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美絽×池端杏慈×蒼戸虹子×坂本悠花里監督が語る半年間の軌跡――映画『白の花実』スペシャル座談会

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2025-12-27 11:00
美絽×池端杏慈×蒼戸虹子×坂本悠花里監督が語る半年間の軌跡――映画『白の花実』スペシャル座談会
映画『白の花実』(公開中) (C)2025 BITTERS END/CHIAROSCURO
 2019年公開のオムニバス映画『21世紀の女の子』の一篇「reborn」で注目を集めた坂本悠花里監督が、初の長編映画として手がけた『白の花実』が26日より公開中。

【画像】映画『白の花実』メイキング写真

 本作は、スペインで開催された「第73回サン・セバスティアン国際映画祭」New Directors部門のクロージング作品として上映され、現地で喝采を浴びた話題作だ。

 周囲になじめず転校を繰り返してきた主人公・杏菜を演じた美絽、幼なじみの突然の死に深い喪失を抱える栞役の池端杏慈、容姿端麗で周囲からの信頼も厚かったが、ある日突然屋上から身を投げる莉花役の蒼戸虹子、そして本作で長編映画デビューを果たした坂本監督が集まり、座談会を実施した。

 半年間にわたるワークショップや撮影の思い出など、フレッシュなキャストならではのエピソードから、監督が名付けた各キャラクターの名前に込められた思いまで明かしている。

■半年間のワークショップでつかんだそれぞれの芝居

【坂本】杏菜も栞も莉花も、どのキャラクターも演じることは相当難しいというのはわかっていたので、撮影の半年前からワークショップという形で演技に取り組んでもらいました。

【美絽】演じることも映画に出ることも全部が初めてでしたが、半年間のワークショップのおかげで杏菜という役を理解することができました。

【蒼戸】美絽と同じで、私も全部が初めてで。毎日、緊張と驚きの連続でした。

【池端】私は、2人よりも少し遅れて、クランクインの3ヶ月前からの合流でした。

【坂本】この映画は、曖昧な部分、余白が多いので、それを表現するためには、普段やってないような演技が必要で。ワークショップではいろいろな演技をやってもらい、脚本を読み込んでもらいましたね。

【蒼戸】何もかも初めてなうえ、すごく人見知りなので、最初の頃は「よろしくお願いします」以外、何もしゃべることができなくて。

【美絽】私も最初は話しかけることができなくて、(虹子は)クールな子なのかなって思ってました。

【蒼戸】お互い人見知りだけど、3人で、ワークショップで長い時間一緒に過ごしたことで仲良くなれて、すごくうれしかった。

【池端】私も合流したばかりの時は静かだったけれど、もともと人見知りをするタイプではないので、この作品を機に同年代で一緒にお芝居していける!って、そのことがうれしくて。たくさんコミュニケーションを取りたくて、それぞれの学校のこととか、好きな映画の話とかして仲良くなっていきました。

【蒼戸】杏慈がいたからこんなに仲良くなれたと思います。いろいろな話題を振ってくれたり、楽しい空気をしてくれたり、ほんと感謝してます。

【坂本】私も人見知りなので、距離感があっても大丈夫だとは思っていて、心配はしていなかったんです。でも、こんなに仲良くなってもらえてうれしいです。ワークショップは演技だけではなくダンスも頑張ってもらいましたね。

■それぞれの心に響いた、坂本監督の演出と言葉

【美絽】私、坂本監督の言葉で印象に残っているものがあって――「莉花が自殺していなかったら、杏菜がそうなっていたかもしれない」という言葉です。その言葉が、杏菜を演じるうえで軸になりました。

【坂本】脚本を書いている段階から思っていたことでした。杏菜は社会に溶け込めないところがあって、莉花とはまた別の形で、杏菜は杏菜で、自分自身に対して、人生に対して葛藤を持っていたのではないかなと。そして、杏菜と莉花は裏表の存在として捉えていました。

【蒼戸】私は撮影前、莉花が抱えているもの、寂しさや苦しさをどう表現するか考えていました。ワークショップを進めていく中で、それらを具体的にしていくというよりは、自分の中がざわざわしている感じというか(わからないものがあっても)それくらいがいいのかもしれないねと、監督と話しました。私も自分のことがわからない時があるので、その感覚を軸に演じていきました。

【池端】栞は、幼なじみの莉花が突然いなくなった喪失感や寂しさを抱えて生きているけれど、私自身まだ経験が浅いこともあるので、どう表現したらいいのか難しかったです。助けになったのは、やっぱりワークショップでした。3人で、アドリブで会話したり、坂本監督と栞について話したりするなかで、台本に書かれていない栞のこと、裏設定を自分で考えられるようになりました。役について迷ったときは、監督が「杏慈さんのままフラットな状態で、棒読みでせりふを読んでみて」と言ってくださって。そこからひとつひとつ栞の色を足していくことができました。

【坂本】ワークショップが役に立っていたと聞けて良かったです。今回は役者さんたちとさまざまな実験をさせてもらいました。そして、映画を観た方から「俳優がとても良かった」とほめていただくことが多くて。監督として俳優をほめてもらえるのは本当にうれしい。3人の努力の賜です。

【美絽】うれしい!

【蒼戸】ほんとうれしいね。

【池端】オーディションの時から感じていましたが、坂本監督はいつも穏やかで、柔らかい時間が流れているというか。さらに、美絽と虹子の雰囲気も優しくて丁寧で。みんなのおかげでリラックスして演じることができました。あたたかい現場でした。

【坂本】でも、2週間泊まり込んでの撮影は、本当に大変だったよね。

■約2週間の撮影で想い出に残っているエピソード

【美絽】たしかに、撮影中あまり余裕はなかったです……。

【池端】 楽しみだったのは食事の時間、3人でケータリングのご飯をとりに行くの、楽しかった。

【美絽】給食みたいで楽しかったね。

【蒼戸】お腹が空いている時間帯の撮影では、動くたびにお腹が鳴ってた(笑)。杏菜と莉花の部屋のシーンの撮影は、ちょうど12時少し前くらいの撮影で、お互いのお腹の音が聞こえてたよね。

【美絽】聞こえてた(笑)。思い出といえば、ウインクが上手くできるか盛り上がったこともあったよね。

【蒼戸】美絽と杏慈はすごく上手なウインクができるのに、私は全然できなくて。

【池端】ウインク、してみて。

【蒼戸】(うまくできず)こんなふうに上手くできないウインクの写真を撮られてました(笑)。あと、好きな映画の話もしたよね。私が『リンダ リンダ リンダ』が好きだって話したら、2人が観てくれて、うれしかった。

【美絽】『市子』の話とかもしたよね。

【坂本】そういう和やかな時間があったんだと分かって、安心しました。撮影、本当に大変だったから……。

【蒼戸】個人的に一番大変だったのは、展望台で踊るシーンでした。あの日は、とにかく雨と風がすごくて、日もすぐに暮れ始めて、どんなふうに映っているんだろうって思っていたんです。完成した映画を観たら、雨も風も、あの時の莉花の心情と重なり合っている感じがあって…印象に残っています。

【坂本】天気に悩まされる日も多かったけれど、結果的にはその時の天気も映画に取り込めたのではないかと、ポジティブに捉えています。ロケ地のあの湖までの道のりも大変でしたね。99のカーブを越えていかないと湖にたどり着かない。

【美絽】確かに、なかなか大変な道でした。

【池端】その湖で、杏菜と栞が目の前にある自然を使って踊るシーンがありました。実際に木々や草木を見て感じたことを表現してくださいと言われて踊ったお芝居で。ほんの少し雨が降っていたけれど、それもいい味になっていました。

■この映画から何を学び何を受け取ったのか

【坂本】こうして話しながら思い出したことがあって――。実は、キャスティングが決まってから、みなさんの雰囲気を見て役の名前を書き換えました。杏菜は、音の響きにすごく強さを感じて。漢字も考える中で、杏も菜も両方、食べられるものというのがこのキャラクターっぽくていいなと。ほぼ全てのシーンに出演するのは体力と集中力がとても必要だったと思います。演技やダンスの課題をいつも淡々と顔色ひとつ変えずにこなしてくれました。

【美絽】ただ、今だから言えることですが、撮影の時かなり気分が落ち込んでいて、杏菜を演じることが救いになっていたんです。この先、また落ち込むようなことがあっても、この映画を、この撮影を思い出すことで、前に進む元気をもらえると思います。初めての映画という意味でも、自分にとって大切な作品になりましたし、この先もお芝居を続けていきたいと思うきっかけになりました。

【坂本】杏菜は、もともとはもう少し閉じたキャラクターでしたが、美絽さんのおかげで、より開かれた、個性的で魅力あるキャラクターになりました。

【美絽】ありがとうございます。

【池端】私は、この作品を通して、目に見えるものが全てではないことを学ばせていただきました。栞として、なんで本当の莉花をわかってあげられなかったのか――。人には言ってないだけで、誰もが悩みや苦しみを抱えているということなど。お芝居も、そういう見えない部分に目を向けていきたいなと。

【坂本】杏慈さんはリアクションのお芝居が多くて、とても大変だったと思います。また、栞という名前は、彼女の家の設定的に少し古典的な名前を考える中で、読書のイメージもあって栞になりました。漢字の中に「木」が入っているのも気に入っています。栞は、普段は大人っぽく感情を抑えていますが、その中に潜むパッションや熱があって、杏慈さんはその複雑な感情を自分に落とし込んで表現してくれましたよね。

【池端】ありがとうございます。もっともっと演じることにチャレンジしていきたいと思います。

【蒼戸】私も、初めての映画、初めてのお芝居で、右も左も分からない所から始まったけれど、坂本監督と美絽と杏慈とコミュニケーションをとりながら、時間をかけて莉花という役に向きあうことができました。

【坂本】莉花はこの映画のテーマであり、物語のきっかけになるキャラクターなので、普遍的な名前がいいと思い、綺麗さ、完璧さ、清潔さという意味を込めて莉花になりました。とても余白の多いキャラクターで、虹子さんと何度も話しながらキャラクターをつかんでいきましたよね。「莉花にとって完璧さはとても大事で、そうじゃなくなってしまった自分を受け入れられなかったんじゃないか」という虹子さんの言葉が印象的で。私自身が莉花をつかむきっかけになりました。

【蒼戸】そんなふうに言ってもらえてうれしいです。ありがとうございます。この作品は、私にとってのスタート地点。今後もずっと私にとって、特別で大切な作品です。

【坂本】これでダメだったら最後にしようと挑んだ作品でみなさんと出会い、わらしべ長者のように少しずつ持っているものが大きくなっていく、そんな感覚を与えてくれる映画でした。本当に、とてもとても大切な映画になりました。

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【画像】今後の活躍が期待される坂本悠花里監督

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