
TBS日曜劇場『GIFT』は6月14日、最終話を迎える。「天才」すぎるがゆえに周囲から孤立していた宇宙物理学者・伍鉄文人(演:堤真一)が、車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」(以下、ブルズ)との出会いをきっかけに成長を遂げていく物語が、ついにそれぞれの未来へ向かって終結する。
【写真で見る】主演・堤真一らが最終話で届ける“ギフト”とは?・・・ドラマ『GIFT』場面写真
宇宙を取り巻く“破壊と再生”にもなぞらえながら、人と人、家族のつながりにもフォーカスしてきた本作。最終話放送目前、企画・原案・演出を手がける平野俊一監督に、話を聞いた。
第9話で訪れた、エース宮下涼(演:山田裕貴)の死に込めた思い、そして作品タイトルにもなっている「ギフト」の意味とは――。
「“嘘”をつきながら「リアル」を描く」リアルとエンタメの線引きに対するこだわり――平野監督の演出哲学
スポーツをテーマにしたドラマはこれまでにも数々放送されてきた中、本作の“舞台”となっているのは、「車いすラグビー」。監督としてだけではなく、企画・原案者として本作の“生みの親”でもある平野監督自身も、学生時代にスポーツに打ち込んでいた。
「僕はラグビーをしていたのですが、車いすラグビーと同じように“タックル”で体がぶつかるだけではなくて、ベンチか、他のプレーヤーからなのか、思わぬ“声”が届いた瞬間は、覚えています。そこで僕は“何か”をもらったのかな…と。その経験は、ドラマに生かされているのかなと思います」
スポーツ経験者でもある平野監督が、本作で描きたかった車いすラグビーの試合シーンは、どのようなものだったのだろうか。
「試合シーンに関しては、とことん“エンターテインメント”で見せていこう、と最初から決めていました。VFX(視覚効果)も取り入れながら、かなりデフォルメもしています」
第1話で登場した、「ブルズ」のエース・涼と、強豪チーム「シャークヘッド」のエース・谷口聡一(演:細田佳央太)が競り合うシーンも、その一つだ。
「車いすラグビーの監修をしていただいた峰島靖さんに、『ここはちょっとデフォルメした表現でもいいですよね?』と常に相談していました。一方で、リアルに描くために“嘘をついてはいけない”と考えるシーンもありました。リアルとエンタメの線引きに対するこだわりはすごくありましたね」
登場人物一人一人のキャラクター描写についても、リアルに描くために「真摯(しんし)にやっていこう」と向き合った。
「その5秒をどう見せるか」――考え続けた“体感時間”
本作では、クランクインの1年ほど前から、平野監督やプロデューサー、美術やVFXスタッフらが定期的にミーティングを開き、ディスカッションを進めてきた。
「車いすラグビーが実際にどういうふうにドラマに落とし込まれていくのか、エンタメとして“どう上手に嘘をつけるのか”を、まず知りたかったんです」と平野監督。
ドラマなどで試合シーンが描かれる際に、例えば実際の試合では「残り5秒」という状況を、ドラマでは演出上、その何倍、何十倍もの尺にして描くことは往々にしてあることだ。
そこで、平野監督が大事にしているのが「体感時間」。
「リアルか、そうじゃないかを決めるのは、“体感時間”だと思うんです。『その5秒が、いったい何分かかっているんだ』とは思わせないよう、どう表現できるのかをずっと考えていました」
美術やVFXのスタッフらが技術的な視点から「どう撮るか」などと探っている傍らで、「僕はずっとそういうことを考えていましたね」とも。
「実際に車いすラグビーのコートの端から端まで、涼のようなプレーヤーが一気に走ると、わずか6秒〜7秒で到達してしまう。それを、ドラマでは延々と走ったり、トライ(ラグビーにおける得点方法の一つ)までの間をどう“嘘”をついて、どうドラマチックにしていくのか。皆で話し合って検証していきました」と振り返る。
“生”を照らすための選択――エース・涼の死が残したもの
第9話では、医師から「肥大型心筋症」の可能性を指摘されながらも、日本選手権準決勝となる「スイフトスネーク」戦に挑んだ涼が、不整脈により救急搬送され、息を引き取った。
平野監督は「ドラマの中で、『死』が“装置”になるのは違うと思います」と、ドラマ制作における自身の考えを明かした上で、こう続ける。
「『死』を描くことによって、『生きている』ことの有限さやありがたさ、尊さみたいなものを“逆照射”できるってことはあると思います。涼の死そのものよりも、伍鉄との出会いや仲間との再生、家族を慕っていた時間、彼がずっと問い続けた人生…。涼が生きた『今』を照らし、描いていきたかった」と明かす。
言葉を選びつつ、率直な思いも口にする。
「第9話の撮影では、宮下涼という人物の未完の完成を描く中で、山田さんとも、撮影現場ではいろいろとディスカッションを重ねました。さらに最終話では、『涼の死に、伍鉄たちがどう向き合い、乗り越えていくか』。堤さんや有村さんともディスカッションを重ねました。編集作業では、いろいろ悩むとは思います。きっと点と点がつながって初めて見えてくるものもあるだろうし…。でも最良の答えが出せれば」と、最後まで“問いかけ”を続ける。
描きたかったのは“やり直す家族”ではなく“NEW親子”
車いすラグビー選手にとって、競技生活を支えるだけでなく、日常生活のあらゆる場面にも寄り添いサポートする「家族」の存在。
本作では、涼や、チームメイトとして涼の背中を追いかける朝谷圭二郎(演:本田響矢)、坂東拓也(演:越山敬達)など、選手それぞれの「家族」という人間模様が描かれてきた。
主人公・伍鉄の家族も、「NEW親子」という従来の枠組みや常識にはとらわれない形で、元妻の坂本広江(演:山口智子)と息子の昊(演:玉森裕太)とともに、一歩一歩、温かくその関係性を育んでいる。
伍鉄のこの家族像について、平野監督は「ずっと独り身だった男性が突然“家族”を得て、“枯れかけた男”が再生していく話」と口にする一方で、描きたかったある狙いについても説明する。
「伍鉄は家族と改めて再会して広江のもとで“居候”を始めるものの、結局は“居場所がない”状態として描こうというのは、最初からの狙いでした。それを考えた時に、広江のいる空間は、伍鉄にとっても、このドラマにとっても“異空間”であってほしいなと思っています」
伍鉄や広江自身も劇中で語っている「NEW親子」については、こう捉えているという。
「再会してからこの先、延々と一緒に住むのかなというと、多分そうではない。どこかで離れて、また集まって、みたいな“交差点”のような位置づけの家族ですよね。再会はするけれど、“家族をやり直す”ということではない。それが伍鉄たちの“NEW親子”なのかなと自分の中では解釈しています」
「見過ごしているかも」平野監督が考える“ギフト”とは?
自身のスポーツ経験もあり、「この仕事をしていて、考え方はいつも自然とスポーツに置き換えていますね」とも話す平野監督。
「例えば助監督がフォワードで、『ここからボールが出ないと撮影部が展開できないでしょ』というような考え方ですね」と、スタッフやキャストの動きなどは、スポーツのポジションになぞらえて考えることも多い。
そんな平野監督が、本作の撮影現場で担った“ポジション”とは?
「撮影が進むにつれて、だんだん学校の先生みたいになっていきましたね。選手役の皆さんはかなり前からずっと練習をしていて、クランクインする時には、もう“チーム”になっていて。さらにそこからクラスみたいになって、少し緩くなる時もあるので、だいたい僕が(久保田一信役の)ノボせもんなべさんに、あえてみんなの前で『あんまりしゃべってばかりいるとけがするよ』と言ったりすると、みんな若干ピリッとするんです(笑)」
撮影が進むにつれて感じた、自分自身の変化もある。
「『“ギフト”とは何か?』とはよく聞かれるのですが、すごく難しいですよね…。でも、ドラマを作りながら、思わぬつながりや思いがけず引き合うものが、実はいろいろなところにあるんじゃないかなと、僕自身も改めて気づかされました」
日常でふと訪れる、新たな出会いや出来事――。見過ごしがちだが、実は普段から周りには“ギフト”があふれている。
「そこにあるだけで、そこにいるだけで、いい。その中で、知らず知らずのうちに引き合う関係や出来事みたいなものがあって、それが小さな“ギフト”なんじゃないかと思います。それを見過ごしていたり、避けていたりもしているのかもしれない、と振り返ってみる――そうしたことも、視聴者の皆さんにも届くといいなと思います」
車いすラグビーの熱狂、“NEW親子”という新しい家族像、そして涼の死が残した問い――。最終話で描かれるのは“結論”ではなく、それぞれの登場人物が受け取った「ギフト」の形だ。視聴者にとっても、その意味を考え続けることが、最後の贈り物になるかもしれない。
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