アートで探る「ウェルビーイング」東京国際フォーラムで開催
2026-10-29 15:53:26

東京都とアーツカウンシル東京が主催する「だれもが文化でつながる国際会議2026」が、10月28日(水)から11月1日(日)まで、東京国際フォーラムで開催されている。
今年のテーマは「Moving Together ともに生きる文化」。芸術文化を通じて、人々がよりよく生きるためのヒントを探るイベントだ。
開幕初日には報道関係者向けの先行内覧会が行われ、会議のディレクターを務める森司氏と、企画担当のアーツカウンシル東京・岡崎未侑氏が登壇。開催の趣旨や注目の展示作品などを紹介した。
「ウェルビーイング」に決まった正解はない

近年、さまざまな場面で耳にするようになった「ウェルビーイング」という言葉。一般的には、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指すが、その捉え方は人によって異なる。
内覧会で岡崎氏は、これまでの会議を通じて、ウェルビーイングは人と人、さらには人間以外の存在との関係性の中で育まれるものではないかと考えてきたと説明した。
今年のテーマである「Moving Together」には、単に一緒に行動するだけでなく、共同体や社会をともに動かしていくという意味も込められている。

また、森氏はウェルビーイングについて、あらかじめ正解が存在し、そこに人々が合わせていくものではないと説明。芸術文化に触れ、自ら表現することが、一人ひとりの豊かな時間につながる可能性を示した。
会場は、カンファレンス、スタジオ(ネットワーキング)、ギャラリー(展示)の3つで構成されている。専門家による議論に加え、作品鑑賞やワークショップなど、さまざまな角度からテーマを掘り下げられるのが特徴だ。
災害の記憶をアートで未来へつなぐ

10月28日から一般公開されたロビーギャラリーには、国内外のアーティストによる多彩な作品が並ぶ。
その一つが、アーティスト・瀬尾夏美氏による作品だ。

瀬尾氏は、東日本大震災の被災地などでフィールドワークを重ね、地域の人々の声や記憶をもとに作品を制作してきた。
今回展示されているのは、2019年の台風19号で大きな被害を受けた宮城県丸森町などでの活動をもとにした作品だ。
現地で人々の話を聞くうちに、地域に古くから伝わる蛇の民話が、過去の水害の記憶と結びついていることが浮かび上がったという。
瀬尾氏は、そうした伝承や被災後の暮らしをもとに、新たな民話『やまのおおじゃくぬけ』を制作。その後、地域の人々との交流を通じて人形劇へと発展した。
現在では、アーティストが参加しなくても、地域の人々自身がさまざまな場所で上演する活動になっているという。
一人のアーティストが生み出した表現が、地域に根付き、人々の手によって受け継がれていく。その過程からは、芸術文化が持つ新たな可能性が感じられる。
世界の異なる価値観を映し出す新作も

会場では、現代美術家・宮島達男氏の作品も紹介されている。
なかでも注目したいのが、新作『Mutual Counterpoint』だ。作品には、宮島氏を象徴する数字のカウンターとともに、世界各国のニュース映像がリアルタイムで映し出される。
CNNやBBC、アルジャジーラ、ロシアの国営放送など、異なる立場から発信されるニュースが一つの作品に組み込まれているのが特徴だ。

岡崎氏によると、作品名にある「Counterpoint」は、音楽用語の「対位法」を意味する。
世界には共通するルールや価値観がある一方で、異なる考え方が対立することもある。そうした複雑な世界のあり方を表現した作品だという。
異なる立場から伝えられるニュースを通じて、世界には多様な視点が存在することを改めて実感させられる作品となっている。

このほか、パレスチナ出身のアーティスト、ジュマナ・エミル・アブード氏による水をテーマにしたドローイングや、人とクジラの関係を表現した刺繍作品なども展示されている。
VR体験やワークショップなど、参加型プログラムも充実

会期中は、作品鑑賞にとどまらず、来場者が実際に体験できるプログラムも多数用意されている。
例えば、読み書きに困難を伴う学習障害「ディスレクシア」について考えるVR体験では、小学校の教室を舞台に、当事者が置かれやすい状況や、そこで生まれる戸惑い、焦りを疑似体験できる。なお、ディスレクシア特有の文字の見え方を再現するものではない。
また、10月31日には、絵本『わたしは なれる』をもとにしたワークショップを開催。参加者がそれぞれの「なりたい自分」を絵や言葉で表現し、一緒に旗を制作する。
さらに、ろう者が「聴者」を演じるレクチャーパフォーマンスも予定されている。普段は意識されにくい聴者の身体的な振る舞いに目を向け、コミュニケーションのあり方を問い直すプログラムだ。
森氏は今回の会議について、何らかの決まった答えを提示するのではなく、参加者が新たな気づきを得たり、何かを確認したりする時間になればと語った。
芸術文化に触れ、自分なりの「ウェルビーイング」を見つけよう

「だれもが文化でつながる国際会議2026」は、アートを鑑賞するだけでなく、作品に込められた思いや背景に触れ、自分自身の考えを深められるイベントだ。
多彩な展示や体験型プログラムを通じて、普段とは異なる視点から社会や他者との関係を見つめ直すきっかけになるだろう。
会期は11月1日(日)まで。参加費は無料で、カンファレンスなどは事前申し込みが必要となる。展示は申し込み不要で鑑賞できるため、気になる人は足を運んでみてはいかがだろうか。
【開催概要】
イベント名:だれもが文化でつながる国際会議2026
開催期間:2026年10月28日(水)~11月1日(日)
会場:東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3-5-1)
参加費:無料(カンファレンスなどは要申し込み、展示は申し込み不要)
公式サイト:https://creativewell.rekibun.or.jp/creativewell-conference/2026.html
情報提供元: マガジンサミット