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女性だけじゃない、男性も「乳がん」になることがある?

2017-07-02 18:30:20


執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
近年、注目度が高まっている「乳がん」。
乳がんと聞くと、女性がかかる病気というイメージが強いでしょう。
実際、乳がん患者のほとんどは女性ですが、男性でも発症する可能性があるということをご存知でしょうか?
今回は男性の乳がんについてご説明していきます。

男性が乳がんにかかる確率


国立がん研究センターの「がん情報サービス(※1)」によると、女性の11人に1人が一生のうち一度は乳がんにかかることがわかっています。
これに対して男性は、およそ150人に1人いわれています。
また、乳がんの全症例のうち、男性の症例の割合は1%未満といわれていて、女性と比べても稀なケースであるといえます(※2)。
しかし、男性の乳がん患者のうち、およそ15~20%は乳がんの家族歴があることもわかっていて、乳がんを経験した家族がいる人は、男女問わず気をつけたい病気でもあります。
また、女性の乳がんの場合、30~50代にかけて患者数が増加するのに対し、男性は60~70代に多いといわれています。

男性の乳がん:種類


男性の乳房は、女性に比べて乳腺組織が発達しておらず、また、皮下組織も少ないという特徴があります。
そのため、皮膚や筋膜(筋肉や内臓を包む膜のこと)にがんが拡がりやすく、女性よりも少し進行した状態で発見されるケースが多いといわれています。
また、男性の乳がんも次の種類に分けられます。

浸潤性乳管がん


がんが乳房の中にある乳管(乳汁を乳頭まで運ぶ管)の壁の細胞層に発生・増殖し、拡がっていくタイプで、男性の乳がんの多くが浸潤性乳管がんといわれています。
女性と同様、しこりができます。

非浸潤性乳管がん


がんが乳管の壁の細胞に異常な細胞が発生するが、乳管内におさまっているタイプ。
このほかにも、ごく稀ですが、「炎症性乳がん」や「乳頭のパジェット病」という種類があります。
炎症性乳がんは、がん細胞が皮膚のリンパ管に詰まってしまい、発赤や熱感などの症状が現れるがんです。
また、乳頭のパジェット病は、乳頭の下にある乳管にがんが発生し、乳頭の表面上までがん細胞の増殖が拡がるがんです。

男性が乳がんを発症するのはなぜ?


ところで、女性の乳がんでは、女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」の影響が発症に関係しているといわれています。
では、男性の場合はどうなのでしょうか?
男性の乳がんのリスク因子として、次のことが挙げられます。

その1:放射線被ばく


男女問わず、放射線への被ばくが乳がんの発症リスクに影響を与えていることが分かっています。
低線量被ばく(100ミリシーベルト未満)と乳がん発症の関連性についてはまだ確定的なことはわかっていませんが、100ミリシーベルト以上の被ばく(例:原爆による被ばく)や、放射線治療・X線検査などによる医療被ばくと乳がんの発症には関係があることが指摘されています(※3)。

その2:エストロゲンが増える病気


男性にもエストロゲンが分泌されています。
女性よりも分泌量が少ないため、乳がん発症のリスクは低いのですが、男性でも病気が原因でエストロゲンの量が増えてしまうことがあります。
たとえば、肝硬変などの肝臓疾患。肝臓にはエストロゲンを分解する働きがあるため、肝機能が低下してしまうと、エストロゲンが分解されずに量が増え、乳がん発症のリスクとなります。
また、クラインフェルター症候群などの遺伝性疾患でもエストロゲンが増加し、乳がんを発症することがあります。

その3:乳がんにかかった家族がいること


乳がんの発症に関係がある突然変異遺伝子があると、発症のリスクが高くなります。

男性の乳がんはどのように治療するの?


男性の場合も、女性の乳がんと基本的な治療方針は変わらず、外科手術や放射線治療、抗ガン剤治療、ホルモン療法などの治療法から、個人の状態(がんの種類や進行度、エストロゲンやプロゲステロンの受容体の量など)を踏まえて適した治療が行われます。
実際には、男性の乳がんの場合、乳輪や乳頭付近にがんができることが多いこと、また、女性よりも見た目の負担が少ないことから、外科手術が選択されることが多いようです。
ただ、これまでの研究の中には、「タモキシフェン」という薬を使ったホルモン療法で、男女で副作用が異なるという指摘もあります(※4)。このように、男性の乳がんは女性よりも発症例が少ないこともあり、確定的なことがわかっていないこともあります。
とはいえ、男性も乳がんを発症した場合に、適切な治療が必要であることに変わりはありません。とくに、男性の乳がんは女性よりも認知度が低いことから、発見が遅れがちです。
しこりなどの異変があった場合には、躊躇せず、乳腺外来などを受診しましょう。
【参考】
※1:国立がん研究センター がん情報サービス『最新がん統計』(http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)
※2:がん情報サイト PDQ®日本語版『男性乳がんの治療(PDQ®)』(http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062969#scrollTop)
※3:日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン『放射線被曝は乳癌発症リスクを増加させるか』(http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41300/)
※4:海外がん医療情報リファンレンス『男性乳癌患者でタモキシフェンによる重大な副作用/MDアンダーソンがんセンター』(https://www.cancerit.jp/13400.html)
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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