E START

E START トップページ > マガジン > 会社に行くのは気分が沈む…でも休めば元気!?「新型うつ病」

会社に行くのは気分が沈む…でも休めば元気!?「新型うつ病」

2017-04-29 18:30:56


執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ

「新型うつ病」という名前が知られるようになってから、もうしばらくたちます。
「うつ病」と「新型うつ病」はどう違うのか、ご存知でしょうか。
新型うつ病は、仕事などでは気分が落ち込むものの、自分の好きなことをしているときは症状が現れないため、周りから「怠けている」と思われ、理解してもらうことが難しい病気です。
今回は「新型うつ病」について、従来型のうつ病との違いもあわせて解説します。

新型うつ病とは


近年、患者数の増加にともない広く知られるようになった「うつ病」。
自分自身がうつ病になったことがなくても、抑うつや不安、興味・関心の低下、食欲不振、睡眠不足など、その症状についてはなんとなく知っている方が多いのではないでしょうか。
このような症状を呈するうつ病は専門的には「定型うつ病」と呼ばれ、2000年代前半まではうつ病患者の多くを占めていました。
ところが、2000年代後半になると、従来のうつ病(定型うつ病)に当てはまらない患者が、とくに20~30代の若い世代で増えはじめ、注目されるようになりました。
それがいわゆる「新型うつ病」です。
新型うつ病は、従来型のうつ病と比較して新しいことから「新型」という名前がつけられていますが、専門的には「非定型うつ病」と考えられています。
また、専門家によっては「新型うつ病」を「適応障害」の1つとし、許容範囲を超えたストレスによって環境になじめなくなることで精神的にトラブルを起こしている状態、と捉えている医師もいます。

従来型のうつ病とはどう違う?


新型うつ病も、うつ病と同じように抑うつや不安などの症状が現れますが、大きな違いとして自分の好きなことはできるということがあります。
そのため、たとえば仕事が原因で抑うつや不安などの症状が現れ、会社を休むことになった場合でも、休んでしまえば症状は落ち着き、自分の好きなことを楽しむことができるのです。
また、従来型のうつ病の場合は、「こんなふうになってしまったのは自分のせいだ」という自罰的な傾向があるのに対し、新型うつ病の場合は、「自分をこんな風に追い込むのは、周りのせいだ」というように、他罰的な傾向があります。
このような違いもあり、新型うつ病は周りの人から「怠けている」「ワガママ」と誤解されやすい病気なのです。

新型うつ病の症状


新型うつ病でも、うつ病と同じように抑うつや不安などの症状が現れるというお話をしましたが、全く反対の症状が現れることがあります。

食欲


・従来型のうつ病
食欲が低下することが多い
・新型うつ病
過食やアルコール依存に陥ることが多い

睡眠


・従来型のうつ病
不眠(寝付けない、夜中や早朝に目が覚めてしまうなど)
・新型うつ病
過眠(いくら寝ても眠い)。ただし、不眠の症状が現れる場合もある

調子が悪い時間帯


・従来型のうつ病
朝から午前中に調子が悪い
・新型うつ病
午後から夕方にかけて調子が悪い

この中でも過眠の症状は、遅刻や欠勤などの原因にもなり、周りから誤解を招く一因になることもあります。

新型うつ病患者の根底にあるものとは


精神科医の福西勇夫氏らの監修『新型うつ病を知る本』では、新型うつ病を発症する人たちの根底にあるのは強迫傾向(一つのことが頭から離れなくなり、不安になりやすい性質)や劣等感があると指摘されています。
強迫傾向や劣等感が強いと、他人からどう見られているかを過剰に気にしてしまったり、他人と自分を比べて落ち込みやすくなり、精神的にも不安定になります。
そのような精神的な不安定さを抱えた人たちは、仕事でミスを指摘されたり、注意をうけると、それが些細なことであっても過剰に受け止めてしまいます。
そして、自己防衛的な反応として精神的な症状が現れたり、他罰的になって会社へ行けなくなってしまうのです。

新型うつ病の増加の背景には社会的な要因も


では、なぜ最近になって新型うつ病を発症する人が増えてきたのでしょうか。
これについて、福西医師らは、自分を認めてもらう体験が少なかったことや、反対に怒られた経験がないなど、幼少期や思春期の家庭環境が影響しているとされています。
ただ、家庭環境だけが要因となるわけではなく、若者を育てる余裕がなかったり、雇用環境が不安定で自分の身を自分で守らなければいけない社会的な要因も関係していると指摘されています。

新型うつ病患者と向き合うということ


新型うつ病は、本人の性格的傾向にもアプローチする必要性があるため、治療の効果が出るまでに時間がかかる傾向があります。
また、投薬治療だけでなく、カウンセリングや職場の環境調整などが必要になるケースが多いようです。
そのため、家族や上司・同僚など、周囲の理解が得られることが回復する上でのポイントとなります。
たしかに、新型うつ病は、周りから誤解されやすく、周囲の理解を得ることが難しいかもしれません。
しかし、新型うつ病が増えている背景に家庭環境や社会的な要因が関係しているとするならば、周囲の人たちも新型うつ病の患者と向き合うことで、自分自身や周囲との人間関係について見直す良い機会となるのではないでしょうか。
【参考】
福西勇夫、福西朱美監修『新型うつ病を知る本』、株式会社アスペクト、2013年
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント