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「情報がない」「費用が高い」海外大への進学に感じる“壁”…数学・物理も授業は英語で 多くの生徒が海外大に進学する高校の取り組み【news23】

国内
2025-02-27 14:23

コロナ禍が終わり、海外で学ぶ学生の数は戻りつつありますが、他の国と比べると日本は少ないのが現状です。海外進学に対するいまの若者の意識はどう変化しているのでしょうか。


【写真を見る】学生が海外進学に感じる壁“壁”とは


海外への進学には“壁”を感じる受験生もいるようです。


文科省が行った調査でも、2021年に海外の大学に進学した日本の高校生は、全国で1424人にとどまっています。
 


東大受験生の“将来の夢”は?海外進学に感じる壁

国公立大学の二次試験2日目。東京大学を受験した学生に“将来の夢”を聞きました。


受験生
「パソコンをつくる授業というのがあるんですよ。それをどうしてもやりたくて、東大に進路を決めました。革新的なアプリをつくっていきたい。イノベーションを起こしていきたい」

受験生
「将来AIや現代の問題について、テクノロジーや、技術をどんどん開拓していきたい」

受験生
「グローバルな仕事に就きたい。世界で視野を広げていきたいと思っている」

受験生
「大学生活の中でも海外に留学するとか、海外の人とかかわるチャンスがあったら積極的にやってみたい」


海外を夢見る受験生がいる一方で…


受験生
「留学はしたいなと思っているんですけど、まだ具体的には思っていない。地方の高校でそこまで情報がなかった

受験生
「ヨーロッパの建築に興味があるので行ってみたい。お金の補助があったら(留学)しやすいなと思う」

受験生
「環境的な面が大きくて、周りに海外の大学とかを受ける人がいなかったので、なかなか目指しにくい、壁があった感じ。海外大学だと高いので、そこにも壁があった」


海外への進学には“壁”を感じる受験生もいるようです。


文科省が行った調査でも、2021年に海外の大学に進学した日本の高校生は、全国で1424人にとどまっています。


授業は英語で…多くの学生を海外に送り出す高校の取り組み

こうした中、多くの学生を海外に送り出している高校があります。

髪を染めた生徒や、ピアスをつけた生徒。「能」を披露するなど、多くの個性豊かな生徒が通う、大阪府立水都国際高校です。

この高校では例年、14%ほどの生徒が海外に進学します。2024年度は80人の卒業生のうち、11人が海外の大学に進学しました。

日本から海外に進学する学生が少ないなかで、なぜ多くの生徒を海外に送り出せるのでしょうか。化学の授業をみせてもらうと…


教員
「reason is simple. it's because longer the molecule is more electron it has(理由は単純で、分子が大きい方が多くの電子を持てるからです)」

この高校では特に英語教育に力を入れていて、数学や物理、生物などの授業も基本的に英語で行われます。

2年生のクラスで「海外の大学に行きたいか」と聞いてみると、半数以上の生徒が手を挙げました。


生徒
「アメリカの大学に行きたくて、そのために今年の夏に自分でアメリカに行って、12校大学を見学してきた」

生徒に将来の夢を聞いてみると…


「海外でも働けるような、メイクアップアーティストになりたい」

「絵を描くのが好きなので美術館のキュレーター、展示会を開く人になりたい。作品を海外から借りてきて『ゴッホ展やります』『モネ展やります』みたいな立場になりたい」

「先生がNASAで働いている宇宙生物学の研究員だから。宇宙で人が快適に暮らすためには、どういうふうにしたら良いのかみたいなことを、考えるのが好き」


学生の“海外意欲” 日本は低水準…一体なぜ?

小川彩佳キャスター:
もちろん海外に行くことが全てではないんですけれど、そこにハードルがあるとしたらどんなことでしょうか。


藤森祥平キャスター:
データを交えて見ていきましょう。海外の大学について、イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が発表している「世界の大学ランキング」です。このランキングは教育環境や研究の質などをもとに作っているものです。


【世界の大学ランキング(2025年)】
1位:オックスフォード大学(イギリス)
2位:マサチューセッツ工科大学(アメリカ)
3位:ハーバード大学(アメリカ)
12位:清華大学(中国)
13位:北京大学(中国)
17位:シンガポール大学(シンガポール)
28位:東京大学(日本)

日本からは東京大学が28位にランクインしていますが、他の大学の中でアジア勢がトップ10に迫る勢いで順位を上げています。


株式会社 QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
これは大学の評判という指標が30%程度入っています。これは各学問ジャンルにおけるアンケートのような形で各教授が答えるので、大学全体の評価に繋がらない。あとは「研究の質」という指標がありますが、これは英語圏がだいぶ有利になってきます。シンガポールなどは英語を使う学生が多いので多少は有利になるでしょう。

こういった背景があるので、このランキングを見るべきというよりは、各ジャンルでの指標をどれだけ見るかを重視するよう内閣府も指標として出しています。とはいえ、母国語で学べるというのが日本の良さではあると思います。

また、海外に比べると日本はとても大学への寄付が少なく、OBが寄付する文化があってもできてない。「寄付で次世代の学生を育て、その学生が寄付した人の企業に入る」という流れが海外ではよく行われており、大学が育つ仕組みになっていると思います。

日本の大学は資産運用なども限られた範囲でしか認められてないので、大学の質を評価する前に、まず制度を変えなければいけない気がします。


藤森キャスター:
一方、留学について文科省のデータがあります。

【大学生等の留学生数 推移(2022年)】
日本…約5万8000人(文部科学省「データでみる日本の留学」より)
韓国…約12万4000人(韓国教育部HPより)

コロナの影響などで一時減少した数ではあるものの、他の国に比べ人口の規模の違いはあれど、日本は少ない水準であることがわかります。

小川彩佳キャスター:
海外を目指す学生が増えないのは、どのような事が背景にあると思いますか?


トラウデン直美さん:
今の学生は早い段階からインターンや就職活動を始めていて、「すぐに社会に出て働く」ということが念頭にあるように感じています。だからこそ、明確な目的や強い意志がないと、「1年卒業を遅らせてまで留学をするのか?」という感じになってしまっているように思います。

「海外での経験をするために留学したい」というライトな理由が、昔より減ってるのかもしれないと感じています。そこには経済的な部分や、円安の影響があるのかなと思います。


「留学が選択肢にない」学生の留学をサポートするためには

藤森キャスター:
海外の進学について、学生に聞いてみました。


受験生
「海外を目指す人向けの無償化プランみたいなものがあれば、海外大学に興味がある人がより目指しやすくなるのでは」

大学生
「与えられる情報に(海外進学の)選択肢がなかったので選びようがなかった。高校生の時にそういう選択肢もあれば、視野が広がったのかな」


大学生
「みんな生活にあまり余裕がある感じではないと思う。勉強面的にも費用面的にも時間的にも、自分の学びたいことを、本当にやりながら留学で視野を広げるのは難しい


藤森キャスター:
いろんな事情が伝わってきますが、実際に留学したときにかかるお金です。アメリカも物価高で家賃が高騰していますし、円安もある。もちろん、アメリカ以外の選択肢もたくさんある中で、現実厳しいなっていうところを感じますね。

小川キャスター:
海外に行かないというよりも、行けないという学生も多いのかなと感じますね。


トラウデン直美さん:
将来に対する不安や、金銭面に対する不安もあるからこそ、軽い気持ちで「行きたい」と言いづらいというのもあると思います。実際に、金銭的な面で厳しいので諦める人もいるのかなと思います。少しでも行ってみたいという気持ちがあるのであれば、支援や奨学金のような制度をもう少し広げた方がいいかなと思います。

比べるものがないと、「日本ってこういうところがよかったんだな」「日本はこういうところを頑張ってほしいな」なども感じられないと思うので、支援や制度などもっとできることがあるのかなと思います。

藤森キャスター:
海外に行くことが必ずしも正解ではないですが、行きたい気持ちがある人を何とか後押ししてあげたいですね。


伊沢拓司さん:
ニューヨークへ留学した場合、公立学校での費用試算が年間約800万円と出ていますが、アメリカの7割の学生は奨学金を借りているので、この額面そのものが問題ではありません。

奨学金を借りるためには、早期に高校で結果を出さなければいけません。キャリア教育の早期化というのもありますが、先生は大学を卒業してすぐ先生になってる人が多いのでキャリア教育は難しい。

そうすると早めに成果を出して、奨学金を借りるということが難しいという現状もあるので、教育制度全体で何か改善策を見つけていくしかないという感じはします。


『学生の海外留学』について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『学生の海外留学』について「みんなの声」を募集しました。


Q.海外留学が増えない最大の理由は?

「若者の人口減少」…7.7%
「留学費用の高騰」…57.9%
「『内向き志向』の高まり」…16.6%
「ネットなどの発達」…5.2%
「国際情勢や治安悪化」…10.5%
「その他・わからない」…2.1%

※2月26日午後11時19分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは27日午前8時で終了しました。


==========
<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒
クイズプレーヤーとして活躍中

トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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