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シャンプー不要? お湯だけで肌の汚れは落ちるのか

2016-10-21 18:30:33


執筆:座波 朝香(保健師・看護師・助産師)
洗面やシャワー浴は毎日のこと。そんななかで、シャンプーやボディソープなどの洗浄剤に使われる成分が「実は身体にはよくないのでは?」という考え方があります。
実際のところどうなのでしょう。
そして、肌の汚れはお湯だけでも落ちるものなのか、ご説明していきます。

なんのために洗うのか?


日常生活では、「清潔を保つため」に全身を洗います。
もともとヒトの肌には、余計なものを身体の中に入らないようにするバリア機能によって、健康を保つ力が備わっています。たとえば、ヒトの肌の構造は、それ自体が外の刺激から身体を守るつくりになっています。
また、水分を保つ機能を持っていたり、健康な状態を保つために必要な皮脂や菌の集まり(常在菌細菌叢;じょうざいきんさいきんそう)によっても、外の刺激から身体を守っています。
そのため、皮脂や菌を落としすぎてしまうことは、乾燥を招き、あらゆる微生物への感染を引き起こすことへつながります。逆に、肌が汚れたままになっていることも、よくありません。肌のバリア機能を発揮できないからです。
冒頭で「清潔を保つために全身を洗う」というお話をしましたが、顔や頭、身体を洗い「清潔を保つ」ことは「健康な肌」を保つために必要なのです。

シャンプーやボディソープは身体に悪いの?


ところで、シャンプーやボディソープなどの洗浄剤が身体に良くないというウワサを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?なかには、「洗浄剤は身体に良くないみたいだから、お湯で洗っている」という方もいるかもしれません。
このウワサは、結論からいうとウソの情報です。
シャンプーやボディソープなどの洗浄剤は身体に悪いものではありません。ウワサの元情報は、次の2つの理論に基づく「経皮毒説」によるものです。
1. 肌から洗浄剤の成分が身体の中にまで入り込んでいく
2. 入り込んだ成分は身体に蓄積されて悪さをする

この1,2のどちらも医学的に間違った情報です。以下の理由から、洗浄剤が全身へ影響することはありません。
◆1がウソの理由:肌から洗浄剤は入らない
すでに「肌にはバリア機能がある」という説明をしました。そのため、洗浄剤に使われる程度の成分が肌に入り込んでいくことは不可能です。
多くの皮膚科の塗り薬ですら血管から吸収されて全身に影響することができない肌のバリア機能を利用しています。それは「肌にだけ効き目があり、全身に影響することはほとんどない」ということに他ならないのです。
◆2がウソの理由:成分は身体に蓄積されない
1でご説明したように、肌の内側まで洗浄剤の成分が入っていかないため、そもそも蓄積されることはありません。
万が一、肌の内側にまで入り込んでいける成分があったとしても、身体には良くないものを身体の外に排出したり、解毒する力があります。
とはいえ、先ほどのウワサを信じていたり、経済的な問題や、そのほかさまざまな理由から洗浄剤を使わずにお湯で身体を洗っている方もいるのかもしれません。では、実際にお湯で汚れを落とすことはできるのでしょうか?

お湯だけは落ちない汚れがある


肌についている可能性のある汚れの種類を大きく2つに分けると「油(脂)っぽいのもの」と「水っぽいもの」があります。
たとえば、皮脂が油っぽいもの、汗が水っぽいものです。そのほかの汚れには細かいホコリ、菌やウィルス、細菌などがあります。
油と水は、混ぜようと思っても混ざり合うことはありません。同様に、お湯で汗やホコリを流せても皮脂を落とすことはできません。
どうしてもお湯で落としたいという場合、40℃以上のお湯であれば、皮脂を溶かすことで流れていく可能性はあるといえます。ただその場合にも、いくつかの注意点がありますので、次からご説明していきます。

お湯だけで汚れを落とすときの注意点


たとえばアトピー性皮膚炎や乾燥性の皮膚の肌の病気のため、治療の一環として医師の指示のもとで洗浄剤を使わずにお湯洗いだけで生活していることもあるでしょう。
病気のときは、正しく肌を観察してもらいながら正しいケアを行う必要があります。
ただもしも医学的な理由以外で、これまでの洗浄剤を使った清潔方法をやめ、お湯だけで汚れを落とすことに取り組む場合、以下のことに気をつけなくてはいけません。
・皮脂と水分のバランスがこれまでとは変わるため、油っぽくなったり乾燥したりする可能性がある。
・汚れが十分に落ちなかったり、皮脂と水分のバランスがくずれていることで、体臭がきつくなる可能性がある。
・皮脂汚れによって細菌が繁殖しやすい状態になることがある。その結果、脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)をはじめとする肌トラブルの原因となる可能性がある。

上記のようなことがあっても、お湯だけの洗浄を長年続けていくことでそれにあった肌状態になっていくことは考えられます。
しかし、その過程で体臭問題や肌トラブルを起こしてしまうようでは、「清潔に保つ」「肌を健康に保つ」目的から逸脱してしまう結果となり、本末転倒でしょう。皮脂を落としすぎず、刺激の少ない洗浄剤を使うことは大切なポイントです。
洗浄剤を使って肌が荒れたというときには、何らかの成分がその時の肌に合っていなかったということが考えられます。
「自分の肌に合った洗浄剤で全身を洗う」ことが正しく肌を清潔に保つための基本なのです。
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通。

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情報提供元: mocosuku

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