
第66回東日本実業団駅伝が11月3日、埼玉県の熊谷スポーツ文化公園陸上競技場及び公園内特設周回コース7区間74.6kmで行われた。ロジスティードは最長区間の3区(16.4km)で、四釜峻佑(24)が区間賞の走りでトップに進出すると、4区以降も区間上位の安定した走りを続け、3時間31分24秒で初優勝した。2位は36秒差で、前回優勝のGMOインターネットグループ(以下GMO)が入った。神野大地監督(32)がプレイングマネージャーを務めるM&Aベストパートナーズが初出場で6位と健闘し、元旦のニューイヤー駅伝出場を決めた。
四釜が大物ルーキーと迫力満点の競り合い
3区にはGMOの太田蒼生(23、青学大出)が、サンベルクスの吉田響(23、創価大出)が、富士通の篠原倖太朗(23、駒大出)、Hondaの吉田礼志(23、中央学大出)と、大物ルーキーが揃っていたが、四釜の力が1枚上だった。
太田がトップで競技場内の中継所をスタートし、4.1kmの周回コース1周目は11分31秒(手元の計時)で通過した。27秒差の4位でスタートした吉田響も、41秒差の8位でスタートした四釜も、差はそれほど縮められなかった。だが2周目は太田が11分50秒にペースダウンしたのに対し、吉田響と四釜は11分29秒と11分25秒にペースアップ。10km付近で2人が太田に追いつくと、13km付近で太田が後れ始めた。
その後は四釜と吉田響が、すさまじいデッドヒートを展開した。四釜がスパートして数m差をつけると、1km行くか、行かないかの間に吉田響が追いつき、今度は吉田響がスパートする。四釜も数m離されても立て直し、追いついて、再度スパートする。最後の中継所に向かって競技場のゲートを入った時には、吉田響が5m以上はリードした。勝負あったと思われたが、そこからまた四釜が追い上げ、中継所には1秒前に出て飛び込んだ。
後ろに付かずに何度も仕掛けた理由は、「3位に(優勝候補の)GMOさんがいたので、牽制するよりも、競っていけば差を広げられると思いました」と四釜は説明。「何回か離されそうになりましたが、別府健至監督から“強気で行け”と言われていましたし、沿道の応援が後押ししてくれて、気持ちを切らさずに走ることができました」。区間タイムでは45分52秒の四釜が、区間2位の吉田響に15秒、区間3位の篠原に45秒、区間9位の太田に1分06秒勝っていた。
「3区には新人選手たちをはじめ、有名選手が多く集まっていましたが、名前負けしないように、タイムとか実績は関係ないと自分に言い聞かせたことで、今日はリラックスして走ることができました」
四釜でトップに立ったロジスティードは4区(8.2km)で、同期(入社3年目)の藤本珠輝(24)が区間賞と3秒差の区間2位と好走。5区(8.2km)の海老澤憲伸(23)も差の小さい区間6位、6区(8.2km)の村松敬哲(23)も区間3位、そして7区(12.3km)の平林清澄(22)も区間4位と、全員が安定した走りをしてトップをキープした。2位のGMOが6区、7区と連続区間賞で追い上げたが、平林が36秒差(約200m差)で危なげなく逃げ切った。
順大では世界陸上マラソン11位の近藤と寮の同部屋だった四釜
四釜は山形中央高から順天堂大学に進み、4年時には箱根駅伝山登りの5区(20.8km)で区間2位と活躍した。順大の1学年先輩には、東京世界陸上マラソン11位の近藤亮太(26、三菱重工長崎)がいて、四釜の2年時には寮で同部屋だった。近藤は日常生活をしっかり送ることが、競技力向上につながるという信念を持つ。その考え方自体は珍しいことではないが、徹底ぶりが半端ではない。試合の前には部屋の整理整頓と清掃をするのが習慣で、世界陸上前もしっかりと行って世界との戦いに臨んでいた。
東日本と同じ日に九州実業団が行われ、四釜は「近藤さんも1区で区間賞を取りました」と嬉しそうに話した。「本当に真面目な方で、早くに就寝されたりしていました。陸上に対してすごく真剣に向き合う姿から、僕も学べたことがたくさんあります」。
近藤は実業団1年目の全日本実業団ハーフマラソンで、1時間00分32秒で日本人トップの3位と快走。そのときの走り方を再現できなかったが、入社3年目、25年2月の大阪マラソン前にコツをつかみ、初マラソン日本最高の2時間05分39秒(日本人トップの2位)で世界陸上代表入りを決めた。
四釜も実業団1年目の全日本実業団ハーフマラソンに、1時間00分41秒で優勝した。入社2年目に予定していた初マラソンは、新型コロナに感染した影響で練習が滞り、出場を見送ったが、3年目の今シーズンに再挑戦する。近藤が記録を出した1年前の大阪マラソンでは、今年会社の後輩となった平林が2時間06分18秒と、当時の学生記録&初マラソン日本最高記録で走っている。
「次は自分が、と言うとちょっとプレッシャーになるので、気負いすぎずにしっかり臨めれば、と思います」
順大時代に全日本大学駅伝用のチーム紹介動画を、四釜が中心となってコント風に作ってバズったことがあった。今回もユーモアも込めながら、初マラソンへの強い意思を示した。
平林らの奮起で、ニューイヤー駅伝でも優勝争いできるチームに
ロジスティードの東日本実業団駅伝過去最高順位は3位。別府監督は「今回も3番を目標に、手堅くできればいい、と考えていました。大きなブレーキなく進めることができた結果の優勝です」と総括。東日本優勝チームとしては、ニューイヤー駅伝でも3位以内を目標としていいところだが、「8番という目標を掲げています。今回と同様に背伸びをせず、着実な駅伝をやっていきたい。平均年齢が23.3歳と若いチームなので、崩れるともろいところもあります。今日勝ったことを、どう変えていくかはこれからの仕事ですが、良い方向、形に変えていければと思います」と、慎重な目標設定を変えない。
しかしロジスティードの戦力は、今大会以上が期待できる。藤本は2年前の東日本実業団駅伝では3区の区間賞を取った選手。そして今回は負担の少ない7区に回ったが、大物ルーキーの平林がエース区間に意欲を見せる。
「今回はトラブルなくゴールテープを切ることを最優先としたので、区間賞は逃してしまいましたが、優勝できてチームとしても、個人としてもよかったのですが、個人としては3区を走りたかった。同学年の吉田響、篠原、太田がエース区間を担っていることを考えたら、自分もニューイヤー駅伝はしっかりエース区間(2区・21.9km)を担いたい。今日の四釜さんの走りが別の区間で発揮されれば、チームとしてもより良い結果につながると思います。今の自分では絶好調でも四釜さんに勝てないと思うので、勝てるようにここからしっかり練習を積んでいきたい。駅伝は平林がいれば大丈夫、と言われる選手になっていきたいと思います」
平林のこの言葉を聞いた四釜は、「ニューイヤーは譲らないと言いたいところなんですが、チームのことを考えるとどこでも走れる準備をしっかりしていきたいと思います」と笑いながら話した。5区(15.9km)が向かい風になり、ニューイヤー駅伝の中では起伏もあるコース。箱根駅伝5区で好走した四釜向きの区間とも言える。
またロジスティードには、東日本は走らなかったが牟田祐樹(32)、山谷正也(25)、石塚陽士(23)らが10000mで27分50秒台と、四釜、藤本と同レベルのタイムを持つ。特に山谷は前回のニューイヤー駅伝1区(12.3km)で、区間賞と4秒差の好走を見せた。
平林がニューイヤー駅伝の最長区間を走る状態になり、今回メンバーに入れなかった選手が奮起したとき、東日本の優勝を“良い方向、形”に変えたことになる。そのときロジスティードは、ニューイヤー駅伝でも優勝争いに加わるのではないか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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