E START

E START トップページ > マガジン > 大気汚染が健康に与える影響とは? 「環境リスク 」の現状

大気汚染が健康に与える影響とは? 「環境リスク 」の現状

2019-05-03 18:30:35


執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
WHO(世界保健機関)は、2019年に世界の人々の健康を脅かす最大の環境リスクは「大気汚染」であると発表しました。
日本のみならず世界各国でも、近年「PM2.5」などの話題は頻繁にメディアで取り上げられています。
こうした大気汚染の現状や、実際に健康に及ぼす影響、また、日常生活での注意点などをご説明します。

大気汚染の現状


WHOは昨年の報告においても、世界人口の9割は汚染された空気を吸っており、その結果として、年間約700万人が命を落としていると推計しています。
そのうち90%以上がアジアやアフリカなど低・中所得国の人々であり、こうした地域の人々は室内外の汚染によって、呼吸器系や循環器系への深刻な健康被害を受けているとしています。
現在、世界でもっとも大気汚染が激しいのはインドやタイ、韓国、中国などです。
その影響で学校が休みになるといった社会的な影響も出ていますが、何よりもっとも懸念されるのは健康への悪影響です。
また、農産物や生態系への影響も看過できません。
日本でも戦後の高度経済成長期に公害が社会問題として表面化し、1960年代後半からは法整備が進められました。
長年にわたる患者など民間の努力や、法による規制の成果も現れ、日本では大気汚染物質の数値の多くは減少傾向にあるようです。
現在では、全国1800地点あまりで大気汚染状況を測定した結果を「そらまめ君(大気汚染物質広域監視システム)」で随時確認することができます。

PM2.5、光化学スモッグ…健康に与える影響とは?


さまざまな環境対策の結果、日本では多くの大気汚染物質について環境基準の達成率が100%に近づいています。
反面、近年問題になっている「PM2.5」の環境基準達成率は、全国でおよそ88%(地域によっては30%程度)と未だ不十分です。
さらに、光化学スモッグを形成する「光化学オキシダント」に至っては0~0.1%とほとんど環境基準を達成できていない状況です(環境省『平成28年度 大気汚染状況について』)。
それでは、この「PM2.5」と「光化学オキシダント」は、私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか。

PM2.5


PM2.5は特定の化学物質の名称ではありません。
大気中に含まれる粒子の中で、直径が2.5μm(マイクロメートル)以下の微小粒子状物質(Particulate Matter = PM)を指します。
工場の煙や車の排気ガスなどに含まれるほか、野焼きや山火事、タバコやストーブの燃焼などでも発生します。
髪の毛の約30分の1という非常に微細な粒子のため、吸い込むと肺の奥深くまで到達し、呼吸器系や循環器系の臓器に悪影響を及ぼします。
喘息などのアレルギー疾患や気管支炎、肺がん、不整脈や心筋梗塞、動脈硬化などのリスクを高めるとされています。

光化学オキシダント


排気ガスなどに含まれる窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)などのガスが、紫外線に当たることで光化学反応を起こした結果、二次的に生成される酸化性物質の総称を光科学オキシダントといいます。
大部分は酸素の同素体であるオゾンで、その濃度が高くなり「もや」がかかったようになる現象を「光化学スモッグ」と呼びます。
光化学オキシダントは粘膜を刺激するため、眼やのどの痛み、息苦しさ、頭痛、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。

大気汚染から身を守るために…


目下、自然エネルギーへの転換や、国際的な協力による大気汚染対策が求められていますが、私たちが生活のなかで取り入れられる対処法も知っておきましょう。
PM2.5は、日本では例年3~5月に濃度が上がる傾向にあります。
また、光化学スモッグは晴れて気温の高い、風の弱い日に発生しやすくなります。
大気汚染物質の濃度が高いときには、外出や屋外での激しい運動を避け、極力外気を室内に取り入れないように留意してください。
とくに小さなお子さんや高齢の方、呼吸器系・循環器系の疾患を持っている方は感受性が高く、濃度が低くても影響を受ける可能性がありますので、より注意が必要です。
さらに、一部の大気汚染物質は花粉症などのアレルギー症状を悪化させるともいわれています。
マスクを選ぶ際は、PM2.5対策をうたっている製品を選びましょう。
とはいえ、大気汚染物質は基本的に目視できませんし、光化学スモッグは法令に基づいて注意報や警報が出されますが、PM2.5などは現時点で明確な措置は決まっていません。
ですから、前述の「そらまめ君」などを参考にして、その日の大気汚染状況をチェックする習慣を持たれるとよいと思います。
また、喫煙は室内のPM2.5の濃度を著しく上昇させます。
お子さんのいる家庭では禁煙を徹底するほか、飲食店など外出先においても禁煙か完全分煙を選ぶように気をつけたいものです。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント