Hakuhodo DY Matrix「100年生活者研究所」が巣鴨に誕生。リビングラボスタイルのカフェが目指す未来とは
2023-03-23 20:38:52
人生100年時代の到来をみすえた「Hakuhodo DY Matrix」では、「100年生活者研究所」を巣鴨(東京都豊島区)に設立し、100歳生きる人生の幸せを生活者とともにうみだすリビングラボ、「100 年生活カフェ」を2023年3月21日にオープンさせました。
写真)お披露目されたカフェ「100 年生活カフェ」
現在、日本における100歳以上の人口は9万人を超えており100歳まで生きることが現実的になっています。しかし、「Hakuhodo DY Matrix」が昨年10月に実施した調査によると、“100歳まで生きたいとは思わない”人は全体の7割となり、人生が伸びると不安やリスクが増えると考える人は多いようです。
そこで、より具体的に100年人生の幸せについて考えたいと立ち上げた「100年生活者研究所」では、従来のシンクタンクのようなクローズドな環境ではなく、常に生活者と対話する場を設けてアィデアをもらい、試作し社会実装をめざすリビングラボ方式で研究をすすめていきます。
その拠点となるのが、巣鴨の地蔵通り商店街にある「100 年生活カフェ」。お茶やスイーツ、軽食を楽しみながら、常駐する研究員やスタッフとのおしゃべりを通して“人生100年時代の幸せ”についての気ままに意見交換をおこなう場です。
写真左から)お披露目会にゲスト出演した人気シニアインフルエンサーの大崎博子氏、「100年生活者研究所」の大高香世所長、東京大学名誉教授の秋山弘子氏。
写真)昔なつかしい“昭和のプリン”やお出汁の効いたフワフワの和風卵サンドなど、お腹も気持ちも満たされるカフェメニューが頼める。
カフェではトライアル試作として、スマホやPCの使い方などをレクチャーしながらシニアのデジタル生活を支援する「デジ活シニア」をはじめ、100年生活にふさわしい街づくりにもチャレンジする予定。地域住民や商店街の対話やワークショップを通して100年生きたくなる街のアイディアをつのります。カフェで得た情報や意見等はオウンドメディアや調査リリースなどで配信する予定だそうです。
リビングラボという考え方
IOG(東京大学 高齢社会総合研究機構)のメンバーであり東京大学名誉教授の秋山弘子氏は「日本は人生50年といわれた時代が長く続き、急激に平均寿命が伸びた今も50~60年時代の生き方をしている。社会のインフラ、教育、雇用、医療や介護も旧来のシステムのままで、社会全体が生きづらさを感じている」と説明。課題解決と新しい可能性を探るためには、生活者を中心に産官学が一緒になりイノベーションを誘発していく、オープンイノベーションシステムが大切であり、地域住民が主体となって生活が豊かになるモノやサービスを生みだすリビングラボ活動が適していると提言します。
従来、産官学が協力して行う様々な施策において住民は“恩恵を受ける側”という対象者でした。しかし秋山教授は「明確に課題を認識しているのは住民。課題を解決するソリューションも住民の方がもっている。それを企業の技術でより具体的に開発できるのが理想的」と話します
実際にIOGが参加する「鎌倉リビングラボ」では、最寄りの「大船駅」からバスで25分かかる立地にあり、鎌倉市のなかでも高齢化がすすむ今泉台地区において、住民を中心としたオープンイノベーションを実地。「若い人たちが暮らしたくなる街にしたい」という地域住民の意見から『在宅ワークに理想的な街』というコンセプトに至りました。
これは、コロナ禍以前に生まれたコンセプトだそうで、このような視点は地域を知りつくした住民ならでは。街の家具屋さんを中心に「テレワーク用の家具をつくる」といった施策が行われ、完成した家具がWEBショップなどで販売されると評価が高く、その結果に住民自身が驚き、街が活気づいたそうです。
また、移動手段としてパーソナルモビリティの開発、携帯型バイタルサイン計測チップの試作、さらにはソーシャルロボットとの実証実験なども行われ、実際にロボットと6カ月間生活してもらった結果、男性は秘書や召使的なニーズ、女性は相棒としてのニーズが高いという結果が分かるなど、生活者の視点から発見やアイディアなどが次々と誕生しています。
今回のリビングラボ方式の「100 年生活カフェ」について、秋山教授は「まだ日本のリビングラボは始まったばかり。産官学・民のうち、どこがプロジェクトを引っ張っていくか多様なやり方がある。企業が引っ張る例として、ひと味の違うリビングラボになってほしい」と期待を寄せました。
人生100年に必要なのは「健康と好奇心」
「100 年生活カフェ」のお披露目会には、Twitterで20万人のフォロワーをかかえる御年90歳の人気シニアインフルエンサーの大崎博子さんが登壇。毎日を楽しく生活する秘訣について聞かれると「好奇心をもつこと」と答えました。
70歳で仕事をリタイアした後、海外にいる娘さんをきっかけに78歳でパソコンを始めた大崎さんは、通信料が無料になったり、動画サイトで好きなアーティストの活動を自由に視聴できたりすること知り“デジ活”にチャレンジ。「最初は使いこなすのが難しかったけれど、大好きなBTSを応援したい!という気持ちが勝った。むかしからミーハーなの」と笑顔。
「100年生活者研究所」の大高所長が「一方で生活変化を好まないシニアも多いのでは?」と質問すると「変化したくないのは、知らないから。知れば楽しくなると思う。チャレンジして広げて、また知って。もし、今、自分に点数をつけるなら98点くらい。マイナス2点はもっと楽しいことを探したいから」と話し、シニアになっても活動的でいられるためには「若い頃から好奇心を育てることが大切」と提案します。
また、今不安に思うことは?という質問に対しては「独り暮らしは24時間自由で幸せだけれど、急に病気になったらどうしようとは思う。でも、それは若い人も同じはず。若い頃は歩くのが嫌いだったけれど、今は1日8,000歩をめざしている」と健康維持の秘訣を披露し「特に70歳くらいからは健康に気を付けて」とアドバイス。
SNSでの人気については、「90歳の私の生活を知りたいというのがフォロワーさんたちの気持ちのひとつ。日々の生活をお伝えして『今日も元気だ。おばあちゃん』とほっこりしていただきたいから、嫌な意味のツイートはしないように心がけている」と話し、「皆さんと幸せを分かち合っているという気持ち」が何よりも大切と締めくくりました。
さて、あなたは100年生きたいですか? 人生100年時代、元気で楽しく生活するためには、地域に住む各世代が幸せをシェアできるような「街づくり」が欠かせません。街に住む人が主役の誰でも参加できるリビングラボ「100 年生活カフェ」、巣鴨ではじまります。
情報提供元: マガジンサミット