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震災で家を失い 避難生活を直撃する物価高 医療費負担免除も打ち切られ…「投票に行っても行かなくてもいいと思う」【報道特集】

国内
2025-07-15 06:30

参議院選挙の最大の争点“物価高対策”。物価高が追い打ちとなり、能登の被災地や高齢世帯では生活の厳しさがいっそう増しています。政治にいま、何が求められているのでしょうか。


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「生活できますか?」“年金4万円” 物価高が追い打ち

物価の高騰は高齢者の生活に大きな影響を及ぼしている。


愛知県春日井市に暮らす能見寛子さん、85歳。食品はほとんどが値上がりしているため、やりくりに頭を悩ませている。


能見寛子さん(85)
「やっぱり高いですね。これでも100円違うと思いますよ」


能見さんは夫を病気で亡くし、30年以上一人で暮らしている。


夫婦で洋品店を営んでいたため、受給できる年金は国民年金のみだ。いま受け取っている額では生活は厳しいという。


能見寛子さん(85)
「年金だけではちょっと無理です。年金4万円ですよ。生活できますか?」


晩御飯のおかずは、ハムとレタスにかまぼこなど。物価高で毎月食費がかさみ、貯金を切り崩さざるをえない。


能見寛子さん(85)
「できるだけ自分のできる範囲で節約はしてますけどね。だけどそれ以上のことはできません。ある程度食べなきゃいけませんし」


今回の参院選で最大の争点となっている物価高対策。一人当たり2万円給付を公約に掲げ、賃上げによる物価高の克服を訴える与党に対し、野党は消費税の減税や廃止などを主張している。


能見寛子さん(85)
「毎回選挙の度ですけども、何かしてあげますよと言いながらしてもらってませんよね。物価だって上がるばっかりだし」


午前8時、この日向かったのは…


自宅近くのデイサービス「てとりん村」。一日の定員18人の小規模介護施設だ。施設に入ると、タイムカードを差し込んだ能見さん。実はここのデイサービスの利用者ではなく、ヘルパーとして働くスタッフだ。


介護現場 “85歳のヘルパー”

毎月4万円の国民年金だけでは生活がままならないため、2年前から、週2回パートタイムで勤務している。中には2歳年下、83歳の利用者も…


利用者(83)
「(能見さんは)大きな声で楽しくやっておられます。もう至れり尽くせり」


能見寛子さん(85)
「いきますよ、立てる?」


高齢者の食事やトイレの介助など、若いスタッフと変わらない仕事をこなす。一日5時間働き、1か月の給料は約5万円だ。


能見寛子さん(85)
「働かなきゃいけません。たくさんもらうと思っていくわけじゃないが、多少心の余裕って言うんですか、少しでもあると。お金がないお金がないと言っても食べないわけに本当いきませんよ」


85歳の能美さんが介護現場で働く現実。食材や消耗品などの値上がりで施設の経営も打撃を受けている。代表の岩月さんは…


家族介護支援てとりん 岩月万季代 代表理事
「ギリギリですよね。もうやり尽くして、この他に何を考えられるかと言ったら、あと畑で何を育てるかみたいな。賃金上昇とか賃金を上げますみたいな報道を見る度に、小規模のところはどうしたらいいんだろうと本当胸が痛くなります」


介護業界は物価高の影響を受けても、事業者が自由に職員の給料を上げることは難しい。介護保険制度では施設の運営は国が定める介護報酬の範囲内でやりくりしなければならないからだ。


家族介護支援てとりん 岩月万季代 代表理事
「本当に給料上げてあげたい。米の値段とかで世の中のスタッフの生活が守られないということは経営陣にとって一番つらいこと。デイサービスで高齢者を面倒を見ていくけど、面倒見るスタッフの面倒が見られてなかったら、本末転倒」


午後2時…


能見寛子さん(85)
「はぁ~、疲れました。2万円給付も嬉しいですよ、もらったらね。でも、それはぱっと使って終わるお金です。もし2万円を皆さんにあげると言うのであれば、そのお金を使って(政治家は)何か仕事をして欲しい」


被災地にも物価高が…

さらに物価高の影響は、被災地にも。


2024年元日の地震で、甚大な被害を受けた石川県輪島市。街には今も、手つかずの家屋があちこちに残っている。


高出圭子さん(55)
「もう道が半分ないぐらいな感じだった。ここも道が半分割れてました」


市内のドラッグストアで、パート従業員として働く高出圭子さん、55歳。仕事が終わると、ほぼ毎日、スーパーで買い物をするというが。


高出圭子さん(55)
「全然高くなってます。材料費は結構高いと思うけど」


この日の買い物はパンや野菜など、全部で9品。金額にして2600円あまりだ。


高出圭子さん(55)
「パンは高くなってる。たぶん果物とかも高くなってるんじゃないかな。2割は上がっとると思うけどな」


震災以降、高出さんは夫と2人、6帖足らずの仮設住宅で避難生活を続けている。


夫の進一さんは元々輪島塗りの職人だったが、9年前に糖尿病を患い、引退。今はわずかな国民年金と、高出さんのパート収入が生活の支えになっている。


そのため食事には、こんな工夫も。


高出圭子さん(55)
「うどん、そば、焼きそばが週に1回ずつ入るから、麺は週に3回」


コメはいまだに高騰が続いているため、週3回はそばやうどんに変え、食費を抑えている。


高出圭子さん(55)
「私が倒れたら、この家はお終いだから、とにかく病気をせんように」


長年暮らしてきた自宅は、天井が崩れ落ち、住める状態ではなくなってしまった。輪島市からは全壊と診断された。


高出圭子さん(55)
「人が住んでないと、こんなになる。ひどいでしょ、全部倒れて。もう起き上がらせる気力もないって言って何もしてないです」


「助けて欲しい」医療費免除が打ち切りに…

そんな夫婦に6月末、さらなる追い打ちが…


高出圭子さん(55)
「(知人から)『国民健康保険、打ち切りらしいよ』と言われて、えってなって」


これまで国は、能登半島地震で家が半壊以上の被害を受けた人や、職を失ってしまった人などを対象に、国民健康保険の医療費負担を免除してきた。だが7月から、その支援が打ち切りになったのだ。


避難生活のストレスなどから肝臓を悪くし、国が指定する難病にも罹っている進一さんは、高額な投薬治療が欠かせない。支援の打ち切りにより、この先、必要な医療が受けられるかどうか、不安が募る。


夫・進一さん(74)
「国民健康保険(の被保険者)が多いから。病気して年いった人が打ち切り。助けて欲しい」


石川県の保険医協会が、支援対象者1911人に行ったアンケートがある。医療費免除の打ち切りに対し、「生活費を切り詰めて医療費に回す」と答えた人は65.5%。次いで「受診回数を減らす」「受診せず我慢する」など、経済的な理由から治療を中断せざるを得ないという声も多くみられる。


こうした中、政治に対する期待は薄れるばかりだという。


高出圭子さん(55)
「正直、投票に行っても行かなくてもいいと思う。(医療費免除を)打ち切られてがっかりしたし、見捨てられた気持ちになった。私達みたいなのがほとんどだと思う、輪島で。助けてほしい」


長期停滞する日本経済 原因は

これはスイスのIMD(国際経営開発研究所)が毎年公表している「世界競争力ランキング」のデータだ。


統計が始まった1989年から4年連続で1位を記録していた日本だが、その後、30年にわたって下降傾向をたどり、2025年版では35位となった。


豊かさの目安となる、一人当たりの名目GDP(=国内総生産)も2022年に韓国を下回り、経済の停滞が続く日本。


一橋大学の野口悠紀雄 名誉教授は、政府が長年進めてきた“円安政策”が、日本を衰退させてきた根本的な原因だと指摘する。


一橋大学 野口悠紀雄 名誉教授
「2000年頃から日本は円安政策をとった。中国が工業化に成功して、日本の得意分野だった輸出の世界貿易に中国が入って来た。日本はこれに対応して円安、つまり安売りをすることで、この問題を解決しようと考えた。特にアベノミクスにおける異次元金融緩和で、為替レートを円安に導く。それによって、日本経済が劣化してしまった」


円安で生まれた利益に頼ることで、日本企業が技術革新を怠り、世界経済の大きな変化に対応できなかったと話す、野口氏。


今回、物価高への対応策として、与野党は“給付”や“減税”を掲げているが、いずれも、物価の上昇を促進しかねない政策だと警鐘を鳴らす。


一橋大学 野口悠紀雄 名誉教授
「どちらも“お見舞金”なんです。給付金にしても減税にしても、単に物を買いやすくするということ。そのことだけ取り上げれば、消費は増える。消費が増えるということは、物価を上げるように働く」


さらに、今後の日本経済に影響を与えかねないアメリカの関税政策についても…


一橋大学 野口悠紀雄 名誉教授
「今度は、全く新しい問題が降りかかってきた。これは日本経済にとって無視できない、非常に大きなマイナスの効果をもたらす。しかし、こういう問題も、今回の参院選で重要な争点になっていない。私は日本の政治家というのは、なんと無責任なことなのかと、強い怒りを抱いています」


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