また、むくんでる…「顔のむくみ」原因と対策
2016-11-29 12:00:23
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
朝起きたら、顔がむくんでいるということはよくあることですね。
なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。
「いつものことだから」と思っていても、実は、重大な病気の兆候かもしれません。
顔がむくむ原因と対策を詳しくみていきましょう。
むくみの正体
医学的には、むくみのことを「浮腫(ふしゅ)」といいます。
人間の身体には、動脈と静脈とリンパ管が張り巡らされています。心臓から送り出された血液は、動脈を通って身体の末端の毛細血管にまで達し、毛細血管のすき間から間質液や組織間液といった水分が染み出てきます。
それらは、細胞に酸素や栄養素を与えています。
また逆に、細胞の代謝によってできた二酸化炭素や老廃物を受け取って、今度は毛細血管の静脈やリンパ管で吸収し、心臓へ戻っていきます。
人間の身体の水分の3分の2は、間質液で細胞の中の水分です。通常は、血管から染み出る水分量と吸収される水分量が同じなので、細胞の間に存在する水分は一定のはずです。
ところが、何らかの影響で染み出る水分量が多くなったり、吸収がうまくいかなかったりすると、行き場を失った水分が皮下にたまってしまい「むくみ」となります。
それでは、顔のむくみはどのようにして起きるのでしょうか。
顔のむくみは、朝に多いことに気がつくでしょう。
その理由は、起きていれば重力で下に下がっていく水分が、寝ている状態になると上から下へ水分は流れていかないことにあります。その結果、余分な水分が顔にも溜まってしまうということですね。寝ている間に顔がむくんでしまっても、起きて日常生活を開始すれば、昼頃には落ち着いてきます。しかし、その代わりに水分は下へ下がっていくため、足がむくんでしまう場合があります。
顔がむくむ原因とは
性別(女性に多い)
女性は、男性よりも皮下脂肪が多いため、むくみやすい体質です。また月経周期によりホルモンバランスが変化しますが、月経前はリンパの流れが滞ってしまい、むくみが発生します。
これに関係しているのが女性ホルモンのひとつである「プロゲステロン」です。
プロゲステロンは、妊娠に影響していて、月経前になると分泌量が増加します。プロゲステロンには、体内に水分をため込もうとする働きがあるので、とくに月経前にはむくみが起きやすくなるのです。
飲酒
お酒を飲むとトイレが近くなりますが、それはアルコールが「抗利尿ホルモン」の働きを抑えてしまうため。それで尿が多くでるのですが、身体は脱水状態になるので喉が渇き水分を要求します。
そのため水分を必要以上にとってしまい、むくみます。
またアルコールを摂ると血管が膨張し、血管壁から水分でていきます。すると、血管内の水分量が不足して脱水状態になってまた水を飲む、といういわば悪循環が起こります。
その結果、むくみが出るのです。
塩分
塩分を過剰摂取すると、身体が水分を欲するため、たくさん飲水することになります。
その結果、身体の中に水分をため込むことになります。
運動不足
先ほどお話ししたように、朝、顔がむくんでしまっても日常生活を送る中で、次第にむくみは治っていきます。ところが、1日中運動をしなかったり、あまり動かなければ、顔のむくみは引かなくなります。
またデスクワークで長時間座ったままの姿勢が続くことで、首や肩の凝りが出てくることもむくみの原因になります。
首や肩の血液の循環が悪くなると頭に行く血液循環も滞り、結果的に顔がむくみやすいのです。
体脂肪や筋肉量
体脂肪が多く、太っていると身体自体が大きくなり血液循環が悪くなります。
筋肉量が多くて身体が大きくなっているのならば、筋肉がポンプの役割をしていて血液もきちんと循環することができます。
しかし体脂肪が多い場合は、むくみやすくなります。
顔のむくみが症状の病気
単なる顔のむくみだと思っていたら、病気の症状だったということもあります。
むくみを症状とする病気には、以下のものがあります。
ネフローゼ症候群
発症すると、腎臓の機能が正常に働かなくなります。
すると、タンパク質をろ過できず、尿中に出てしまうため、体内のタンパク質が減ってしまうことになります。その結果、むくみがでてきます。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌低下により、むくみがでます。女性に多い病気です。
急性糸球体腎炎
感染症が原因で、腎臓の糸球体に炎症を起こし、水分や塩分が過剰に身体に蓄積されることになります。
血圧が高くなり、むくみやすくなります。
心臓疾患(心筋梗塞、狭心症、僧帽弁狭窄症、肺動脈弁閉鎖不全症、心筋症など)
心臓の機能が低下することで、全身の血液の流れが悪くなります。
すると腎臓の働きも悪くなり、尿を作りにくくなって身体に水分がたまった結果、むくみます。
肝臓疾患
脂肪肝やアルコール肝炎、肝硬変でも顔にむくみがでます。
肺気腫
喫煙者は、要注意です。
むくみの対処法
温冷パック
顔を「温める」と「冷やす」を交互に繰り返してパックして血行を良くする方法です。
水で濡らしてレンジで温めたタオルと、冷やしたタオルとを交互に顔にパックします。何度かその方法を繰り返してみましょう。
マッサージ
首のリンパの流れをよくすることで、むくみの解消になります。耳の後ろから首を通って降りてきて、鎖骨に沿ってマッサージします。
この首のマッサージを朝、温冷パックとともにやることで効果が上がります。
顔のマッサージは、顎の下から耳の付け根に向かってリンパを流すように行います。
食事
塩分の摂り過ぎには注意しましょう。
塩分を体外に排出する働きを持つ栄養素であるカリウムを積極的に摂るのもいいですね。また、水分を多めにとりましょう。
基本的には心配するようなむくみではないことがほとんどです。毎日の生活を少し改善するだけで解消するはずです。
しかし、それでも解消されないひどいむくみが続く場合は、やはり医師に診てもらう必要があるでしょう。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
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情報提供元: mocosuku