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イチロー&松井秀喜、10年ぶり再会の2人が思い描く10年後の姿「遠投してたい」「長嶋(茂雄)さんが喜ぶことをしたい」

スポーツ
2025-01-10 06:00

野球界の二人のレジェンド、イチロー(51)と松井秀喜(50)のスペシャル対談が実現した。10年ぶりの再会だということを感じさせないほど、じっくりと語り合った二人。高校時代からメジャーでの葛藤までを語った二人が思い描く、10年後の姿とは。対談を終え、互いの印象についても聞いた。(第6回/全6回)


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イチロー「後輩たちに期待したい」野球の未来 

イチロー:僕らの時代と違うのは、高校生がメジャーリーグになるっていう夢は、僕らはない。


松井秀喜:なかったですね。


イチロー:まず、プロ野球選手。でも今の選手たちは結局ね、メジャーリーグがすごく近くなってるから。もういきなりMLBっていうのが結構出てくるのが。でも、そう言ってると本当に近くなるから、いいことだと思うんだよね。世界を目指してる人は、明確にその画が見えてる人って、そこに近づくと思うから、それは僕は結構いいことだなと思ってる。僕なんかは全然、MLBなんて考えたことなかったから。でも、NPBでやっていった結果、次、同じ競技ですごいとこがあるならちょっとやってみたいというね、思いが出てきただけのことなんで、だから今の選手たちの方が、ずっとずっと志は高いって言えるよね。


松井:そうですね。日本の野球の良さっていうか、日本人の精神性みたいなものを、なんか・・・。


イチロー:それ感じたいよね。


松井:体現してほしいし、別に意識する必要ないけど、自然と広げてほしいっていう気持ちは確かにあります。


イチロー:後輩たちに期待したい。例えば僕だったら、(巨人の)浅野翔吾(※高松商時代にイチローが直接指導)が活躍して、アメリカに行って。何年目に「私」(松井の一人称)って言うか知らないけど。


松井:えへへへ。言ってるかもしれない(笑)


イチロー:もう言ってるかもしれないけど、そういう楽しみの方が大きいわけですよね。


松井:イチローさんは特に、高校野球を見られてますから。そこから気持ちを持ったままね、行ってほしいっていうイチローさんの気持ちは、よくわかりますよね。


イチロー:そういう期待が持てるわけ、高校生とか。僕はそこがすごく今、期待ができることが嬉しいんだよね。


10年後をイメージ...松井「あっという間ですよ」

松井:(10年後は)還暦ですか、我々。


イチロー:還暦だね。


松井:次は2人で赤いジャケットで来ますか?


イチロー:それいいね(笑)。(松井が)赤いジャケット、(自分が)赤いパンツで。


松井:いいっすね(笑)


イチロー:10年後もちょっと遠投はできてたいなと思うけど、でも時間がやっぱ10年単位では考えられなくなってくるよね、50になると、もう。重ねていくじゃない、1年1年早くなってくるよね、時間の経過が。


松井:早いですよね。あっという間ですよ。


イチロー:それで経ってみたら、「もう10年経ってんのかよ、あれから」ってなると思うんだけど、元気でいれば。でも、10年後をこうありたいとかっていう画は全然出てこないね。まあ、遠投したいぐらい。全力で走りたいとか、バット振りたいとか、ゴルフもショット上手くなっていたいとかね。やっぱ最終的にはさあ、体がなかなか動かなくなるから、ゴルフでさあ、楽しくできたらいいなっていうのはあるじゃない、その頃。


松井:トレーニング、トレーニング(笑)


イチロー:トレーニングは、今回でもアップデートしたんで、マシンを。それは結構楽しいんだけど。自分の肉体がどう変化していくかっていうのも日々、感じられるんで、それはおもしろい、楽しいというよりはね。


松井:今でも毎日トレーニングして、自分が進化してる・・・進化っていうか、体がもっと良くなってるという感覚なのか・・・。でもやっぱり年齢とともに、それこそ生理現象っていうか、人間の年齢としては普通に、それこそ何もしなければすぐ衰えていくっていう。自分の感覚ではどういう感覚で、どんどん良くなってるっていうイメージは持てるんですか?


イチロー:イメージは持てるんだけど、じゃあ実際、トレーニングを強化したからといってじゃあ、スピードが上がってるかって言ったら上がってないし、そういうわけでもない。でもやってると変化していくのはわかるんで、もっともっとこうしたいが、出てくるんだよね。


松井:なるほど、なるほど。


イチロー:それはすごく興味深い。でも、やめたら終わりっていうのはもうわかってる。答えは見えてるので。


松井:まあ、そうですよね。でも、自分の中での60歳のイチローさんは全然まだできてます。まだ遠投できて、下手したら走って、普通に全力で走ってんじゃないかなっていう。


イチロー:これ続けてなかったら、あっという間に終わりだから。続けるのがもう大前提だよね。今の状態だって、やめたらストーンって落ちるよ。


松井:そうですね、それは間違いない。自分で実感してます。


イチロー:そうだよね。


松井「ニューヨーク好きだけど、日本が遠い」

松井:60歳・・・。イメージわかないっすね。


イチロー:ニューヨークにいるよね、まだ。


松井:とは思いますね。でも、イメージわかないって言いながら多分、あっという間にくるんでしょうけどね、おそらくね。


イチロー:経つともうあっという間・・・。


松井:2014年(ヤンキースの臨時コーチに就任時)にタンパでイチローさんに会って、結構最近のイメージ、自分の中ではね。そのあと、自分の生活がほとんど変わってないんで。


イチロー:うんうん。


松井:イチローさんはあのあとマイアミ行って、またシアトルに戻ってとか、いろいろあったので。自分の感じているタイム感覚では、長く感じてるかもしれない。自分の中では、10年前ってあっという間、最近だなっていうね。そう思うとすぐ10年後も来るっていう感覚はありますね。


イチロー:アメリカの中で、ニューヨークからどっかに行くっていう選択肢はある?


松井:今はないですね。


イチロー:やっぱり遠いじゃないニューヨーク。アメリカの中では、いろんなものがあるしさ、何でもあるから満たされるけどさ、日本から遠いっていうだけで、僕結構もう飛行機乗れないから長時間。それはきついなと思います。


松井:いや、それはホント思います。ニューヨーク好きですけど、日本が遠いっていうのは、一番の欠点かなと思いますね。ニューヨークが悪いわけじゃなくてね、遠いっていう。飛行機やっぱきついっすね。


松井が60歳までにやりたいこと「長嶋(茂雄)さんが喜ぶことをしたい」

松井:どうしても今の(読売)ジャイアンツっていう、自分がもうジャイアンツにいて、やっぱジャイアンツっていうことしか今はないんで。自分の中でやっぱり一番大きいのは、長嶋(茂雄)さんなので、長嶋さんが喜ぶことはしたいなっていう。


イチロー:ふーん、なるほどね。


松井:そこが一番かなとは思いますね。やっぱり。長嶋さんに一番愛情を注いでもらって、一番お世話になりましたし、長嶋さんはまだ元気ですしね、元気なうちに自分の元気な姿を見せたいなっていう、その気持ちはやっぱりありますけどね。


イチロー:長嶋さんがそうやって目をかけた最後の選手じゃない、松井秀喜は。そうでしょう。そのあと、浮かばないじゃない。


松井:長嶋さんが目をかけたって意味ではそうですね。


イチロー:その可能性がある選手、今の中にいるかって言ったら、なんか全然ピンとこないのよね。


松井:そこが一番思ってます自分はね。まず、長嶋さんに喜んでもらいたい、ファンに喜んでもらいたいっていうことを、一番に考えてます。


イチロー:そつがないね、そつが。


松井:それは考えてます。


イチロー:こういう人がさ、結局・・・。


松井:いやいやいや(苦笑)。


イチロー:あれですよ、国民栄誉賞の人なんですよ。(※松井は2013年に国民栄誉賞受賞)


松井:それ、自分、断ってるからじゃないですか。


イチロー:いや、だから僕は、あっ、私は・・・。


松井:ハハハハハ(笑)


イチロー:受けちゃダメな人なんですよ。


松井:なぁ、また、そんな・・・。


イチロー:いや、そういうことなのよ。


松井:日本人のほとんどは、自分よりイチローさんの方がふさわしい賞だって。


イチロー:いやだから実際に会ったら、全然ふさわしくないのがわかる、わかるのよ。


松井:(笑)


イチロー:わかるだろう!こうやって会ったら。


松井:そんなことないですよ、全然ですよ。


イチロー:いやもうここにいるスタッフの人、全員わかってるわ、それ。


松井:まあ、それ、そう・・・。


イチロー&松井:ハハハハハ・・・。


人の気持ちが沁みるようになった

イチロー:なんか人の思いとか気持ちっていうのは、すごく沁みるようになったよね。


松井:そうなんですよ。


イチロー:年齢を重ねるとね。


松井:ちょっとしたファンの反応とかね。近くにいる人の反応を見て、「あ、こんなに喜んでくれるんだ」って。


イチロー:人が喜んでくれるって嬉しいよね。


松井:そうなんですよ、そうなんですよね。


イチロー:昔は何か自分がもうプレーして、結果を残すことで必死で。(人が)喜んでくれてる瞬間も味わってるんだけど、次から次にやってくるからね。そんなことに浸ってられないし、だけどなんか今は、すごいその人の気持ちが刺さるよね。


松井:本当にそう思います。それこそ中学時代からね。何か触れたり、すれ違ったりみたいなのを繰り返して。今回、なんていうのかな、すごい、その人間的に心地いいな、イチローさんと一緒にいて心地いいなっていうのを初めて気づいた、自分自身がね。


イチロー:はあー、へぇー(笑顔)


松井:それも今まで感じなかった部分かなっていう。わからなかった部分。


イチロー:わからなかった、お互いにね。


松井:だから、それを外してくれたのはやっぱ、イチローさん。


スタッフ:この感じをいかして10年やりましょうよ、野球のためにね、日本の。せっかく、こう不思議な距離が・・・。


イチロー:えっ!何言ってんの。


松井:フフフフフフ(爆笑)


イチロー:何そこでうまいことまとめようとしてるの?


イチロー&松井:(笑)


イチロー:いや本当、ね、楽しかったし。


松井:楽しかった。


イチロー:いい時間でした。ありがとうございました。


松井:とんでもないです。ありがとうございました。


【対談を終えて】


松井:一応、50歳の男は普通は「私」ですよね(笑)。その辺に関しては、ちょっと主張させてもらおうかなと。カメラが回ってることをね、忘れさせてくれるぐらい話し込んでしまいました。でもいい時間でした。ええ。また何かね、お互い良い形で再会できたら嬉しく思います。


イチロー:やっぱ何もかも似てる選手が並んでも面白くないんで、コントラストが効いてる方がおもしろいのはおもしろい。だけどこうやってね、久しぶりに会って話をすると、結構考えてることとか価値観というのは、似てるんだなっていうのが感じられてすごく嬉しかったです。


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