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うつ病からの回復のポイントは「家族」

2016-11-06 21:30:31


執筆:Mocosuku編集部
監修:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
「うつ」や「統合失調症」の回復には、周りの人たち、特に家族の対応の仕方が大きく影響します。
日本でのうつ病患者は100万人を超え(厚生労働省:患者調査上巻第64表 総患者数、性・年齢階級×疾病小分類別 2008年)、いまや現代病だと言える状況です。
このような「いつ誰がなっても不思議でない」今日、もしも家族の誰かが「うつ」になった場合、私たちはどうすれば良いのじゃ、またどうすべきなのか。
ご一緒にみていきましょう。

家族のマイナスの感情が影響


うつ病や統合失調症などからの速やかな回復のためには、適切なカウンセリングや薬物治療に加えて、患者さんを過度のストレスを避ける環境に置くことが大切です。
つまり、患者さんにとって一番身近な存在である「家族」が、本人に対してどう接するかによって、病気からの回復具合=再発率が大きく変わってくるのです。
そこで重要になるのが、家族が本人に接する際の感情表現の仕方、いわゆる感情表出(Expressed Emotion:EE)です。
これは、一般的な感情表現のことを表しているわけではなく、「患者さんにとって苦痛となる家族の感情」があらわになることを意味しています。
具体的には、
・「甘えてばかりいるな!」「お前はダメだ!」といった批判的感情
・無視をしたり攻撃したりする敵意ある感情
・患者さんを過度に気遣いすぎてしまう情緒的巻き込まれ
の3つがあり、これらの感情表出が多い家庭を「高EE」と呼びます。
多くの研究が、高EEの家庭は低EEの家庭に比べて、再発率が4~5倍に上昇すると報告していて、高EEの家庭に対して、低EEになるように教育を行ったところ、再発率が低くなることも分かっています。

知識や協力の不足が助長


家族の感情表出(EE)を高くしてしまう要因や状況には、主に以下の3つがあげられます。
・本人の症状が激しく、長く続いている場合
これは家族にとって相当のストレスになり、「もっとしっかりしなさい!」などの批判的な感情があらわになることが少なくありません。
・病気に対する知識の不足
病気についての知識がないと、どう接すればいいのかも分かりません。その結果、例えば、朝なかなか起きられずにいる本人に対して、単に「怠けている」のだと思い、小言や暴言を吐いてしまうことがよくあります。
・他の家族の協力が得られない場合
主に母親が1人で病気の子供の問題を抱え込んでしまうケースが多く、父親が全く理解や協力を示さないばかりか、本人の症状が悪くなると母親を責めてしまう場合もあります。その結果、家庭内にマイナスの感情が蔓延してしまいます。
その他にも、経済的・肉体的負担や将来への不安なども高EEの原因となります。

距離感も大切


患者さんを抱える家庭では、家族はもちろん本人の1日も早い回復を願っているはずなのですが、結果的に本人にさらなるストレスを与える感情表出(EE)をしてしまっているのです。
EEを下げて再発率を低くするためには、以下のことに気をつける必要があります。
・病気について学ぶ
本人の病気のことを理解しないと、家族はどうしてもイライラしがちです。しかし、例えば「脳の異常で気力がわかない病気なんだ」と理解していれば、イライラや怒りもかなり和らぐはずです。
・専門家に相談する
長期にわたる患者さんとの生活は、いくら家族とはいえストレスになります。
家族だけで問題を抱え込んでしまえば、ストレスは溜まる一方で、家庭の雰囲気も悪くなってしまいます。積極的に医療機関や公的機関に相談し、アドバイスやサポートを受けましょう。
・適度な距離を意識的にとる
家族であっても適度な距離感は必要です。時には、家族が自分の時間を作ってリフレッシュしたりするほうが、結果的に本人にも優しく接することができ、病気の回復の助けになるのです。
さらにもちろん、基本的な接し方として、なるべく本人の言動を批判せずに共感する姿勢をもち、安心感を与えてあげることも効果的です。
一言でいえば、家族に限らず人間関係の基本ともいえる、互いの「思いやり」を忘れないことが、1日も早いうつ病などの精神疾患からの回復にとても重要なのです。
<参考>
東邦大学メンタルヘルスセンター(http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/mentalhealth/mental/about_stress/expression_recurrence.html)
<監修者プロフィール>
・山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

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情報提供元: mocosuku

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