「第11世代Coreプロセッサー」の登場で世界はどう変わるのか?インテルの薄型ノートPC革命はじまる
2020-10-07 23:45:39
テレワーク拡大によりPCの利用時間が増え、より快適な作業環境を求めて本体やその周辺機器を買い替えた人も多いのではないでしょうか。新しいアプリケーションとの親和性やパフォーマンスの向上など、今までにないスペックの高さがPCに求められています。
そのようななか、9月にモバイル向けCPUとして「第 11 世代インテル® Core プロセッサー」(通称Tiger Lake タイガーレイク)を発表したばかりのインテル株式会社(以下 インテル)。
先ごろ開催されたオンラインイベント『インテル PC FES 2020』では、作業環境やワークフローにおける「第 11 世代インテル® Core プロセッサー・ファミリー」(以下 第11世代Coreプロセッサー)の新たな可能性と実現可能な世界を提案し、また、ビジネスやクリエイティブ、ゲームや音楽、プログラミングなど各分野の著名人やクリエイター、プロデューサーとのコラボレーションを発表しました。
低消費電力かつ高性能のCPUを実現
第11世代Coreプロセッサーは、第10世代(Ice Lake アイスレイク)と同じ10nmプロセスながら、新技術「SuperFin プロセス・テクノロジー」を採用し、動作周波数の向上と消費電力の削減を達成。また、USB4準拠のThunderbolt 4やIntel Wi-Fi 6(Gig+)をサポートするほか、モバイル向けとして初めてPCIe Gen 4インターフェイスを採用しています。
Operation Range(TDP)により12~28WのUP3(46.5×25mmパッケージ)と、7~15WのUP4(26.5×18.5mmパッケージ)の2系統が用意されており、計9モデルのラインナップを展開しています。
また、メディアエンコーダーの性能も2倍に高め、ディスプレイパイプを増強。さらに「Image processing Unit 6」の採用により、動画は最大解像度4K90FPSまで、静止画は最大画素数4200万画素まで再生可能です。
これらの仕様により、コンテンツ作成が最大7倍、オフィス生産性が20%以上、ゲームストリーミングでは2倍以上の高速化などを実現させており、実環境での作業効率が各段にアップしています。
2020年10月には、全国の家電量販店で第11世代Coreプロセッサーを搭載したノートPCが発売される予定であり、私達は性能が飛躍的に向上した、まったく新しいデバイスへと進化した薄型ノートパソコンを手にとることができるわけですが、なかでも注目なのが、従来、薄型ノートPCの性能指標として求められなかった3Dゲーミングの追加です。
ゲーミングにおける進化
インテルジャパンでは、第11世代Coreプロセッサー搭載ノートPCで、快適に楽しめるゲームコンテンツを検証し開発、販促していく「インテル Iris Xeグラフィックス検証サポートプログラム」を開始。各ゲームメーカーとタッグを組み、日本におけるエントリーゲーミング市場の活性化を目指していきます。
これは、ゲームメーカーが目指す性能を達成できる支援と、ゲームコンテンツを楽しむための最低限の性能基準を満たすことが指標であり、クリアしたものはゲームタイトルごとにメーカーが認証する仕組みで、現時点※で認証済みの国内タイトルは以下となっています。
「eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE」、「エースコンバット 7 スカイズ・アンノウン」、「CODE VEIN」、「ストリートファイター V チャンピオンエディション」、「SOULCALIBUR VI (ソウルキャリバー 6)」、「鉄拳 7」、「ぷよぷよ eスポーツ」、「龍が如く 極」、「龍が如く 極 2」、「龍が如く 0 誓いの場所」、「遊戯王 デュエルリンクス」。また、「Apex Legends」、「Fortnite」、「PlayerUnknown's Battlegrounds」などの海外の人気タイトルも対象となっています。※9月25日時点
ユーザーが体感できる成果を
インテルでは「Project Athena(プロジェクトアテナ)」というノートPCの認証プログラムを実施していましたが、第11世代Coreプロセッサーでは、第2世代となる「インテル®Evoプラットホーム」(以下 Intel Evo Platform)へと進化します。
今後、「インテル® Evo」ブランドのロゴマークが付いたノートPCは、インテル Iris Xeグラフィックスに対応した第11世代Coreプロセッサーを搭載している証となり、「場所を選ばない応答性」「フルHDで9時間以上のバッテリー駆動時間」「瞬時の起動(1秒未満のスリープ復帰)」「30分以下の充電で4時間駆動という高速充電(フルHDモデル)」「Wi-Fi 6(Gig+)とThunderbolt 4の実装によるクラス最高の接続性」が要件として定められています。
その性能の高さを、ユーザーが日々の作業環境やワークフローにおいて体感、認識できているかがIntel Evo Platformの指標であり、これはメーカー業界全体のイノベーションや革新をもたらすものだとしています。
リモートで繋がる世界をより充実したものに
さて、『インテル PC FES 2020』では、第11世代Coreプロセッサーの紹介をはじめ、コロナ禍の新次元PC体験として、さまざまな使用形態例を紹介しています。
例えば、合奏技術NETDUETTO(R)を採用したアプリケーション「SYNCROOM」(ヤマハ株式会社)とロックユニット「GLIM SPANKY」、老舗音楽メディア「ORICON」がタッグを組み、新曲「東京は燃えている」を遠隔合奏にて配信するオンラインセッション。
また、PCを使った未来のクリエイター応援企画として「デジタルハリウッド大学」「学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校専門学校」「バンダンゲームアカデミー」ら3校の協力を得たクリエイティブコンテストを10月からスタート。優秀作品を発表した生徒には媒体での作品紹介をはじめ、ハッカソン参加権利などのプログラムが提供されます。
その他にも、コロナ禍でさまざまなことをリモートで行うことを余儀なくされるなか、デジタルシフト化を前向きに捉え活動する企業や団体、人を紹介するプログラムやeスポーツ・トーナメントなどを配信。10月以降も特設ページにて順次、公開していく予定です。
テクノロジーで現実を科学する時代へ
その他、『インテル PC FES 2020』では、株式会社ハコスコ代表取締役 CEOであり、デジタルハリウッド大学大学院 教授の藤井直敬氏による「現実とは」と題された基調講演がオンデマンド配信されました。
VR・AR・AV・MR・SRといった仮想空間技術や空間拡張技術が進化し、XRテクノロジーがごく身近な存在となった今、現実と仮想現実の境目は曖昧になりつつあります。しかし、そもそも私達は“物”が現実に存在するか否か、確かめもせずに信じていることが多く、そのような不確かな感覚が世の中をカタチ作っています。
つまり、世の中のすべては主観である可能性があり、自身と他人が見ている世界は各々違うということになります。
VRを駆使し、あらかじめ用意された「過去」の映像を「現実」と差し替え、被験者に過去を現実と区別無く体験させる装置「SRシステム(代替現実システム Substitutional Reality System)」の実験によると、ヘッドマウントディスプレイをかけた被験者は、映像切り替えに気が付かず、映像に映る過去の人物と会話をし始めます。また、踊るダンサーに、踊る本人の過去映像を重ねて見せると、見ている人はどちらが現実か分からなくなるそうです。このように、人の現実は簡単に外部から操作できてしまうのです。
頭で超えられないならテクノロジーで超えてゆけ
藤井氏は「主観=意識(こころ)がつくられる仕組みはまだ分からない」としながらも「意識体験は氷山の一角であり、脳の1%くらいしか使っていない。つまり脳による情報処理はほとんど無意識下で行われている」と説明し、果たして、意識しないものは現実に存在するのか?と問いかけました。
無意識領域にアプローチする方法として、外部と脳を直接つなぐブレイン・マシン・インターフェース(BMI)が有効とされていますが、先ごろ、実業家のイーロン・マスク氏が100臆円以上の資金を投入し、「脳とコンピューターをつなぐ」ことを目的に設立した「Neuralink」において、脳に電極デバイス(The LINK)を直接埋め込むことで脳活動を慢性的に記録する動物実験に成功しています。
脳からの信号を読み取り、さらにそれを脳内に戻すことができるため、フィードバックループをつくることも可能なこの画期的なテクノロジーは、将来的に骨髄損傷などの神経疾患における身体運動のサポートに応用できる可能性と同時に、他者との新しい関係を開くことになるのではないか?と藤井氏は期待を寄せています。
藤井氏は、「無意識のうちに主観の繭に閉じ込められていた自分(脳)が外と直接的に繋がれるようになれば、現実世界と人(環世界)との関係を理解できるようになるのではいか。そうなると自分と他者のなかにあった境界が溶けてゆく」と話し、テクノロジーで現実を科学することにより、私達の世界はより豊かになっていくだろうと結びました。
果たしてテクノロジーの進化は、今後、私達の感性や意識にどのような影響をあたえるのでしょうか。第11世代Coreプロセッサーの登場は、そのひとつのカギになるのかも知れませんね。
- 日経PC21
Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット