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ただの水ぶくれとは違う「帯状疱疹」とはどういう病気か

2018-01-25 18:30:15


執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
皆さんは「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病名を聞いたことがあるでしょうか。
知っている方は、「水ぶくれができて痛くて長引く…」といったイメージをお持ちかもしれません。
今回は、若い世代でも発症する可能性がある「帯状疱疹」についてご説明します。

帯状疱疹とは?


帯状疱疹は、身体の左右どちらか一方の神経に沿って痛みを感じ、やがてそこに赤い湿疹がでてきて、次第に水疱の発疹が帯状に現れる病気です。
この症状の様子から、帯状疱疹という病名がつけられました。
おもに、疲労やストレスなどによって免疫力が低下したときに発病します。
また、女性の3人に1人がかかるといわれ、決して珍しい病気ではありません。
痛みや湿疹の跡、後遺症を残さず治すには、早めの治療が大切です。

帯状疱疹の原因


皆さんがよくご存知の水疱瘡(みずぼうそう)は、10歳以下の子どもがかかる感染症で、水痘・帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされます。
実は、このとき身体に入ったウイルスは、水疱瘡が治った後も体内の神経節に残って潜伏しています。
ですから、水疱瘡ウイルスは誰もが持っていて、成人で健康な人は免疫力が高いため、その間ウイルスはおとなしくしているのです。
しかし、年齢を重ねるにつれ、ストレスや疲労、感染症、生活習慣病などにより免疫力が低下すると、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、神経を伝わって皮膚に達して帯状疱疹を発症します。
50歳以上の発症が多いのですが、ストレスや過労などがきっかけとなる病気ですから、若い世代でも安心はできません。
むしろ、中高年以上に多い病気というイメージから、気づくのが遅れて重症化するリスクもありますので、注意が必要です。
通常、一度発症すると再発はほとんどないといわれていますが、免疫力低下との関係でまれに再発するケースもあります。

帯状疱疹の症状


身体の左右どちらかの神経に沿ってチクチク、ピリピリと刺すような痛みを感じた後、赤い湿疹ができ帯状に広がり水疱になる、という症状をたどる場合が多いです。
やがて水泡は破れ皮膚がただれますが、その間も痛みは続きます。
痛みの感じ方は一様ではなく、比較的軽い痛みで済む人から夜眠れないほど痛むという人までいます。
赤い湿疹は、最初は虫刺されなどではないかと勘違いをして、市販薬などに頼って治療が遅れ重症化する危険もあります。
一般的に、帯状疱疹は自分では判断しにくい病気です。
赤い湿疹を発見して受診する患者さんが多いのですが、80%位の人は湿疹の前に体の片側に痛みを感じています。
痛みは、胸や腹、背中にかかる部位が最も多いのですが、足、頭部、顔面、とくに目の周囲に発症する例も見うけられます。
頭部の痛みは頭痛、胸部の痛みは狭心症や心筋梗塞と誤解してしまうこともあります。
痛みは、ウイルスが神経節にダメージを与えていることが原因なので、覚えのない急激な痛みを片側に感じたら、まずは皮膚科を受診しましょう。
そして、痛みと同じ部位に赤い発疹ができると帯状疱疹の可能性が高いですから、速やかに受診してください。

帯状疱疹の治療


何度もお伝えしてきましたように、痛みを感じたら早めに受診して治療を開始することがポイントです。
発疹がでる3日以内に抗ウイルス薬を飲めば、ほとんどの場合きれいに治ります。
早めの内服により、発疹が水ぶくれになってただれて潰瘍になる、跡が残る、といった状態を防げます。
重症化すると、入院して抗ウイルス薬の点滴が必要です。
皮膚の治療は、初期は非ステロイド抗炎症薬を、水泡期以降は化膿疾患外用薬を用いて細菌による二次感染を防ぎます。
また、潰瘍になってしまった場合は、潰瘍治療薬を塗布します。
服薬をしないと、重症化したり、痛みが残ったりする可能性があります。

中高年の帯状疱疹で注意すること(1)


帯状疱疹は湿疹ができて水疱となり、水泡が潰れて皮膚がただれかさぶたとなり、やがてかさぶたが剥がれて治癒します。
ここまで、通常約3週間~1か月かかります。
しかし、中高年は治療が長引くケースが多くみられます。
普段から乾燥肌である、アレルギー性の湿疹、糖尿病やその予備軍であるといった状況から、かゆみや痛みをともなう湿疹に慣れてしまい、帯状疱疹の発症に気づきにくいのです。
そのため発見が遅れ、治療に時間がかかる傾向にあるようです。
また、目の付近に帯状疱疹を発症すると、角膜炎や結膜炎などを引き起こす可能性もあります。
しかし、こちらも何らかの眼病をもともと持っていることが多く、受診が遅れてしまいがちです。

中高年の帯状疱疹で注意すること(2)


そして、中高年の帯状疱疹でとくに注意したいのが帯状疱疹後神経痛です。
これは、帯状疱疹の皮膚症状が治まった後も、痛みだけが残ってしまう後遺症のようなものです。
帯状疱疹発症後3か月以上痛みが継続していると、帯状疱疹後神経痛と診断されます。
なかには数年間にわたり痛みが続く人もいます。
原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスにより神経節が強いダメージを受けたために、継続的に痛みが起こると考えられています。
若い人はダメージからの回復も早いのですが、中高年は治療が長引きやすいことを念頭におき、とにかく早めに受診をして、重症化・長期化させないよう十分留意しましょう。

予防と早期対処法


帯状疱疹の予防には、第一に「体の免疫力を下げない」ということです。
バランスのよい食事、質の高い睡眠、規則正しい生活を心がけ、持病がある方は自己管理をしっかりすることもとても重要です。
万一帯状疱疹と思われる湿疹ができたら、冷やしてはいけませんし、水泡ができたら感染症予防のためにも破らないようにしましょう。
また、湿疹などの皮膚症状の悪化や、痛みの度合いが強いほど、帯状疱疹後神経痛になりやすいといわれています。
ストレスの影響を避けられない現代社会、高齢者のみならず40歳前後の方も帯状疱疹後神経痛には注意が必要です。
最後に、帯状疱疹は若い世代も発症する可能性があり、無理をすると重症化する病気です。
早期発見・早期治療が、軽症のうちに治す近道であることを心に留めておきましょう。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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