率廃止
▼年収の壁見直し
物価高で苦しい中で、日々子育てをしながら感じることはありますか。
陸上100mハードル 元日本記録保持者 寺田明日香さん:
子育てをしている中なので、やはり「子育て応援手当」は身近に感じていますが、子育てをしている家庭だけが偉いのかという話にもなってきます。立場の違いを考えた上で、どこに税金を使っていくのかということを考えていかなければいけないと感じます。
“少数与党”影響か 年収の壁めぐる玉木氏への言動
井上貴博キャスター:
党首討論の中では、経済対策についてのやり取りもありました。
国民民主党の玉木雄一郎代表が、年収の壁について「『103万円の壁』を178万円目指して引き上げる。守っていただけるか?」と質問。
高市総理は「3党合意での約束ですから、一緒に関所を乗り越えていきたい」としました。
年収の壁をめぐっては、高市総理は「政治の安定、とても大事でございます。お力もお借りしたい」とも発言していて、少数与党としての言葉も見えています。
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
少数与党という大きな問題がまだ続いているわけです。
維新が連立には入りましたが、次に補正予算を通すためには国民民主党に協力してほしいということで、高市総理は「お力もお借りしたい」という言葉を使って協力を求めています。
働き控えについても、政策・考え方は一致していて、「少なくしていかなくてはいけない」とも話していて、やり取りを見ていると、玉木代表に対して協力を求める姿勢が強くみられました。
高市総理と玉木代表のやり取りは、2人とも紙を見ずに直接話しているという点も印象的でした。
出水麻衣キャスター:
年収の壁が引き上がるような兆しはありますか。
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
これから協議していくことになると思いますが、大きな方向性としては「働き控え」をやめて、色々な仕事を作りながら、仕事をする人に働いてもらわないと成長できないというのが、玉木代表と高市総理の共通点だと思います。
そのため玉木代表も、高市総理の経済成長に対する戦略については賛成だとしていますので、これから補正予算案が出されて国会審議を通して、どういう形になるのかということになります。
お互いに「紙を見ないやりとり」 意図は?
井上貴博キャスター:
「紙を見ないでやり取り」には、何か意味があるのですか?
TBS報道局政治部長 岩田夏弥:
玉木代表は頭の中に入っているでしょうけれども、高市総理も、それだけこの問題については頭の中に入っているということでしょう。
例えば、178万はなぜか?と聞かれても、高市総理は紙を見ずに、「こういう理由で、この数字を出している」とやり取りする場面もありました。
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<プロフィール>
岩田夏弥
TBS報道局 政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当
寺田明日香さん
陸上100mハードル 元日本記録保持者
東京五輪で準決勝進出
“ママアスリート”の先駆者
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