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だからタバコは嫌われる…「喫煙の健康に対する影響」

2017-03-03 21:30:34


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
喫煙は健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
厚生労働省は直近では2016年8月に、喫煙の健康影響に関する検討会編として「喫煙と健康」と題した580ページにもなる報告書を発表しています。
2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止対策を強化する必要性からも、禁煙の普及啓発がいっそう必要といわれています。
今回はあらためて、「喫煙の健康に対する影響」をおさらいしたいと思います。

喫煙の健康への影響:科学的証拠(エビデンス)から


タバコと健康影響については、現在世界中で系統的な研究がなされています。
日本では国立がん研究センターと健康研究センターが中心になって、このトレンドにしたがって、喫煙と疾患との因果関係を明らかにしました。
強い因果関係を推定するレベル1から、因果関係がなさそうなレベル4までの判定基準が設けられています。
その結果が上記「報告書」に次のように記されています。

「喫煙者本人に関して」


・がんやがんによる生命予後、二次がんの罹患や再発リスクなどは、ほとんどレベル1か2
・循環器疾患(虚血性心疾患、脳卒中、アテローム性動脈硬化関連疾患)でレベル1と2
・呼吸器疾患(COPD、気管支喘息、結核、特発性肺繊維症)でほとんどレベル1か2
・2型糖尿病の発症でレベル1
・歯周病がレベル1、う蝕(うしょく:虫歯)、インプラント失敗、歯の喪失でレベル2、
・閉経後の骨密度低下、大腿骨近位部骨折や関節リューマチでレベル2
・認知症や日常動作との関連はレベル2
・ニコチン依存症はレベル1

「受動喫煙の影響」


・肺がんはレベル1、乳がんや鼻腔・副鼻腔がんはレベル2
・虚血性心疾患や脳卒中はレベル1
・呼吸器への急性影響は、臭気・不快感・鼻の刺激感はレベル1、ぜんそく患者や急性呼吸器症状(咳、痰、喘鳴、呼吸困難など)とぜんそく患者の急性呼吸器機能低下はレベル2
・慢性呼吸器疾患への影響はレベル2
・子宮内胎児発育遅延、出生体重の減少がレベル2
・小児のぜんそくの既往はレベル1、ぜんそくの重症化、ぜんそく発症、小児の肺機能低下、学童期のセキ・タン・喘鳴・息切れ、中耳疾患や虫歯は、それぞれレベル2
・乳幼児突然死症候群がレベル1
・未成年については、喫煙開始年齢が若いこと、全死亡原因、がん死亡、循環器疾患死亡、がん罹患のリスクに関してレベル1

改めて、喫煙者にとっては驚くべき結果ではないでしょうか。

「IQOS(アイコス)」や、電子タバコなら大丈夫?


加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」や電子タバコが、近年、市場に流通してきています。
これについても、喫煙の健康影響に関する検討会は検証を行っています。その結果、無煙たばこについては、海外での評価にしたがってレベル1、電子タバコについてはレベル3となっています。
電子タバコは現在規制があり、個人輸入などで入手が可能なだけで、因果関係を明らかにできないというのがレベル3とされた理由です。
ですから、アイコスや電子タバコについては、今後の検証が待たれるところです。
ただし、電子タバコについては蒸気から発がん性物質の発生が報告されています。本人も受動者にも曝露による健康影響はないとはいえないでしょう。アイコスに関しても同様です。

喫煙率の現状


日本の成人男性の喫煙率は減少傾向でしたが、近年、下げ止まりになっています。中高年の喫煙率は着実な減少が続いています。
また、若い世代や壮年期にかけての女性の喫煙率は横ばいまたは漸増とのこと。妊婦の妊娠前の喫煙率が高いことも併せて、女性の喫煙問題は小さくありません。
受動喫煙については、「室内またはこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」(健康促進法第25条)と定義されています。
2013年の国民健康・栄養調査では、非喫煙者で受動喫煙があったと答えたのは家庭で9.3%、職場で33.1%でした。
また、飲食店46.8%、行政機関9.7%、医療機関6.5%、学校28.2%でした。職場や飲食店、学校などでの受動喫煙が問題になっていて、禁煙や分煙が課題となっています。

喫煙はカッコいい!:価値観を変えよう


一昔前の映画やビデオを観ると、主人公(男性2枚目スターが多い)がタバコをスパスパ吸っています。
かつて、とくに男性にとってタバコを吸うことは「ステータス・シンボル」でもあったということでしょうか。
そんな価値観が急激に変化して、あれよあれよという間に「日本は禁煙後進国」などといわれて、戸惑っている人も多いのではないでしょうか。
嗜好品とはいえ、報告書の結果からすると「考え直さざるを得ない」とは思いませんか。

【参考】
・厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000135585.pdf(本文)
・同上 報告書(概要)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000135584.pdf
・IQOS(アイコス)
http://iqossan.com/iqos-health-environment/

<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
株式会社 とらうべ 社員 産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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