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多様性と優しさが交差する「新宿二丁目」発の美容クリニック、「自分らしく生きる力」

2025-05-27 12:00:59

PRIDE CLINICは、2024年11月に東京都新宿二丁目に開業した美容クリニックである。ヒアルロン酸やボトックスなどの注入治療に加え、HIFU(ウルトラフォーマーMPT)やRF(ボルニューマ)、医療脱毛といった医療機器を用いた施術を行っている。さらに、肌育治療や美容点滴も取り入れ、患者一人ひとりの「なりたい姿」を実現すべく治療を実施。人種や年齢、セクシャリティを問わず「すべての人が自信を持って生きられる社会」を目指している。

ゲイバーでの出会いが原点に

PRIDE CLINICの院長・久野賀子氏が初めて新宿二丁目のゲイバーに足を踏み入れたのは、約3年前。友人に誘われたのがきっかけだった。そこで久野氏は、ジェンダーに対する固定観念から解放され、自分らしく生きている人々と出会う。

ゲイバーで働く人々の中には、「結婚をしない」「家族の期待に応えられない」といった理由から、「普通の人生」を送れないことで家族との関係がうまくいかない人もいるという。久野氏自身も、従来のジェンダー観に違和感を抱いていた一人だった。

「彼らは、私が違和感を抱くよりもずっと前からジェンダーについて深く考え、多様性を理解していた」と振り返る。

そうした人々との出会いは、久野氏にとって心強いものであり、支えとなった。やがて久野氏は新宿二丁目に通い続け、ゲイの方々と親交を深める中で、「この街の魅力を発信したい」との思いが芽生え、美容医療を通じてそれを実現すべくPRIDE CLINICの開業に至った。

現在、クリニックでは久野氏のほか、看護師と動画編集を兼ねる受付スタッフの3名が勤務している。SNSでの情報発信にも力を入れており、久野氏は「今の美容業界では動画による集客が重要」と語る。来院者は女性だけでなく、久野氏と親しいゲイの方々も多い。美容に関心を持つ人も多く、脱毛や美肌治療といったメニューを利用しているという。PRIDE CLINICは、美容医療を通じて「自分らしく生きたい」と願う人々に寄り添い、新宿二丁目から多様性の価値を発信し続けている。

個々の「こうなりたい」を実現する美容医療

久野氏は前職で注入治療を中心に学び、1万本以上の症例を持つ実績を誇る。「何よりも注入治療が大好きです。特にヒアルロン酸注入が好きです」と久野氏は語る。注入治療は、患者との会話を重視しながら施術を進められる上、施術直後に変化を確認できるのが魅力なのだそうだ。鏡を見せた瞬間に患者が笑顔になるのが、何よりのやりがいだという。

PRIDE CLINICは「気軽に通えるクリニック」を目指し、注入治療を提供している。「注入治療は麻酔クリームのみで対応でき、私が目指すクリニックに合った治療方法です」と久野氏は説明する。

久野氏は、美容医療を通じて患者の「こうなりたい」を実現することに喜びを感じている。最近では「唇を大きくふっくらさせたい」との希望に応えるため、一般的な「自然な仕上がり」にとらわれず、患者に合わせた施術を行った例もある。「美の基準は人それぞれ異なる」と語る久野氏は、可能な限り患者の希望を尊重した技術を提供することにこだわっている。

久野氏によれば、新宿二丁目の人々は「こうなりたい」を引き出すのが得意だという。「彼らは、相手の気持ちや考えを引き出すのが上手で、誰でも気軽に話せる雰囲気を作ってくれます」。自慢話さえも温かく受け止めてくれる彼らに支えられながら、久野氏は多様な価値観を持つ人々が自由に自分らしく生きられる社会の実現を目指している。

ゲイバーで学んだ「自分らしさ」の尊重

久野氏が心に残っている話がある。「私の通うゲイバーのママとママの母親は仲良しなんです」。ママの母親は、ママがゲイであることを受け入れ、尊重し合う関係を築いている。久野氏自身、「親子関係は難しいものだ」と思い込んでいたが、ママの話から「お互いを理解し、受け入れ合えば、すてきな親子関係を築ける」と気づき、自身の子どもたちとも同じような関係を築きたいと強く思ったという。

クリニックのスタッフからも影響を受けた。スタッフはゲイであり、「自身の子どもを持つことの難しさ」を受け入れている。その上で、久野氏の子どもたちに優しく接してくれる。自分は子どもを持てないかもしれないのに、子どもたちに対して否定的な気持ちを抱かないスタッフの姿勢に、久野氏は感銘を受けた。

久野氏は新宿二丁目を「包容力のある優しい場所」と表現する。彼らの温かさや多様性を尊重する姿勢に支えられていると感じており、彼らとの出会いを通じて、「誰もが自分らしい生き方を選べる」ということに気付いた。この気付きを多くの人に伝えたいと意気込む彼女は、将来的にはゲイタウンへの分院展開やゲイバーの経営も視野に入れている。「一人一人が自分らしく生きられる社会になれば、子どもたちの世代はもっと自由に、もっと幸せに生きていけるはず。誰もが自分らしく生きられる未来を作りたい」と、決意を示した。

情報提供元: マガジンサミット